こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
今回は72話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
72話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 自身の決断③
広い窓から差し込んできた朝の陽光が部屋の中をいっぱいに満たしていた。
「うーん・・・」
暖かくて柔らかく、そして頼りがいのある何かが背後から彼女を包み込んでいた。
その感触が心に入り込み、ルイーゼは背中を支えている固い腕に頭を預ける。
その彼女の動きに応じるかのように、彼女を抱いていた腕が力を込めてルイーゼを引き寄せたが、動きを止めた。
ちょっと待って、腕枕って?
ルイーゼは目をぱちりと開けて、そっと視線を落として自分の体を包み込む腕を確認した。
鍛え上げられた筋肉が詰まった逞しくも柔らかな腕は、あまりにも見覚えがあった。
状況を把握した彼女の顔が瞬く間に赤く染まる。
ルイーゼが無言の呟きを漏らしながらその腕を解こうとした瞬間、彼女の耳元に低い男性特有の寝起きの声が響いた。
「・・・ああ、結局こうなってしまったか。」
眠気が完全に抜けきらないかのような気怠げなトーンだった。
エドワードが腕の力を抜くと、ルイーゼはぱっとその腕から離れてベッドの上に座った。
朝の光の中でも、特に意味のない仕草だが、彼はくっきりとした表情で手を頭にやりながら微笑み、ルイーゼを見つめた。
「よく眠れましたか?」
「・・・っ!」
「ルイーゼさんのおかげで、私はぐっすり眠れたようです。」
腰まで覆われた布団の上にしっかりと鍛えられた筋肉が浮き上がっていた。
鮮やかな朝日が柔らかく降り注ぎ、その肌はまるで美の男神とでも呼ぶべきほどの美しさを湛えていた。
「気まずいですね。先に捕まえて離さなかったのはルイーゼさんの方なのに。」
「わ、わ、わ、わたしですって?」
ルイーゼは慌ててベッドから飛び出す。
エドワードは寝床から体を起こした。
彼の動きに合わせて白い布団がスルリと滑り落ち、彼の体を覆っていた。
朝日の下、そのまま現れた半裸の姿がはっきりと浮き上がった。
彼が右手を上げ、自分の髪を軽く撫でながら整えた。
「驚かせたなら申し訳ありません。ベッドに置いてソファに行こうとしたのですが、ルイーゼさんが私の腕を放してくれなくて、引き離そうとしているうちに眠ってしまったんです。」
この後の言葉は真実ではなかった。
正確には、眠っている彼女を支えているうちに、自分も眠りに落ちてしまったのだ。
彼女を抱えたまま眠ったのは故意ではなかったが、そのおかげで爽やかな朝を迎えることができた。
「まったく。私は完全にどうかしていたみたいですね。」
「でも、ルイーゼさんのおかげで久しぶりにぐっすり眠れました。どうやらルイーゼさんが私のそばにいると助かることが多いようですね。もしかして他に隠している能力があるんですか?」
「そんなことはありません。」
明るく差し込む日差しの下で、彼女の顔が赤面して紅潮する様子が、そのまま彼の視界に入った。
驚いたが、ルイーゼに申し訳なく思いながらも、エドワードはそんな彼女の様子が可愛らしく見え、静かに笑みを浮かべた。
ルイーゼは、戸惑い混じりの声で言った。
「えっと、今日は朝の訓練に行くので・・・だから、エドワードはゆっくり休んでください。私が何か迷惑をかけたならごめんなさい。あ、それと、これは・・・忘れてください。とにかく、私はこれで失礼します!」
ルイーゼは慌てふためきながら早口でしゃべり、まるで逃げるように部屋を出て行った。
「惜しいことに、状況はこのまま維持させてもらいます。わざわざ起き上がるほどの状態ではないので。」
彼は片膝を立てながら、体を隠していた毛布を直すことはなかった。
パタッ。
エドワードの声が背後に響いた後、扉が勢いよく閉まる。
彼はルイーゼの香りが残るベッドに再び身を横たえた。
口元には微笑みが浮かび続けていた。
同じ時間帯、ロレインは日差しが差し込む廊下を進み、家主の部屋へ向かっていた。
カッセル治療師の助けを借り、ベッドのヘッドボードに寄りかかって彼女を迎える。
「決意が固まったようだね。後悔はしないかい?」
「母も同じ気持ちだったと思います。私たちの願いがどれほど叶わないものだったか、母なら誰よりも理解していると思います。」
「・・・」
「これ以上離れる前に戻らなければなりません。セレベニアは間違った道を歩んでいます。」
ロレインは否定できなかった。
彼らはこれまでひたすら逃げ続けてきた。
エドワードが彼らを追わなかったのは、彼らの外見を見逃してやるためだったのだろう。
彼がすぐに彼らにしてやれることといえばそれだけであり、彼の気持ちが収まるまで放っておくのが一番良いのだろう。
エドワードはそんな人だった。
弱者には寛容であるが、正義に反する行いには冷酷な皇太子。
ロレインはこれまで、そのように皇帝の館に似つかわしい人物を見たことがなかった。
彼は生まれた瞬間から皇帝になるべくして存在していたようで、どの場においてもその登場だけで人々の視線を集め、自然と優位に立つことができた。
退位した後は、皇帝の目に留まらぬよう静かに生きてきたように見えたが、おそらくそれは彼独自の存在感を完全に隠し通すことなどできなかったからだろう。
エドワードは、どんなに自分を控えめにしたところで、決してその価値を失うことがない人物だった。
「『立ち去る者の声を聞く方法』について聞いたことがあります。その意味を考えたこともありました。父上が今の私を見て何と言われるでしょうか。私より母上の方がよくご存じでしょう。けれど、逃げることもまた一つの選択肢であり、それすら辛いと感じられていたことでしょう。」
ロレインの視線が揺れ動いた。
「それから、あなたが私の部屋にいらっしゃったと聞いています。その時、あなたにお話しするつもりでした。」
「私はあなたを失いたくなかった。」
「・・・分かっています。分かっていたから、これまで何も言えなかったのです。」
ロレインは自分の両手をぎゅっと握りしめた。
「間違いないな。そうだ。私が負けた。その時に私が選んだのは間違いだった。」
彼女は遠い過去を思い返した。
実際、誰よりもよく理解していた。
世を去った夫、そして彼女の長年のライバルであり友人だったアレン・ディ・セレベニア。
もし彼ら二人が生きていたなら、誰もエドワードを責めなかっただろう。
「・・・治療とは、人を生かすための行いだ。」
「国を治すには、まず帝国全体を治療する必要があります。」
ロレインは決意を込めた表情で顎を引き締めた。