こんにちは、ちゃむです。
「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

7話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ⑦
その日の夜明け。
ロンは執務室に向かった。
眠りについていた子どもの姿が頭から離れなかった。
『なんだかおかしいな。』
ビロティアンで生まれなかった娘だからだろうか。
それとも、セレナにとても似ている子だからだろうか。
混乱していた。
『あの子はビロティアンの剣術を身につけることもできないだろう。』
500年の歴史で初めて、「弱いビロティアン」が生まれた。
弱いビロティアンは淘汰される。
兄弟たちとの後継争いで食い尽くされ、さらに外部勢力との戦いの中で自然に淘汰される運命だ。
では、イサベルは?
『剣術を身につけられないビロティアンを果たしてビロティアンと呼べるのだろうか?自分の子どもだと言えるのだろうか?後継者だと言えるのだろうか?皇族だと言えるのだろうか?』
そして、
『21歳で死ぬだろう。』
胸が少し痛むような気がした。
『これはなんて理不尽で救いようのない考えなんだ。』
いずれにしても運命は決まっている。
ロンは「既に決まっていること」に大きな力を注ぐのは無駄だと思った。
『頭の中が複雑だな。』
こんな時は剣を振るのが一番だ。
皇帝の剣を受け取ってくれる者は多くはないのだから。
「陛下、人をこんな風に起こすなんてどこにありますか?」
「訓練だ。」
「この夜明けにですか?私、今日も夜勤だったんですよ!」
「20年前、お前が毎日やっていたことだ。」
20年前はそうだった。
ビアトンは剣の達人で有名な暗殺者であり、常に鋭い実戦感覚を維持するために、このような形式の訓練を行っていた。
「暗殺者は私の職業であり、陛下の職業ではないじゃないですか!陛下は正義で公明正大なビロティアンの……うわっ!」
ロンは横になっていたビアトンに剣を振り下ろした。
刃が震えるような真剣だった。
刃が二度きらめき、ベッドが真っ二つになった。
「鞘が長いな。」
「なんてことですか、こんな無遠慮に攻撃するとは!」
ロンは再び剣を振り下ろした。
「うわああ!この悪魔め!」
ビアトンは慌てて起き上がり、窓を開けて6階の部屋から飛び降りる。
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時間はものすごい速さで流れていった。
日はすっかり変わっていた。
「もう3年か。」
つまり、自分に残された21年の時間のうち、2年の時間があっという間に過ぎ去ったということだ。
短いといえば短いが、パーセントで言えば約10%の時間が経過した。
『残された時間も大事に使わなくては。』
ビロティアンの血を引いているだけあって、私の成長はとても早かった。
『日本で言えば、もう5歳くらいにはなるだろうか。』
子育ての経験がないため正確には分からないが、それくらいの年齢にはなっていると思う。
まだ言葉は完全ではなかったが、大人たちとの会話においてほとんど問題がないレベルだった。
もう歩いたり走ったりもできるようになっていた。
たまに転ぶことはあったが、身体が非常に丈夫で怪我をすることはほとんどなかった。
朝食を終えると、母がこう言った。
「今日からビアトン卿が来るわ。最初の先生だから、失礼のないようにしなさい。」
いよいよ皇女としての教育が始まるのか、といったところだ。
「ビアトン卿?副官のおじさんなの?」
「今はもう副官ではないんだ。」
何がどうなったのか、正確には理解できなかった。
もともとビロティアン家の皇族たちを教える教師はモリアム卿だ。
