乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する【１１７話】ネタバレ

その日の夜、ダリアが夕食と入浴を終えて簡単な部屋着ワンピースだけを着て部屋に横になっている時だった。

とんとんとん。

窓からまるで雨粒が窓を叩くような音が聞こえてくる。

最初は聞き間違えたかと思って無視したが、一定のリズムで音は聞こえ続けた。

f何だろう？」

結局、ダリアは立ち上がって窓際に向かう。

そして、自分も拳で窓を同じように2回叩いた。

まるで返事のように再びノックが帰ってくる。

ダリアは首筋に鳥肌が立った。

「私の部屋は3階なのに・・・」

どうやって、誰がこの窓を叩いているの？

「ゆ、幽霊じゃないよね？」

幼い頃に読んだ幽霊物語集のエピソードのいくつかが頭をよぎる。

「いや、鳥だよ。それとも雨が降ったり・・・」

しかし、もしや、もしやという気持ちが。

「誰かいますか？」

「私だよ、ダリア」

「キャー！」

本当に、本当に声が聞こえてきた。

ダリアは驚いて後ろにしりもちをつく。

「ダリア？大丈夫？何かあったの？」

当惑した声が聞こえてくる。

その声の主はドアを開けることもできず、外でずっとためらっていた。

今になって聞いてみると、聞き慣れた声だ。

しかし、この状況で本当に、本当に予想できなかった声でもある。

ダリアは驚いて自然に高くなった声で問い返した。

「セ、セドリック様？」

窓の外に影が落ちる。

その影を見ただけで、ダリアは彼が誰だか分かった。

セドリックで本当に正しかった。

彼はダリアのように驚いた声で言った。

「ごめん、驚かせるつもりはなかったのに」

「いいえ、大丈夫です。しかし、常識的に3階で誰かが窓を叩いたら、皆驚くでしょう」

そんな中でも言うべきことは言う自分の口に驚いた。

セドリックの申し訳なさそうな笑い声が聞こえてくる。

「ごめんね、本当に。もしかして怪我した？」

ダリアはそっと立ち上がり、骨盤に触れてみた。

幸い、尻もちをついたところにカーペットがあって、それほど痛くはなかった。

「大丈夫です」

「本当にごめん。様子を見たいけど、許可ももらわなくて中に入ることはできないから・・・」

「だからどうして正門から来ないで・・・」

「早く会いたくて。本当にごめんね」

全く想像もできなかったタイミングに正面から入ってくる直球だった。

部屋の中の温度が高くもなかったのに、ダリアはつい暑くなってしまう。

（そろそろ慣れる頃じゃない？）

そう思って、ダリアは自分のワンピースをちらっと見下ろした。

透けて見える服ではなかったが、客を迎えるのに適切な服装ではない。

もちろんそのお客さんが正門ではなく3階の窓から入ってきたんですけれども。

ダリアはめっきり肌寒くなった天気に合わせて椅子にかかっていた毛布を体に巻いて窓を開ける。

セドリックは月に背を向けて空中に立っていた。

雲一つない中、きれいな半月が浮かんだ日。

影のような木の葉と木の枝が青黒い夜空を横切っていた。

セドリックの顔の半分は月明かりで白く、半分は逆光で暗くなっている。

しかし、彼の顔は輝く方であろうとなかろうと、幸せそうに目を輝かせながら笑う姿だった。

彼は窓から近づいてきて、腕を伸ばしたまま両手で窓枠を掴んだ。

ダリアはこの前も感じたが、いつの間にか彼の肩がもっと広くなったという考えをした。

背も普通の成人より高く、闇の中に隠された彼の体は一見大人のようだ。

しかし、彼を長く見ていると、まだ幼い表情とまだ硬くなっていない、少年と青年の境界線にいる体を見ることができた。

いつも大人のようでみんな知っているようでも、セドリックはまだ19歳。

ダリアの前世なら大学生になったばかりの年齢。

彼は本当に青春のようにきらめきながら笑っていた。

ダリアはぼんやりとその微笑みを眺め、なぜか乗り物に乗った時のように、心臓が少し下に落ちるように浮き上がる気分を感じた。

この人はひたすら自分の前でこんなに笑ってくれる。

彼女は震えないように声を整えながら言った。

「お入りください」

「いや、ここにいるよ。ただ顔が見たくて来たんだ。少し後でまた戻るから」

セドリックはかすかに微笑んだ。

夜によく似合う低くて柔らかい笑みだった。

「お母さんの件は無事に終わりましたか？」

するとセドリックはダリアが見慣れないほどもっと明るく笑う。

彼は窓のところに腰を下ろし、ダリアを見下ろした。

「うん、驚くほど。だいぶ良くなったし、喜んでいたよ」

「よかった」

ダリアはため息をつき、胸をなでおろす。

うまくいくと思ったが、それでも胸の片隅に心配が残っていた。

彼女は安心してセドリックを見上げて微笑んだ。

