悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す

悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す【50話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。 ネタバレ...

 




 

50話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • リリカの力③

次はいつだろう?

ちょうど名残惜しさが残るタイミングで、リリカは未練も見せずに立ち去った。

まるで不意に現れたときと同じように、去っていくのも突然だった。

久しぶりに顔を合わせて、ろくに言葉も交わせなかったヤコブは、彼女を引き止めることもできなかった。

だからこそ、彼はただ静かにリリカの「次」を待つしかなかった。

――【今日は行けない、ごめん】

約束した日に来ないこともあれば、

「やぁ」

「な、なんだよ!?」

予告もなく突然現れて、まるで当たり前のように腕を組んでくることもあった。

拒むことなんてできなかった。

抵抗する間もなく、ヤコブは彼女のペースに巻き込まれていくしかなかった。

こんなにも美しい公爵令嬢が、一族の他の誰でもなく自分だけを訪ねてくるなんて。

その事実に、ヤコブはどうしようもない優越感を覚える。

「俺はお前たちとは違う。公爵令嬢がなぜ苦しんでいるのか、わかるんだ。」

「公爵令嬢は……お前たちより俺の方が気が楽だって言ってた。」

「公爵令嬢――いや、リリカお嬢様は……“ずっと会いたいと思ってた”って言ってたんだ。」

「……」

「私、最近とても忙しくて……だから、私のそばにいてくれない?」

リリカが、他の誰でもなくヤコブを訪ねてくる理由。

『そうでなければ、わざわざ来るはずがない。』

だがヤコブは、リリカの真意をある程度察していながらも、結局、彼女の思惑に抗うことはできなかった。

「そう言ってみただけです。私の力が必要だから来たんじゃないんですか?ええ?」

リリカは否定しなかった。

ただ、わずかに目を伏せただけだった。

ゆっくりと視線を落としたその顔には、か細く震えるような光が宿っていた。

唇も少しだけ震えている。

ヤコブは目の前の少女から目を離すことができなかった。

――このお嬢様、いったいどれだけ辛い思いをしてきたんだろう。俺なんかに「一緒に行こう」なんて言うくらいに……特別仲が良いわけでもないのに。

そして、続くリリカの言葉が決定打となった。

「ヤコブ、あなた……ここで幸せなの?私にはそうは見えないけど」

「……」

「ここで、一族に蔑ろにされて、後ろに下がってばかりいるあなたを見るのは嫌なの。一緒に行きましょう。」

リリカはヤコブの手を取って、自分の小さな両手で包み込んだ。

「お嬢様についていくなんて、簡単に決められることじゃ……」

「あなたは、私にとって助けになる人よ。」

紅河の一族は、いつもヤコブの力を隠せと教えてきた。

“無謀で危険だ”と。

しかしリリカだけは違った。

むしろその力が自分の助けになると信じ、彼に頼みごとをしたのだ。

「ヤコブ、あなたもこのまま隠れて生きていきたくないでしょ?自分の力を発揮できるよう、私が手伝ってあげる。」

「……まあ、一度くらいなら、ついていって手伝えるかも……。」

「ありがとう!」

リリカはヤコブの言葉が終わるよりも早く、静かに彼に歩み寄った。

華奢な体つきのヤコブにもかかわらず、美しい少女は迷いなくその胸の中にすっぽりと収まる。

抱きしめた瞬間に伝わってくる体温は、驚くほど柔らかく、そして甘やかだった。

――これでいい。

この先どうなるかなんてわからない。

けれど、今この瞬間だけで十分だった。

結局、ヤコブはリリカに導かれるようにして、プリムローズ公爵家へと足を向けた。

最初に誓った決意とはまるで違う気持ちで。

 



 

