こんにちは、ちゃむです。
「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

6話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ⑥
お父さんの声は冷たかった。
まるで寒風のように感じられる、周囲を凍りつかせるような冷たい声だった。
母が答えた。
「陛下、ノックをなさるべきでは?」
「……」
父は母の言う通りに動き、部屋の外でノックした。
続いて聞こえてきたノックの音。
トク、トク。
すると母は穏やかな声で尋ねた。
「もしかして私の愛しい皇帝陛下でいらっしゃいますか?」
「……今回はノックした。」
母は私を乳母に預けた後、自ら扉を開けた。
「ありがとう。愛しています。」
父の顔には小さな笑みが浮かんでいた。
私はわかる、あれはただのレベルの違いだ。
父は自分の子どもを愛したことは一度もなかったが、母は心から愛する設定だった。
それがどうやってきっちり区別されるのかは理解できなかったが、とにかくそうだった。
母が話し始めた。
「陛下、お声がとても荒々しいのですが、何があったのでしょうか?」
「皇后、それは違う……」
ルルカは私をベビーベッドに寝かせた後、車を取りに行くと言って席を外した。
「陛下がそのようにおっしゃると、私はどうにも無念で胸が痛みます。」
「……」
剣術では世界最強と言われる父だが、母にはいつも頭が上がらなかった。
父は母に逆らうと、絶対に間違いを犯してしまうのだ。
それでも、もし父が間違いを犯したとすれば、それは私が生まれた時くらいのものだった。
苦労して私を産んだのに、ろくでもない子どもが生まれたと言わんばかりに、冷たく接していたのだから。
小説の中で直接的に描写されてはいなかったが、その夜、父は母に一日中付き添っていたのではないかと思う。
「まあ、ビロティアン皇家で娘が生まれたことを喜ぶべきだろう。」
母があれほど苦労して産んだのが私みたいな問題児(?)だったため、父が本当に見たくなかったのかもしれない。
……とはいえ、当時の私は気分が良かったから気にしていなかったが、振り返ると結構傷ついたことになるのかな?
それでも私は楽観的に考えることにする!
母もまた、私を産んだことを謝りたいくらいだったので、これはこれで普通に受け入れるしかない状況だった。
とにかく、父はかなり困惑しているようだった。
一見無表情なのに、突然喉仏が大きく動いた。
「……すまない。」
「そうであれば、どうしてそんなに辛辣な言い方をされたのか教えてください。私が何か間違ったことをしているのなら、直しますから。」
話を聞いていると、母が泣きそうな顔をしているのに対し、父は冷や汗をかいているようだった。
ツク、ツク。
私は草を摘んだ。
陽射しは暖かく、風は心地よかった。
草を摘むのにぴったりの日和だった。
(まあ、大目に見てあげれば、愛する母が会いたくて探し回っている途中で……一人でとても楽しそうな声を聞いて嫉妬心が芽生えた……ってところかな?)
私は母と父を見つめながら、そう考えた。
父は男性たちと地位を争う世界観最強者だ。
そんな父のほとんど唯一ともいえる弱点は母だった。
父がかつて男性に敗北を喫した決定的な理由も、まさに母のせいだった。
『母の世話を焼くために、母の体も心も傷ついてしまい、結局集中力を欠いた設定だった……。』
母が亡くなった後、父は食事を断った。
「『皇后がいない世界は耐えがたいものだな。』」
かつて帝国の繁栄と栄光のために生涯を捧げたロンは、そう嘆きながら涙を流した。
「ロンは未来を失った人のように、一日一日を何とか生き延びるだけだった。」
そして、次第に気力を失い、ついには男主人公に敗北し、帝国が没落してしまった。
一見無表情で冷徹だが、実は母以外には甘い人物だったことが思い出され、その事実に心がざわついた。
『父の顔をもう一度だけ見よう。』
横たわる父の顔は見えなかった。
仕方がない。
体を起こした。
この男の視線が今日はやけに重い。
父の視線が私に注がれた。
私は父に向かって強い視線を送る。
「おとうさま!」
手で父を遮った。
ふらふらと立ち上がる。足が震えて、心が揺れた。
「おとうさま!」
「この子、いったい何をしているのだ?」
「あなたを呼んでいるじゃないですか。」
震える足で、私は必死に立っていた。
黒曜石のような黒い瞳が私を見つめていた。
私はその瞳に吸い込まれそうだった。
反射的に言葉を発した。
「サランヘヨ(愛してる)。」
なぜこんな言葉を口にしたのか、自分でもよくわからなかった。
ただそれだけだった。
「……」
トクン、トクン。
父が私の近くに歩み寄った。
少し怒っているように見える顔だった。
「もう一度言え。」
声が一段と小さくなった。
「サラン……ヘヨ(愛してる)。」
ぎこちない沈黙が流れた。
この時、私は少し怖くなった。
無意味なことを言って叱られるかもしれない、そう思った。
私たちは一応親子関係ではあるが、それでも非常に親密な感情的やりとりはなかった。
「私がやりすぎたのかな?」
私は慎重に問いかけた。
「パパ……怒ったの?」
どう見ても怒っている表情だ。
ママが隣で助け舟を出してくれた。
「怒っているわけじゃないのよ。」
その一言で私は心がだいぶ和らいだ。ママの言葉はまるで魔法のようだった。
「あなたのお父さんは見た目よりも感情が豊かだから。」
「ふん。」
「娘の前では素直になってもいいんですよ。家族の前まで冷徹である必要なんてありません。」
「……」
「国民は冷徹な皇帝を求めるかもしれないけれど、家族は優しい夫と父親を求めているの。私は優しいあなたを愛しています。」
ママがにっこりと微笑みながら私に言った。
「イザベル。イザベルが毎日ママに何て言っていると思う?」
「言ってみたら?」
「愛してる?」
「それはそれとして。」
「抱っこして?」
「そう、それをパパにも言ってみたら?」
この状況に驚いたのか、パパは二歩ほど後ろに下がった。
恐ろしいものに直面したような表情をしていた。
私はママとパパの間をうかがうように見た。
ママが目配せをして微笑みながら「どうぞ」と促してくれた。
私は勇気を出して手を差し出した。
「パパ、パパ。」
始まりは難しいだけだった。
一度勇気を出すと、次第に欲が出てきた。
「抱っこしてくれるの?」
パパの顔が当惑で赤くなった。
「イザベルはパパに抱っこしてほしいの?」
「うん!」
「どうして?」
「それは……」
目を見つめながら、ついに決心した。
本能的な気持ちを隠すには、赤ちゃんの絶対的な能力は弱すぎた。
どうせ私には21年しかないのだ。
私はただ、心の命ずるままに行動することにした。
「好きだから。」
「……」
「抱っこしてくれると嬉しい。」
「なんて可愛らしい子だ。ビルティアンの皇女にふさわしい振る舞いだと思っているのか?」
私はまだ不安そうに立ったままで、両腕を広げている状態だった。
そして直感的に思った。
ああ、これでまたお尻をぶつけるんだろうな、と。
だけど私の衝撃吸収最高レベルの防具であるお尻が、しっかり守ってくれるから大丈夫……ん?
