こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
今回は293話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
293話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 大切に築いた関係
寝所に行く道が今日に限って遠くに感じられた。
普段より少し遅い時刻だったからかも知れない。
アビゲイルは、ひょっとしてセイブリアンが眠っているのではないか、気をもんで中に入る。
セイブリアンは幸いにも起きていた。
しかし、彼の表情は重い錨のように沈んでいる。
「まだ寝ていなかったのですね」
「ああ、いらっしゃいましたか」
いつもならすぐに気配を感じたはずのセイブリアンだが、今日はずいぶん考え込んでいたようだ。
彼は後になって席を立ち、近づいてきた。
それから注意深くアビゲイルの頬にキスをする。
そのキスが今日に限ってむずむずした。
アビゲイルが目じりを曲げて笑うと、セイブリアンもいつものように微笑んだ。
「今日はちょっと遅く来たんですね」
「はい、ちょっと考えることがありまして」
セイブリアンはおとなしくアビゲイルを見た。
何を考えたのか気になるように。
この愛らしい顔が動揺に固まるのではないかtp、アビゲイルは苦笑いした。
しかし、むしろ今結び目を作った方が色々と良さそうだ。
彼女はためらいがちに口を開く。
「だって、この前ブランシュが誕生日プレゼントwp欲しいって言ったじゃないですか。それでちょっと.悩みがありました」
その言葉にセイブリアンの目が大きく開いた。
何かに殴られたような表情になったが、不快な様子ではない。
彼は慎重に口を開いた。
「実は私もその件で考えていました。ビビと同じような考えをしたのか分かりませんが」
「たぶん同じような考えだと思います」
同じ悩みをしていたという話に、アビゲイルは半分の安堵と半分の恐怖を感じた。
関係を持ちたいという気配は見せなかったが、セイブリアンがどのように感じたかは分からない。
数多い時間の間、大切に築いた関係をこのように台無しにしたくはなかった。
セイブリアンが拒否の意思を示せば、ただうなずこう。
そう考えているうちに、セイブリアンの静かな声が聞こえてきた。
「計算をしてみました。普通妊娠をする兆候が現れるまで時間が少しかかるので、ブランシュの誕生日までに合わせるには時間が少し迫っていますね」
「・・・え?」
その言葉にアビゲイルは戸惑う。
外国語でもないのに、どういう意味なのか理解できなかった。
そんな中、セイブリアンの碧眼だけが鮮明だ。
彼は視線を合わせ、一字一字刻んで話していく。
「今日から夫婦関係を持てば、ぎりぎりでブランシュの誕生日に間に合いそうです。もちろんビビが欲しがっているなら・・・」
遅ればせながら彼が何を言っているのか理解した。
手を握るだけでぶるぶる震えていた彼が子供を作ろうと言うなんて。
アビゲイルはその言葉に何と答えるべきか分からなかった。
ただただ、ありがたくて嬉しかった。
あなたにとってトラウマなのに私を許してくれるなんて。
アビゲイルが笑って口を開こうとしたその瞬間、お腹が霜でいっぱいになったような気がした。
セイブリアンの表情のためだ。
彼の顔にはときめきや喜びのような感情はない。
義務、不安、焦り。
二人がキスしたり、抱き合って寝る時とは全く違う表情。
書類を受け取って執務室に入る人のような顔。
認可を求めるような表情。
彼は「子供を作ろう」と決心した。
前と同じように。
その表情にアビゲイルは胸が張り裂けるようだった。.
寝室でこんな表情を見たくなかった。
二度と彼が苦痛の夜を経験しないことを願っていたのに。
彼女はしばらくじっとして、セイブリアンの手を注意深く握る。
彼の手は以前のように冷えていた。
「二番目の子供が欲しいですか?」
アビゲイルの声はただ静かだった。
短い沈黙の後、乾いた答えが出てくる。
「二番目を作るのもいいと思います。ブランシュも妹が欲しいし、王国の跡継ぎが一人だけなのはまた良い方向ではないですからね」
セーブルは機械的に話し続けた。
「後継を生産することは王の重要な義務の一つなので、遅くとも・・・」
「セイブリアン」
アビゲイルは静かに言葉を遮る。
セイブリアンは無表情な顔で彼女をじっと見つめた。
「正直、ブランシュが妹が欲しいと言っていましたが、私は気にしていません」
彼女の声と視線はただただはっきりしていた。
アビゲイルはブランシュを大切にし、愛しているが、子供を持つことは別の問題だ。
もう一つの幸せを得るために、彼のトラウマをかき分けたくはない。
アビゲイルは彼をまっすぐに見つめながら言った。
「殿下と私が夫婦関係を持つようになったら、それは子供を作るためではありません。私が殿下を愛していて、殿下ともっと触れたくて。ただその理由だけです」
子供を作るために関係を持つのはとても悲しいことだ。
すでにそれによって苦痛を受けた人が多いのではないか。
アビゲイルは慎重にセイブリアンの手に触れる。
心配と悲しみがにじみ出る手は冷たかった。
「だからブランシュの妹を作ってあげたくてそうしたのなら、私はしたくないです」
アビゲイルは、セイブリアンと一緒に眠る時は、ひたすら愛だけがあることを願った。
政治も、権力も、義務も、計略も寝所の外に追い出してしまい、ただ愛だけが宿ることを願った。
セイブリアンは無口だった。
アビゲイルは慎重に彼の領分に足を踏み入れる。
それから彼の頬をそっと包んだまま尋ねた。
「殿下は私としたいのですか?」
「・・・したいです」
「子供を持つためですか?」
「そうではありません」
「それなら、なぜ私としたいのですか?」
セイブリアンは慎重にアビゲイルに向き合う。
彼女の紫色の瞳は何の催促もなく、ただただ優しかった。
執務室のようだった寝室が、ようやく元の色彩と香りを取り戻したようだった。
セイブリアンは自分の伴侶の手を引き、その手などにキスをして口を開く。
少年のようにはにかんだ声が聞こえてきた。
「あなたを愛して、あなたともっと触れたいからです」
アビゲイルはやっと安堵したかのように微笑んだ。
そして恥ずかしそうに笑って小さくささやく。
「私も殿下を愛しているので、あなたとしたいです」
愛しているから。
ただそれだけが理由だった。
愛という言葉を聞くと、セイブリアンの瞳に数多くの色が色ガラスのようにちらついた。
幸せと喜び、感謝、愛らしさ。
世界で一番甘く輝く色だけを集めて彼の目に焼き付けておいたようだった。
彼は明るく微笑んだ。
夫婦は笑顔で見つめ合う。
いつものような穏やかで甘い空気が部屋を満たした。
彼は片手でアビゲイルの手を握り、残りの手で慎重に彼女の頬を覆う。
二人は軽く口を合わせた。
義務や目的なしに愛だけがあるキスはただ甘かった。
キスが終われば消えてしまうだろうか、2人はしばらくお互いを抱き合って唇を重ねる。
夢中でキスをしていたら、いつの間にかアビゲールはベッドの上に座っていた。
セイブリアンを眺めると、普段とは違って彼の視線が妙だった。
「愛してます、ビビ」
静かにささやく息遣いが耳元に響く。
熱い息がつくと体がひやりと震えてきた。
セイブリアンが過去のトラウマを払拭できたようで安心しました!
ブランシュの誕生日までに懐妊するかどうかは分かりませんが。