こんにちは、ちゃむです。
「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。
今回は34話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

34話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- バレンタイン王子②
水路から抜け出したバレンタインは、すぐに自分を探す侍従のところに駆けつけた。
(・・・変な女の子だった)
彼は真っ黒な水路からびょんと飛び出した琥珀色の瞳の少女を再び思い出す。
不思議なピンク色の髪が、あの丸い顔とよく似合っていた。
だからといって、別に綺麗だと思ったわけではないけどね。
(とても不埒な女の子だ)
あえて王子様の目をまっすぐに見つめながら、はっきりと口答えするとは。
(でも・・・私が誰だか知っていた)
バレンタインはそれが本当に不思議だった。
先王の三男とはいえ、自分に気付く人はそれほど多くない。
まだ人前にきちんと紹介されたこともなく、わざわざ彼を探す貴族もいなかった。
継承序列2番目の彼がこのように無視されるのは、ライサンダーが即位と同時に婚姻をしたことと関連がある。
貴族たちは若い国王夫妻がすぐに跡継ぎをすると考え、そうなればバレンタインはますます王位とは遠い存在になるはずだった。
そこに大王妃は幼い息子を公式的な席に同行したことがなかったので、彼の顔を知っている人は本当に少数なのだ。
(私のことがどうして分かった?)
初めてだった。
自分を一目で調べて「王子様」と呼んでくれる人は。
普通は「どの家の坊ちゃんですか?」という質問を受けるだけだったのに。
なんだか笑いが出た。
「ここにいたんですね、王子様」
「あ、うん!どうして見つけたんだ?"
「大王妃殿下がお探しです」
「え、お母様が?」
それはとても珍しいことだったので、バレンタインは喜びを隠せずに問い返した。
「はい、今すぐお会いしたいそうです。急いだほうがいいでしょう」
バレンタインは侍従の言葉が終わるやいなや、ほとんど走って大王妃の宮に向かった。
彼は9歳の生涯を3番目の壁の内側だけで生きてきたので、各建物をつなぐ道ならどこでも知っていた。
公式に使われる通路や、秘密裏に使われる通路まで全部。
少年は自分が知っている最も早い道を通って、ハイドンの心臓と呼ばれる巨大な王宮に到着する。
先王が逝去した後も大王碑は別宮に退かず、この巨大な本宮の主役を果たしていた。
孝心が深いと知られた息子、ライサンダー王は決して自分の母の意に逆らわなかった。
バレンタインは久しぶりに来る本城の前で少し緊張して肩を少しすくめた。
実際、彼はこことは少し離れた小さな別宮で過ごしてきたので、こんなに多くの人が出入りする本宮では、なぜか堂々と行動するのが難しかったのだ。
少年は震える足取りで母親の執務室の前に到着する。
侍従が告げるとすぐにドアが開き、バレンタインは今まで学んだ優雅な礼法を活用して尊敬する母親に対する素敵な挨拶をした。
「だ、大王妃殿下にお目にかかります。」
ああ、どうすればいいんだ。
バレンタインは、馬鹿みたいにどもってしまった自分の口をつねりたくなる。
案の定、大王妃のそばに立っている侍従も、なんとなく気に入らない目で彼を見つめることが感じられた。
(もしお母様もがっかりしてたらどうしよう・・・?)
焦った彼の頭の上にまもなく大王妃の優しい答えが帰ってきた。
「お帰りなさい、息子よ」
私の息子。
愛情が感じられる呼称にバレンタインは上気した顔で頭を上げる。
そこには絶対に枯れないという王室のバラ、アメルダ・サッパーズが柔らかな笑みを浮かべていた。
すでに成人した息子がいる54歳にもかかわらず、彼女は依然として美しいという修飾語を自分のものにしていた。
バレンタインは何よりもそのような母親をいつも誇りに思っている。
特に宝石のように輝く青い瞳・・・。
それはバレンタインが母親から受け継いだ最高の宝物だと思った。
鏡を見るたびに母の跡が自分に色濃く残ったようで嬉しかったのだ。
(私を・・・何の用事で呼んだんだろう?)
もしかして、褒めるつもりなのだろうか?
