オオカミ屋敷の愛され花嫁

オオカミ屋敷の愛され花嫁【47話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「オオカミ屋敷の愛され花嫁」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【オオカミ屋敷の愛され花嫁】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「オオカミ屋敷の愛され花嫁」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介とな...

 




 

47話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 処罰②

あたりはすっかり暗くなっていた。

私はしゃがみこんで、しくしくと泣いていた。

目を閉じると、炎の道に飲み込まれるような錯覚に襲われた。

目を開けると、燃え盛る炎が地平線まで迫ってくる幻影が見えた。

私は両膝を抱え、無気力に泣くことしかできなかった。

『もう死ぬのはいや……。』

無視されることも、もう一度死ぬことも、全部怖かった。

涙が溢れて視界が滲んだ。

『赤い髪は、呪いの印なんだ。お前のような者が私の娘だと?お前はラニエロの恥だ、リンシー。』

父の言葉が何度も耳元でこだました。

振り払おうと首を左右に振ってみたが、無駄だった。

『呪われた尻尾。』

それさえなければ、私は父を憎まなかっただろうに。

そんな考えがよぎった瞬間、不意に周囲が一瞬で暗転した。

そして……まるで砂場が鏡に変わったかのように、私の姿が宙にふわりと浮かび上がった。

『これ、なに?』

別の自分の姿にそっと触れた瞬間──

『……!!!!』

明るい栗色だった私の髪が一瞬にして赤く染まった。

驚いた私は反射的に後ずさりしたが、意味はなかった。

「それら」は私をねっとりと追いながら、じっと見つめてきた。

赤い髪を持つ私を。

そして、私に優しくしてくれていたエクハルトの人たちが一斉に目をそらした。

彼らが私の赤い髪のことを知ったら、私から離れていくのだろうか?

ラニエロのように……。

手先がぶるぶると震えた。

「や、やだ……」

その時、

[心配しているようだな、わが子よ。]

どこかから低い声が聞こえてきた。

同時に、目の前でちらついていた幻影がすべて消えた。

私は宙を見回した。

「だ、誰ですか……?」

[子よ、子よ。特別なものが、お前の首を締めつけていたのだな。やさしくも。]

低い声でありながら、どこか親しみを感じさせる声。

初めて聞くはずなのに、まるで毎日聞いていたように馴染みがあった。

その瞬間──透き通るような薄いベールをかぶった女性が、私の前に現れた。

彼女の背後からは、まばゆいばかりの光が差し込んでいて、顔ははっきりとは見えなかった。

私は眩しさに目を細めた。

その時、彼女が私に向かって大きな手を差し伸べてきた。

私は後ずさることなく、その大きな手の先をじっと見つめた。

その手先が私に触れたかと思うと、すぐに離れていった。

「もう痛くはならないはずよ。子よ、思い出して……、あなたの血筋は“あの人”のものではないわ。私はあなたを愛しているの……。」

その言葉とともに、私を包んでいた光がぱっと消え去った。

話しかけてきた兄の姿も、やはりもう見えなかった。

そして足元がふっと崩れ、どこかへと果てしなく落ちていくような感覚に襲われた。

それから、そう時間は経たずに──

「ベイ?」

私はぱちりと目を開けた。

 



 