「ふう……これからは、窓を開けっぱなしにはできないな。」

窓を閉めると、私は外の景色に目を向けた。

ぼんやりと考えながら外を眺めていた。

いつの間にか気温がぐっと下がり、気づけばもう秋がすぐそこまで来ていた。

『ユネット事業を始めてからというもの、季節の変化に敏感に反応するようになったな。』

自分でも以前より“まともな事業家”らしくなってきた気がする。

そんなことを思いながら一人で静かに過ごしていると、侍女の一人が慌ただしく駆け込んできて知らせた。

「えっ?フリムローズ公爵家で狩猟大会を開くって?」

「はい、公爵様がぜひ開催するとおっしゃったそうです。普段は狩りなどにまったく興味をお持ちでなかったので、私たちも突然のお話に驚きました。」

私は軽く首を傾げた。

『狩猟大会なんて、公爵様の好みじゃないはずなのに……。』

貴族たちが己の武勇を誇示するための催し――

子たちは、そうした連中のためにわざわざハンカチを差し出し……まるで恋愛を盛り上げるために場を整える裏方みたいなものだ。

露骨な駆け引きや、面倒な視線の探り合いになると考えるだけで、すでに頭が痛くなる。

若い貴族たちはほとんどが参加する雰囲気だから、嫌でも顔を出さざるを得ない。

それでも、面倒な争いや付き合いごとは極力避けたいのが本音だった。

――問題は、これがプリムローズ公爵家が主催する“狩猟会”だということ。

父が主催する催しに、子どもたちが参加しなければ妙な噂になるのは目に見えている。

欠席するなら病気や大怪我でもしていない限りは通らないし、下手をすれば不穏な噂が広まるだけだ。

――何より厄介なのは、これはリリカのために用意された場だということだ。

プリムローズ公爵自身は狩猟会に特別な興味があるわけでもない。

公爵が突然、狩猟大会を開くと決めた理由は、容易に推測できた。

『偽の化粧品を作って騒動を起こしたリリカのせいだろう。どうやらリリカがうまく父親を動かしたみたいね。』

たとえ社交界が家の権威とは無関係に回っているとしても、家門所有の森を持ち、狩猟獣を放ち、広大な土地を管理するのは容易ではない。

つまり今回の狩猟大会は――プリムローズ公爵家の威厳を誇示すると同時に、“リリカには逆らうな”という暗黙のメッセージでもあった。

これまでどんな集まりにも招待されなかったリリカが、その日はきっと最上席に座ることになるだろう。

それだけで、もう誰もリリカを軽んじることはできない。

『リリカがやってのけたことを思えば、さすがに皆、反省せざるを得ないわね。』

『わざわざ二人で見守る必要があるのか?』

横から見ているこちらが嫉妬してしまうほど、まるで目に入れても痛くないという様子だった。

――これでは、この物語が育児ものではないと言い切れなくなるじゃないか。

父上も本当に大したものだ。

『もし僕が同じことをしたら、きっと自室の外に一歩も出られなかっただろうに……』

口の中に苦味が広がった。

リリカをあまりにも大事に扱うので、皮肉を込めて「贔屓だ」と言いたくなるほどだ。

母が口にしたとしても、似たような反応をされるのが目に見えている。

「実の娘じゃないから、気を遣っているだけ」と言われるのがオチだ。

『父上は本当にリリカには甘い。優しくて、すぐに許してしまうんだから』

リリカがあれだけ騒動を起こしても、さらに何も咎めることができない自分が情けなかった。

昔、私が幼くて未熟だから父に愛されないのだと自分を責めていたことが、今思えば滑稽に思える。

― ユリア。お前は姉なんだから、リリカの半分でも見習えないのか?うん?

― で、でも……私はわざとそうしてるわけじゃなくて……。

― 同じ娘なのに、どうしてお前にだけ声を荒げることになるんだろうな。これが私のせいだと思うか?

― ……

― 私だってリリカのように、お前のことも可愛がってやりたいんだ。こんなふうにしたくてしてるんじゃない!

