悪役なのに愛されすぎています

悪役なのに愛されすぎています【88話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役なのに愛されすぎています】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

88話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 母親③

「わかった。次からは必ずハンカチを使うよ。」

イサヤはようやく少し落ち着いたのか、冷たい壁にもたれかかりながら頭を預けた。

片方だけぬれた袖に手を置きながら。

メロディはそっと、彼が何か悪いことをして逃げているのではないかと思い、尋ねてみることにした。

もしかしたら、自分が解決の助けになれるかもしれないから。

「ねぇ。」

「ところで、メル。どこに行ってたの?」

けれどイサヤの質問は少し早口だった。

「え、うん?」

「2週間くらい寮にいなかったよね。どこかに行ってたのかと思って。」

メロディは一瞬悩んだ。

なんと答えればいいのか分からなかったから。

「ヒギンス夫人の親戚のところに行ったって話は聞いたけど。」

メロディが悩んでいるのに気づいたのか、彼は少し踏み込んだ話を切り出した。

「僕が見る限り、メルはそこに行ってなかった気がして。」

「……!」

驚いて彼をじっと見つめると、イサヤは私の髪をそっと撫でながら、苦笑した。

「僕がそれに気づいたからって、そんなに驚くこと?」

「う……ん。」

当然そうだ。

他の誰でもなく、イサヤがヒギンス夫人の話から嘘を見抜くなんて思わなかった。

「すごく簡単だったよ。」

彼は少し腰を伸ばし、メロディの顔を近くからじっと見ながら、そっと前髪をかき上げた。

「メル、顔に跡がついてる。」

「私の顔に?」

「うん。でも、夫人の親戚の方角は先週ずっと大雨だったんだ。たぶん今も降ってるはず。」

「そこに雨が降ったって、どうして……分かるの?」

「ほら、騎士団で定期的に訓練しに行く人がいるから。雨のせいで結構苦労したって言ってたよ。」

メロディは自分の腕をやたら触っていた。

クリステンソンではほとんど毎日外を歩き回っていたため、肌がすっかり焼けてしまったようだ。

「つまり、メルは日差しが照りつける地域に行ってたってことだよね?どう?正解?」

メロディはスプーンをいじりながら、イサヤの過去を思い出していた。

彼は医師の先生の論理的教育のもとで、非常に賢く育った。

その論理教育の一部が今になって光を放っているようだった。

その完璧な主張からは反論の余地がまったくなかったため、メロディは仕方なくスプーンをいじりながら答えた。

「うん、正解だよ。」

「やっぱりね。で、どこに行ってたの?」

「……クリステンソンに。」

「なにっ?!」

イサヤは思わず大きな声を上げかけ、慌てて自分の口をふさぎ、窓の外をちらりと見回した。

誰かに聞かれていないかと心配しているようだった。

「クリステンソンに行ってたの?じゃあ、あの坊ちゃんと一緒に行ったってこと?!」

どうやらクロードの目的地は正直に伝えられていたようだ。

さすがにそこまで嘘をつくのは難しかったのだろう。

「うん、そう。」

「大丈夫だった?坊ちゃんにひどいことされたりは?」

幸い、ひどい仕打ちを受けた記憶はそれほど多くなかった。

あの場所ではクロードが使用人のふりをしてくれたおかげで、メロディの意図にほぼ合わせて行動してくれたからだ。

ただ、ひとつだけ心に引っかかることがある――。

『抱擁をしたって……わざわざ言うまでもない。最初はそれが苦痛でもなかったし。』

「坊ちゃんは私に優しくしてくれたわ。」

メロディは肩をすくめた。

「まさか、そんなはずないよ。」

「どうしてそんなに私を信じてくれないの?」

イサヤはスプーンを止めた。メロディを信じていないわけでは決してなかった。

「私は坊ちゃんを信じていない。」

「どうして?」

「だって、君がいつも『坊ちゃんに酷いことされた』って言ってたじゃないか。」

「………」

―そうだった。

イサヤは、首都でメロディが心を許せるほどの親しい相手はほとんどいなかったため、時折クロードへの不満をイサヤにだけ打ち明けていた。

「今回は特に酷いことされなかったわ。」

「それならよかった、メル。」

イサヤの顔が一瞬曇った。なにか真剣な話を切り出そうとしているようだった。

「坊ちゃんとは適度な距離を保つのがいいよ。」

「適度な距離?」

「うん。坊ちゃんは君の事情を考慮する気がないみたいだから。」

「それって……どういうこと?」

