公爵邸の囚われ王女様

公爵邸の囚われ王女様【87話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【公爵邸の囚われ王女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...

 




 

87話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 新しい友達

クラリスは毎朝早く礼拝堂を掃除しながら、一つの気づきを得た。

どんなに早朝であっても、活動している人は必ずいるということだ。

彼女は掃除をしている途中、勉強のために早起きした受験生と出くわすこともあった。

熱い紅茶を大きな机に置き、学習に没頭する姿は、実に偉大に見えた。

受験生以外にも、弟子たちはほとんどが朝に素早く行動する。

時々、クラリスが礼拝堂に到着する前に、すでに燭台がすべて磨かれているのを目にすることもあった。

さらに、毎朝祈りを捧げに来る人々もいた。

この修道院が王都から30分ほど離れた辺鄙な場所にあることを考えると、本当に驚くべきことだった。

特にある老婦人は、クラリスが掃除をする間、一週間のうち一日も欠かさず、いつも同じ場所で祈りを捧げていた。

一体どんな願いがあれば、ここまで熱心に祈ることができるのだろうか?

そう思い、ある日、クラリスは壁にかかった装飾品を磨く手を止め、その老婦人をじっと見つめるようになった。

実のところ、礼拝堂で決められた祈りの言葉を唱えていると、無意識に口元から流れ出ることもあれば、ただ形式的に言葉を発することもあった。

しかし、その老婦人は決してそのようなことはなく、いつも祈りの言葉一つ一つ、小さな動作一つ一つに深い真心を込めていた。

それはまさに切実な祈りだった。

気がつけば、クラリスも彼女に倣い、両手を合わせていた。

そして、いつになく真剣な気持ちで祈った。

「どうか……叶いますように。」

そう小さくつぶやき、再びモップを手に取ったときだった。

ちょうど席を立った老婦人と目が合ってしまった。

ただ微笑んで軽く挨拶するだけなら、何事もなかったかのように振る舞えただろう。

「す、すみません!」

彼女をじっと見つめていたことがバレたのではと焦り、クラリスは無意識に謝罪の言葉を口にしてしまった。

「……え?」

その唐突な反応に、老婦人は不思議そうな表情を浮かべた。

それは当然だった。

「い、いえ、その……」

クラリスは顔を真っ赤にしながら、埃を払うふりをしつつ、小さな声で答えた。

「あなたを……ずっと見つめていました。」

クラリスは恥ずかしくなった。

自分の言葉が、最近読んだ恋愛小説に出てくるセリフと似ていることに気づいて、さらに顔が熱くなった。

遠くで彼女の言葉を聞いたバレンタインが、必死に笑いをこらえているのが聞こえた。

年長のノアが彼の背中を軽く叩いてすぐに止めさせたが、それでも可笑しさは残っていた。

クラリスが気まずそうにしていると、老婦人は優しく微笑みながら、静かに前へ歩み寄った。

近くで見ると、彼女はクラリスが思っていたほどの年配ではなかった。

その美しい髪は、白く輝いていて……いや、彼女の髪は白髪ではなく、美しい銀色だった。

ただ、深い思索に沈んだ表情には、どことなく悲しみの面影があり、その表情に沿うように刻まれた皺がより一層際立っていた。

クラリスは、彼女の祈りがもしかすると長い間続けられてきたものなのではないかと感じた。

「ごめんなさい。」

近づいた老婦人が謝罪の言葉を口にした。

「えっ、ええ……?」

「私、あなたの掃除の邪魔をしてしまったんでしょう?そうですよね?」

クラリスは慌ててモップを握りしめた。

そんなことは絶対になかった。

むしろ、今日も彼女が来るかどうか気になって、自然と早起きしてしまったくらいなのだから、むしろ感謝すべきかもしれない。

「えっと、私はただ……」

クラリスは必死に言葉を探し、ようやく答えた。

こういう時は、正直に答えるのが一番だ。

「あなたの願いが叶うように、祈っていました。何なのかは分かりませんが……本当に心を込めて祈るということが、伝わってきたんです。」

クラリスの言葉に驚いたのか、老婦人は口をわずかに開けたまま固まってしまった。

「すみません、私ったら勝手に思い込んで……」

彼女は気まずくなった。

確かに、この老婦人は信仰心の篤い人かもしれないが、だからといって何か特別な事情があるとは限らない。

それなのに、勝手にそう思い込んで、さらには祈りまで捧げてしまった。

もしかすると、失礼だったかもしれない。

「いいえ。」

老婦人はそっと頭を横に振り、口元にやわらかな微笑みを浮かべた。

クラリスはその笑顔に、どこか見覚えがあるような気がした。

しかし、それがなぜなのかは分からなかった。

ただ、妙に心が安らぐ気がした。

