こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

384話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 記憶の色⑩
昨日は久しぶりに夢を見た。
それはアビゲイルの夢だった。
最後に夢の中で彼女を見たのはいつだっただろう。
それがいつだったのか、よく思い出せなかった。
私がここに来たばかりの頃は、夢の中で彼女をよく見たが、時間が経つにつれ、その頻度は次第に減っていった。
夢の中のアビゲイルはドレスルームに立っていた。
彼女はクローゼットの中をじっと見つめ、何かに執着しているようだった。
クローゼットの中には服があった。
美しく、華やかな服の数々。
誰もが喜んで身に着けるような服を前に、彼女の表情は暗かった。
その姿を見て、私は思わず過去の自分を思い起こしていた。
黒一色に満たされたクローゼットを見つめていた私。
服の重みを感じていた、あの頃の私。
「ああ、アビゲイルにもあそこには重みがあったのか。」
そんな考えがふと頭をよぎった。
「……本当に気に入らない。」
窓の外を一瞬眺めながら、昨夜の夢を反芻した。
そこに、ベリテの不満げな声が耳に入った。
日差しが応接室を薄く照らし、テーブルには私たち家族が座っていた。
アイクリーム、食事が終わり、お茶を飲んでいる時に、ふと気がつけば変な考えをしていた。
私は慌てて話題に耳を傾けた。
ベリテがため息をつきながら話を続けた。
「その子、自分が治療をしてあげると言っているのに、それが面倒だから来ないんだって。」
ランタナの火傷治療はベリテが担当していた。
何しろ、長年の傷跡であり、定期的な治療が必要な状態だった。
しかし、その治療をベリテが自主的に申し出ていたとは思いもよらなかった。
話し方はぶっきらぼうだが、彼女は心優しい子だ。
セイレンは静かにお茶を飲みながら言った。
「彼女にとって、その方が気楽だからかもしれない。」
「おい、私を軽んじているのか?」
ベリテが口を尖らせて言うと、隣に座っていたブランシュが驚き、目を丸くしてしまった。
「え? 私もそう思うよ。ランタナがベリテを楽に考えているから、ちょっとわがままを言ってるんじゃない?」
「そうなの? 聞いているとブランシュの言うことが正しい気がする。」
本当にブランシュは鋭いところを突いてくる。
セイレンは半ば感心した目でベリテを見つめていた。
でも治療を受けないなんて。
私にはわからないけど、彼女が結局来て魔法をもう一度かけ直してほしいと言ったのは、きっとその方が楽だからだろう。
イベルは私たちの話を聞きながら、夢中でアイスクリームを食べていた。
ブランシュが口の端に付いたクリームを拭いながら言った。
「それにしてもランタナがこの場所に落ち着いて本当に良かったです。もう一か月が過ぎましたね。」
そうだ、いつの間にか一か月だ。
私が怒り狂ってクロネバーグを訪れたのも一か月前だった。
話を聞くと、ケインと国王は今もなお苦しみの中で日々を過ごしているとのことだった。
いずれネレゲンにやってきて、ブランシュやランタナにひざまずき、謝罪でもするのではないかと予想している。
まあ、どのみち来たとしても会おうとしないつもりだったが。
たった一か月では足りないのだ。
「それにしてもレイヴンがランタナを話題にするなんて、少し驚きだね。」
ベリテがミルクティーを飲みながら言った。
それは明らかに甘い飲み物のはずだが、まるで苦い薬を飲んでいるかのように顔をしかめていた。セイベルも同じ反応をしていた。
「そうだね。ほかの誰でもなく、レイヴンがランタナを養子に迎えるなんて想像もできなかった。」
二人の話によると、現在ランタナはレイヴンと一緒に暮らしているらしい。
ランタナがネレゲンで暮らし始めてからいくつか問題があったが、その一つが保護者だった。
宮殿で暮らしていれば問題ないが、保護者がいないというのは少し困った状況だった。
8歳の子供を放っておくわけにはいかなかったのだ。
そのため、ランタナを養子に迎え入れる人を探していたが、意外にもレイヴンが養子にしたいと先に申し出てきた。
レイヴンがランタナと親しい間柄だったかどうかは分からないが、彼がにっこりと笑いながら答えたことを思い出した。
「[確かにランタナとは険悪な関係ではありません。ただ、まだ彼女を完全には信用しておらず、近くで観察しようと思っています。もちろん、保護者としての役割もきちんと果たしますが。]」
