偽の聖女なのに神々が執着してきます

偽の聖女なのに神々が執着してきます【137話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【偽の聖女なのに神々が執着してきます】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載...

 




 

137話ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 分岐点:現代、そして4人の男たち④

暖かな風に、ヘリスの銀色の髪がふわりと揺れた。

先ほどよりすっかり気分が良くなったヘリスは、かわいらしいティーカップを手に、私とのティータイムを楽しんでいた。

「少し気分が良くなったみたいね?」

「はい、お母さま。」

ヘリスの頬にはうっすらと赤みが差していた。

魔王ディエゴから、どうしてこんな息子が生まれたのかと疑うほどに、素直で繊細な子だ。

しかし、ヘリスを見るたび、私はいつも考えずにはいられなかった。

「よく頑張ったな、アリエル。私の聖女よ。」

子を産んだあの日、不意に聞こえてきたディエゴの声。

「我らの子は、魔界の後継者となるだろう。」

到底受け入れられない言葉だった。

私は、子どもの運命は自分で選ばせるつもりだと言った。

けれど──こうして神殿で育てることが本当に正しいことなのだろうか……分からなかった。

もし将来、ヘリスが魔界の運命を選ぶことになれば、彼はあらゆる困難を自分の力で乗り越えなければならない。

そう考えると、今のように温室の花のように育てているこの環境が、むしろ子どもの未来を妨げるのではないか……そんな思いが頭をよぎる。

「……悩み、ありますか?」

ヘリスは私の表情を見て問いかけた。

本当に気付きが早い子だ。

「ヘリス、お父さまに会っていない日が長くなってきたわね。」

そう言うと、ヘリスの顔色が少し曇った。

ディエゴは、毎日そばにいてくれるレイハスや、毎日訪ねてくるキャス、政務で忙しい中でも顔を出してくれるカイルとは違う存在だ。

生まれつき人間とは異なる魔族。

そしてその頂点に立つ、魔王である。

魔界の仕事は絶え間なく、ディエゴが神殿に来るのは月に数回がやっとだ。

神殿を訪れるのは、彼にとっていつも容易ではなかった。

来るたびごとに、魔界の貴重な宝物を私やヘリスに贈って自分の気持ちを伝えようとはしているけれど……それでもヘリスにとっては、どうしても比較してしまうのだろう。

「……ぼくの父さまは、ほかのお父さまと違うんでしょうか。」

幼いけれど、その胸の奥には深い思いを抱えた子どもだった。

「そうね。あなたのお父さまは……本当に特別な方よ。」

それでもヘリスは、どこか元気のない表情のまま続けた。

「でも……ある人たちは言うんです。ぼくの父さまは“悪い存在”だって……怖いって。」

闇と光、そのどちらが世界を支配するか──そんな話を持ち出す人もいるのだろう。

「夜がなければ昼も存在しないように──お父さまも、果たすべき役割をしているだけなの。」

私の言葉に、ヘリスの瞳がふっと揺れた。

「お母さまは……そう思われるんですか?」

私はそっと子どもの背を撫でた。

そろそろ神官たちにも、無神経な噂を慎むよう言うべきだと考えながら、ヘリスに向き直る。

「あなたは半分人間、半分魔族。争いの狭間に咲く、平和の灯火みたいな存在なの。たくさんの人に、幸せを運ぶ子よ。」

「お母さま……」

「あなたもお父さまのように特別よ。とても大切な存在なの、ヘリス。」

ヘリスは胸がいっぱいになったように、ぎゅっとティーカップを握った。

頬には赤い色が滲んでいた。

しばらく考え込んでいたヘリスが、そっと口を開いた。

「ぼく……大きくなったら、お父さまみたいに強くてかっこいい人に……ううん、魔王になりたいんです。」

「そうか。」

「それから、お母さまみたいに、周りに力や生命力を与えられる……あたたかい人にもなりたいです。」

私は柔らかく微笑んで答えた。

