こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

381話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 記憶の色⑦
『奇妙なことだ。』
ランタナは監獄で体を丸めたまま、何かおかしなことが起きていると考えていた。
ネレゲンに来てから約1週間。
つまり暗殺を試みてからほぼ1週間が経過していたが、まだ命を奪われていない状態だった。
平穏な日々が流れていた。
ここに来た初日、そして二日目は緊迫した状況だったが。
ネレゲン側では背後に誰がいるのかを突き止めようとしていた。
当然の手順であり、驚くことでもない。
昼と夜。
脅迫と懐柔が交互に行われた。
しかしランタナは口を開かなかった。
『何も言わなければ拷問されると思っていたのに。』
しかし少しの危害も加えられなかった。
ただ、この場所に押し込められ、放置されているだけ。
ランタナは丸まったまま膝を抱えた。
『クロネンバーグ王の言葉通りか。』
彼らはランタナを送り込み、捕らえられても大した問題にはならないと言っていた。
[ネレゲンは「偽善者」の集団だ。周囲の視線を気にする者たちだから、幼い君にひどい仕打ちはしないだろう。]
偽善者。
ランタナは口の中でその言葉を繰り返した。
「偽善者」という言葉がよく似合っていると感じた。
『みんな私を殺したいと思っているはずなのに、耐えているなんて。』
ネレゲンの王妃もそうだった。
自分の顔を見て、まるで亡霊でも見たかのように驚いた表情をしながら、何事もなかったかのように振る舞っている。
『再び会いたくない。』
王妃を見たのは初めてだったが、ランタナは長い間知っていたような気がする彼女が嫌いだった。
理由は分からなかった。
実際、嫌いなのは王妃だけではなかった。
ネレゲンの国王も、その娘も、ずっと前から知っていたような気がしてならなかった。
『どうしてこんなにも馴染み深いんだろう?』
自分に問いかけても、返ってくる答えはなかった。
自分をここに送り込んだクロネンバーグ王が彼らの脅迫に口を閉ざしてきたからなのか。
[その国の王妃であるアビゲイルは親族ですら冷たく外面を装う悪女だ。異種族を取り込んだ……。裏切り者であり、あなたのように黒い魔力を持つ魔女でもあるのだから。]
王妃が嫌いな理由は数多くあったが、魔力の色もその一つだった。
ランタナは両腕で膝を抱えた。
『あの女。黒い魔力を持っているのに幸せそうに見える。』
ランタナは生まれた瞬間に炎に投げ込まれた。
黒い魔力を持っていたからだ。
むしろその時に死んでいればよかったのかもしれない。
火に焼かれてもこの忌々しい黒い魔力は消えず、顔には消えない傷跡だけが残った。
誰かが死んでいく中でランタナを引き取ったが、その後の生活も平穏とは言えなかった。
[何?黒い魔力だって?それならあなた自身じゃない!]
[水に沈めて死んでしまえ!]
自分に優しく話しかけ、温かい食事や寝床を与えてくれた人々が黒い魔力を持つことを知れば、彼らは驚愕するに違いなかった。
その後、黒い魔力を持っていることを隠してはいたが、状況は良くならなかった。
女官の控え室で肩身を狭くして過ごしていたときも、周囲の視線は冷たかった。
[ランタナと一緒にいたくないわ。顔が怖すぎるもの。]
[あんな不気味な傷跡を持っているなんて、きっとあの子にも問題があるんでしょう。]
最初は驚いた。
このような傷を持つことになったのは、自分のせいではないのに。
ランタナは捨てられてしまった。
魔力のせいで、そして顔のせいで。
やがて笑う方法を忘れてしまい、陰鬱で重々しい性格になった。
黒い魔力を持っているという理由だけで、世界はランタナを見捨てた。
『でも、どうして王妃はあんなに幸せそうに見えるんだろう?』
王妃もまた自分と同じ黒い魔力を持つ者であり、魔女だった。
見捨てられるべきで、打ちひしがれるべき存在。
自分が不幸である分だけ、王妃も不幸でなければならないはずだと考えた。
彼女の死を願った。
それが公平だと感じられた。
『ブランシュよりあの女が死ねばいいのに。』
心の中で自分の血をすべて注いでも、王妃に呪いをかけたいと思った。
『とにかくここから出なければ。無事に戻れば、クロネンバーグ王が報酬をくれると言っていたから。』
王は暗殺を命じ、報酬を約束した。
魔法使いを呼んで顔の傷を治し、新しい身分と莫大な金を与えると言った。
それさえあれば、新しい人生を生きることができる。
それには脱出しなければならなかった。
『透明薬は十分あるだろうか。それさえあれば、脱出は簡単なのに。』
クロネンバーグの国王は逃走時に使うよう、透明魔法がかけられた薬を渡してくれた。
使用する直前、セイブリアンが妨害したため使用することはできなかったが、
『まず拘束具を外さなければ。』
拘束具を壁に押し付けてみたが、音しか鳴らなかった。
そして同時に、監獄の扉が開く音が聞こえた。
ランタナはびくっと驚いて手を引っ込めた。
看守が監視しているのだろうか?