こういった人物にランタナを任せて良いのか迷ったものの、ランタナ自身もレイヴンを養父として受け入れる意志を示した。
「[他のやつらは善人ぶっていて気分が悪い。犯罪者には犯罪者同士が似合うってもんだ。]」
その話を聞いた後では、むしろこの二人が一緒にいるほうが良いのではないかと思えてきた。
実際、うまくいっているようだ。
「少し気になる点もあったが、意外にもレイヴンがランタナをしっかり育てているようだ。魔法も学んでいるし。」
「でも、その後を見守ってもいいのか…?」
ベリテは私の言葉を聞いても、まだ疑念を抱いている表情だった。
そんな中、ブランシュが明るい表情で答えた。
「実は、私たち二人は家族になるんですよ。レイヴンさんは私たちと教会の近くに住んでいて、結婚もしてないんです…」
レイヴンはその後、ひとりで住んでいた。
恋人を作ろうとはせず、私たちとは距離を取ろうとした。
それが、セイビルへの配慮からだった。
その反応には理解もしたが、レイヴンが一人で過ごしているところを聞くと心配になることもあった。
しかし、最近はどこかにランタナと一緒に出かけている様子を見て、少し安心した。
二人の間柄が微妙であることは言えなかったが、その時、遠くからノックの音が聞こえた。
ドアを開けた人はミラードであった。
「お茶をお持ちします。レイヴンとランタナからお知らせがあります。」
「はい、どうぞ。」
うん?二人が話しているのだろうか?
ブランシュの許可を得たその時、二人は部屋の中に入ってきた。
「失礼いたします。」
レイヴンは私たちとは関係ない人のように冷静に話を続けた。
セーブルの顔に一瞬、驚きが見えた。
それを見たブランシュも素早く口を開けた。
「お久しぶりですね、ミラードさん。何か用事ですか?」
「いや、ランタナが少し話したいことがあると言って………」
レイヴンは後ろに立っているランタナを一目見て、手を伸ばした。
その時、私はまるで厳格な父親のように感じた。
ランタナが前に出てきた。
そして、彼女は私たちの目を避けるように、何も言わず顔をうつむかせた。
「本当に……すみません。疲れて、伏せてしまいました。」
「え?ランタナ、今、罰を受けたのか?何でこんなに急に……?」
私は驚いて言った。
だが、ブルランシュも冷たい目でこちらを見ていた。
しかし、すぐにその表情が変わった。
感謝しているようで、喜んでいるようでもあり、ブランシュはその感情を顔に出さないようにした。
「私はすでに許しました。心配しないで、ランタナ。」
「ありがとうございます。」
「ランタナを許してくれて、ありがとうございます。」
レイヴンも感謝の言葉を述べたが、まだ何か言いたそうな表情をしていた。
後ろを振り返ると、ランタナが戻ってきた。
「それで、リリー……すみません。とんでもないことを言って。」
「……リリーを『とんでもない』と言ったの?」
その言葉に、セイブルの生気が一段と増した。
レイヴンの目も光を放っていた。
「ランタナ、そんなことを言ったのか?」
「それが……」
これまで作り上げた関係が危険なものになるかもしれない。
私はすぐに誤りを正すべきだと思った。
「私は大丈夫です。罰を受けますから!」
二人の間に一瞬の緊張が走った。
ランタナは私をじっと見つめ、私の手が動き出すのを見て言った。
「そして、手を差し出してくれてありがとうございます。心から。」
今日は少し違っていた。
実は、今日はそのような感覚をずっと持っていた。
口を閉じていたので、そんなことに気づかなかったが、心の中に流れ込んだ記憶、ランタナの言葉、そしてその表情に、昨晩の夢がよみがえった。
制服の前に立っていたアビゲイルは、無垢で無邪気な表情をしていた。
どんな笑顔も目の前に見せることのない表情。
「実は……初めて贈り物というものをいただいたんです。ありがとうございます。」
ランタナは少し笑った。
その顔は夢の中の顔に似ていた。
多少歪んでいたが、私の目には無邪気に輝いていた。
「そして、返すべきですね。皆さんが喜んでいただければ、何をしても構いません。」
その言葉に、ブランシュは微笑んだ表情になった。
少し考えてから、返事をした。
「少し考えたい時間が必要です。少しお待ちいただけますか?」
その言葉にレイヴンはすぐにランタナを連れて外へ出て行った。
一体何をさせようとしているのか?
