こんにちは、ちゃむです。
「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

180話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- カミーラ④
カミーラは3階の後継者の部屋を使うことになった。
マーガリットは、仕方がないというように言った。
「他の部屋はまだ準備できていません。すぐに2階の客間をきちんと整えておきます。それまでカミーラ嬢に使ってもらいましょう。」
「………」
泊まってもいいと許可したのは自分だった。
ラルクは短く舌打ちのような音を立てながら、こう返事した。
「好きにしろ。」
いかにも、自分はこれっぽっちも気にしていない、という態度をアピールするような素振りだった。
マーガリットはまた穏やかに微笑むと、挨拶を終えて寝室を出て行った。
ラルクはソファからぱっと立ち上がった。
苛立ちが込み上げ、まるで死んだ人のようにぐったりしているわけにはいかなかった。
「まったく。」
『なんでこんなに動揺するんだ?』
これまでの感情と呼ばれるものはすべて片付いて消えたと思っていた。
実際、何を見ても心が動くことはなかった。
しかしカミーラにはそうならなかった。
嘘だった。
あまりにも、嘘だった。
『恩知らずだからか?』
ラルクは深いため息をつき、いっそ気が紛れるうちに研究でもしようと決心した。
いつもしていた、永遠に死ぬ方法についての研究だ。
実のところ、意味のないことだった。
『永遠に死ぬ方法を探すなんて、土着の神々が笑うだろうな。』
「もはや彼を制御しない限り不可能だ。」
ラルクはすでに半分は神も同然の存在だった。
化神と呼ばれるだけあって、彼の血と骨、筋肉で構成されたすべての力は神の権能だった。
だからこそ、普通の方法では死に関する解答を見つけることができなかった。
神々が出てきて彼を制御しない限りはもう不可能ではないか?
だが神々は黙って傍観した。
『私は世界を壊しても暴虐だったことはないのに。』
くそったれどもめ。
人間界がなくなれば脅威になるのはあいつらなのに、自分がした小言一つを止めなかったとは。
『あのとき止めてくれていたら、俺がこんなに乱れることもなく、あの女を避けることもなかったのではないか?』
「………」
ラルクは苛立った様子でペンをつかんで投げた。
投げる前にすでに腰が半分折れていたので、言うまでもなかった。
彼はわざと無視しようとしていたカミーラを意識してしまった。
苛立ったため息が口元を歪ませて漏れ出た。
「存在自体がイライラする女だな。」
そんな人間がゴミ処理場のようなところに流れ着いたのか?信じがたかった。
『いや。それでもあの女がここに流れ着いたのは必然かもしれない。』
エセルレッドは、世間から捨てられたゴミたちが集まる場所だったのだから。
彼女は世間から捨てられた。
自分のように。
ラルクはまるで外の城壁を睨みつけるかのように視線を投げた。
「どうせもうすぐ死ぬんだし。」
そんな相手に自分の領域で踏み込んできた。
『これも少しの間だけだろう。』
少し我慢すれば女は死ぬ。あの女のようなやつが世界から消える。
自分が新たなサイクルを始めない限り、死んで消える。
『少しで死ねるとは、実にうらやましい。』
ラルクは気だるそうに片方の口元だけを吊り上げ、ドアに視線を投げた。
少しだけだ。
彼は自分に言い聞かせるようにぶつぶつつぶやいた。
カミーラは3階の後継者の部屋を使うことになった。
エセルレッドの下級神たちは、突然現れた新しい客室にすぐに適応した。
集まると、ははは、ははは、と笑い声が響いた。
何がそんなに楽しいのか?
『イライラする。』
ラルクは明らかに3階に引きこもる予定だった。
しかしカミーラの部屋が自分の寝室の隣に位置していたため、無視できない状況が生まれた。
カミーラは使用人たちとうまくやるだけでなく、やたらとラルクに気を使うようになった。
「公爵様。」
自分に向けてニコニコと笑っている表情が嘘っぽい。
「今日天気がいいから、私と散歩しませんか?」
やたらと自分を光の下に引っ張り出そうとする態度が目立った。
「嫌ならいいんです。でも、あの、公爵様の隣にいてもいいですか?」
返事をしなくても、面倒そうな顔をしても、彼女は気にする様子もなく、ずっと彼のそばに寄ってきた。
「どけ。」
彼が冷たく言い放っても、彼女は傷つかなかった。ただにこにこと笑いながら離れていった。
「そうだ!プレゼントです。」
彼女はしょっちゅう屋敷の外に出て行った。
戻ってくるときは、今のように必ず花を一輪持ってきた。
3月。まだ春が冷たい時期だ。
花を手に入れるのは簡単ではないはずなのに、どうやって見つけたのか、必ず彼に花を差し出した。
ラルクはもちろん見向きもしなかった。
「公爵様は好きな花がありますか?」
唐突な質問に言葉を失った。
「そんなものがあると思うか?」
「公爵様はバラがとてもお似合いだと思います。まあ、どんな花でも似合いそうですけど!」
「話しかけたなら返事を待て。」
「5月には赤いバラをお持ちしますね。」
5月までここにいるつもりなのか?