少しして足音と共に誰かが現れた。
その姿を見てランタナは歯を食いしばった。
重々しい顔、重々しい女性。
王妃が目の前に立っていた。
看守がおどおどしながら話した。
「王妃陛下、お気をつけください。出てくるものが獰猛で、まるで獣よりも危険です。」
ランタナには敵意を隠さない看守だった。
ランタナは中に入ってきたリリーを睨みつけるように見つめた。
ランタナは黙ってリリーの言葉を待った。
一方でリリーの視線は冷たかった。
我が子を殺そうとしているような怨恨を抱く人の目には見えなかった。
「どうして来たの?」
「一緒に行くところがある。」
これから拷問室に向かうのだろうか。
どれほど酷いことが起きようとも怖くはなかった。
火に投げ込まれたこともあるのだから、拷問などガスのように感じられた。
扉が開いた。
ランタナは静かにリリーの後について行った。
拷問室があるなら、地下の監獄よりもっと低い場所にあるのだろう。
しかしリリーは上に向かって進んだ。
薄い日差しが目に入った。
今日は雨が降るのだろうか、空が暗く陰っていた。
『拷問室は一体どこにあるのだろう?地下にあると思っていたのに。』
別の建物にあるのかもしれないが、外に出ることはなかった。
リリーがある部屋の扉を開けると、中には誰かが座っているのが見えた。
それはブランシュだった。
清らかな顔だと思っていたが、今日はどこか疲れているように見えた。
彼女はその場でぱっと立ち上がり、リリーのもとへ駆け寄った。
「お母様、私が行くべきでした。ただ監獄に行ってしまって……。」
「言ったでしょう、こんなことひとつも大変じゃないって。ブランシュは少し休まないといけないのよ。」
自分を前にして、このあまりに平然とした会話は一体何なのか。
母と娘が親密に話している間、何やら秘密めいた囁きが聞こえてきた。
「ブランシュ、『それ』はすべて準備できているの?」
「はい。もちろんです。徹底的に準備しました。」
二人が薄笑いを浮かべながら微笑んだ。
薄暗い昼間の中でも部屋は暗かった。
その陰鬱な雰囲気に、ランタナは背筋がぞくりとした。
『私に一体何をしようとしているつもり?』
リリーが低い声で笑いながらランタナを振り返った。
そしてにやりと笑った。
その笑みは紫色の瞳に計画を宿していた。
「ランタナ、座って。」
まるで引き寄せられるようにランタナは席に座った。
その時、異様な震えが膝に伝わった。
震えを隠そうとしたが……気を使っているふりをして、無理に冷静な態度を装った。
「私から情報を聞き出すつもりかもしれないけど、諦めたほうがいいわ。懐柔でも拷問でも、何をしても私は何も話さないから。」
冷ややかな声にも二人は冷静だった。
リリーはそんなランタナを静かに見つめてから口を開いた。
「背後について話してくれればそれに越したことはないけど、それが一番重要なわけじゃないの。大切なのは……。」
リリーが突然ランタナの手首をつかんだ。
暗闇の中から引きずり出された手のように、その様子は不気味だった。
幽霊の声のようなリリーの言葉が聞こえた。
「手首が木の枝みたいに枯れているわね。」
「……何?」
なぜ急に手首の話をするのか理解できなかった。
その間、ブランシュが侍女たちに向かって言った。
「ここに『あれ』を持ってきて。」
リリーの命令に応じて侍女たちが忙しそうに何かを運び始めた。
ランタナはこれから何が起きるのかを予測できず、息を呑んだ。
どうなるのか分からず、ますます恐怖を感じた。
次々と銀の食器がテーブルの上に置かれ始めた。
よく切れそうなナイフ、肉を突き刺せそうなフォーク、そしてスプーン……?
