こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
今回は333話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
333話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 魔女狩り
「姫君は見つかったか?王妃はどうだ?」
「どちらも見当たりません!」
松明が森の闇を切り裂いていた。
松明を持った兵士たちが慌ただしく森を駆け回り、声を張り上げてブランシュの名前を叫んでいる。
「嘘だと言ってくれ、王妃が姫君を連れ去るなんて!」
「魔女が幼子の肝を奪うだなんて・・・」
「早く姫様を探さないといけない!」
王妃が脱獄してからそれほど経たずに、ブランシュ姫が行方不明になったという知らせが宮殿中に広まる。
姫を世話していた侍女が混乱した状態で発見された。
やがて正気を取り戻した侍女は、アビゲールがブランシュを攫い逃げたと証言したのだ。
「この方向に向かったと言っていたけれど・・・」
「絶対に姫様を見つけ出さないと!」
捜索隊が手にした松明は、まるで魔女の火刑台の炎のように激しく燃え盛っていた。
一方、少し離れた空き地ではギデオンがその様子を静かに見守っていた。
ブランシュの手を掴んだ感触がまだ熱を帯びているかのように感じられる。
あの頑なだった姫がこれほど反抗するとは思いもしなかった。
『私の言葉を信じないつもりか』
童話の中の出来事のように順調に進むと思いきや、またしても誤解が生じてしまった。
しかし、結末は必ずや元の計画通りに進めなければならない。
そのためには、魔女が必要だった。
彼は空を見上げる。
月の位置を確認すると、指定された場所が近づいているのが分かった。
舞台は整い、あとは役者が揃うだけ。
彼は狩人でありながら同時に王子の器を持っていた。
そして、王妃は・・・。
「ギデオン・マクラウド!」
その時、怒りに満ちた声が夜の静寂を切り裂く。
振り返ったギデオンは微笑んだ。
そこには最後の役者が到着していた。
監獄を脱走し、全身泥まみれで森を彷徨ったアビゲイルは、すっかりボロボロになっていた。
木の枝や草に擦れた傷が彼女の体中に残っており、髪は乱れ、足元には血が滲んでいた。
誰がブランシュを攫ったのか、どんな目的なのかもわからないまま、彼女はここにたどり着いた。
そして、ギデオンを目にした。
その瞬間、彼女は本能的に目を覚ました。
紫色の瞳が地獄の炎のように輝いた。
アビゲイルは両目を怒りで燃やし、叫び声を上げた。
「私の娘はどこ!」
彼女の全身から魔力が溢れ出していく。
まるで扉が開き、水が噴き出すかのようだった。
魔力の影響なのか、息が止まったように胸が苦しくなったが、ギデオンは冷静に口を開いた。
「当然だろう? あなたは知っているはずだ。ブランシュを攫ったのはあなたなんだから」
「馬鹿なことを言うな。ブランシュはどうなった? あの子に指一本でも触れたら、あなたを殺してやる!」
「まだ手を出していない」
その言葉に、アビゲイルの魔力はさらに激しく溢れ出し、彼女の周囲に緊張が走る。
それでも、ギデオンはなおも嘲るような態度を続けた。
「だが、もう終わりにしよう。君はもう私の『白雪姫』にはなれないのだから」
「お前・・・まさか・・・」
アビゲイルを見つめながらギデオンは薄笑いを浮かべた。
「そうさ。私も君と同じ『ヴィラン』だ」
彼が操っていた糸のような策略が、彼女の頭の中を絡めとるようだった。
アビゲイルが拳を握りしめると、その手のひらには爪が食い込み、血が滲み出した。
「お前の目的は一体何だ? まさかブランシュを・・・?」
「そうだ。結婚するつもりだった。君さえいなければ、偽りの神殿で儀式を済ませていただろう」
吐き気を催すような言葉だ。
神殿だと? 子どもを連れ去って結婚?
