家族ごっこはもうやめます【１２１話】ネタバレ

そうするうちにクリードは怪しくなった。

（皇帝がこんなに痩せていたのか・・・？）

何しろ久しぶりに会った上に関心もなかったが、改めて見ると筋肉がかなり落ちたようだ。

顔色も以前のようではない。

（健康が以前ほどではないという噂を間いたことはあるが、この程度だと？）

彼は生まれつき非常に強健な肉体を持っていた。

彼の2人の息子であるクリードとアレスを見ても、他の人に比べると非常に少ない努力で威圧的な体格としっかりした体つきを持つことができたからだ。

「痩せたようですね」

クリードは父親の健康を心配する親孝行な息子のように話した。

それがユリッヒハ気に入った。

「最近食欲がないからそうしただけだよ」

ダイアナは、隣で親子の軽い抱擁を見守りながら、母親らしい笑みを描く。

「陛下の食事は、このお母さんが気にしています。そんなに心配しないで、大公」

クリードは母親と名乗るダイアナのことを振り返った。

まあ、彼女は見返りとしてクリードの母親ではある。

（私の実の母親を殺害した戸籍上の母親にすぎないが）

ダイアナは彼の考えを知っているかどうか余裕のある笑みを浮かべながら続けた。

「さて、寝床は楽でしたか？特に気を使いましたが」

クリードは一瞬立ち止まる。

昨夜あった妙にかゆかったことがふと思い浮かんだためだ。

単純に顔を合わせるだけで心臓が裂けそうだったのに、あんなに濃厚な接触だなんて・・・。

クリードはため息をついた。

ナビアの体から自分の匂いが漂ってくる中で、乱れた姿まで思い浮かべると、一瞬くらっとする。

彼は喉が渇いていくような気分を感じながら、遅れないように皇后の言葉に答えた。

「・・・はい、よかったです」

彼らは和やかな雰囲気の中で談笑する。

他人が見れば、この上なく和やかな家庭のように見えるはずだ。

まもなくソフィア皇妃とモニカが到着すると、彼らは宴会場に向かった。

勝利の喜びを分かち合う時間だ。

「皇帝陛下です！」

相次いで皇后、皇妃、そして皇帝の子たちが呼ばれると、宴会場を歩き回りながら互いに楽しく挨拶していた貴族たちが壇上を眺める。

彼らの表情は一様に好奇心に満ちていた。

果たしてクリード・アイルツはどんな人なのか？

まもなくクリードが姿を現す。

「・・・あら」

3月生まれのクリードは成人したばかりの青年だった。

すらりとした姿を見ると、まったく幼く感じられなかった。

クリードは15歳から5年近く戦場で過ごした。

少年はどこよりも険しい場所で男になる時期を過ごし、誰もが簡単には手に入らない雰囲気を持つことに。

確かに彼は親切に見えなかった。

いつも笑顔で優しくまっすぐにふるまうアレスとは違って、涼しい温度を持った人に見えた。

あまりにもハンサムな男が近寄りがたい雰囲気を漂わせて、さらに魅力的に見える。

クリードは一瞬にして最も結婚したい男として急浮上した。

「みんなグラスを持て！」

ユリッヒはシャンパングラスを手に持ってさっと持ち上げながら叫んだ。

貴族たちもこの楽しくて幸せな日を完全に楽しもうとするかのように、皆笑ってグラスを持った。

「私たちは勝利した！エデン帝国の繁栄は無限であり、世界最強の覇者として永遠である！」

ワアアアー！

皇帝の叫びに貴族たちはさらに歓呼する。

戦争の勝利により、帝国はより豊かになるだろう。

その喜びに誰もかれも酔いつぶれて「エデン帝国万歳！」を連呼した。

ユリッヒはクリードを呼び寄せる。

クリードは．非常に慎ましやかな態度で彼のそばに立った。

「我々を勝利に導いた偉大な将軍を紹介する」

座中は物音を殺していたが、目つきは騒がしかった。

「私の次男であり、今回の戦争の立役者であるクリード・アイルツ大公である」

この場に集まった人の中で、その事実を知らない者は誰もいない。

彼らはクリードの誕生日、年齢、下賜された邸宅の位置はもちろん、彼が未婚で婚約者もいないことに目をつけていた。

彼は故人の首都貴族社会に突然現れた、浮上する神性のようだった。

しかも血統は最高だったし。

クリードは自分に注がれる傷と憧れ、あるいは時と劣等感のような感情に全く興味がなかった。

彼は最も優秀な血統を得たが、ここの誰よりも貴族とは距離がある。

（そうするしかない）

彼は7歳まで水晶の監獄に入れられ、獣のように育ち、その後はまた貴族的と言うには妙な雰囲気のエセルレッドで育った。

それさえも貴族の標本のようなナビアさえもクリードの前では気楽に行動したほどだ。