「リンシー、リンシー様ですか?」

アンシアは演会場を収めるために来ていたケンドリックをつかまえて尋ねた。

トリスタンは驚いて目を見張った。

自分の孫娘を離そうとしたが、アンシアはケンドリックの腰元をつかんだまま放そうとしなかった。

「リンシー様を見つけられませんでした。水辺の席まで全部調べたのですが、それが……演会場に赤ちゃんがいるって聞いて……。」

アンシアがエダンに向かって、どこか切なげな視線を送った。

エダンは大きく咳払いをした。

「あなたは誰だ?」

ケンドリックが警戒心を込めた視線でアンシアを見つめた。

ケンドリックの問いかけに、アンシアを連れてきたトリスタンが頭を下げて答えた。

「私の孫娘です。先ほどお嬢様と少し話したのですが、お嬢様のことがとても気になるようです。」

ケンドリックはトリスタンの言葉を聞いて、アンシアをじっと見つめた。

そしてそっと、アンシアの頭を撫でた。

「そうか、リンシーは大丈夫だよ。屋敷の中で見つけた。そしてきっと大丈夫だ。」

ケンドリックの言葉に、少女の目がぱっと明るくなった。

「本当ですか?よかった……。」

「そうだ、あとでリンシーが目覚めたら、君に安心するよう伝えさせよう。」

ケンドリックはアンシアの頭を何度か優しく撫でながら歩き出した。

演会場がはっきり見下ろせる場所。

リンシー、そしてアルセンと一緒に立っていた場所に立った。

場内には静けさが漂っていた。

ケンドリックがゆっくり口を開いた。

「宴会に参加してくれて本当に感謝している。」

鋭い視線が傲慢な態度の貴族たちをなめるように通り過ぎた。

「しかし、今日起きたことは非常に遺憾だ。私が主催した宴会でエクハルトの重要人を無視するとは思わなかった。」

ケンドリックの言葉に明らかに動揺する人々が何人かいた。

彼は言葉を切らさず、続けた。

「もう一度こんなことが起きたら黙ってはいない。リンシー・ラニエルはエクハルトの重要人だ。結婚式が終わればエクハルトの姓を持つことになるのだから……」

彼は一言一言を絞り出すように話を続けた。

「その子を無視することは、エクハルト全体を無視することと同じだと主張して、必ず処罰するつもりだ。」

まるで死んだかのように静かになった集会場を見回したケンドリックが、皮肉に笑った。

「集会はここで終わりにしよう。」

ケンドリックは言い終えると、軽い足取りで集会場を後にした。

彼が去った後、集会場では貴族たちが蒼白な声でざわめいた。

「本当に、あの一族を嫁に迎えるつもりなのか?」

「いや、嫁に迎えるのは別にかまわない。坊ちゃんは体も弱くないし。ただ……あんなふうにまとわりつくとは思わなかった。」

「言葉に気をつけろ!さっき警告されなかったのか。じゃあ、イライジャ家門はどうなる……」

「その家の娘は礼儀がなってなかった……」

狼のような貴族たちは、ケンドリックが去った席を見つめながらため息をついた。

新しい一族だなんて。

ただの利害関係のための政略結婚だと思っていたのに。

貴族たちは、帰ってから子どもたちにしっかり言い聞かせなければと考えつつ、その場を離れた。

 



 

一方、宴会場の片隅。

「アンシア!それで?イベリンは、イベリンはどうなったの?」

子どもたちがアンシアにわっと集まって、事件の全貌を聞き出そうとしていた。

アンシアに話を聞こうとしていたが、突然両親の手に引かれて無理やり連れて行かれる子どもたちもいた。

アンシアは困ったように目を伏せた。

「今来たの?さっきはリンシー様に全然関心がなさそうだったのに。」

「それは……、新しい一族でしょ。ママが新しい一族とは口をきくなって言ってたのに……。」

子どもが一人、もごもごと言葉を続けた。

アンシアはその子の頭をポンと叩き、深くため息をついたあと、その子をにらみながら言った。

「エクハルトの一員ですって?このバカ!あなた今、ケンドリック様を無視したも同然よ。」

「え?わ、私がいつケンドリック様を無視したっていうの!」

「ケンドリック様が直接紹介された方を無視したじゃない。それはつまり、ケンドリック様を無視したも同然でしょ。」

ぺらぺらと話していたアンシアが、ふん、と鼻を鳴らした。

そして——

「イベリンがどうなったかは知らない。あの……イベリンが受印化してリンシー様に襲いかかったの。それでお嬢様が驚いて逃げたのよ。私が知ってるのはこれだけ。」

アンシアは沈んだ表情で語った。

本当なら、自分が守らなければならなかったのに。

イベリンはアンシアより2歳年上で、抜け毛も終わっていた。

だから受印化は可能だったが、アンシアは受印化できなかった。

リンシーがああなってしまったのが、まるで自分のせいのように感じられて、アンシアの肩がしょんぼりと落ちた。

「もう帰ろう、アンシア。」

その時、トリスタンとアンシアの両親が彼女を呼んだ。

アンシアは他の子どもたちを鋭く見つめ、最後に吐き捨てるように言った。

「今日ほんとに……、がっかりした。新しい一族だって差別するなんて。あなたたちとはもう遊ばない。」

アンシアはその言葉を最後に、勢いよくトリスタンの胸に飛び込んだ。

残った子どもたちは、互いに気まずそうな視線を交わした。

 



 

私が目を開けたとき、すでに日は沈んでいた。

ぼんやりと天井を見つめた。

『私……、気絶したの?』

部屋の中で閉じ込められて「助けて!」と叫んでいたところまでは覚えているのに。

その後の記憶はまったくない。

どうやってここに来たんだろう?