「………」
ラルクは返事もせず、ひょいと顎をそらした。
成人女性を相手にする時間があれば、死について研究する方がましだった。
カミーラはおずおずと彼のそばに近寄った。
こうしていれば、ラルクは出て行けとは言わなかった。
ただの透明人間として扱うだけだった。
今もそうだ。
実は、彼は自分が甘えることにあまり抵抗がないことを知っていたが、口では毎回「どけ」と言っていたのだった。
『素直じゃないんだから。』
カミーラはくすくす笑いながら、自分専用の椅子に座ってラルクを見つめた。
控えめな光だけが灯された寝室の真ん中に机が置かれ、あちらこちらに本や資料が山のように積まれている光景は、確かにかなり独特だった。
『エセルレッドは代々学者の家系だっていうのも納得。』
しかし、あの立派な外見に傷だらけの体とは。
『似合わないようで、妙にまた似合うんだよな。』
剣を持つ姿のほうがずっと似合いそうなのに、こんなにきれいな手でペンを持ち、よくわからない言葉を書きつける様子もまたおかしかった。
どう見ても人間離れした外見だからだろうか?
ラルクを見守るのはとても面白かった。
ラルクの手がぴたりと止まった。
「壊れそうだな。」
「……えへ。」
カミラはきまり悪そうに笑った。
本当に間抜けな顔だった。
だからだろうか?ラルクは彼女に向かって手をぴしゃりと叩いた。
去れ、という意味だ。
カミーラは困ったような表情を浮かべ、ラルクの方へと近づいていく。
二人の間に三歩ほどの距離が残ったとき、ラルクが再び手をぴくりと動かした。
二歩近づいた。
そしてさらに一歩で詰め寄った。
ラルクがすぐそばに立つカミーラに向かって傷を見回しながら手を上げ、彼女の額をコツンと叩いた。
「!」
痛くはなかった。ただ、びっくりしただけだった。
カミーラは自分の額をそっと触れながら聞いた。
「……今の、何ですか?」
「何でもない。」
何でもないなんて?
カミーラは口元をふっと笑った。
直後、ラルクはカミーラに保護の魔法をかける。
女がしょっちゅう外に出るので、もし怪我をして戻ってきたときのために先に手を打っただけのことだ。
ラルクは何事もなかったかのように再び紙に視線を落とした。
そのとき、紙の端が黒ずんでいるのが見えた。
『備品を保管している倉庫には有紙復元魔法をかけていないのに、そこもだんだん影響を受けているな。』
この屋敷にある物はみな少しずつ黒く変色する。
紙や本はそうならないように大半に魔法処理を施したが、やはり完全に影響を避けることはできなかった。
有紙復元魔法があまりにも強力すぎたのだ。
それでこそ崩れかける自分の体をどうにか保ってこれたのだから。
なぜか気分が沈んだ。
まだ崩壊が頻繁に起こる時期ではなかったが、彼の体は崩れかけていた。
『この女とは違う。』
女をそばに置いていれば、ずっとこの事実を意識することになる。
日常が壊れてしまうだろう。
死のように静かにいられるはずがない。
遠ざけなければ。この女を追い出さなければ。
ただ殺してしまうべきだった。
脳内のあらゆる声がその言葉を繰り返した。
「公爵様。」
カミーラはまだ彼のそばを離れていなかった。
代わりに彼女は床にしゃがみ込んで彼を見上げていた。
ラルクは思わずカミーラを見た。彼女はにこっと笑った。
「竹林、知っていますか?」
「………」
「ある王国の言い伝えなんですけど、誰にも言えない秘密は竹林に向かって話すらしいです。一人で秘密を守り続けるのはとても大変でしょう。私があなたの竹林になってさしあげます。」
カミラは誰よりも完璧に秘密を守る竹林になることができると思っていた。
「一生、私一人であなたの秘密を持ち続けます。」
甘く見すぎだ。
自分の秘密は簡単に背負えるようなものではない。
自分がどれほど苦しむかも知らずに、よくもまあそんなことが言えるものだ。
彼女はちょっとびくっとした様子で付け加えた。
「でも、あまり遅くならないうちにお話しくださいね。」
ラルクは思わず柔らかい表情で振り向いた。
「なぜ?」
カミーラは目をくるくるさせながら、あっけらかんと答えた。
「えっと、うーん、言ってみれば使用期限みたいなものです!私、いつまでここにいられるかわかりませんし……」
彼女が竹林を選んだ理由があった。
もうすぐ死ぬ人間だから。自分は死ぬから秘密を吐き出せと言っているのだ。
死は人間ほど秘密を守れない存在もいなかった。
「実は私、罪人の身分でもありますから。あなたが望む通り秘密を全部話して、口を塞がれてもかまいません。私はそれでもいいんです。」
女は自分が消え去ることについて淡々としていた。
なんて立派な犠牲精神だ!