（姉さんが、まだ見えないんだけど）

クリードは密かな覗線で周りを見渡し、ナビアを探し回ったが、銀色の髪の毛を一つも見えなかった。

エセルレッドの地位が今や皇室に準ずるという話が回るほど彼女の位置が高くなったので、遅く宴会に参加しても誰一人悪く思う人はいなかった。

むしろ人々はこれを当然のことと思っている。

今日の宴会の主人公はクリード一人ではなかった。

ナビアが初めて公式的な場に姿を現し、社交界に出師の表を投げるデビュタントの日だ。

彼女も今日の宴会のもう一人の主人公だった。

皇帝の息子の自慢が全て終わり、人々は乾杯を叫びながら杯を空ける。

楽団は最初の曲を演奏する準備を終えた。

「アレス皇子殿下とアグニス公女ですね」

今日の最初のダンスはクリードが飾るのが当然だ。

ただクリードは未婚でパートナーがいない。

したがって第一皇子であるアレスが自分の婚約者であるヴィヴィアンとダンスフロアに立って初めて踊ることになった。

ヴィヴィアンは相変わらずかわいくて愛らしい外見をしている。

人々は「アレスとヴィヴィアンが善男善女」と口が渇くほど誉めていた。

「お二人ももう大人になったので、結婚する時になったと思いますが、お便りがありませんね？」

誰かの疑問にある貴族が妙な笑みを浮かべる。

「巷には、アレス皇子殿下に別に恋慕する女性がいるそうです」

ヴィヴィアンはアレスと結婚していなかった。

正確には，アレスが結婚を先延ばしにしていたので、まだ「アグニス」だった。

「もしそうなら、先に整備をした方が費用もかかると思うから、結婚をもっと急がなければならないのでは？」

「そうなんですよ。皇子殿下はどういうお考えなのか・・・」

そのように二人が踊っている時、宴会場の入口からざわめきが炎のように徐々に広がり始めた。

一つ二つと怪謗な表情で人々が眺めるところに沿って視線を向け、発見する。

「・・・エセルレッド公女だよ」

あちこちからかすかなささやきが流れた。

「昨日、ファミリアのデパートで見た姿と同じだよ。彼女が正しい」

「エスコートする人はウラジオナ侯爵に見えるね」

同じ銀色の髪の毛に似た外見のエルキンとナビアが並んで歩いてくる姿は、まるで童話のような神秘的な種族のようだった。

あちこちから嘆きか、嘆きか分からないうめき声が流れた。

「あれ、ところでエセルレッド公爵が見えないね。どうして彼がエスコートせずにウラジナ侯爵がエスコートするの？」

ざわざわ！

雰囲気が騒然となり、アレスとヴィヴィアンが途中でダンスを止めてしまった。

ヴィヴィアンはひどく不愉快だったので、ナビアをさっと睨みつける。

（まさか、帝国で最も尊い女性になる人は私なのに、あんな女が私を邪魔するの？）

ヴィヴィアンは将来皇后になる人だ。

エセルレッドがとんなにすごいと言っても彼らは貴族なので、自分とは格が違っていた。

「皇室の行事にこんなに遅く到着するなんて、本当に失礼ですね。そうじゃないですか、殿下？」

ヴィヴィアンは鋭い声で軽く話し、アレスを見つめる。

「・・・殿下？」

ところが、彼の表情が尋常ではなかった。

心臓がドキっとする。

信じたくない不吉な予感が全身を襲った。

アレスがナビアを望んでいるという恐ろしい予感が。

いや、違うと思う。

彼がいつナビアを見たって？

今一目で惚れたはずもないじゃないか。

ヴィヴィアンは彼と自分の間に愛情がないことをよく知っていた。

そんなことは関係ない。

どうせヴィヴィアンも自分が握る権力に関心があるものだったから。

（これは裏切りだ！）

ヴィヴィアンはナビアを容認できなかった。

同じ夫を持つようになる状況も嫌だったし、アレスの寵愛が彼女のところに行くのも嫌だった。

ナビアが嫌いだった。

（お姉さんが死んでしまってほしい）

四肢をずたずたに裂いて、あの綺麗な顔まですべて使えなくなってしまってほしい。

どうか、どうか。

ヴィヴィアンが毒々しく睨みつけている時、いざ呪いを受ける当事者であるナビアは回想に浸っていた。

（こんなのも本当に久しぶりだね）

皇室の舞踏会に参加し、好奇心に満ちた覗線を一身に集めるこの状況に慣れていた。

しかし、今世では初めて。

（いや、こういう覗線も初めてなのか？）

ナビアは自分に対する深い貪欲の覗線の他にも、非常に難しそうな視線も感じた。

彼らはナビアよりもエセルレッドを恐れていたのだ。

（アグニス公女の時は道具に過ぎなかったから、私を恐れる視線はなかった）

そのためか、かなり新鮮な気分だった。