頭が割れそうにズキズキして、私はそっと手で頭を押さえながら体を起こした。

そしてベッドからぴょんと飛び降りた。

「ベイ!」

私が暗いのを嫌いだということを知っているベティが、部屋が暗くならないようにランプをつけてくれていたので、怖くはなかった。

私は一旦その場にぼんやりと座り、さっき見た夢について考えた。

暗い場所に一人でいて、

しばらくすると、赤い髪の毛を持った誰かが現れた。

そして……。

[ああ、赤ちゃん。鋭いものがあなたの首を塞いでしまったね。苦しかったでしょう。]

夢の中で聞いた不思議な声がはっきりと思い出された。

『あれは……何?ただの夢だったのかな?』

鋭いものが私の首を塞いだって言ってた。

そしてその存在は、そっと私の手を取った。

【もう痛くないはずだよ。坊や、覚えておいて……、君の苦しみは罰じゃない。私は君を愛しているんだ……】

その言葉が終わると同時に、私の体を包んでいた温かな光がはっきりと輝いた。

『首を……、ふさいでたのを……』

その瞬間、ふと思い出したことがあった。

あっ!

私は慌ててその場から飛び跳ねて立ち上がった。

足元から、まるで煙のような霞がふわりと立ち上った。

次第に視界が開けていき、受印化が解けた。

『……また、羽根が出てきたのね。』

不完全ではあったが。

おそらく倒れていたのが、たまたま起きたせいだろう。

私は念のために何度か羽をパタパタと動かしてみた。

そしてすぐにベッドから飛び降りて鏡の前に走った。

「痕が……、痕がここに……。」

首のあたりにあった黒い痣。

その黒い痣は、洗い流されたかのように消えていた。

私はもう一度目を細めて、自分の首をじっくりと見つめた。

しかし、痕はなかった。

私は咳払いをして、喉を整えた。

そしてゆっくりと口を開いた。

「く、禁……」

「禁制(クムジェ)」という言葉が口からこぼれた。

自分の声が、自分の耳にもはっきりと聞こえた。

「禁制、解けたの?」

その時になって、私はさっき見た奇妙な夢を思い出した。

『じゃあ……あれって夢じゃなかったの?』

私の首を締めつけていたあの妙なものは、禁制を意味していたことが明らかだった。

じゃあ一体……

『それ』は何だったのか?

私の夢に現れ、恐ろしい幻影をすべて追い払ってくれ、禁制まで解いてくれた存在。

それは一体……。

私は自分の部屋の前に立っている人を見て驚き、思わず尻もちをついてしまった。

「グ、グレネ……?」

グレネの真っ白な髪が暗闇の中で輝いていた。

彼女の灰色の瞳がゆっくりと私を見つめた。

「ああ、お嬢様……」

グレネは私を丁寧に起こし、寝巻きの埃をはらってくれた。

「ありがとう、グレネ、こんなところで……何してるの?」

こんな夜更けにここで何をしていたのだろう?