倒れなかった?
私の体がふわっと浮いた。
「きゃー!落ちなかった!」
倒れる寸前に、パパが私を抱き上げてくれたのだ。
それは選択の儀式のように無表情で、無意味なものではなかった。
「抱っこしてくれた!」
本当に抱っこしてくれたのだ。
体温を感じた。
家族としてその庇護の中にいるという安心感があった。
パパの視線が私に向けられていた。
もともとの私は、パパの顔の造形さえ知らなかった。
韓国のあの子供は私の顔も見ずに私を捨てたけれど。
今は違う。
このすべてが贈り物のようだった。
「パパはプレゼントだよ(プレゼントです)。」
なんだか涙が出そうだった。
だけどもっと不思議だったのはその後だった。
・
・
・
彼女は見つめていた。
彼女にはわかっていた。
「本当に大切に抱いてるんだ。」
ロンがイサベルをどれほど慎重に抱きかかえているのか、彼女にはすぐに理解できた。
二人の姿を見ていると、まるで世界が豊穣さに満ちているかのような気持ちになった。
その中で、セレナは何かに気づいた。
「陛下?」
ロンの目は涙で充血していた。
セレナは思わず驚いた。
ロンと20年も一緒に過ごしてきたが、ロンが涙を見せたのはたった二度だけだった。
「自分の目に涙が浮かんでいるのに、気づかないなんて?」
ロンはただ黙って、自分の娘をじっと見つめていた。
ただ立っていた。
何かに引き寄せられたように。
セレナは慎重にロンのそばに立った。
彼の腕をそっと握った。
ここには見る者もいなかったので、彼女は皇帝を名前で呼んだ。
「ロン、私はあなたの涙を覚えています。」
二人きりの時。それは皇帝と皇后ではなく、夫と妻でいられる時間だった。
「一度は死んだと思われていたビアトン部官が生き返った時。そしてもう一度は、私があなたの誓いを受け入れた時。」
それが剣術帝国の皇帝が流した二度の涙だった。
「これで三度目になりますね。」
セレナは自分の指先でロンの涙を拭ってあげた。
ロンはようやく正気を取り戻した。
実際、彼は自分が涙を流していることにすら気づいていなかった。
ただ、自分の腕の中でニコニコと笑っている小さな命に、全身全霊を奪われていただけだった。
耳元で繰り返し響いていた。
「お父さんお母さんは贈り物だよ。」
その瞬間、この子供がまるで太陽のように思えた。
理由は分からないが、涙が溢れた。
彼は恥ずかしさを感じた。
「こんな……。」
どうやらその姿を妻に見られてしまったらしい。
実際、彼はセレナの前では常に強い存在であろうとしていたのだが……。
そう言いたかった。
「目に何か入っただけよ。」
セレナがにっこりと笑った。
跳ねるロンの上にいるのはセレナだった。
「今日のあなた、とても素敵よ。」
ロンの体がピクリと反応した。
ロンを喜ばせる唯一の方法、それはセレナの称賛だった。
「大切なものを大切にできるその気持ち、それが一番強い心だと思います。」
「……。」
ロンはじっとセレナの目を見つめることができず、そっと彼女の視線を避けた。
イサベルはその様子を平穏な眼差しで見守っていた。
『ふふ、私はきっとこの場面を知っている子供なんだわ。』
巻き込まれるときは巻き込まれ、抜けるときは抜ける。
今は抜け出すときだ。
『ちょっかいを出さずに静かにしておこう。』
ドキンドキン。
ロンの心臓が激しく動いているのを全身で感じていた。
『これ、爆発するんじゃない?』
少し心配になるほどだった。
だが、二人の恋の邪魔をするつもりはなかった。
『では、どうぞお二人で楽しくお過ごしください。私はちょっと寝させていただきます。』
イサベルはロンの腕の中で静かに眠りについた。
ロンはその後も、しばらくの間イサベルを抱き続けていた。