彼は最高の文筆家の一人で、セレゾ家出身の学者だった。
そして、彼はビロティアン皇帝と20年間の専属契約を結んでいる。
本来なら、私の先生もモリアム卿になるべきだった。
「それで、母上さま。」
「ええ?」
「どうして私はビアトン卿なの?」
「さあ。それはうちの娘がビアトン卿に直接聞いてみたら?」
「分かりました。」
私はビアトン卿がとても好きだ。
彼は子どもたちを扱う術を心得た思慮深い大人だった。
彼と過ごす時間はいつも楽しかった。
さらに、彼は魔法使いの家系出身の剣士で、いくつかの魔法も使えたが、私はその中でも「飛行魔法」が一番のお気に入りだ。
トントン——
ノックの音が聞こえた。
それはビアトン卿だった。
「本日より皇女様の教育を担当することになりました。」
「ビアトン卿!」
私は歓喜のあまり飛び跳ね、腰をかがめた。
ビアトン卿はいつも通り華やかな笑顔を見せてくれ、私はつい声を出して笑ってしまった。
3歳の私は、転がるようなイケメンを見て笑いを止められない年頃だった。
お母さんもビアトン卿を見つめて微笑みを浮かべた。
「ビアトン卿。皇女をよろしくお願いします。」
お母さんが外に出た後、私は尋ねた。
「どうしてビアトン卿が先生になったの?」
「皇女様は嫌なのですか?」
「でも本来はモリア卿が先生だったじゃない。」
「あぁ、分かりました!皇女はモリア卿だけが好きなんですね!」
ビアトン卿はまるで世界を失ったかのような表情を浮かべた後、手で顔を覆った。
泣き真似をしていたけれど、その様子がやけに真に迫っていて、胸が痛むほどだった。
「泣かないで。」
「皇女がぽんぽんしてくれたら泣き止みますよ。」
「トントン!」
私はビアトン卿の肩を軽く叩いた。
それに対してビアトン卿が答えた。
「もう泣きません。皇女さまがトントンしてくれたので、もう涙は出ません。」
「泣き虫だね。よくやった。もう泣いちゃダメだよ。」
「どうしてですか?私が泣いたらとても悲しくなりますか?」
「本当に泣いたら悲しいよ。」
再び言うと、今のはただの演技で泣いていたので、特に悲しくはないという意味だった。
「ははは。皇女さまは本当にお見通しですね。私の熟練した演技を見破るとは、簡単なことではありません。」
私は腰に手を当てた。
そして、今では体のバランスをうまく保てるようになった自身の成長に満足したように堂々と立ち上がった。
「モッテンバレット!」
「え?」
「やたらと難しい言葉を使わないでください、ビアトン卿。ダメですよ。」
「そ、それは……。」
「またそんなことしたら『悪いぽんこつ』って呼びますからね。」
「ぷっ、ぽんこつだなんて。それはあまりにもひどい侮辱ですよ。」
試験というには少し大げさだったが、とにかくビアトン卿は時々「英特」「熟練」「間隙」などの言葉を使った。
私がそれらの言葉を理解しているかどうかは曖昧だったが、なんとなく気づいていた。
私は微笑みながら言った。
「ビアトン卿。私は長く生きられないかもしれないので、そんな目で見たりしないでください。私はそんな覚悟で生きています。」
「……。」
「作文の試験を受けますよ。満点を目指しますからね。静かにしていてください。」
ビアトン卿は頭を一撃食らったような表情を浮かべた。
「皇女様。まさか死というものを理解されているのですか?」
彼の声は少し低くなった。
ビアトン卿は幽々とした方向を振り返った。
「一体どんな軽率な方が……。」
ビアトン卿の気配は深刻ではなかった。
私はふと、ビアトン卿の過去の異名を思い出した。
剣に取り憑かれた鬼神、剣狂だった。
「まさか皇女様にナルトビダルの呪いについて話されたというのですか?」
どういうわけか、薄ら寒い空気が漂ってきた。
幽々たる表情が微かに険しくなった。
死ぬのだろうか?