今日もまた、あのときの苦い記憶が鮮明に蘇った。

結局、父は私よりリリカを愛していたのだ。

性格も態度も、何かと私を責め立てていたあの二面性。

『結局のところ、何でも私のせいにしたかっただけだったんだ。理由もなく子どもを差別するのは、愛情じゃない。』

プリムローズ家が名門であるとはいえ、父上は狩猟大会のような催しを「無駄でくだらないものだ」と誰よりも強く主張してきた方だった。

『つまり、格式ばった行事よりも、愛する娘の方が大事というわけですか。』

しかも、その“娘”の中に自分が含まれていないのは明らかだった。

大規模な催しを開くということで、たくさんの使用人たちが走り回り、屋敷の中も慌ただしくなっていた。

それでも公爵は、今まで一度も主催したことのない狩猟大会の準備を始めると言い出し、しばらくの間、屋敷中が騒然とした。

そんな皆が浮き足立っている最中、リリカは一人の気弱そうな青年を伴って戻ってきた。

「ジャコブよ。私の専属従者として連れてきたの。」

突然現れた下男に、誰もが驚いた。

なんの前触れもなく、急に連れて来て使用人として置いたというのだから。

いくら下働きとはいえ、公爵家で働くというのは、誰でも望めばできるようなことではない。

厳しい審査を経て雇われる使用人たちとは違い、“ジャコブ”という男は、特に優れた外見でもなく、特別な才能があるようにも見えなかった。

『とはいえ、だからといって強く反対する理由もないな。』

貴族令嬢が身分の低い平民と恋愛ごっこでもするのでは――そんな噂を心配する声も一部にはあったが、ジャコブにはそうした危険を感じさせる要素すらなかった。

結局、騒ぎはあっという間に収まり、その日を境に公爵邸は、また別の意味で静けさを取り戻したのだった。

「ちょっと……さっきのお言葉、間違っていましたよね?」

「間違うことだってあるでしょう?」

「ちょっと待ってください。いくらお嬢様の専属とはいえ、その態度は何なんです?正直に言うと、今日だけじゃなくていつもそうじゃないですか!」

女官長ジェラの胸中の怒りが爆発し、ジャコブも思わずたじろいだ。

「謝罪の一言もないなんて!」

リリカは「幼い頃に顔を見たことがある子」としか説明しておらず、ジャコブの素性について詳しく話してはいなかった。

リリカの幼い頃とは違い、現在の貴族社会はより複雑で格式を重んじるものになっている。

もし彼女が連れてきたのが平民であれば、通常なら出自や経歴について根掘り葉掘り聞かれるはずだった。

しかし、ジェラは黙ってジャコブを受け入れた。

長年知っている平民に偶然会った、というには不自然なことだった。

公爵邸で自分の味方がひとりもいないから?

人々は、リリカがジャコブを連れてきた理由をその程度にしか考えなかった。

単なる同情心や、孤独からくる気まぐれだろうと。

けれど、私は他の人たちよりも少しだけジャコブのことを知っていた。

『小説の中でも彼はリリカに連れてこられた男だった。リリカの周囲には男が多かったが、ジャコブだけはなぜか印象的に描かれていたのを覚えている。』

『〈天真爛漫なお嬢様を愛してください!〉に登場するセリアンやヴィエラ、令息らは
容姿や能力などで他の登場人物より優れていたけれど、ジャコブはそうではなかった。』

メインヒーローでもなく、サブヒーローという立場にしてもこれといった特別な魅力がなかったのだ。

――それでも、“サブ”であれ“男主”は男主でなければならないのだから。

読者たちは、リリカが優しいからこそジャコブを助けているのだと考えていた。

だが、私はリリカが「優しい」とはまったく思わない。

むしろ——

『助けてあげるというよりは、半ば放り出してるような気がするんだけど?』

本当に助けるつもりなら、もっときちんと教え導いたり、教育したりするものではないだろうか?

ジャコブという男は、ただひたすらリリカだけを待ち続けていた。

公爵家の人々の中にいても、なじもうとする様子はまったく見られない。

「ちょっと性格に難があるみたいです。私たちのこともあまり好きじゃない気がしますし……」

私はジェラに、密かにジャコブのことをよく見ていてほしいと頼んだ。

しかし、ジェラがその話を引き延ばしてしまい——わざわざ探るまでもなく、彼の性格はすぐに明らかになった。

ジャコブは行く先々で小さな問題を起こしていたのだ。

「少し、調子に乗ってる気がします。人を見下しているというか……。リリカお嬢様も以前のようではないのに、何を信じてあんなに威張っているのか分かりません。」

「ふむ……。」

「公爵様がリリカお嬢様のために狩猟大会を開かれるそうですが、それだってただの気まぐれの催しでしょう。」

ジェラは鼻で笑った。

「公爵家の中では多少、以前よりは気を遣うようになるでしょうが……社交界での評判はむしろ悪化すると思いますよ。まさか皇太子殿下と結婚でもなさらない限り、あの方がそんなことをされるはずがないでしょう?」

「それにしても……どうして彼を連れてきたのかしら。私も気になるわね。」

ジャコブがただの気難しい性格なら、リリカがわざわざ従者として引き入れて重用するとも思えない。

公爵家で自分の味方を作りたいなら、少なくとも他人と打ち解けやすい人物を選ぶはずだ。

それに、使用人よりも侍女の方が何かと都合がよいはずだし……。

『原作では、この時期のリリカは何をしても許されていた。でも今は、もう少し慎重にならなきゃいけない時期のはず。なのに、どうしてわざわざ周囲と馴染もうとしない人物を連れてきたの?』

物語が原作とまったく同じように進むとは限らないが……

リリカは衝動的に行動する子ではない。

だからこそ、このタイミングで従者としてジャコブを連れてきたのは、どう考えても不自然だった。

『まあ、あの男に何か特別な意味があるなら、小説にも出てきたはずだ。』

リリカはただ、「遠い親戚の男の子に会って連れてきた」とだけ説明した。

幼い頃に会った記憶があるらしく、知らないふりをするのが難しかったとも。

母親の話を一度も口にしたことのなかったリリカがそんなことを言うのは妙だったが、下手に問い詰めれば、かえって自分に疑いの矛先が向く可能性もあった。

『とりあえず、狩猟大会のことを考えよう。』

そうして私は、近づいてくる狩猟大会の準備に集中した。

主催者ではないものの、参加者として注意を払うべき点は多かったからだ。

 



 

 

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