バレンタインは少し前から自ら公務告示の準備を始めた。
事実、王族がこのような試験を受ける理由はない。
どうせ一生食べていくことでは心配する必要がなかったから。
しかし、彼は母親のお気に入りの立派な大人になりたかったので、何とか自分の使い道を証明したかった。
公務告示で立派な点数を取れば新聞にも名が出て、国一の人材として認められるようになる。
バレンタインはその場に身を置きたいと思い、学問に邁進し始めた。
(期待されすぎると恥ずかしいんだけど)
彼はそう思いながらも無駄などきときで両手をそろえて握った。
「前に言ったことを覚えていますか?」
アメルダは慎重にテーブルの上にグラスを置く。
「私があなたをなぜ産んだのでしょうか?」
ゆっくりと優雅に間こえる問いに、バレンタインは長い間学習された答えをした。
「私は王権の安定のために生まれました」
王家に継承者が多数いる時は内部紛争が勃発する一方、過度に不足した場合には外部との紛争が起きるものだ。
主題も知らない傍系がわずかな直系を処理し、その場を貪ることもできるからだ。
バレンタインは胸を張って誇らしげに言った。
「私は兄の地位を強固にする踏み台です」
「覚えているなんて嬉しいわ」
褒め言葉が嬉しくて、バレンタインはきらめく目で母親をあらためて見上げる。
「それなのに」
しかし、なぜか彼を見つめるアメルダの視線は冷ややかだった。
少年はぎくりとして期待に満ちた視線を伏せる。
「公務の告示なんかを準備するんですって」
「そ、それは・・・私が使い道を・・・」
「バレンタイン」
厳しい声に少年はすぐに口をぎゅっと閉じた。
「私たちの小さな息子の使い道は、このように生きて息をすることだけだと、申し上げませんでしたか?」
「・・・」
バレンタインは何も答えられなかった。
何だか恐ろしい感情が吹き荒れた。
まともに覗きたくない不快なその感情を少年は無理やり心の片隅にぎゅっと押し込んだ。
すると、すぐに優しい言葉が返ってきた。
少し前に彼を縛り付けていた苦い感情を全て静めるように甘い言葉が。
「存在だけで愛されるのが親子関係ではなかったのですか?」
「私を・・・愛しているのですか?」
「もちろんです」
彼女は席を立ち、バレンタインの前に近づき、そっと身を下げた。
ドレスが床に引かれているのに、アメルダは気にしなかった。
額が触れそうに近いところで、彼女は真っ黒な手袋をした手でバレンタインの両頬を優しく握る。
「私の息子は王家に必ず必要な存在ですから」
「本当に・・・ですか?」
「そうですよ、だから何もしなくてもいいんです。ただ、長い間静かに私だけの息子として王室に残ってください」
「静かに」という言葉にバレンタインは口を噛んだ。
それは彼が母親のために考え出した公務告示計画をやめろという話に聞こえたので。
「バレンタイン、あなたのためにする話です」
バレンタインが沈黙を守っているためか、すぐに柔らかい説明が続いた。
「マクシミリアンを覚えていますよね?」
「・・・」
「彼がなぜ王城で生きていけなくなったのか、あの冷たい冬の城に流されたのか」
「そ、それは公爵が王室の意思に反発したからだと・・・」
バレンタインはそう言いながらも、マクシミリアンがどんな「王室の意思」に反発したのかは正確に知らなかった。
「そうですね。私としてはとても心が痛みます。私のお腹で産んではいないとしても大切な息子ですから」
「・・・はい」
「私は同じことを2回経験できるほど強い人にはなれません。だからバレンタイン・・・」
「私は王室の意思に従って生きていきます!絶対にお母様を傷つけません!」
バレンタインはすぐに元気よく答えた。
初めてアメルダの口元に笑みが浮かんだ。
「よかったです」
彼女は息子の頬から手を離し、ソファーに戻って座る。
「分かったら、もう帰ってもいいわよ」
「・・・はい?」
バレンタインはなんだか残念な気持ちで聞き返したが、他に返ってくる答えはなかった。
彼女に代わって侍従が彼を催促する。
「この後、大王妃殿下は貴族に会う予定です」
「あ」
バレンタインは残念だが、深く身をかがめて挨拶をした。
「これで失礼します」
帰り道に彼は、もし母親が再び自分を呼んでくれるのではないかと期待しながらゆっくりと歩いてきた。
(・・・そんなことは起きなかったけどね)
バレンタインがどうして喜んでいたのか納得ですね。
大王妃は想像以上にヤバい人物のようです・・・。







