悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す

悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す【84話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。 ネタバレ...

 




 

84話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 皇帝という名の怪物

思いもよらぬ本音を打ち明けたあと。

ユリアは、先ほどジキセンとの会話で確認した内容を、エノク皇太子とも共有することにした。これほど自分に信頼を寄せてくれる相手に、隠し立てすることなどできなかったからだ。

「リリカの力って、やっぱり『治癒の祝福』ではない気がするんです」

聖女の力が異常だなどと口にすることは、本来なら不敬罪に問われても文句は言えない。だが、これほど重大な問題であるにもかかわらず、エノクは軽々しく否定することなく、ユリアの言葉を真剣に受け止めた。

「ユリアがそう考えるなら、きっと何か理由があるのでしょう」

エノクの言葉に、ユリアの唇からふっと笑みがこぼれた。

彼女は自分が感じた違和感、ジキセンから聞いた話、そして今回の村での調査内容を順序立てて説明していった。

その話を静かに聞きながら、何かを深く考え込んでいたエノクが、ついに口を開く。

「以前、古代魔法に関する書物を読んだことがあるんです。帝国の現在の魔法体系とは、異なる視点で記されていたのですが……」

その書物には、プロムローズ公爵家に受け継がれる祝福の力だけでなく、帝国内の少数民族に伝わる特殊な術についても書かれていたという。

「生まれつき、相手に好意を抱かせる力ですか? しかも、その力を強めれば……魅了まで可能だと?」

話だけ聞けば、単に「誰からも愛される天性の魅力を持つ人物」という程度にも思える。

「もちろん、ただの逸話に過ぎないので信憑性は高くありません。ですが、ユリアの話を聞いていると、どうにも妙に引っかかるのです」

「そもそも、魔法や神聖力以外の力なんて、世間にはほとんど知られていませんから……」

そこでユリアは、ふと口を止めた。

「でも……少数民族とおっしゃいましたよね?」

幼い頃の記憶なので曖昧ではあるが、ある事実が脳裏をよぎったのだ。

リリカの母親は、どこかの少数民族の出身だと聞いたことがあった。ならば、いつもリリカの傍に寄り添っているあの男も、その一族の者なのかもしれない。幼い頃から知っていると言って、彼女を連れて現れたのだから。

「その一族に、何か秘密があるんじゃないでしょうか……?」

二人は、その『ホンハ一族』について調べてみることにした。

そして、呪術についての共同調査を進めることとは別に、エノクには本で読んだ内容から、ある仮説が浮かんでいた。

もしかすると――その呪術を打ち破る方法があるのではないか、と。

『ひとまず、呪術の件は今は考えないでおこう』

実のところ、エノクには今日、ある約束があった。

家族――皇帝ジェステラドとの面会だ。

ユリアに話した通り、エノクにとって父親は、もはや家族と呼べる存在ではなかった。思い出せる記憶もほとんどなく、母と兄を死に追いやった人物という負の印象があまりにも強かったからだ。