「両方できるわ。だって、うちのヘリスはあたたかくて、素敵な子なんだから。」

私の励ましに、ヘリスは嬉しそうに一瞬だけ目を輝かせた。

けれど、その光はすぐに揺らぎ、視線が落ちる。

「でも……ぼく、メラニーみたいには強くなれないと思うんです。」

ヘリスより二つ年下のメラニーは──拳ひとつで兄のヘリスを吹き飛ばす。

走る速さだって、すでにヘリスより上だ。

カイルの血を受け継いでいるのだから、仕方のないことだった。

「強いって、力だけのことじゃないのよ。」

私はヘリスの胸に手を当てながら言った。

「ここが強い人こそ、本当の意味で“強い”人なの。」

「でも……メラニーは心も強いです。」

「お母さまから見たら、ヘリスも十分強いわ。あなたたちは皆、お母さまにとって世界でいちばん愛しくて、素敵な存在なんだから。」

内心、メラニーと比べてしまうことを気にしていたヘリスは、その言葉に少し肩の力を抜いたように表情をゆるめた。

子どもたちはそれぞれ違う個性を持っているのだ。

だからこそ、子どもたち一人ひとりの個性に合わせて育て、成長させるのは簡単ではなかった。

もし子育てに積極的に関わってくれる“お父さん”たちがいなかったら、もっと大変だったかもしれない。

「穏やかな午前だな。」

ヘリスに微笑みかけていたそのとき、背後から落ち着いた声が聞こえた。

振り返ると、こちらへ歩いてくるカイルの姿が見えた。

ヘリスは少し緊張した様子で、しかし礼儀正しく挨拶する。

「こんにちは、皇帝陛下。八柱の神の加護を。」

「うむ。母上と一緒にティータイムを楽しんでいたのだな、ヘリス。」

「はい。ぼく、もう飲み終わったので、そろそろ席を立ちます。」

ヘリスは立ち上がると、私の頬にそっと口づけた。

「楽しい時間をお過ごしください。」

外からは、ニスとメラニが遊んでいるらしいにぎやかな声が聞こえてきた。

ヘリスはそのまま外へ駆け出していった。

「……今日は午前の政務がないのですね?」

「あなたとティータイムを過ごすために、昨夜は徹夜したのだ。」

一年前、先帝が崩御し、カイルが皇帝として即位した。

帝国の頂点に立った彼は、国を安定させ平和に導くべく尽力し、帝国の力はかつてないほど強大になった。

神殿にも十分な自治権を与えたことで、神官たちからの支持も厚かった。

『帝国がこれほど平穏でいられるのは、すべて聖女様のおかげです。聖女様が四つの部門――王室、神殿、商業、財界――を束ね、調和をもたらしてくださったからこそ。これ以上に素晴らしいことが、果たしてあるでしょうか』

ふと、そんな重臣たちの称賛が思い浮かぶ。

はあ……。

最初は本当に、冗談にもならない話だと思っていた。

――四人の夫、などというものが。

「今日も……宰相の姿が見えませんね」

物思いに沈んでいると、隣に座るカイルが、そう声をかけてきた。

その言葉に、私は一瞬だけ、どこか苦い笑みを浮かべる。

「ええ。最近はお忙しいようです」

[芸術の神モンドは、無表情のままそれを見つめていた]

カイルはそれ以上追及せず、ほどなく話題を別の方向へと切り替えた。

「一週間後に、皇宮の狩猟祭が開かれる。大使館が出席するのは難しそうだから、君に出てもらえたらと思ってね」

キンステン山脈で催される皇宮狩猟祭は、神々への祝福を捧げるための、由緒ある年中行事だった。

私は穏やかに微笑み、頷いて応じる。

「もちろんです。ですが……まさか、今回も陛下ご自身が参加なさるのですか?」

慣例として、皇帝が狩猟祭に直接姿を見せることはほとんどない。

かつて私が彼と共に狩場へ入ったのも、彼がまだ皇太子だった頃の話だ。

――けれど、カイルは昨年も参加していた。

「セイン卿が、また何か言い出しそうですね。」

カイルは紅茶を一口含んでから、どこか思案するような視線を落とした。

「実は……」

そのまま、彼の唇が静かに結ばれる。

「皇宮で、穏やかではない噂が広まっています。」

「穏やかではない噂、ですか?」

胸の奥に、ぼんやりとした予感が浮かび上がった。

――まさか……あの噂のこと?