ルルカが悲鳴をあげる。
ビアトン卿の剣士としての威圧感は、一般人にとって恐怖そのものだ。
場合によっては失神する者もいるだろう。
ビアトン卿の目には薄暗い光が宿っていた。
「ビアトン卿はとても悪い人だ。」
その光が消えた。
「ビアトン卿は意地悪だ。」
その言葉にビアトン卿はぎょっとして振り返った。
イサベルの声が聞こえた。
「かんややかん シルダ。」
発音はさっぱりだったが、ビアトンはぴんときた。
さらには、「強悪弱強」という言葉はこの世界に存在しない単語だった。
「皇女様、誤解です。私は強い者には強く、弱い者には弱いです。」
「じゃあ、私には従うべきでしょ。なんで乳母に怒るの?」
ビアトンは少し考えた後、ようやく口を開いた。
「申し訳ありません、皇女様。」
「乳母には謝らないの?」
その言葉にビアトンはルルカの元に向かい、丁寧に頭を下げた。
どんな偏見のない人間でも、皇帝の側近に頭を下げることは実際には容易なことではなかった。
「すみません。無礼を働いてしまいました。」
「そ、その、それが……!」
乳母は大きく動揺していた。
イサベルは動揺する必要はないと考えた。
間違いを犯した人が謝罪するのは当然のことだ。
それは当たり前のことなのだから。
「これで許していただけますか?」
「嫌だ」
「な、なぜ許してくださらないのですか?」
「ビアトン卿が謝ったら、私は許さなければならないの?」
その言葉にビアトン卿は大きな衝撃を受けたような表情を浮かべた。
もちろん、少し大げさに演じている感は否めなかったが、衝撃を受けているというのは間違いないようだった。
『急所を突かれたな。』
その言葉は正しい。
彼が謝ったからといって、皇女であるイサベルが無条件に彼を許さなければならないというわけではない。
幼いイサベルは皇女として帝国で最も高貴な血筋の格を明確に理解していた。
彼女は真剣に考えた。
『あの見事な可愛らしさに目を奪われて一瞬忘れていた。この人もビロティアン皇帝の血を継いでいるのよね。』
微笑んだ。
「謝罪の贈り物として、木苺味のゼリーを差し上げましょうか?」
「……。」
「私には5個もあります。許していただけたら全部差し上げますよ。」
ビアトンはゼリーの包装を開けた。
甘酸っぱい木苺の香りが漂ってきた。
イサベルの鼻の穴が大きく膨らんだ。
「皇女様が怒りを解いてくださるなら、この木苺味ゼリーを贈り物にいたします。」
イサベルは負けたふりをして、短い手を伸ばした。
手のひらの上にゼリーが2つ置かれた。
もぐもぐ。
イサベルはゼリーを吸い込むように食べ尽くした。
「これで許してくださるのですか?」
「特別に許してあげるのよ。」
「ありがとうございます。」
「これからはやめなさい。」
こうして事態は収束に向かうこととなったが、彼は状況を正確に把握することにした。
「全部聞こえていましたよ。ナルビダに落印があるとか。誰が教えたんでしょう?」
イサベルは実際、「殺気」が何かを知らなかった。
しかしながら、ビアトン卿の目には殺気が満ちていることを感じ取ることができた。
「犯人を見つけたら、必ずお前を殺してやる」とでも言うような気配だった。まるで誰かがこう仕向けているかのように。
危険な香りが漂ってきた。
イサベルは正直に言った。
「山林の老婆。」
ビアトン卿は思わず吹き出した。
「まさか、あなたが生まれた時のことをおっしゃっていますか?」
「うん。」
「その時のことを覚えていますか?」
「うん。ママは泣いてたし、皇女が生まれたってみんなが大騒ぎしてた。パパは私に『お前は不要だ』って言ってた。」
生まれた時の記憶を持っているという事実が明らかになった。
実際にはありえないことだ。
しかし、偏見のない素直なビアトン卿は簡単に納得した。
「そうですか、本当にお辛かったでしょう。」
「うーん……。」
実際のところ、イサベルは出来事の直後にそれほど悲しくはなかった。
むしろ驚きと興奮が入り混じった気持ちでいたのだ。
父の言葉もあまりにも型にはまったものだったので、それを感慨深いと感じることはなかった。
だからこそ、彼女はただ淡々と答えた。
「大丈夫。」
実際にはそれほど傷ついていなかったイサベルが手を差し出した。
しかしビアトン卿の目には、手を取ってほしいと訴える愛らしい眼差しを送る幼い獅子のように映った。
その手の上にそっと自分の手を重ねた。
せめて温かさだけでも伝えたかったのだ。
「どうしたの?」
「え?」
イサベルは正確に覚えている。
ゼリーが5つあると言っていた。
そのうち2つはイサベルが食べ、1つは乳母が持っている。
ということは、まだ2つ残っているはずだ。
すべてあげると言ったのに、残り2つのゼリーを自分の手から渡すのがためらわれた。
「我慢できない!」
食べ物を賭けてふざけるなんて許せない。









