こんにちは、ちゃむです。
「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
135話ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 分岐点:現代、そして4人の男たち②
退院手続きを済ませて家に帰るタクシーの中。
私はスマホの画面に映るキャス…いや、カン・ミンジェのプロフィールが入ったファイルを開いた。
父の秘書が送ってきた「婚約相手」のプロフィール。
ふざけてる。結婚なんて、こんな年で……!
それなのに、私が元気になりさえすれば“どうにか婚約を進める”つもりらしい彼の態度は何なの。
-今日は何を買おうかな。
そして、黒い画面にぽつりと浮かぶメッセージ。ディエゴだ。
私はそれすら閉じてしまった。
もう何も考えずに休みたい。
頭がズキズキする。
私は携帯の電源を切ってしまった。
しばらくしてタクシーがオフィステルの前に到着し、私はカードで料金を支払って降りた。
『久しぶりに帰ってきた私の家……。』
前払い賃貸契約で、あと1年を除いてもまだ契約期間が残っているため、誰かに家を奪われていることはないはずだ。
重いキャリーを引きずってエレベーターに乗り、私は久しぶりに自分の家へと上がっていった。
地獄のような家から抜け出し、独立して手に入れた私だけの宝物のような家へ。
今すぐは無理でも、あそこに戻れば少しは頭が整理できるはずだ。
しばらくして家の前に立った私は、暗証番号を押した。
ピッ・ピッ—— ピピピピピッ
六桁を押して待ったのに……ドアは開かない。
え、番号これで合ってるはずなのに。
首をかしげつつ、もう一度番号を押す。すると “ティン”…というメロディとともにドアが開いた——そして中に立っていた人物を見た瞬間、私は背筋の奥までぞわっと震えが走った。
赤みがかった髪、赤い光を宿した瞳。
広い肩と鍛えられた胸筋、上半身は裸で、ズボンだけを穿いた完璧な体つき。
「か…カカカ…カイル!?」
彼は、面倒くさそうに眉をひそめたかと思うと、私の腕をつかんで家の中へと引っ張り込んだ。
ドアがバンッと閉まった。
「この家が競売にかけられたってことですか?!」
私は目を見開いて尋ねた。
カイルの話によると、家主が債務を返済できずに競売にかけられ、それを彼の友人が落札したという。
「うん。」
私は後頭部を押さえた。
「わ…私、詐欺……詐欺に遭ったってこと……?」
だって、あの家が一戸だけじゃなくて、全世帯の家賃をまとめて引き受けないといけないって言うんだよ?
そりゃあ相当きついに決まってる。
衝撃で固まっていた私に、カイルは眉をひそめて言った。
「つまり、僕を探しに来たわけじゃなくて……この家を探しに来たってこと?」
「……私のお金が……」
「はぁ……」
カイルは重たく息を吐き、カーテンをかぶせたままのリビングの窓に視線をやった。
私は少ししてから、懐かしさを覚えながら部屋を見回した。
私が住んでいた頃と何も変わっていない。
リビングに小さな部屋がひとつ、そしてトイレ兼バスルームがあるだけ。
一人暮らしにはちょうどいいサイズのワンルーム・オフィステル。
私は胸の奥でぼんやりつぶやく。
どうにか自立してやっと手に入れた、私の家だったのに……。
「それで……」
私は彼を見上げながら尋ねた。
「…誰かに追われてたりするんですか?昼間なのにカーテンも全部閉めてあるし、さっきは私を無理やり家の中に引っ張り込んだし。」
そう考えると、なんだか怪しい。
あの警戒したような態度、そしてがっしりした筋肉まで。
それから――ちょっと待って!