「だから、今回の狩猟祭で、その真偽を確かめるつもりです。」

私は表情を崩さぬまま、カイルにうなずいた。

「ですが……危険な事態が起こる可能性もあります。罠かもしれませんし。兵に調査させた方がよろしいのではありませんか?」

「いや。私自身の目で確かめたい。噂が単なる憶測でないのなら……必ず、私が直接動く」

その言葉に、私は一瞬だけ思案し、そして口を開いた。

「それでしたら、私もご一緒します」

カイルの眉が、わずかに動いた。

「自ら参加するつもりか」

少し前にエルス渓谷を浄化して以来、私の力を再び使う必要はなかった。

「はい」

「危険だぞ」

その一言に、場の空気が静かに張り詰めた。

「私が危険だと言うときは、意地を張らずに引いてください。それに、私に“危ない”と言われて、聞き入れない理由がどこにあります?」

少し強い調子になった私の言葉に、カイルは眉間にしわを寄せた。

「一緒に行こう、という意味で言ったんじゃない。」

彼が何を案じているのかは、はっきりと分かっていた。

「ソードマスターが同行するのなら、恐れることはありません。」

「まったく……昔と変わらないな。」

カイルは深く息を吐いたが、それでも私を一人で行かせるつもりはないようだった。

「昔、か……」

そう呟きながら、私はカイルを見て、少しだけ笑みを浮かべた。

赤い瞳が、静かに揺らめいた。

 



 

窓辺から差し込む陽光が、レイハスの白磁のような肌を照らしていた。

黄金のように輝く金髪も、伏せられた長い睫毛も同じだ。

椅子にもたれ、目を閉じるその姿は、まるで一枚の芸術作品のように見えた。

だが、その静寂は長くは続かなかった。

「うぇぇぇ……」

聞こえてきた泣き声に、レイハスははっとして眠りから覚め、ゆりかごの中の子どもを抱き上げた。

美しい金髪に、アリエルを思わせる淡いサファイア色の瞳を持つその子はぐずりながら泣いていた。

「えんえん……えんえん……」

レイハスは慌てて子どもを抱き上げ、あやし始める。

「いい子だ、レイン。」

しばらくそうしてなだめていると、やがて子どもの泣き声は小さくなっていった。

そのとき、そっと扉が開き、侍従の一人がレイハスと目を合わせた。

レイハスは「出ていけ」という合図を、視線だけで送る。

侍従は静かに扉を閉めた。

「お腹、空いたのか?」

レイハスの声を聞いたレインは、何もわからない無垢な目で、父親の顔をじっと見つめていた。

「お腹が空いたんだな」

レイハスの唇に、柔らかな微笑みが浮かんだ。

しばらくして、窓辺へ向かい粉ミルクを溶かしたレイハスは、レインに哺乳瓶を差し出した。

生後六か月になったばかりのレインは、小さな両手で哺乳瓶をぎゅっと握りしめる。

小さな口をもぐもぐと動かすその様子を、レイハスはしばらく黙って見つめていた。

「よく飲むな、いい子だ」

 



 