彼は一瞬「うーん」と唸りながら眉間にしわを寄せた。

説明しづらい様子だ。

「つまり、こういうこと。僕はメルの許可がないと何もしない。」

「……何を?」

「いろいろあるよ。たとえばこの部屋に入る時も許可をもらったでしょ?」

「うん。」

「僕は君の気持ちが一番大事だからそうしてるけど、坊ちゃんは違う。」

そう言われると、なぜか……分かる気がした。

もちろんクロードもメロディに許可を求めるようなことはある。

しかし、よく考えてみれば、彼は「メロディに許可させるように仕向ける」ことの方が多かった。

「だからこそ、君を守るためにも適切な距離を常に取らないといけないってことさ。」

「そっか……そうなんだ。」

それはなんとなく理解できる話だったので、メロディはゆっくりスプーンを動かし続けた。

「なんだか今日はイサヤの方が賢くなった気がする。」

「そんなこと言わないで。賢いなんて言葉、怖いじゃん。今からでも真面目に勉強しないといけない気がしてきたよ。」

彼は顔の前で両手を振ってその話題を払おうとした。

その様子にメロディはつい笑みを漏らした。

「やっと笑ったね。」

「イサヤが何かやらかして、私の部屋にこっそり隠れてた話でもしてくれたら、もっと笑えるかもよ。」

「はぁっ。」

「私も正直に話したじゃない。」

「うん……うん。あのね。」

イサヤはしばらく悩んでいたが、少ししてようやく話し始めた。

自分の不注意で、上官のカンナンコンの花瓶を壊してしまったという。

メロディーは「ただのカンナンコンの花瓶?」と思ったが、実はそんなに簡単な話ではなかった。

それはイサヤの上官が自分の命よりも大事にしているカンナンコンの花瓶だ。

毎日観察するほどに。

「それなら、早く謝って新しい花瓶に替えてあげるようにしたらどうかな?」

「僕もそう思ってるんだけど……」

イサヤは恐ろしい上官の顔を思い浮かべながら、恐る恐る襟を撫でた。

「本当に怖いんだ。」

「時間を引き延ばすと、もっと怖くなる気がするんだけど。」

「ううっ。」

イサヤは私の頭を優しく撫でた。

メロディの言葉に感じ入っていたようだ。

「新しい化粧品を買いに行くときは、私が一緒に行ってあげるよ。だから、さあ、謝ってこよう。」

「う、うん、わかった。」

メロディは自分よりずっと背の高いイサヤがしかめっ面をしながらもじもじしているのが、なぜかおかしくて可愛らしく思えた。

「じゃあ、僕はもう行くね。」

彼は立ち上がって窓枠の上に登った。

謝りに行く決心はついたものの、まだ迷いがあるのか、その動きにはどこかぎこちなさがあった。

「うん、そうだね。」

彼は窓枠にちょこんと腰掛け、何かを言いかけるようにメロディを見つめた。

「メルも、さっさと謝りに行くんだよ。」

「うん?」

「時間を引き延ばせば、もっと怖くなるだけじゃない?」

それはメロディと母親に関する話なのだろう。

「……イサヤは時々とても気が利くよね。」

普段はとてもぶっきらぼうなのに、メロディが困っている瞬間だけはすぐに気づくことが不思議だった。

「ねえ、僕はさ」

彼は子供のころのいたずらっ子のような表情でぱっと笑った。

「いつもメルを見ているから。」

「……イサヤ。」

「だから、メルもちゃんと話して。わかった?」

「うん、そうする。」

メロディはそっと小指を差し出した。

まるで約束のように重なった二人の小指が、宙でふわりと揺れる。

『なぜか気が軽くなった。』

イサヤに会うまでは、いつかお母様から呼び出されるかとびくびくしていた気持ちだけだった。

考えてみれば、自ら謝りに行くのは当然のことだったのに。

『……それが怖くて、部屋でただ待っていただけだったんだ、私は。』

メロディは、さっきまで上官を避けて逃げてきたイサヤを非難していた自分が恥ずかしくなった。

自分も同じことをしていたのに、それを責める資格はなかった。

「ありがとう、イサヤ。」

「僕の方こそ、ありがとう。メロディのおかげで謝りに行く勇気が出たんだ。」

「私も、イサヤのおかげで勇気が出たの。」

その言葉は、イサヤの気分をかなり良くさせたようだった。

彼はその場からひょいと飛び上がり、窓枠の向こうに身をひねって、かっこよく着地した。

まるで模範演技を見せるような錯覚に、メロディは気まずくて手を引っ込めた。

だがすぐに気を取り直し、彼に警告した。

「無茶はしないで。君が怪我しそうで心配なんだ。」

かなり真剣に言った言葉だったが、イサヤはその気持ちには気づかず、ただ嬉しそうに笑うだけだった。

 



 

 

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