「…あ…あれ!!」
私は、リビングのテーブルの上に置かれている“何か”に気づき、驚きすぎて後ずさった。
「こ…拳銃じゃないですか!!」
銃の知識なんてないけれど、あんな形してるなら銃以外あり得ない。
私が驚くと、カイルは身を屈めて私の口を右手でふさだ。
薄暗い家の中、赤い瞳だけが鋭く光った。
「静かにしろ。騒ぐとケガするぞ。」
私は固まったまま、彼を見つめた。
静かな室内で私をじっと見下ろす、あの深い赤色の瞳が一瞬だけ揺れた。
「……」
数秒後、彼は私の口元を塞いでいた手をそっと離した。
私は息をつきながら、ふらつく足で立ち上がった。
そして言った。
「えっと……私はもう行きます。状況はわかりましたし、家賃のことは法的な手続きで解決しないといけません。弁護士にも相談して……。」
——このまま彼と一緒にいるのは危険だ。
そう警鐘を鳴らす声が、胸の奥で強く響いていた。
けれど、彼はまったく動じず、私をまっすぐ見つめ続けていた。
出ようとした私の前で、彼は道をふさぎ、どこうとしなかった。
「悪いけど、ダメだ。」
「ダ…ダメって?」
「お前は俺を知らないって言ったけど、俺の名前は知ってた。怪しすぎる奴をそのまま帰すわけにはいかない。」
「…本当の名前、カイルなんですか?」
私の言葉に、彼はわずかに眉をひそめた。
「演技なのか本気なのか判断できないな。」
「ただ…あなたに似てる人を思い出してしまって。」
「いずれにしても、今日会った以上、このまま帰すわけにはいかない。」
その低くて落ち着いた声に、私の心臓はドクン、と大きく跳ねた。
「……ただ帰すわけにはいかない。」
ま、まさかあの銃で“処理する”つもりじゃないよね?
彼の唇がわずかに上がった。
「君の身元を完全に確認するまで、ここにいてもらう。」
「えっ……さっき住民登録証、見せましたよね?」
「それだけじゃ足りない。俺の部下たちが、もっと詳しく調べる。」
部……部下?
ヤクザ?ギャング?マフィア?
私は一瞬固まったが、彼はただ薄く微笑むだけだった。
「じゃあ、早く確認して帰らせてください。」
「問題は、事情があって部下たちに連絡するのに時間がかかるってことだ。追われてる身だからな。」
カイルは私を押し返そうともしなかった。
「……ここで数日は一緒に過ごすって考えてくれればいい。」
当惑した私は声を上げた。
「ここで、あなたと一緒に過ごさないといけないんですか?」
ここはリビングひとつ、部屋ひとつ、トイレひとつだけなのに……それなのに、なんで上着を脱ぎ続けてるのよ!
驚いた私の手を払いのけ、カイルはこぼれ落ちた私の髪を耳の後ろへと避けながら言った。
「顔が赤くなってるところを見ると……妙な想像でもしてるみたいだな。」
私は思わず彼の胸をドンッと押した。
「そ、そんなわけないでしょう!」
しかし、彼の体は微動だにせず後ろへも下がらなかった。
「…誰が……誰が変な想像なんてしますか。……ともかく私はここを出ます。むしろ病院に戻るほうがマシです。」
彼は相変わらず私を帰すつもりがないようだった。
「ひとっ風呂浴びてくる。」
「そんなこと逐一報告しないでください!」
いつの間にか日が暮れ、彼はシャワーを浴びると言って浴室へ入っていった。
私はそっと玄関を開け——ようとしたが。
「な、なにこれ…!」
なんと、内側のドアにも暗証番号パッドのようなものが付いていた。
ドアノブをガチャガチャしてみても、まったく開く気配がない。
おまけに、いつの間にかカイルは私のスマホまで没収していた。
(なにこれ、自分がスパイか何かだとでも思ってるの…?)
カイルはどうやらセキュリティに相当こだわるタイプらしい。
「ともかく、彼がシャワーから出てくる前にどうにかしないと…」
そのとき、視界の端に何かが入った。
子どもの頃に映画で見たことのある、007が使っていたようなアタッシュケース。
しかも、そのケースは半分ほど開いていた。
(もしかして、あそこに暗証番号が書いてあるかも…!)