その時、ブランシュが私たちに視線を向け、言った。
「私、提案したいことがあるんですが……。」
そう言ってブランシュは小さく微笑んだ。
セイブルとベリテもその話を聞き、しばらく黙ったまま視線を交わしていたが、やがて頷いた。
「リリーがいいなら、私もいい。」
「私もだ。義母さんもリリがいいなら、賛成するよ。」
そして私もブランシュの意見に同意した。
やがてブランシュは再び二人を呼び戻した。
ランタナは状況を理解していない様子で戸惑った表情をしていた。
ブランシュは真剣な顔つきで言った。
「ランタナ、やるなら何でもやるって言ったよね?」
「……はい。」
「じゃあ、ここに座りなさい。」
少し前、召使いがテーブルに椅子を運んできた。
そこには空席があった。
椅子は二脚用意されていた。
レイヴンは少し疑わしそうにその椅子を見つめ、ブランシュが口を開いた。
「そして、伯父様もです。」
「私もですか?」
「はい。伯父様も一緒にお茶を飲んでください。」
ブランシュはにこやかに笑いながら、二人を席へ招いた。
ランタナは椅子に座ったが、レイヴンはまだその場に立ったままだった。
「……私がこの場に座る資格があるとは思えません。私は自分の罪を背負っています。」
声には堅さがあった。
レイヴンが席に着こうとしないのを見て、セイブルが彼を見つめながら口を開いた。
「私はあなたを許せません。しかしリリーが許したからこそ、あなたはここにいるのです。女王陛下の命令に逆らうつもりですか?」
その冷静な言葉にもかかわらず、レイヴンの顔には困惑の色が浮かんでいた。
依然として席に座れずに戸惑っていると、イベラがレイヴンの袖口を引っ張った。
「レイヴン伯父様、ランタナ。イベラがこれをお渡しします!」
そう言いながら、イベラは二人の前にアイスクリームをそっと置いた。
イベラは無邪気に笑いながら、ほかの人々も彼が席に座るのをじっと待っていた。
レイヴンの唇がわずかに開き、すぐに閉じた。
その様子は、震えているようにも見えた。
彼は泣き出しそうな笑顔を浮かべていた。
「……ありがとうございます。本当に……ありがとうございます。」
その声には、抑えきれない感情がこもっていた。
レイヴンはようやく席に座り、もはや空いている椅子はなかった。
「なんだか不思議な気分だな。最初は一人で食事していたのに、その後はブランシュと一緒に座っているなんて。」
その後、セイベルとベリテが…。
孤独だった食卓に多くの人が訪れるようになった。
皆が静寂を保っている中、ベリテがランタナに向かって大声で言った。
「ねえランタナ、君、なぜ治療を受けないの?昔の傷だからって継続的に治療しなきゃいけないって知ってる?」
「……でも、どうせ先王妃様が魔法で治せるでしょう?」
「じゃあ、これからも義母様に頼るつもり?」
その言葉にランタナは少し動揺した様子で私の方を見た。
そして、アビゲイルに似た顔で慎重に尋ねた。
「……頼んだらダメですか?」
「大丈夫だよ。毎日来てもいい。」
「本当に?本当ですか?」
その瞬間、ランタナの瞳に光が差し込んだように見えた。
これまでいつも曇っていた彼の瞳が、今は輝いているようだった。
ランタナは嬉しそうな表情で言った。
「それじゃあ、毎日来ますね!」
そう言いながらランタナは笑った。
明るく笑うその姿は、普通の子供で、普通の人に見えた。
ランタナはそれでようやく緊張が解けたのか、ゆっくりとお茶を飲み始めた。
その様子は奇妙でも不自然でもなく、むしろとても自然に見えた。
ずっと前から、私はアビゲイルとこんなふうに座って話をしたいと思っていたのではないだろうか。
私は彼女と友達になりたかった。
姿形は大きく異なっていたが、彼女も私も同じ理由で命を落とした。
私たちは魂の双子だったのかもしれない。
私たちはそんなふうに遠回りをしてきた。
そして私は死んでようやく幸せになった。
でも、アビゲイルだって、今度こそ幸せな人生を歩んでほしい。
私のクローゼットが幸せな思い出でいっぱいであるように、君もそんな記憶を持ってほしい。
毎日私に会いにおいで。
毎日一緒に話をしよう。
毎日、新しい記憶を積み重ねていこう。
ランタナ、君の記憶がいつまでも幸せな色で満たされますように。
<完結>







