こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

30話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 温室③
ユリアはくすっと笑った。
何だかんだ言っても、やはり才能あふれる彼らの成長ぶりは加速していた。
セリアンは元々が秀才気質なのである程度は予想していたが、弟のフローレンスまでこれほどとは思わなかった。
『最初はただの臆病者のようだった目つきが変わってきた。』
野心に満ちた光が宿っていて、心に引っかかった。
最初はただおどおどしているようにしか見えなかったのに。
けれども、体にいい生野菜を食べさせ、よく眠れるベッドで寝かせたのに、なぜあの目で自分を見るのだろう。
『私が殴った?暴言を吐いた?』
ただ精霊術の練習をさせただけなのに。
社員の成長のためにここまで親切に教育する経営者がいるなら出てこいって!
「何よ。私が間違ってる?」
「…いいえ。」
ユリアは顔をしかめた。
なぜ自分を見てバイトがブラックバイト先長を見ているような目をするのか理解できなかった。
「結局は君たちのためなんだけどな…はあ。最近の子はほんとに甘いんだから。」
「……。」
「君たちが一定レベルに達したら、そのときは口ごたえくらい許してあげるよ。それまでは私を助けなきゃね。」
「…本当に?」
「なんで?私のこと信じられないの?今まで言ったことは全部守ってきたでしょ。」
しかしその言葉を聞いた兄は、かえって不安になってしまった。
そしておそるおそる反応を返した。
「…今は少し休ませてくれるなら。」
「じゃあ今日は訓練じゃなくて、別のことしてみる?」
「…本当に?」
兄は戸惑った表情だったが、ユリアはこのくらいなら実戦に投入してもいいと判断した。
そして作物を再栽培するための土地へと兄たちを連れていった。
「さあ、見て。」
三人がたどり着いた場所には、壮大な広さの温室が広がっていた。
ユリアは誇らしげな表情でセリアンとフローレンスに話しかけた。
「気候変動の影響を少なくして、いろんな作物を再配備できるの。この場所で作りたいものがたくさんあるんだ。」
「…これ、君が作ったの?」
「そうだよ。私の夢なの。すごいでしょ?」
返す言葉が見つからなかった。
ユリアの言葉にはいつも少し皮肉が混ざっていたセリアンだったが、壮大に広がる土地、体系的に設置された壁たち…。
その間に、ユリアが話していた未来に育つ作物が重なって見えた。
間違いなく、以前にはなかった光景だ。
『これが完成したら…大きな変化が起こるだろうな。』
セリアンの言葉が詰まった隙に、フローレンスは素直に感嘆した。
「わ、すごいです。こんなこと、考えもしませんでした。ここに何を植えるつもりなんですか?」
「実は、君たちが今日来ると分かっていたから、すでに準備はしておいたの。」
少し説明したユリアは、感嘆に浸っているフローレンスに自然と仕事を任せた。
「さ、水の精霊を使って水をやって。あ、もちろんただあげるだけじゃだめよ。前に読んだ本、覚えてる?あれに書いてあった通りにすればいいから。」
「え?」
「いつまでボーっとしてるの?私が精神術だけじゃなくて、植物についてもちゃんと教えてたでしょ?」
「そうでしたっけ…?」
「もちろん私が成長の祝福でうまく育てているけど、多くの作物を再配備するには限界があるの。管理するのはあなたたちの役目よ。」
「いや、それはちょっと…。」
「まあ、最初は大変だろうけどね?」
ユリアは自然な動きで要約本を取り出して資料をフローレンスに差し出した。
『要約本って?』
分厚い書類の束を受け取ったフローレンスの手が、裏切られたように震えた。
それでも、ユリアはフローレンスの前で力強く拳を握って見せた。
「勉強した成果を見せて!ファイト!」
そう言った。
ビニールハウス、ガラス温室と比べると長所もあって短所もある吸壁温室。
それを完璧にするのが精霊士の役割だ!
「いや、それでも何もない土地で精神術だけでどうにかすることになったかもしれないのに。温室が建っていて本当に良かったよね?でしょ?」
君は補助の役だけやっていればいいんだから、とユリアは明るく笑った。
「あなたのやることは温度の調整。急に雨が降ってきたら防いで、鳥の攻撃も防いで。まあ、それくらいのことじゃない?」
嘘だ。
その「温度の調整」ということ自体がとても難しかった。
初めにユリアが渡してくれた要約書に書かれている内容だけでも、風向きによる気温の変化、壁との距離に応じて植える作物、維持しなければならない水分量などが詳細に書かれていた。
『これのどこが補助役だよ!』
もちろん温室のおかげで温度と湿度の調整はかなり楽にはなったが、この広い土地の作物の世話をするのは――塀も壁もなしで生で管理しようとしたら死ぬかもしれないけど!それでも!
フローレンスの魂が抜けていく様子を見て、セリアンは慌てて口を挟んだ。
「なあ、俺も一緒に行くってのはダメか?」
「うーん、そうね。でも私、護衛騎士も必要なのよ。どうせあの方面は体力のあるあなたの方がいいでしょ?精霊術を使うとはいえ、子供を護衛騎士として連れて歩けば少しは見栄えもするし。若い女だからって見下す視線もあるだろうし。」
「俺が…護衛騎士?」
「そう、セリアンは私の護衛。フローレンスは作物の環境担当。」
それを横で聞いていたフローレンスの瞳が揺れた。
いっそ護衛騎士として隣でついて回る方が気楽かもしれなかった。
「最初は心配してたけど、むしろセリアンよりフローレンスの試験結果の方が良かったんだよ。なんでだろう? 吸収が早いんだ。もう何回か試験してみたらいいと思うよ。」
「試験」という言葉にフローレンスの顔から血の気が引いた。
彼は震える手を引っ込め、隣に立っていた兄の体を揺すった。
「に、兄さん……」
「……」
「じゃあ、環境が変わって作物の状態が良くなかったら……フローレンス、お前が責任取るってこと?」
しかしセリアンは、その切実な視線を避けた。
兄弟の間に初めて亀裂が入った瞬間だった。
「責任の取り方は楽しみにしてるよ。ふふ。」
もちろん主人として仕えるなら、温かくて親切なリリカの方がいいかもしれない。
でも、私が早い段階で二人の兄弟を連れてきたおかげでフローレンスは健康に生きているし、セリアンは愛する弟を失う苦しみを味わわずに済んだじゃない。
「奴隷を連れてきて勉強させて、食べさせて寝かせてあげて…はぁ、正直あなたたちって勝ち組じゃない?こんな主人いる?」
今よりももっと尖っていて人間を信じられなかったあの頃なら、寛大なリリカが現れて心を開いたかもしれないけど、ユリアは特にそうしたいとは思わなかった。
『ただ弟を失った傷を癒して、元気に暮らせばいいじゃない?』
私には攻撃だけ防いでくれて、作物だけしっかり育ててくれればいい。
ユリアは薄く笑った。
「あとで私の事業がうまくいったら、君たちに給料をあげるよ。」
「誰が奴隷に給料なんてやるんだ 嘘つくなよ!」
「もう少し待って。1期メンバーの君たちには、しっかり待遇してあげるから。」

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