グレネの部屋は別の建物にある。グレネがこの時間にここまで来る理由はないはずだった。

「……痛いの、痛いのやめてください。」

グレネが口を開いた。

「痛いのやめてって、それって……あ!グレネ、これのために来たの?」

私は慌ててグレネを部屋の中へ引きずり込み、ドアをバタンと閉めた。

そして、痣が消えて綺麗になった自分の首をグレネに見せた。

「禁制が解けたの!これを知って来たの?」

グレネはゆっくりとうなずいた。

「どうしてわかったの?私もさっき気づいたのに、どうして君が……どうやって……」

グレネはその問いには答えず、唇をきゅっと結んだままだった。

「グレネ、君にも禁制がかけられてるの?」

私は彼女の手をぎゅっと握ったまま、グレネを引き寄せて尋ねた。

「ケンドリック様には話せないって言ってたよね。あなたも何かの“痕”があるんでしょ?」

グレネの目に戸惑いの光が浮かんだ。

彼女は少しの間迷っているようだったが、やがて私のベッドに腰を下ろした。

そして——

トクッ。

グレネは自分が着ていた上着を脱いで、私に背中を見せてくれた。

痩せ細った背中。

白く突き出た背骨の上に、大きくて黒ずんだ痣が刻まれていた。

うっすらとしていてよく見えなかった私の痣とは形態が違っていた。

私が目をまるく見開くと、グレネは再び服を着て近づいてきた。

「お嬢様、お嬢様……、当たってはいけません……」

震える声のグレネの顔が苦痛にゆがんでいた。

「グレネ!これ以上しゃべったら……!」

それでも彼女はためらうことなく、私の手のひらに自分の炎を移した。

苦痛が込み上げてきたのか、彼女の体がぶるぶる震え、喉から「ぐるっ」と何かが上がってくる音がした。

痛みに耐えるように唇をかみしめていたグレネが口を開いた。

「危ないです、お嬢様……危険です。」

私はグレネの姿をじっと見つめながら、唾を飲み込んだ。

「危ないって?それはどういう意味?」

「……」

グレネはそれ以上何も言わずに席を立った。

私は呆然と、グレネが去った場所を見つめた。

『“痣”が危険だってこと?』

それとも、“痣”を施したエステルが危険な人間だという意味?

私は彼女が去った場所をしばらく見つめたあと、ようやく気を取り直した。

『こんなことしてる場合じゃない。』

早くケンドリックに「禁制」について話さなければならなかった。

いつまたエステルに出くわして禁制がかかるか分からない状況なのだ。

私は机の上に置かれていたランプを慌ててつかんだ。

そしてランプを手にしたまま、ランプの光を頼りに薄暗い廊下をそっと歩いた。

ケンドリックの執務室の前。

私はケンドリックの執務室のドアを慎重にノックした。

トントン

『起きているだろうか?』

ノックの音が鳴った後も、執務室の中からは何の音も聞こえなかった。

しばらくの間、何の音も聞こえなかった。

『寝ちゃったのかな。』

私は足音を返した。

明日の朝、日が昇ったらすぐに駆けつけて話そうと思っていた。

そのとき——

キーッ!

ドアが開く音がした。私は思わず後ろを振り返った。

「……リンシー?」

ケンドリックがゆっくりと私の名前を呼んだ。

「わ、こんばんは、ケンドリック様。遅い時間にお伺いしてすみません。今日の集会、私のせいで台無しになってしまいました。でも、それとは別にお話ししたいことがあって……。」

私はしどろもどろに話しながら、ケンドリックをそっと見上げた。

そのとき、ケンドリックがすっと近づき、私の額に手を当てた。

「どこか痛むところはないか?」

「え?はい、もちろんです……あっ!」

その瞬間になってようやく、ケンドリックがなぜあんな表情で私を見ているのか気づいた。

『私、倒れてたんだ。』

次々と起こる奇妙な出来事に、しばし呆然としていた。

私は慌てて言い直した。

「どこも痛くないです。本当に。宴を台無しにしてしまって……すみません。」

宴の主役だった私が、宴が終わる前に威厳が失われてしまった。

エクハルト家の名誉が損なわれたに違いない。

私は目をぎゅっと閉じた。

そのとき、私の頭に優しい手がそっと触れた。

「集会を台無しにしたって?君は素晴らしかった。心配するな。それに……あの子には然るべき処罰を与えた。」

「“あの子”って……?」

「君を脅かしたあの狼のことだよ。イベリン・イラだ。」

ああ。

私はぽかんと口を開けた。

あれがイベリンだったのか。

私がゆっくりと顎を上げると、ケンドリックが私をそっと抱き上げた。

そして執務室の中へと連れて行き、慎重な手つきでソファに私を横たえた。

「リンシー、お前には毎回謝ってばかりいるようだ。」

「え?」

「こんなことを経験させてしまって、すまなかった。」

ケンドリックは静かに言った。

「私の不手際だ。お前のそばに残っているべきだったのに、聖物に異常反応があったと言われて……」

「聖物に異常反応って……?」

私は目を大きく見開いて尋ねた。

聖物。

神の加護を受けた九つの宝石。

中央神殿と祝福を受けた各一族はこの聖物を分けて、それぞれの領地に保管していた。

新一族が保管しているのは巨大な緑色のエメラルド、狼一族が保管しているのは青い光を放つ巨大なサファイアだった。

この「聖物」を管理することは、各一族の族長たちにとって最も重要な任務の一つだった。

各一族は一年に一度、祭りの期間に神殿に集まり、聖物の安定状態を確認するとされていた。

だが、その聖物に異常な反応があったというのか?