アビゲイルは憤怒で血の滾るような声で叫んだ。
「お前は一体何をしようとしているんだ? どうして罪のない子どもを苦しめる必要があるんだ!」
「ハッピーエンドのためにさ」
蒼白な月の光がギデオンの顔を照らしていた。
彼の表情から笑みはいつの間にか消え、静かな狂気だけが漂っていた。
「『白雪姫』は王子と結婚するのが幸せな道筋だろう?だから、俺がその役をしようと思っただけなのに、何が問題なんだ?」
呆れたような沈黙が続く中、アビゲイルの喉元に怒りの火が燃え上がった。
「だけど、ちょっと考えが変わった。お前とブランシュを殺して、大妃に自分の席を与えた方がいいと思ってな」
ギデオンはゆっくりと後ずさりしながら続けた。
「俺はもうブランシュを殺しに行くつもりだ。その遺体をガラスの棺に入れて、送り届けてもらう」
その言葉にアビゲイルの理性が切れた。
怒りが頂点に達し、彼女の魔力が暴走を始める。
闇に血のような赤黒い光がにじみ出し、周囲の空間がひび割れるかのように揺らいだ。
魔力の影響で虚空までもが揺れ動いているようだった。
アビゲイルがギデオンに向かって突進しようとした瞬間、高らかな声が響き渡った。
「王妃を見つけたぞ!王妃がここにいる!」
いつの間にか捜索隊が広場まで到達していたのだ。
彼らは血相を変えて駆け寄ってきたが、アビゲイルを目にした途端、その場に立ち尽くした。
血液と魔力が混じり合ったような黒い光が全身を覆い、彼女の姿はまるで闇そのものと化していた。
黒い霧が立ち上り、彼女の全身を包んでいた。
「ま、魔女だ!王妃は本当に魔女だったのか!」
「すぐに拘束しろ!」
捜索隊が一斉に突撃してきたが、混乱したアビゲイルは体を震わせ、精一杯の声を振り絞った。
「違う!私じゃない!ギデオン・マクラウドがブランシュを誘拐した!あの子を殺そうとしているのよ!」
「そうだ!魔女が人を殺した!」
しかし彼らは、敵意を隠さない目つきでアビゲイルを見つめていた。
アビゲイルの声は、まるで耳に届かないかのようにかき消されていく。
いつの間にか、ギデオンは捜索隊の後ろに身を潜めていた。
数人の兵士が彼を守るように取り囲んでいるのが見えた。
目が合うと、彼は不気味な笑みを浮かべた。
このままだと、本当にブランシュが命を落とす可能性もある。
彼を捕らえ、引きずり出すためには、なんとしてでもギデオンを止めなければならなかった。
ブランシュを救わなければならなかった。
アビゲイルは奥歯を噛みしめ、魔力を毒へと変換した。
すると、発せられた毒気が瞬く間に空気を満たし、その場にいた捜索隊が次々と倒れ込んだ。
致命的な毒ではなく、一時的に動きを封じる程度のものだ。
それでも、捜索隊の怒りはさらに激化した。
彼らは剣を抜き、甲高い金属音が鳴り響く。
「魔女が人を殺した!」
「今すぐ王妃を殺さなければ!」
「違う、みんな死んでいない!私を信じて!お願いだから、お願いだからブランシュを助けて!」
アビゲイルの悲痛な叫びは、虚しく空中に消えていった。
誰にも届かない、切実な訴えだった。
彼女は奥歯を食いしばり、兵士たちを気絶させていく。
殺さないよう調整するのは、思った以上に難しかった。
兵士たちはその場を離れることはなかった。
刃がアビゲイルの体を掠めるたび、彼女の服は次第に赤く染まっていった。
アビゲイルは崩れ落ちるように倒れた。
血を大量に失ったようだ。
全身が血に染まり、半透明になった状態で息を荒げているのが見て取れた。
剣を持った兵士が近づいてくるのが見えた。
アビゲイルはその光景をぼんやりと見上げるだけ。
死を恐れてはいなかった。
ただ、セイブリアンに会いたかった。
ブランシュが心配だった。
ギデオンも憑依者だったのですね。
魔女だと誤解されたまま傷つけられるアビゲールが可哀想です・・・。