私はそっとケースに近づき、開いている部分を広げた。
中には、英語の新聞記事がびっしりと詰め込まれていた。
『イタリア巨大マフィア組織、全面戦争開始。』
『カネ・ファミリー、1000億ドル規模の債権行方不明。』
『シチリア・マフィア後継者戦争――カネ・ファミリーNo.2、カイル・ブルスカ、組織の鍵を握る』
記事を読み終えた私は、その場で凍りついた。
カイル・ブルスカ?
記事の下には、サングラスをかけた彼の写真とともに、彼に関する詳細な説明が載っていた。
『カイル・ブルスカは、カネ・ファミリーの信任とボスの庇護を受け、急速に組織内ナンバー2へと上り詰めた。韓国系男性と噂される彼は、なんと韓国円で1兆に達する資金を動かし――』
「他人のカバンを漁る趣味があるとはね。」
どくん、と胸が跳ね、私は記事を読みながら胸に手を当てたまま固まっていた。
そのとき、後ろからカイルの声が聞こえ、私は驚いて壁際に張り付くように後ずさった。
「もしかして、俺に変な興味でもあるのか?」
シャワーガウンを着た彼は、濡れた髪から水滴を落としていた。
真っ赤になった私は、警戒するように唇をぎゅっと結んだ。
イタリアン・マフィアだなんて……カイルがその後継者だって?
正義の味方どころか、世界で最も残酷で恐れられている犯罪組織のナンバー2だなんて!
「な、なんで……?」
カイルの赤い唇がわずかに歪んだ。
「俺が誰かバレるのがそんなに怖いのか?」
「ただ……暗証番号を知りたかっただけです。逃げようとして……だから誤解しないでください。」
正直に答えると、彼はくすっと笑った。
そして冷蔵庫を開け、ワインとグラスを二つ取り出した。
私は警戒したまま、視線をそらしつつ彼の向かいに座った。
「こんなに慌ててるってことは、他の組織から送り込まれたんじゃないってのは確かだな。」
野性味のある彼の手がワインの栓を開け、さらさらとグラスに注ぐ。
「民間人を殺すつもりはないんだから、そんなに緊張するな。」
「……その言い方自体がもう十分に脅しなんですけど。」
カイルの赤い唇がほんのり曲がった。
「誰かに知られたら怖いのか?」
「暗証番号を知りたかっただけですよ。逃げ出そうと……だから誤解しないでください。」
正直に言うと、彼はふっと笑う。
「悪い。いつも死と隣り合わせでいるから、“死”って単語にも鈍くなっちゃってさ。」
私は真っ赤な血のように見えるワインの入ったグラスを見つめた。
「死がついて回るような危険なこと、しなきゃいいんじゃないですか?」
彼は自分のグラスを私のグラスに軽く合わせ、口をつけながら言った。
「俺のことを少しでも心配してくれるなんて、嬉しいね。」
「べ、別に……。」
私は視線をそらした。否定できないから。
カイルは……いや、つまり、カイルは……。
「冗談だったのに、おもしろいな。」
ふと、彼の表情にほのかな微笑みが浮かんだ。
いつもは冷静で無愛想なカイルしか知らないから、危険な雰囲気を纏った野生のカイルを見ていると、なんだか奇妙な気分になる。
至るところに刻まれた傷跡や、うっすらと見える痣。
どれほど過酷な生活をしてきたのか、彼の身体は険しい人生を物語っていた。
「だけど。」
そっと視線を落としていた私のもとへ、カイルがふいに顔を近づけてきた。
「そんなにじっと見つめる必要があるのか?」
その言葉で、私はかすかに開いてしまっていたガウンの隙間に、無意識に神経を集中させていたことに気付いてしまった。
私は慌てて視線をそらしたが、もう遅かった。
「やっぱり、おまえ……目的が別にあるんだな。」
危うい気配をまとった、湿ったように響く低い声が耳元をかすめる。
「そういえば、ちゃんと身体検査してなかったな。」






