こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
今回は340話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
340話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 再会
セーブルを見た瞬間、私は気づけば物陰に身を隠していた。
心臓は狂ったように高鳴っていた。
喜びと恐れ、そして戸惑いが一気に押し寄せてきた。
セーブルはどうしてここに来たのだろう?
何が彼をここへと導いたのだろう?
彼は私がここにいることを知っているのだろうか。
本当に彼なのだろうか?
普段着ている制服ではなく、落ち着いた簡素な服装をしており、そばに護衛もいなかった。
もしかするとレイヴンかもしれないという考えもよぎった。
しかし、それでも彼はセーブルだった。
遠くから見ても、数年ぶりに会ったとしても、彼を見間違えるはずがない。
彼は随分と変わっていた。
捨てられた獣のように険しく、やつれた表情をしていた。
その顔を見ると涙が込み上げてきた。
荒れて疲れ果てた様子に、胸が締め付けられる思いだった。
どうしてこんなに傷ついているの?
幸せに暮らしていてほしかった。
せめて穏やかな夜を過ごしていてほしかった。
心の中では彼に駆け寄り抱きしめたかったが、私の足はまるで地面に根を張ったかのように動けなかった。
日差しがあまりにも明るすぎた。
彼の顔がはっきりと見えてしまい、眩しすぎてつらかった。
靴屋の主人の背後から、私はただセーブルをじっと見つめ続けた。
彼はその人が王であるとは気づいていないようだった。
「服を仕立てにいらしたのですね。従業員は少し席を外しております。」
「・・・そうですか。」
ため息混じりの低い声が漏れた。
その様子に靴屋の主人も何かを感じ取ったのか、互いに微妙な表情で視線を交わした。
「リリーがすぐ戻りますよ。ちょっと市場へ買い物に行っただけなので。」
「仕立て屋の名前はリリーですか?どんな容姿の方でしょうか?」
靴屋の主人は、一見素っ気ない質問に戸惑ったものの、特に怪しむことなく答えた。
「ええと、黒髪に黒い目をしていますね。体つきはしっかりしています。背丈は私より少し低いくらいです。美人というわけではなく、どちらかというと平凡な雰囲気です。」
その全てがアビゲイルとはかけ離れているように聞こえる。
誰も自分がアビゲイルだとは思いもしないのだった。
彼はその説明を静かに聞いていたが、セーブルは何も言わず考え込んでいるようだった。
そして、失望した様子を見せることなくさらに尋ねた。
「性格はどうですか?大胆だとか、控えめだとか、好き嫌いが激しいとか。些細なことで構いません。」
「性格ですか・・・。」
2人は腕を組んで少し考え込んだ。
しばらくしてから、婦人のほうが先に口を開いた。
「とても親切で優しいですよ。他人をよく助けてくれます。」
「そうですね。道端で困っている人がいると、どうにかして助けようとするんですよ。」
「服を作るときも、お客様に似合うものを作ってあげようと、いつも一生懸命です。少しでも良い服を作ろうと努力していますね。」
「何か可愛いものを見つけると、壁に飾ったり、みんなに見せたがったりしますよ。」
「子どもが好きで、好きな色は黒色で・・・」
「やれやれ、またリリーの前で黒が好きだと言ったら叱られるよ。」
夫が冗談めかして言い、笑みを浮かべながら軽く肘でつついた。
「黒じゃなくてセーブルだって。セーブルが一番好きだって。」
風が吹いた。
それは本当に真実だった。
世界全体が一瞬止まってしまったかのように感じた。
その時、婦人が私に気づいて驚いた顔をした。
「まあ、リリー!いつ来たの?お客さんが来てるのよ!」
その言葉と同時に、セーブルは火に飛び込んだ人のように慌てて体を振り向かせた。
まるで引き寄せられるように目が合った。
「ああ、あなたでした。」
何億光年も待ち望んだ光をついに見つけたような感覚で、あなたと私は再会した。
あなたと目が合った瞬間、私は自分でも気づかないうちに駆け出していた。
全力でその場を逃げ去っていた。
あなたのいない場所へと駆け出していた。
光を避けるように、あなたを避けるように。