一方で、皇帝である祖父の存在は、少し複雑だった。

両親を亡くした後、皇帝は確かにエノクに気を配ってはいた。だが、その“気を配る”というのは、決して愛情深く世話を焼くという意味ではない。

それでも、父親よりは祖父との温かな思い出のほうが多かったのは事実だ。

幼い頃、膝に乗せてケーキを食べさせてくれたこと。まだ幼いエノクのために、即位後も自ら帝王学の指導書のようなものを書き残してくれたこと。

――お前が皇帝になった時、こんな混乱に巻き込まれぬよう、私の代で終わらせねばならん。

未来の皇帝となるエノクを、少しでも楽にしてやりたい。そんな思いがそこにはあった。

帝国に蔓延る根深い問題や、皇族同士の凄惨な争いまでを自らの手で解決してきた人物。しかし同時に、彼はどこまでも“皇帝”という怪物でもあった。

彼にとってエノクは、可愛い孫というよりも、まず何よりも「後継者」だったのだ。

――病気だからと甘えるな。皇帝はそうであってはならない。誰も信じるな。常に警戒を怠るな。

孫の前で、実の息子(エノクの父)を厳しく罵り、

――お前は父親のようになってはいけない。

と告げた。病弱だと知っていながら、自らの息子を容赦なく精神的に追い詰め、死に追いやった男。

おそらく、エノク自身も彼の基準から外れれば、いつか切り捨てられていたのだろう。皇帝にとって血筋とは、ただ皇位を継ぐための資格に過ぎなかったのだ。

『私の孫として可愛がるより、後継者として育てるほうが重要だったのだろうな』

彼は幼いエノクに、徹底して皇太子としての役割を叩き込んだ。子どもなら失敗して当然のことでも、皇太子には決して許されないと厳しく教え込んだ。

十代で戦場へ送り出された時も、そうだった。

――兵士たちにだけ無意味な死を押し付けるわけにはいかない。だからお前も行け。

貴重な後継者であるはずのエノクさえ、躊躇なく前線へ送った。自分もそうして育てられてきたからこそ、同じように接したのだろう。

だが結局、それで苦しんだのは皇帝本人ではなく、エノクのほうだった。

もちろん、皇帝なりにエノクを案じてはいたはずだ。それが“道具”としてであれ、“皇太子”としてであれ。だが、普通の祖父が孫に向ける無条件の愛情とは、やはり決定的に違っていた。

だからこそ、成長した今になって、エノクも迷うことがあった。

自分が“良き皇太子”でありたいと願ったのは。

認められたかった相手は。

「孫」を愛してほしかったジェステラドだったのか。

それとも、「皇帝」としてのジェステラドだったのか。

かつてのエノクは、その答えを見つけられなかった。

いや、今でもまだ分からない。

だが、ユリアと出会って、ひとつ気づいたことがある。

『脚を治してもらえなかったことを、悲しいと思えなかった』

ユリアは本当にすごい人だと思った。

あの淡々としていて、すっきりしていて、飾らない佇まい。

ユリアは時々、自分のことをそっけない人間だと言うけれど――そう見えるだけで、彼女は一度決断を下した後は、まったく迷いがなかった。特に錬金術ギルドや化粧品事業を始めてからは、その凛とした強さが際立っている。

あの凄惨な家族から受けた仕打ちを思えば、驚くほど強い人だった。

『私はずっと、過去に振り回されているのに』

完全に憎むこともできず、かといって愛することもできない。傷やわだかまりが、胸の奥に澱のように積み重なっていく。それなのに、自分が傷ついていることすら口にできなかった。

それでも……ユリアと出会ってから、エノクは少しずつ、自分の心を取り戻し始めているのを感じていた。

その日、エノクは皇帝ジェステラドの呼び出しを受け、皇宮へ向かった。

だが、彼が皇宮を訪れたのは、皇帝に指定された時間よりも少し遅れていた。ユリアが公爵邸にいると聞き、先に彼女へ会いに行っていたからだ。

「今が何時だと思っている?」

案の定、鋭い叱責が飛んだ。

エノク皇太子だけでなく、どの貴族や侍従であっても、皇帝の呼び出しに遅れる者などこの帝国にはいない。皆、皇帝の命令には即座に従う。その苛烈な性格を誰もがよく知っているからだ。

「用事があり、遅れました」

しかし、エノクの心は妙に穏やかだった。そのせいか、口から出た返答もひどく簡素なものだった。

そもそも今日、皇帝に会うのは正式な御前会議のためではなく、ただの私的な呼び出しに過ぎない。そして皇帝は、そんな私的な場ですら、いつも仕事の話ばかりを口にするのだ。

「……」

普段とは違い、遅刻したうえに少し反抗的な態度を取った自分に、どんな反応を示すのか気になっていたが――皇帝はただ静かにエノクを見つめるだけだった。

「それだけか?」

「陛下が当日に急にお呼びになるので、こちらも予定の調整に時間がかかったのです。前もって知らせていただければ、遅れずに済みました」

予想していたような、空が裂けるほどの怒声も雷鳴も落ちてこなかった。

「……」

エノクが淡々と言い返すと、皇帝は再び沈黙を選んだ。不満げに眉をひそめ、唇を歪めたが、それ以上は何も言わなかった。

『予想外すぎて、返す言葉もないのだろうか』

エノクが皇帝の機嫌を冷静に推し量っていると、やがて皇帝は本題を切り出した。

「今日お前を呼んだのは、他でもない。ユネトの件だ」

ある程度、予想していた話だった。

製薬事業は今や社交界だけでなく、国中で大きな注目を集めている。特に『発毛薬』の存在が広まり、国外にまで噂が届くのも時間の問題だった。

「すでに人々は薬の効果を理解している。今よりさらに利益を生み出すことも可能だ」

報告を受けた皇帝ジェステラドは、自らの孫を鋭く見据えた。

艶やかな金髪に、静かに伏せられた瞳。彫刻のように繊細で優雅、それでいて立ち居振る舞いには一切の無駄がない。誰もが彼を見て、“完璧な皇太子”だと口を揃える。

だが、その完璧すぎる孫は、決して本心を外に見せることがなかった。慎重な性格だと好意的に捉えてはいたものの、ジェステラドは時折、自分の孫が分からなくなることがあった。

