こんにちは、ちゃむです。
「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

62話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 謎の魔法使い②
高精度のトロッコに回転力を発生させた。
トロッコを引いていた人たちが驚いているのが見えた。
「え?本当に軽くなってる!」
「本当に軽いの?」
人々の視線が私に集まった。
彼らは本当に不思議そうに私を見つめていた。
「本当に魔法使い様なんですか?」
「じゃあ、見た目は変身してるんですか?」
質問が次々と飛んできて、私は少し困ってしまった。
なんと答えればいいのか悩んでいたとき、幸運にもヘクトルおじさんがまとめてくれた。
「さあ、魔法使い様にあんまりマゴマゴと質問ばっかりぶつけちゃだめだろ?礼儀が必要だ、礼儀。見た目が幼く見えるからってそんなに無礼にしていいわけがないだろ?」
その言葉に人々は静かになった。
その一言だけで、この世界における魔法使いの地位がどれほど高いかが伝わってきた。
みんな黙り込んだ中で、何人かが私に向かって「ありがとう」と言いながらこっそりお辞儀をしてくれた。
そして、それが正しいと思ったのか、多くの人が「ありがとうございます」と口にした。
「いえいえ、お役に立てたならうれしいです。」
人々は再び綱を握って引き始めた。
重い物がとても簡単に引けるようになり、人々の顔には明るさが戻ってきたのが見える。
私の魔法が本当に大きな助けになったみたいだ。
ああ、どうしよう。私、本当に役に立っちゃった。
ドキドキする。
私は少し浮かれて、早口になった。
「作業班長さん。トロッコに回転魔法を次々かけたらいいと思います。全部でトロッコはいくつありますか?」
「16台……あります。」
「じゃあ、すぐ終わりそうですね!」
「すぐ終わるって?」
「はい。すぐやります。それじゃ、他の作業もください。」
「他の作業も……やるんですか?16台のトロッコに魔法を全部かけるんですよ?」
「はい。そんなに難しいことじゃないですから。」
「そんなに……難しくないんですか?」
本当にそうだった。
私は16台のトロッコすべてに回転魔力をかけた。
「本当に……すぐやりましたね?」
ヘクトルおじさんは、私が本当に不思議に見えたらしい。
『まあ、魔法使いを見るのは簡単じゃないから、それも当然だよね。』
私はただ、そう思っただけだ。
自分のことを特別だと思ったわけではなかった。
そんな中、私は何かを見つけた。
「作業班長さん!私もやりたいことがあるんです!」
私の言葉を聞いたヘクトルおじさんは、驚きの表情で言った。
「それは本気ですか?」
「もちろんです!」
「それなら、そうしても構いませんが……。」
「魔法使い様がなんで……」
許可をもらった私はある現場へ駆けていった。
何人かの人たちが鍬で土を掘ったり、シャベルで作業をしていた。
『シャベル!やってみたかった!』
生まれてから一度もやったことがない。
作業班長さんが私にシャベルの使い方を教えてくれた。
『ああ、そんなに難しい動きじゃないんだ!』
ドキドキする気持ちで、私はシャベル作業を始めた。
前世では考えもしなかったことだ。
私のように弱い体の人間が、日差しの下でシャベルを使えるのは、健康な人だけの特権だったのだから。
ザクッ!