私は愛する人から逃げることに怯えていた。
私の顔を見て失望されるのが怖かった。
だけど、そんな考えは馬鹿げていることだと分かっていた。
それでも彼は私を認識できないに違いない。
この顔を見ても私が誰か気づかないに違いない。
「アビゲイル!」
彼がこんな私を求めるはずがない。
「アビゲイル、お願い!どうか行かないで!」
彼が私を愛するはずがないのに。
「お願いだから私を置いていかないで!」
彼の切実な叫び声が耳に響くと同時に誰かが後ろから私を引き寄せて抱きしめた。
力強く、必死で、切実に。
一筋の光をどうにか掴もうとするかのように。
私はそこでようやく足を止めることができた。
全身が震え、涙が溢れ、頬を濡らしていた。
私を壊すかのように抱きしめるその両腕もまた、激しく震えていた。
彼が息を整えられない様子が伝わってきた。
呼吸の代わりに涙だけが流れ、私の肩を濡らしていた。
「私は・・・私はアビゲイルじゃありません。私はアビゲイルじゃないんです。私はアビゲイルじゃない・・・」
私は壊れた機械のようにその言葉を繰り返していた。
愛と同じくらい大きな恐れが私を支配していた。
さっきまで彼が私の顔をはっきりと見ることができなかったのは幸運だった。
私の顔をちゃんと見たら、彼が失望するのは目に見えているから。
彼を失望させるくらいなら、むしろ別れたほうがいい。
彼が与えてくれた幸せな記憶を胸に抱いて、一生を生きる方がまだ良いと思えた。
「違う、あなたはアビゲイルだ。どうして君を見間違うことがあるんだ?」
彼はそう言いながら泣いていた。
涙で震える声が、私の胸を締めつけた。
どうして私なんかのために泣くの?どうしてこんな私を探し回ったの?
彼は私の体を引き寄せて、嵐のように震えていた。
「行かないで・・・行かないで・・・」
後ろ姿だけでも私が変わってしまったことはわかるはず。
それなのに、どうして私を手放してくれないの?
「アビゲイル、お願いだから・・・」
セーブルはしばらく私を抱きしめていたが、やがてそっと私を引き離して立たせた。
その目には恐れと戸惑いが浮かんでいた。
彼と正面から向き合ったとき、彼の表情は2年前と全く変わらないものだった。
彼は凛とした優雅さで、私をじっと見つめていた。
驚愕の表情のまま立ち尽くしていた彼を見て、逃げ出したくなった。
しかし泣いていたセーブルは、にっこりと笑顔を見せる。
その目には幸せな青い光が溢れていた。
「アビゲイル。」
彼は、今の私を見てもなおアビゲイルと呼んだ。
私と再会したことが信じられないように、少し息を詰まらせた。
「会いたかったんだ。君が狂おしいほど恋しかった。」
どうしてこんな風に変わってしまった私を探し出せたのか。
どうして私を見て泣き、笑うのか。
この私のために。
「私は・・・私はもうあの美しいアビゲイルではありません。私は・・・。」
「約束したじゃないか。」
彼は力強く私を引き寄せて抱きしめた。
その声は揺るぎなく優しく、変わることのない温もりを帯びていた。
「あなたの容姿が変わったり、私の態度が変わるようなことがあれば、そのときはこの目を自分の手で潰すつもりだ。」
壁が崩れ、光が差し込んでくるような気がした。
心の中に積もっていた孤独と切望が抑えきれず溢れ出した。
もう彼を拒むことはできなかった。
2年ぶりに、こんなにも愛してやまない人に再会したのに、耐えることなど到底できなかった。
「セーブル、セイブリアン・・・。あなたに会いたくてたまらなかった。ごめんなさい、私が・・・。」
「謝るのは私のほうだよ、愛しい人。もっと早く君を見つけていればよかった。本当にそうだったのに。」
永遠にも感じられた2年という月日は、一瞬にして消え去るかのようだった。
セーブルは私を見て微笑んだ。
私も彼を見つめ、自然と笑顔がこぼれる。
彼は優しい微笑をたたえた顔で、そっと私にキスをした。
暖かく、柔らかく、心からの敬意が込められた口づけだった。
もう彼を拒む理由などどこにもなかった。
これからは決して彼を遠ざけたりはしないと心に誓った。
「あなたがいない世界で、一日たりとも生きていけないのです。」
目を閉じると何も見えなくなった。
自分の顔も、彼の顔も。
ただ、温かなぬくもりとセイブリアンの存在だけが春風のように心に流れてきた。