そして最近は、なおさらだった。

「嫌です」

「……何だと?」

「ユネトの薬で、これ以上利益を追求するつもりはありませんと申し上げております、陛下」

エノクが皇帝の言葉を真っ向から拒絶したのは、これが初めてだった。

周囲で控えていた側近たちは、一瞬で凍りついた空気に息を呑んだ。その微かな音すら耳障りに感じるほど、場の空気は張り詰めていた。

「軽い気持ちでそんなことを言っているわけではあるまい」

沈黙を破ったのは、皇帝ジェステラドだった。

「もし戯言なら、今すぐ撤回しろ」

「まさか、皇帝陛下の御前で軽率な発言をすると思われますか。ひとつお聞きします。陛下は“強い国”とは何だとお考えですか?」

「何だと?」

あまりにも唐突な問い返しだった。

「今、私と問答遊びでもするつもりか? 強大な国力、屈強な軍隊、莫大な財力――それこそがお前が築くべき、強きフィオステ帝国だ!」

皇帝は、自分の言葉に異を唱えられることを何より嫌った。ただ黙って従うこと。それこそが、彼の望む臣下であり、後継者の在り方だった。

皇帝の怒気は、容易に人を震え上がらせるほどの威圧感を孕んでいる。老いてなお滲み出る覇気、剣を握ればなお強靭な肉体と、衰えを知らぬ膨大な魔力。

「まさか帝国民が薬を買えなくなることでも案じているのか? それが“強い国”ではないとでも?」

「陛下にとって、国とは何でしょうか」

だが、エノク皇太子は少しも怯むことなく、静かに、しかし毅然と口を開いた。

「私にとって強い国とは、弱く苦しむ人々を、どれだけ受け入れ支えられるか――それで決まるものだと思っています」

「甘いことを言う。あのプロムローズ家の……いや、今や貴族ですらないあの娘に感化されたのか? その女のせいで、心まで軟弱になったとでもいうのか……!」

「私が、誰かに簡単に流されるような人間に見えますか?」

エノクは、話題がユリアへ向かいかけたのを察すると、即座に本筋へ引き戻した。

「民がいるからこそ、国家が成り立つのだと私は考えています」

「ふざけるな! この国を築いたのは我が先祖であり、帝国を強大にしたのもこの皇室だ! それを、他でもない孫のお前が否定するのか!」

皇帝の怒声が室内に響き渡った。眉間に深い皺が刻まれる。

「ユネトを作り上げた功績は認めよう。だが、エノク・フィオステ。お前は皇太子である以前に、この帝国商団の代表でもある。利益を追求しろ。……いや、皇太子としても同じだ! その利益は最終的に帝国――そして私のために使われるべきものなのだから!」

本来のエノクなら、ただ黙って従っていたかもしれない。これまではそういう人間だった。皇帝の言葉を反論せずに受け入れることはあっても、国を治めるうえで確固たる独自の信念を持っていたわけではなかったからだ。

だが、ここまで真正面から反対したのは初めてだった。

ユリアと共にユネトを運営する中で、多くの人々の笑顔を目にしてきた。戦場や商団での仕事も嫌いではなかったが、病を癒し、人々が健康を取り戻して喜ぶ姿を見た時――生まれて初めて感じる感情があった。

それを一言で表すことはできない。けれどきっと、人々が“使命感”や“達成感”と呼ぶものに近いのだろう。

「エノク・フィオステ……」

普段通り礼儀正しく、命じられればすぐに駆けつける。それなのに、今日は指定された時刻より遅れて現れた。それだけでなく、目の前に皇帝がいるにもかかわらず、どこか反抗的な態度すら見せている。

――いや、本当に今日だけのことなのか?