ラルクは内心、しきりに嘲笑しながらもイライラが募った。
気に入らない。本当に、気に入らない。
「そんなふうに言われて、俺が感謝すると思うのか?」
カミーラは彼が怒ったように見えて慌てた。
「い、いえ、そんなつもりじゃ……。」
「まるで自分が死ぬ人みたいに振る舞うつもりか? そうだな、偉大な犠牲精神で本当に驚くほど見事だな!」
ラルクが投げつけた皮肉の刃は、見事に自分にも返ってきた。
「何もないふりをしながら、心の中では死ぬことばかり考えてる、それって偽善だよ。わかる?」
「………」
「そこまでして良い人になりたい? そんなことして得るものが何なのさ!」
カミーラは完全に図星を突かれた表情で顔色が真っ青になった。
何も言えなかった。
彼の言うことはすべて正しかった。
彼女の顔は火傷したように赤く染まり、どうしようもなく恥ずかしくてつらかった。
ただ自分ができることで彼に報いたかっただけなのに、それがとても嫌な行動だった。
死をもって自分が他人よりも上に立とうとしたかのようだった。
「……ごめんなさい。」
カミーラは震える瞳を伏せながら、まるで独り言のようにつぶやいた。
今にも消え入りそうな声だった。
「ごめんなさい……。本当に、本当にごめんなさい……。」
「ごめんなさい」という言葉以外、もう言うことがなかった。
彼女はその場でぱっと立ち上がり、逃げるように彼の寝室を出て行った。
ラルクは無理やり冷静を保っていたが、怒りを抑えきれずに物を一気に投げつけた。
「ちくしょう!」
自分の気に入らないからといって、彼女の行動を一方的に非難していた。
カミーラは明らかに自分の辛さを隠していた。
他人が自分の不幸に巻き込まれないよう、誰にも迷惑をかけないように、大人らしく立ち振る舞っていた。
きっと笑うのもつらい状況だっただろうに、いつも笑っていた。
さらに、ラルクの暗い影を突き抜けて彼を慰めようとしていた。
彼女は自分にできることなら命さえも差し出そうとした。
最初に出会った時、必ず恩を返すと言った言葉を守ろうとしたのだ。
そんな彼女を彼は非難した。
死を隠して時間を稼ごうとするのは、実は自分だった。
そんな相手に、カミーラの行動を偽善だと責め立てた。
ガシャーン!
「ふざけるな!」
彼は荒々しく机を叩いた。
部屋が壊れるほどのその激しい怒りは簡単には収まりそうになかった。
カミーラが戻ってこない限り、無意味な動揺をやめ、彼は急いで背を向けた。
ギシッ!
カーテンを開けた瞬間、女が屋敷の外へ出て行く姿が見えた。
全身の力が一気に抜けた。
女が自分には引き止められない場所へ逃げて行ったのだ。
ラルクは悪態をつきながら手のひらで目を覆った。
無理やり怒りを抑えた。
実際、これが怒りなのかはよくわからなかった。
今感じているこの感情が何なのか、自分でもわからなかった。
もういい。追い出したんだ。むしろうまくいったことだ。
あの女が去ったんだから。
だから、これでいいんだ。
「……くそ。」