土の中にシャベルが突き刺さった。
「よいしょ。」
おお、思ったより面白い。まるで泥遊びみたいだ。
「よいしょ。」
作業班長は心配そうな表情で私を見ながら言った。
「掘り作業は初めてですか?」
「はい、今日が初めてです。」
「無理しないでください。思ったより大変な作業なので、体を傷めないように気をつけてください。」
「わかりました。気をつけます。」
……そう答えはしたものの、私は一掘りしただけで指や腕がずきずき痛み始めた。
日頃の鍛錬が不足していたのが露呈してしまった。
一方で、掘る作業はとても楽しかった。
自尊心が少し傷ついたものの、掘り作業は本当に楽しかった。
普通の人たちは素手で泥遊びをするだろうけど、私はビルロティアンの肉体を持っているのでシャベルを使っているだけで、本質的には似たようなものだった。
「……楽しそうに見えますね。」
「はい、楽しいです。」
「何がそんなに楽しいんですか?」
「ただ、痛みなく自分の体を動かせるってことです。息がこんなにハァハァ切れても、胸が全然痛くないんです。こんなに長時間日差しを浴びても、倒れないんですよ!えへへ。」
「いや、それは誰でもできる……」
おじさんは途中で言葉を止めた。
なぜか感動したような表情で私を見つめてきたが、泥遊びに夢中な私はあまり気にしないことにした。
「……本当にボランティアが楽しそうに見えるんですね。」
「はい、面白いです。」
「殿下はそんなに清らかな心をお持ちだなんて……」
私はおじさんの言葉を右から左に聞き流し、土を掘り続けた。
もともと楽しいことに夢中になると、他人の話はあまり耳に入らないタイプだった。
しばらくすると喉が渇き、私は冷たい水をぐびぐび飲んだ。
「わあ、冷たくて気持ちいい。」
キーン-
頭が少し痛んだ。
「くぅっ!」
遊んだ後に冷たい水を飲むとこんな味がするんだな。
突然冷たいものを飲むと頭が痛くなるって聞いてたけど、これがその感覚なのか!
私は新しいことを知った。
ゴロゴロ-
お腹もすいてきた。
『気分いい。』
こんな感覚は初めてだった。
体をめいっぱい動かしてお腹がすく経験は、これまでの人生で最高にワクワクするものだった。
でもこのワクワクする体験には、後で代償がついてきた。
「うぅ……」
その夜、私は筋肉痛になってしまった。
普段使わない筋肉をたくさん使い、ビルロティアンの肉体を信じて無理をしすぎた結果だ。
『急に無理しすぎたのかも。』
皇女としての特権のほとんどを捨ててここに来たけれど、わずかな間だけは王城の中で過ごしていた。
ラヘラ姉さんか、ラヘラ姉さんが姉と呼ぶ誰か、普段はそんなふうに呼んだことはないけれど、私一人で言うときはお姉さんと呼ぶことにした。
どうかそう呼んでくれと頼まれたからだ。
「でも……」
まるで雨が降っているかのようだった。
ポツポツ、ポツポツ──太い雨粒が窓を叩く。
ふと、私は恐怖に飲まれた。
「痛い。」
頭では分かっていた。
これはただの筋肉痛のような体調不良に過ぎない。
この体はもともと丈夫だから、2~3日たっぷり寝て食べればすぐに治るはずだった。
でもこれは単純な問題ではなかった。
「怖い。」
突然、体中が震えだした。
前世でのあの嫌な記憶が、部屋の中に押し寄せてくるようだった。
外から吹く風の音が、私にささやきかけている気がした。
お前は痛まなきゃいけない。
お前はもともと病弱な子だ。
夢から覚めろ。
今の人生は夢だ。
戻らなきゃいけない。
そんな考えに囚われると、あまりに怖くて涙がこぼれた。
『眠りたくない。』
ここで眠ったら、また病室に戻ってしまう気がした。
体がぶるぶると震えてきて、時間が経つほど恐怖は増していった。
『怖い。』
誰かがそばにいてくれたらいいのに、と思った。
この怖い考えを誰かが取り払ってくれたらいいのに。
「お願いです、誰か私を助けてください。」
『誰か……私を抱きしめてください。』
大きくて黒い手が私を包み込みそうになり、私は恐怖で体を縮めた。
その時、誰かが私をぎゅっと抱きしめてくれた。
甘い蜂蜜の香りがした。
『蜂蜜の匂い?』
ふんわりとした何かが感じられた。
「ブンブン」という馴染みのある音が聞こえてきた。
『蜂蜜?』
ブンブン──
蜂蜜よりも「海苔蜂蜜」を好む蜂蜜だったが、今日は特にそれには触れなかった。
ただブンブンという音を立てながら、私を抱きしめてくれた。
それは不思議な感覚だった。