すぐに目の前が料理でいっぱいになった。
真っ白で柔らかそうなパン、クリームシチューからは食欲をそそる香りが漂ってきた。
厚く切られた肉やさまざまな果物がたっぷり盛られており、デザートとしてチェリーパイまで完璧に揃えられていた。
ランタナは言葉を失った。
そのとき、リリーの笑い声が聞こえ、驚いて隣を振り向いた。
彼女は自分を見つめていた。
ブランシュもまた何か言うつもりがないかのように邪悪な微笑みを浮かべていた。
何をしようとしているのか理解できず、ランタナはただ口を開け閉めしているだけだった。
そのとき、リリーが冷たい声で言った。
「食べなさい。私の目に映る以上に、標準体重になってもらう必要があるから。」
ランタナの予想通り、拷問が待ち受けていた。
それはあまりにも残酷で、「食べ物拷問」と呼ばれるものだった。
「ランタナ、あの子はまたどこへ行ったの?」
侍女たちがランタナの部屋を掃除していたが、部屋には人の気配がなかった。
荒らされた形跡がなければ、最初から空き部屋だったのだろうと思われた。
「食事の時間になるたびにいなくなるのね。」
「そうですね。王妃様がご存知になったら心配なさるでしょうに……。」
すでに昼食の時間が近づいており、ランタナを呼びに来たが、本人は姿を見せなかった。
「どこかに隠れているんでしょう?探してみましょう。」
このようなことに慣れている侍女たちは、諦める代わりにランタナを探し回った。
しかし、今日に限ってランタナの姿が見当たらなかった。
侍女たちがあちこちを探し回りながら2階に上がると、ランタナは彫刻像の後ろに身を潜めて息を潜めていた。
『行った?』
食事の時間になるたび、ランタナは望まない隠れんぼをしていた。
侍女たちの声が聞こえなくなったのを確認してから、ようやく隠れ場所から出てきた。
『まったく、あの女は食べられなくて死んだ幽霊にでもなるつもりかしら。』
そんなことを考えていると、突然お腹が激しく鳴る音がした。
ランタナは怒りを込めたように自分の腹を軽く叩いた。
以前なら少しくらい飢えてもどうってことはなかったのに、最近はそれにも慣れてしまったようだった。
ランタナはそんな自分の変化が嫌だった。
『とにかく、ここを出よう。ここにいたらまた誰かが来るに違いない。』
ランタナは周囲を伺いながら窓枠を越えてそっと外へ抜け出した。
まだ侍女たちの目に見つかっておらず、静寂を切り裂くように草を踏む音が響いた。
外に出ると、周囲はひっそりと静まり返っていた。
周囲をぐるりと見回していると、ふと目に2階の窓が映った。
リリーが見えた。
彼女は侍女たちと何か話をしていた。
そして不安げな表情で小さくため息をついた。
ランタナを探しているようだった。
ランタナは茂みの中に身を潜めながら、リリーが去っていくのをじっと見つめていた。
『奇妙な女だ。』
「奇妙な女」としか表現できなかった。
自分の娘を殺そうとした怨敵が、どうして一緒に食事をしようとするのか?
実際、食事の時間そのものが嫌いではなかった。
嫌う理由がなかった。
8年という短い人生の中で、いつも待ち望んでいた瞬間だったのだから。
暖かい食卓をどれほど夢見てきたことか。
その温もりと香りに、思わず涙がこぼれそうになった。
初日は理性を失って食べてしまい、次の日も惨めだった。
あの女に支配されているような気がしたからだ。
自尊心が傷つき、いまだに疑念が残っている。
『本当に私に何か仕掛けてるんじゃないの?最近、悪夢もだんだんひどくなってきたし。』
ランタナは以前から奇妙な夢を見ていた。
銀色の月明かりの下、冷酷そうな顔をした女性が出てくる夢だった。
その女性はランタナをじっと見つめていたり、涙を流していたりすることもあった。
共通しているのは、いつもランタナに責めるような言葉を投げかけてくることだった。
「もう食べるのをやめなさい、アビゲイル。食卓を汚すようなことはやめて。」
「美しくない女には価値がないわ。せめて自分の管理くらいしなさい。」
「なぜ泣いているの?これもすべてあなたのためよ。」
夢の中の女性はいつも苦しそうだった。
彼女は自分が美しくないことを恐れており、軽はずみな行動が笑われるのではないかと常に神経を尖らせていた。
そんな女性の心を、ランタナはある程度理解できる気がした。
幸せになる資格がない。
自分もそうだった。