「このままでは、お倒れになるのではありませんか?」

老いた神官の言葉に、ドウェインは重い表情を浮かべた。

子どもが生まれてから六か月――大使は公の場に姿を見せず、ひたすら子どもに付き添い続けていた。

アリエルが育児を分担しようと申し出ても、聞き入れられず、彼は一日中赤子を抱き続けている。

侍女や乳母ですら、レイハスには容易に近づけなかった。

――何かあったに違いない。

赤子の誕生は神殿にとって喜ばしい出来事だったが、それ以上に、多くの者がレイハスのことを案じていた。

沈んだ眼差しで彼の部屋の扉を見つめる人々の間から、ひそひそとしたささやき声が漏れる。

しばらくしてアリエルが姿を現すと、ドウェインの表情がぱっと明るくなった。

「聖女様!」

「大臣は……?」

ドウェインは小さく首を振り、心配そうな顔で問いかけた。

「皇帝陛下がご退室なさったと伺いましたが」

「ええ、少しだけお茶を楽しまれてから、お戻りになりました」

「大使様も……今は、ここでこうしている場合ではないのでは?」

ドウェインが何を案じているのかは、よく分かっていた。

大使は神官たちの長であり、エリウムの象徴でもある存在だ。

その彼が公の活動を一切行わず、半年ものあいだ部屋にこもりきりでいるとなれば、周囲が不安の声を上げるのも無理はなかった。

「入っても、よろしいでしょうか?」

その言葉に、ドウェインは静かにうなずいた。

「もちろんです。少々お待ちください」

ドウェインは私を中へと案内し、二人きりの時間を持てるよう、そっと扉を閉めた。

よく眠ることで知られるレイハスの部屋には、やわらかく甘い香りが満ちている。

「……レイハス様。」

私の声に、窓辺でぼんやりと赤子をあやしていた彼が振り返った。

金色の髪と金の瞳、まるで天使が舞い降りたかのようなその容姿は、初めて会ったあの日から少しも変わっていない。

ただ一つ――胸を締めつけるほど、私を苦しめるものを除いては。

「アリエル。」

その美しい低音が、耳の奥に静かに染み込む。

私は彼のそばへ歩み寄り、そっと手を伸ばして、赤く充血した彼の目元をなでた。

誰が見ても疲れ切っているのが分かる様子だった。

それに、頬はこけ、全体的にやつれていて、痛々しいほどだ。

その理由は――レイハスの腕の中に抱かれている赤ん坊だった。

レイン。私の末の子であり、そしてレイハスの息子。

「朝ごはんは食べましたか?」

「ええ、もちろんです。アリエルは?」

「私もです」

そう答えたレイハスだったが、彼が朝食を終えて下げられた皿には、半分以上も料理が残っていたことを私は知っていた。

けれど、それ以上は問いたださなかった。

「レインは……」

レイハスは腕の中のレインを見下ろしながら言った。

「また眠ってしまいました。お昼寝を四回もしているみたいです」

「赤ちゃんは、もともと昼寝を何度もするものですから。」

「……でも、置くとすぐに起きてしまって……。」

レイハスの声の語尾が、かすかに揺れた。

「眠っている顔は、とても愛らしいのですが。」

レインはとにかく寝ぐずりの激しい赤子だった。

生まれた日から昼夜の区別がなく、レイハス以外の腕に抱かれると、喉が潰れるのではないかと思うほど泣き叫ぶ。

「それでも、一日中抱いているわけにもいきません。」

私はレイハスに向かって、赤ん坊を預かろうと手を差し出した。

だが、レイハスは小さく首を振った。

「……私の腕から離れると、すぐに目を覚まして泣いてしまうのです。」

その言葉には、疲労だけでなく、かすかな諦めと愛しさが滲んでいた。

「泣いたとしても……このままの状態を続けるわけにはいきません」

私の言葉に、レイハスの金色の瞳がわずかに揺れた。

その悲しげな眼差しを見て、胸の奥がちくりと痛む。

「レインの泣き声を聞くと、胸が締めつけられるんです。私も幼い頃、こんなふうに泣いていた気がして……」

「レイハス様。レインは……“レイン”です」

私はきっぱりと言った。

赤ん坊にとって、最も安らげる環境を整えるべきだという考えには、私も同意している。

けれど――ふっくらと肉付きがよくなっていくレインとは対照的に、日に日にやつれていくレイハスの姿を、これ以上見過ごすことはできなかった。

「それに、私はレインの母親です。この子を育てる責任は、私にも同じようにあります。」

その言葉に、レイハスの瞳がわずかに揺れた。

「私が抱いていますから。少しでも横になって休んでください。」

しばらく迷っていたレイハスは、慎重にレインを私の腕へと渡した。

レインは一瞬、眉をひそめたが、すぐにまた眠りへと落ちていく。

どうやら、胸の奥に残っていたレイハスの匂いが、安心材料になったらしい。

私にレインを託したレイハスは、どこか落ち着かない様子だった。

「さあ、休んでください。レイハス様。」

「……ですが……」

「お願いします。」

私の静かな懇願に、レイハスはようやく折れ、ゆっくりと寝台へ腰を下ろした。

彼はベッドに横たわり、どこか居心地が悪そうな表情で言った。

「……目、閉じて」

もう一度、静かに命じられてから、ようやくレイハスは目を閉じた。

私の腕の中で、レインは天使のようにすやすやと眠っている。

私はレインを抱いたまま、レイハスが腰かけていた椅子にそっと座った。

――ばさり。

レイハスは横向きになり、そのまま眠りに落ちていったようだった。

昨夜も、ほとんど一睡もしていなかったのだろう。

「……レイン。パパのために、何をしてあげるのが一番いいんだろう」

私は真剣に考えながら、ぽつりと独り言をこぼした。

今のレイハスは、どう考えても……産後うつの状態に近い。

軽い解離症状も見られるし、不安も強い。

――このまま放っておくわけにはいかない。

さきほど、私が入ってきた瞬間に涙をぬぐっていた姿は、見間違いではなかった。

 



 

 

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