とても大きくて恐ろしくて黒い手が近づいてくるように思えたのに、蜂蜜がその手を払いのけてくれた気がした。
『落ち着いて。』
私は蜂蜜をぎゅっと抱きしめた。
蜂蜜の毛並みはいつも通り柔らかくてふかふかだった。
ぶんぶん——
蜂蜜は「心配しないで」と言わんばかりに前足を上げて私の頭をそっと撫でてくれた。
不思議と怖い気持ちがだいぶ薄れていった。
私はしばらくの間、蜂蜜の胸元に顔を埋めて深呼吸をした。
言葉では言い表せないほど豊かな安心感が、私を穏やかな気持ちにさせてくれた。
『不思議だな。』
とても不思議だった。
体の感覚は相変わらずだったが、なぜかさっきほど怖くなかった。
もう一人じゃなかった。
「もう怖くない。ありがとう、ラーちゃん。」
ラーちゃんの頭の上に魔法の文字が浮かび上がった。
【ラーちゃん=勇気のアイコン。】
【勇気を分けてあげる。】
【イサベルはもう勇敢。】
私は軽く笑いながら言った。
『でも、ラーちゃんがこんなに大きかった?』
さっきまでは感じなかったが、自分よりずっと大きい気がした。
とてもとても大きな体のように感じた。
『そうだよね?』
落ち着いてよく見ると、やはりそうだった。
ラーちゃんは元の姿のままのラーちゃんだった。
体長は約70cm。
「そうだよね、ラーちゃん。さっきは70cmよりずっとずっと大きく感じたんだよ?」
[ラーちゃんの存在感は圧倒的だ。]
ラーちゃんはまるで人間のように、にこにこと笑った。
本当に不思議だった。
いくら私が解釈の魔法をかけたとはいえ、こんなふうにまで自分の意思を表現できる動物はいないだろう。
まさに天才だ。
【おお!ラーちゃんは強い。】
私はラーちゃんをまたギュッと抱きしめた。
さっきのように大きくは感じなかったけれど、ラーちゃんの体温は私を安心させてくれた。
ビロティアンの体の恩恵なのか、いつの間にか体の疲れはすっかりなくなっていた。
私はふと思った。
もし今日ラーちゃんがここにいなかったら、どうなっていたのだろうかと。
もしかしたら、私は実体のない恐怖に飲み込まれ、今夜一晩中怯えて震えていたかもしれない。
私はラーちゃんに本音を打ち明けた。
「私はラーちゃんがすっごく大切なの。」
ブンブン!
ラーちゃんはなんだか嬉しそうだった。
[共感。]
[イサベル大切。]
私はラーちゃんが好きで、ラーちゃんも私を好き。
どうやって出会ったのかはわからないけど、とにかくラーちゃんがいてくれて嬉しかった。
「わがままでずうずうしいお願いなんだけど、聞いてくれる?」
ブンブン!
どんなに無理なお願いでも構わないというような態度だった。
「私はラーちゃんより早く死ぬから。」
野生の平均寿命は8年だ。
でも、飼育されると平均寿命は24年ほど。
私が名前を付けたから、ラーちゃんは皇室の支援で管理を受けられるだろうし、そうなれば24年生きることもできるという意味だった。
『私はもう14年残っているから。』
だからラーちゃんが私より長生きしてほしい。
今日みたいに一人残されるのは本当に怖かった。
「ラーちゃんが私より長生きしてくれたら嬉しい。」
ブンブン。
ラーちゃんの毛がしょんぼりと寝そべった。
「約束したの?」
ブンブン。
「約束してくれてありがとう。その間は私のそばに必ずいてね、わかった?」
ブンブン!
私はもう一度ラーちゃんをぎゅっと抱きしめた。
足の先まで温かくなって、とても幸せな気分だった。
『いくら天才でも、本当に死の意味を正確に理解してるわけじゃないよね?』
まさかそんなことはないだろう。
ラーちゃんは私の気分にとても敏感だから、今は少し元気がなくなってるのかもしれない。
『それでも心はとても安らかだ。』
少しは利己的な約束だったかもしれない。
ラーちゃんはきちんと理解できていない約束だったかもしれない。
それでも分からない安心感が込み上げてきた。
「もう大丈夫な気がする。ありがとう、ラーちゃん。」
実はこの時、私は「当然の疑念」を抱いた。
どうやって私を正確に見つけてここまで来たのか。
そして明らかに小さいラーちゃんだったのに、どうして指の先まで暖かくなっていたのか疑問に思わなければならなかった。
私はこの時、意識はしていなかったが、寝床の端まで暖かさが広がっていた。
まるでラーちゃんが大きくなったかのように感じた。
安定感にどっぷり浸かった私は、そのあまりに当たり前の考えすらできないまま、深い眠りに落ちた。