皇帝ジェステラドは、エノクの芯が少しずつ変わってきていることを、肌で感じ取っていた。

「……軟弱な奴め」

それは、亡き息子に向けて、かつて何度も吐き捨てた言葉だった。

“父親に似ている”という意味を悟った瞬間、エノクの身体が初めてぴくりと反応した。

「そんな甘さでは、いずれ簡単に折れてしまうだけだ」

エノクの父は、繊細で神経質な性格の人物だった。厳格な皇帝に正面から逆らうこともできず、ただ苦しみ続けた末に精神を病み、結果として妻や子どもまで巻き込んで死へ追いやった男。

エノクが皇太子となってから成し遂げてきたことは、そんな「父とは違う存在である」という証明の連続だった。

それでも、皇帝にそう言われても、エノクは決して己の意思を曲げなかった。

「いいえ。この道を進むことこそが、私を本当の意味で強くすると確信しています」

二人が激しく言い争ったという噂は、驚きをもって瞬く間に皇宮中へ広まっていった。

そして、その不和の知らせを誰より喜んだのは――神殿、イバフネ教だった。

「ほう……」

「先日、フィオステ帝国内の各地へ新たな神官を派遣する費用について交渉していたのは、エノク皇太子でしたよね?」

セブリノ神官長の言葉に、その場にいた者たちの目が鋭く光る。

エノク皇太子と皇帝の考えは、明確に食い違い始めていた。その事実は、彼らにさまざまな思惑を抱かせるには十分だった。

「ですが、エノク皇太子は所詮、皇帝の代理人に過ぎません。最終的な決定権を持つ皇帝を説得できれば済む話ではありませんか」

「そうですね。しかも、あの年頃なら、精神的に神官に頼りたくなる時期でもあるでしょう」

「ジェステラド皇帝は厳格な方ですが、一度認めた相手には最後まで後押しする人物でもありますからね」

そうしてイバフネ教は、優れた話術を持つ者を皇宮へ送り込むことにした。表向きはエノクの体調管理を支える名目で、徐々に神殿と帝国との関係を深め直そうという狙いだ。製薬事業の影響もあってか、今のエノク皇太子は以前よりも遥かに取り込みやすい存在に見えたのだ。

だが――皇帝ジェステラドもまた、一筋縄ではいかない人物だった。

確かに最近、体調が以前ほどではないのは事実だった。だが、それは単なる老いによる衰えであり、神聖力を受けなければならないほど深刻なものではなかった。

「神殿が診に来ると言っているようですが……」

「普段は『神官が赴くなど恐れ多い』だの何だの言っておきながら、今回は断っても来るつもりか」

神殿の者たちにあれこれ詮索されるほうが、むしろ面倒だった。

「追い返しておけ」

「かしこまりました、陛下」

椅子にもたれた皇帝は、右手に持った薬の小瓶をじっと見つめた。

少なくとも、ユネト製の鎮痛薬は確かによく効く。頭痛が和らぐだけでも、かなり身体が楽だった。どれほど強靭な肉体と魔力を持っていようと、老いだけは避けられない。

かつては頭痛や軽い不調程度なら――そんな軽い不調ですら、以前は神官を頻繁に呼んでいた皇帝だった。だが最近は、皇宮へ神官を招くことを明確に控えている。

「ユネトを作ったこと自体は評価しているが……」

皇帝の声は、どこか低く沈んでいた。その胸中にあるのは、孫への苛立ちか、それとも別の懸念か。皇宮の空気は、新たな嵐の予兆を孕んで静まり返っていた。

 



 

 

  • リリカの力への違和感と「ホンハ一族」への共同調査

    ユリアはリリカの「治癒の祝福」が本当は相手に好意を抱かせる「魅了の呪術」ではないかという仮説をエノクに共有します。エノクも古代魔法の書物からその可能性を肯定し、リリカの母親の出自である少数民族「ホンハ一族」について二人で調査を進めることにします。

  • エノク皇太子と祖父・皇帝ジェステラドの決定的対立

    エノクはユリアの存在に感化され、これまでの「完璧なだけの後継者」から脱皮しつつありました。私的呼び出しに遅刻したエノクは、利益を追求しろと命じる皇帝に対し、「強き国とは弱き人々を支えられる国だ」と自身の信念を真っ向から主張し、初めて皇帝の命令を拒絶します。

  • 皇宮の不和を好機と捉える「イバフネ教(神殿)」の暗躍

    皇太子と皇帝の激しい言い争いはすぐに皇宮中に広まり、関係悪化を察知したイバフネ教の神殿側は、体調管理を名目に皇宮へ入り込み、再び帝国への影響力を強めようと画策し始めます。

 

 

 

【悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。 ネタバレ...