ケンドリックが手を振った。

「大したことはない。すぐに元に戻った。とにかく、少し席を外しただけなのに、こんなことになるとは思わなかったよ。謝るよ、リンシー。」

「戻ってこられてよかったです。私は本当に大丈夫です。」

私は静かに首を振った。

「本当です。狼族と新しい一族の関係が良くないことは私も知っています。だから……それは当然の反応です。もちろん、印化して私を驚かせたのは良くなかったとは思いますが……」

「当然なんてことはない。これからはお前にこんなことをする者がいないように、私がしっかり管理する。お前はもうエクハルトの一員なのだから。」

そう言うケンドリックの低い声はとても真剣だった。

私は唾をぐっと飲み込み、喉を鳴らした。

「それと……一つ聞きたいことがあるんだが……暗い場所が嫌いだって言ってたよね?」

「はい。」

私はまた喉を鳴らした。

「なのにどうして地下室に入ったんだ?」

ケンドリックの質問に、私は目を見開いて驚いた。

「びっくりして……、人のいない場所に逃げ込もうとして地下室に間違って入ってしまったんです。あまりにも暗くて出ようとしたら、どこかの部屋から明かりがちらついていたので、ついその明かりを追って行ったんです。」

「明かりがちらついてた?」

「はい、でも私が入った途端、明かりも消えてしまって……。それで出ようとしたら、ドアも閉まっていて……」

私は体をぶるぶる震わせた。

「そういうことか……。それで、今は少し落ち着いたか?」

「はい、今は大丈夫です。ご心配ありがとうございます。そして、実はお伝えしたいことがありまして……!」

ケンドリックが「それが何か」というように私を見つめた。

「その……もしかして、まだ禁制を使っている人がいるのでしょうか?」

「禁制?君がどうしてそれを知ってるんだ?」

ケンドリックは疑わしげに尋ねた。

「それはもちろん……あっ。」

私はそのときようやく、自分がまだ十歳の子どもであるということに気づいた。

七歳の子どもには誰も「痣(しるし)」について話さないということも。

『私も十歳くらいから習ったような……』

ケンドリックが本当に不審に思っているような視線で、じっと私を見つめていた。

ああ、もうわかんない。

「ラニエロで習ったんです。昔、“痣”を使っていた団体があったって。」

「そう、あったな。でも急にどうして?」

「えっと、お話ししたいことがあって……信じてくれますか?」

「いいよ、言ってごらん。リンシー。」

ケンドリックは膝の上で組んだ両手をそっとほどきながら言った。

「私の首に禁制がかかっていたんです。」

「……なんだって?」

「いえ、禁制かどうかは正確にはわからないんですが……。でも、ある行動ができないように制限する術法って、禁制ですよね?」

「そうだ、それが禁制だ。」

「禁制について話そうとすると、毎回喉が詰まってここが痛くなったんです。」

私は首と胸、その中間あたりを指差しながら言った。

「首に黒い斑点があったけど……、今は消えてるのですが……」

「……首に?それがどうして君に……?」

「大元老様が私の家に来たことがあったじゃないですか、ケンドリック様。エステレ様のことです。」

「……エステル?」

「その時、事務室の前でエステルさんに会ったんです……不審なものを見ました。」

「もっと詳しく話してみて、リンシー。」

ケンドリックの表情が真剣になった。

私は深く息を吸ってから話し始めた。

「エステルさんの後ろで……不審な気配があったんです。私を見ていたんですが、その後すぐにそれが去っていきました。」

「不審な気配があった?」

私は首をかしげた。

「角まで来て……突然光が反射して気配が光に反射してエステルさんの後ろに入っていきました。それからまた外に出てきて。あの方は私たちの家に来られました。それから間もなくして、アルセンの病状が悪化したんです。何か関係があるのかは分かりませんが……」

「……」

「あ、それからエダンさんにはその記録が見えていなかったみたいです……私にしか見えなかったんです。」

私は喉を詰まらせながらも、あのときの記憶を手繰るように話した。

「とにかく、そういうことがあって、そのとき禁制がかかって、以後はその黒幕に関する記録について話すことができなかったんです。」

私はしぼり出すような声で話を終えた。

「エステレが……。禁制を使えるやつらは、ずっと前に全員死んだはずだったのに……」

ケンドリックは眉をひそめた。

「話してくれてありがとう、リンシー。私が一度調べてみるよ。でも……君、その痣(しるし)どうやって解いたんだい?」

「えっ?」

「痣は、施した本人が自ら解くか、施した本人が死なない限り解けない呪術なんだ。」

 



 

 

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