「それでは今日いらっしゃったのは、私に良い知らせを伝えるためにこんなに早くいらっしゃったんですか？」

それなら本当に嬉しいことだ。

しかし、セドリックは答える代わりに、にっこり笑いながらダリアの顔を長い間見下ろしていた。

顔が赤くなりそうだったが我慢する。

暗闇に半分隠れている彼とは違って、ダリアは室内にいて少しでも顔が赤くなれば、気が利くセドリックはすぐに気づくだろう。

今更のようなことでもないが、それでも恥ずかしかった。

「それもあるけど、他の用事もあるんだ」

「何ですか？」

「あなたに告白したいことがあって」

ダリアは心臓が張り裂けそうになる。

「どういうことですか？」

「愛の告白ではない。そしたら君がまた不便に思うだろう？」

「あ・・・」

今度は感嘆詞を止めることができなかった。

セドリックはいつものように「君の空虚な考えをすべて知っている」と笑う代わりに、うれしそうに微笑んでいた。

そうするうちに突然片方の手の甲でダリアの頬と額をなでながら優しく目を閉じる。

「私には君が全部初めてだった。その話をしたかった」

「・・・」

「ヒーカンとあなたが離れる時・・・私はあなたから．一度も感じたことのない強い感情の波動を感じた。誰かを守りたいという意志を」

ダリアは彼の冷たい手が届くたびに、上がった熱気を冷やすのを感じた。

彼女は彼の髪がそよ風になびいているのを見ていた。

彼もダリアの目を見ていたし、お互いが近くて、ダリアは少しだけつま先立ちをしても彼の瞳の中に映った自分まで見ることができそうだった。

セドリックは静かに話を続ける。

「悪意はいつも手に触れるように近いが、好意と愛情は目つきと手振りを通じてのみ分かるほど遠かった。悪意が近いだけに善意は遠く感じられた」

「・・・」

「でもあの日、落ちる君を見た瞬間から私の世界は変わった。人間の好意と愛情を、目つきと手振りではなく、直接心対心で感じることができたから・・・」

彼の声はだんだん遠くから聞こえるように小さくなった。

しかし不思議なことに、彼の感情だけはなぜかもっと身近に感じられる。

彼の手がゆっくりとダリアの額から離された。

「そして今日、お母さんが実は私を愛していたということを、とても長い間そうしていたということを知った」

「・・・あ」

「君がいなかったら、永遠に私は知らなかっただろう。なんかそんな気がする」

ダリアは首を横に振る。

なぜか否定したかった。

原作の彼のことを考えると、そうではないことは知っているけど・・・それでも。

「そんなことないですよ。明らかに、愛する心があれば、いつかは通じます」

セドリックはなんだかふざけて笑った。

「君は本当にいつも言いたいことを全部言うんだね。うん、そういう点も好きだよ」

そんな中でも、セドリックの台詞の実力が日増しに増えるという気がした。

彼女はこぶしを握りしめ、唇をかみしめながら恥ずかしい思いをこらえる。

「もしかしたら、私の特別な能力に関することなんだけどね。好意も悪意のように経験すればするほど、ますます感じられる敷居が低くなるのではないか？実際の人と人を接する時のように」

「・・・」

「そうだったらいいな」

セドリックはなんだか寂しそうに笑う。

ダリアは原作の彼のことを考えた。

一生何の救いも得られず、死ぬ前にも何の未練もなく眠るように死んでいった彼を。

彼女は窓枠の上の彼の残りの片手に両手を重ねる。

セドリックは手が大きいので、そうしてこそやっとダリアが完全に覆うことができた。

彼女はその手に力を入れてセドリックを見つめる。

「セドリック様がそうしてほしいとおっしゃったので、きっとそうだと思います」

「・・・ありがとう」

セドリックは笑顔で残った手をその手に重ねた。

誰でも男の手ということが分かるような、長くて節が目立った手が手の甲の上に覆われると、訳もなく気分が変だった。

彼は何度かダリアの手の甲を親指で掃いて、なぜか慎重な口調で話す。

「あなたは私にとって大切な人だよ、ダリア・・・友逹、そう、友達だよ」

「・・・」

「これからも私のそばにいて、ダリア。必ずそうしなければならない」

「はい」

ダリアもうなずいた。

ずっと込み上げてくる心のせいで表情調節がうまくできなかったが、それで彼女が今どれほどバカな顔をしているのか分からなかった。

彼はゆっくりと手を取り込んだ。

「遅れたのに何も言わずに急に来てごめんね。私はもう行くよ。私もこっそり出てきたんだ」

「・・・はい」

「あ、忘れて言わなかったことなんだけと、毛布可愛いよ。寒いから窓は閉めて行くよ。おやすみ、ダリア」

彼はにっこり笑った後、手振りで窓を再び閉める。

たぶん窓の後ろにまた消えたんだろう。

ダリアは窓を開けて彼がどこに行くか見るか悩んだ末にやめた。

余計に思い出しそうで。

その夜の奇妙な訪問はそうして終わった。