この顔のせいで周囲の人々が自分を軽蔑し、避けてきた。
『それなのに、どうして王妃は……。』
王妃は決して際立った美人ではなかった。
むしろ、彼女のそばにいる侍女たちがより美しかった。
それでもいつも幸せそうに見えた。
その事実にランタナは怒りを覚えた。
『どうしてお前は幸せなんだ?私は、夢の中の女性の顔のせいでこんなにも不幸なのに。』
そんな反感がある以上、リリーと向かい合って食事をするなど到底考えられなかった。
一食分程度を盗むことくらい、大したことではなかった。
後で厨房から食べ物を失敬すれば済むことだ。
以前には何日も自分の吐息を忍ばせたこともある。
夜が明けるまでどこかに隠れていなければならない。
そう考えながら隠れていた場所から抜け出すと、目の前に誰かが立っていた。
「えっ?ランタナじゃないですか?」
ブランシュだった。
思いがけず、この女性と顔を合わせるなんて。
この女もリリーと同じくらい好きになれない。
今日はベリテも一緒だった。
ベリテの冷たい視線がランタナに向けられた。
「おい、ここで何してるんだ?」
ランタナは片方の口角を上げて笑った。
警戒心に満ちた反応が逆に歓迎されるような気分だった。
笑うたびに化粧が崩れ、また無表情な顔に戻ってしまうけれども。
「どうしたの?私がまた暗殺でもするとでも?」
挑発は成功した。
ベリテが前に出ようとしたが、ブランシュがそれを止めた。
「ランタナにそんな意図はないだろう。ベリー、安心して。」
ベリテは、よく訓練された猟犬のように片眉を上げて問いかけた。
ブランシュは薄く笑みを浮かべながらランタナを見つめた。
「ねえ、ランタナ。ちょうど提案したいことがあるんだけど。」
「何よ?」
「魔法館で黒い魔力の研究を進めているんだけど、ちょっと手伝ってもらえる?報酬はもちろん支払うわ。」
その提案にランタナは顔をしかめた。
報酬を支払うって?
奴隷として扱うのなら、むしろ理解できると思った。
「本当に笑えるわね。私の魔力が怖くないの?」
「黒い魔力は貴重な才能よ。どうして怖がらないといけないの?」
「なぜなら、当然怖がるべきだからよ。黒い魔力は扱いが難しく、危険な力だから。」
それでもブランシュは、それを才能だと言った。
ランタナは目を細めてブランシュをじっと見つめた。
本心だとは信じられず、演技のようにしか見えなかったが、なんと見事な演技なのだろうと思った。
そして思い出した。
クロネンバーグの王が以前言っていたことを。
「ブランシュ、その家系がアビゲイルを許しただって?でもそんなはずはない。幼い頃、アビゲイルがあんなに酷い虐待を受けたのに、確実に恨みを抱えているだろう。」
王はそう言ったが、王妃とその娘は、無垢で愛らしく見えた。
その話を聞かなければ、彼女たちが敵意を持つ可能性など思いつかなかっただろう。
そうでなければ、あの優しい娘の姿すら演技だったのか。
自分を虐げた親をどうして許せるだろうか。
ランタナ自身も実の親を許すことができなかった。
「お前、昔、王妃に虐待されたことがあるのか?」
突然の質問に、ブランシュの表情が揺れた。
その動揺を見て、ランタナはほのかな勝利感を覚えた。
「それにしても、あの女性とうまくやるものだね。本当に見事な演技力だ。それだけの演技力があれば、私の魔力を見ても平然としたふりができるだろうね。」
「……演技ではありません。」
今回もまた演技をしているのだ。
ランタナは心の中で冷笑しながらブランシュを見つめた。
しかし、演技が可能なら、目の輝きまで変えることができるのだろうか?
ブランシュの表情には一点の曇りもなく、ランタナは一瞬混乱した。
「お母様が私にひどいことをしたことがありました。でも、許しました。」
「どうしてそれが可能なの?」
「この場所ではお母様の味方は誰もいませんでしたし、お母様から謝罪を受けたからです。」
その言葉を聞いたランタナは、短い頭痛を感じた。
そして、あの夢の中の女性が一瞬幻のように現れ、消えていった。
今回はいつもの場面とは少し異なっていた。
目の前にいる皇帝に似た、幼い少女を叱責する場面。
その背後では、その子に物を投げつけたり、服を引き裂くような場面が次々と浮かび上がった。
その少女に対して同情心が芽生えた。
なぜ、こんなにも幼い子供を苦しめるのか?
この子が一体何をしたというのだろう?