「とても切実に祈っていたの。本当に……心から。」

そう言って、うっすらと涙を浮かべる老婦人に、クラリスは慌てて冷たいハンカチを差し出した。

「一緒に祈ってくれただなんて……ありがとう。」

彼女は涙を流しながらも、微笑みを絶やさなかった。

「誰かが私と一緒に祈ってくれるのは、本当に久しぶり。夫が亡くなってからは……。」

「ご主人の冥福を祈って……いらしたのですか?」

彼女はゆっくりと首を横に振った。

「娘が……。」

彼女はかすれた声でそう言いかけたが、喉に詰まらせるようにして、言葉を止めた。

「無理に話さなくても大丈夫ですよ。」

「いえ、なぜか……話したくなりました。」

クラリスは少し待ち、老婦人は手に持ったハンカチで目を押さえた後、静かに続けた。

「元気でいるようにと、ずっと祈っていました。」

「娘さんがいらっしゃるんですね。」

「ええ、とても可愛らしい子です。きっと今頃………私よりもずっと大人になっているでしょうね。もしかすると、もう結婚しているかもしれませんね。」

自分の娘について語りながらも、その言葉にはあくまで推測の形が含まれていた。

クラリスは慎重に状況を推測してみた。

『娘さんを亡くされたのかもしれない。』

そう思った瞬間、クラリスは、初めてこの老婦人に会った時に感じた胸のざわめきの理由が分かった気がした。

まるで、クラリスが愛するセリデン公爵が、行方不明になった家族を探しているように、老婦人もまた、失った家族を思い続けているのではないか。

同じような境遇を持つ人として、運命的に意識してしまったのではないか。

「ごめんなさい。誰かに話したかったのかもしれません。でも、私のただの憶測ですよね……。」

「いえ、そんなことはありません!嬉しかったです!いや、その……老婦人の状況を嬉しいというわけではなく……。」

クラリスは、自分でも驚くほど素直に言葉が出てしまい、慌てて両手を振った。

「実は、私の周りにも家族を探している人がいるんです。私にとって、とても大切な人なんです。」

「そうだったんですね。」

「その方は、自分の母親が自分を探しているはずがないと思っているんです。もしかすると、傷つくのが怖くて、そう思い込んでいるのかもしれませんが……。」

「……そういうことも、あるかもしれませんね。」

「魔法使いの城に手紙を託したこともありますが、結果が分からないままで、とても不安に思っているんです。」

「それは、忍耐が必要なことですね。私も、長い間魔法使いの城からの返事を待ち続けています。」

「でも、あなたを見ていると、なぜか分かる気がするんです。その方の母親も、きっと必死に探し続けているはずです。」

「それは、間違いありません。」

老婦人は静かに距離を縮め、そっとクラリスの手を握った。

「とても切実に、心から探し続けているはずです。それは、私が保証します。そして、常に健康であるように祈っているはずです。きっと……。」

老婦人は何かを話そうとしたが、言葉をのみ込んだ。

彼女はそっと息を整え、首を横に振った。

「……何でもありません。」

その言葉に、クラリスは明るい声で応じた。

「私はクラリスといいます、奥様。」

「素敵な名前ですね。ジアナ・クノーと申します。」

「クノー夫人とお呼びしてもよろしいでしょうか?」

クラリスの問いかけに、彼女は少し驚いた様子だったが、すぐに微笑んで小さく頷いた。

「そう呼んでいただけるなら嬉しいわ。私、ずっと長い間、お邪魔してしまっていましたね?」

「いいえ、お話しできて嬉しかったです。」

「私もです。こんなふうに寂しい話を聞いてくれる人なんて、なかなかいませんから……。」

そう語るクノー夫人の表情が、どこか切なげに見えたため、クラリスは思わず前のめりになった。

「もし私でよろしければ、いつでもお話し相手になります!あ、もちろん、奥様がご迷惑でなければですが……。」

「ありがとう、クラリス。本当に嬉しいわ。」

彼女はゆっくりと頷きながら、ふと何かを思い出したように、ある提案をした。

「王都に、私が滞在している家があります。機会があれば、いつでも訪ねてください。しばらくはそこに滞在しているつもりだから、特に知らせなくても大丈夫ですよ。」

そう言って、彼女は懐から古びた名刺を取り出し、クラリスの手にそっと渡した。

「必ず行きます!約束します。」

「お待ちしています。」

老婦人は軽くお辞儀をし、そのまま神殿を後にした。

クラリスは、なぜかほんの少し寂しい気持ちで、その後ろ姿を見送った。

まるで、新しい友人を得たような、そんな気がした。

それは、クラリスがずっと求めていた友情の形だった。

たとえ、年齢が大きく離れていたとしても――。

しかし……最近読んだ恋愛小説によれば、年齢は単なる数字に過ぎないと言われていた。

 



 

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