こんにちは、ちゃむです。
「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

8話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ⑧
アリエルはそれ以上顔を赤らめることもなく、目をそらすこともなかった。
むしろ冷静な目で自分を直視しなかったのだろうか。
レイハスは眉をひそめ、神経質にジャケットを脱いだ。
『何が変わったのだろう?』
変わったことなど何もないのに。
「レイハス・ド・エル。」
初めて彼の口から発せられた、自分のフルネーム。
不思議と神経が鋭敏になる妙な感覚だった。
彼女の目は青く輝いていた。
それがまさにその瞬間、初めて理解した。
そして、その青い輝きは最近、彼の神経を追いかけながら胸をざわつかせるようになった。
「私は、大神官様が公平で正義感のある方だと思います。」
赤い唇に浮かんだ控えめな微笑み。
アリエルがこのように穏やかに微笑むことができる女性だったのか。
いつも叱責したり、誇張した口調だった彼女の言葉が、初めて耳にすっと入ってきた。
そして、心に少し波を立てるようだった。
「……。」
レイハスは軽く頷いた。
アリエルを寛容に受け入れた理由は、彼女がこの偽りの聖女という設定にふさわしいほど、十分に純粋でお人好しだったからだ。
『人がどんなに変わっても……。』
その時、執務室の扉が勢いよく開かれ、誰かが険しい表情で入ってきた。
「どうして私に何の相談もなく、聖徒たちを処罰したのですか!」
入ってきたのは補佐官のヘインズだった。
壁に掛けられた聖石の光が、彼の銀髪を淡く照らしていた。
彼は荒々しく息を吐きながら、レイハスの前に立ちふさがった。
「聖女様に何が起きたのか聞きました。いくら聖女様であっても、あのように直接的に処罰を要求したと聞いて驚きましたが、代神官様までがそんなことをするなんてあり得ません!」
レイハスは無表情な瞳でヘインズを見つめ、冷静に応じた。
「ある家門を連座制でそのまま処罰するとは、神官たちが到底受け入れることはできません。」
険しい表情を浮かべた彼の顔は、ひどく歪んで見えた。
「大きな勘違いをしていますね。」
レイハスは他の場所をじっと見つめたまま、ゆったりと椅子に腰を下ろした。
ヘインズは自分よりも若干年下の大神官の悠然とした態度に、拳をぎゅっと握りしめて震わせていた。
「レイジフィルド家の制裁を決定した理由は……。」
彼の視線がゆっくりとヘインズを向いた。
レイハスと目が合ったヘインズは、こみ上げていた怒りが一気に鎮火するのを感じた。
まるで背筋が凍るほどの恐怖を覚えるような、彼の金色の瞳。
まるで裁きの神の前に立たされたかのような感覚だった。
「一部の腐敗した高位神官たちと、その支持者たちと取引をしているからです。」
ヘインズは喉が詰まるような感覚を覚えた。
「エリオム神殿内での話です。」
レイジフィルド侯爵家のような裕福な貴族家門は、エリオム神殿の神官たちに賄賂を渡すことがあった。
しかし、それはエリオム神官たちを通じて中央の貴族社会の注目を集める必要があったからだ。
そして、レイジフィルド侯爵家はエリオム内ではヘインズの派閥に属していた。
「腐敗した部分を洗い出すのは困難ですが、あなたは見事にやり遂げたと聞いていますよ。」
彼がすべてを見透かしているということを、ヘインズは感じ取った。
突然、威圧感に押されて言葉を詰まらせるヘインズを見ながら、レイハスは口元をわずかに上げた。
「根を引き抜くこと以上に、さらに深く根付かせるべきかどうか検討していますが、副司祭のご意見はいかがでしょうか。」
ヘインズはレイハスの言葉に動揺しながら視線をそらした。
壁にかかっている彼の長い剣が目に入った。
「そ、それは……。」
レイハスが意図的に放った威圧感に満ちた気配が、ヘインズの神経をひどく揺さぶった。
ヘインズは言葉に詰まり、目をそらしてしまった。
「私はただ……私にも相談していただけるとうれしい、という希望を伝えに来ただけです。」
レイハスは何も答えず、ただヘインズをじっと見つめた。
ヘインズは一人で弁解めいた言葉を続けた。
「そして……聖女様も聖女としての役割を一度もきちんと果たしたことのない方が、そのように直々に指揮を執るのは非常に驚きました。大司教様には宣言する資格があるとしても、聖女様は……。」
ヘインズは言葉に詰まり、レイハスを批判することを避けるため、聖女に対する不満へと話題を転じました。
「聖職に執着しているとは思いもしませんでした。」
「大司教様も私と同じ考えで……。」
「エリオムの気概がこれほどまでに落ちぶれているとは。」
さらに冷たいレイハスの視線が自分に向けられたとき、ヘインズは自分が失言したことに気付きました。
「本当に不敬な話です。」
「大司教様!」
「人が欲を出せば、余計な考えを起こすものです。たとえどれほど神に仕える司祭であっても。」
聖女が大司教を伴ってきた人物であることは事実だ。
しかし、聖女の傲慢さに対する不満を口にした際に、大司教が彼女を庇ったことは一度もなかった。
しかし、今日のレイハスは息を詰めるほど冷たい視線でヘインズを見つめていた。
「アレス高原で異常現象が発生したとのことです。モンスターが出現し、暗い気配が漂っているとか。」
「だ、大司教……!」
ヘインズの顔は蒼白になった。
アレス高原は辺境の地にあり、いったんそこで任務を行うことになれば、いつエリオムに戻れるかはわからない。
その場所の環境は過酷で有名だった。
「私はあまりにも年を取り、弱いので……。」
「補佐司祭に直接調査するよう命じます。」
レイハスの簡潔な声がヘインズの耳に響き渡った。
ヘインズは軽率に口を開いたことを深く後悔した。
・
・
・
聖女として過ごす一日は適度に流れていった。
この日もヘセドの祝福のもと、本を読み、城壁を一度散策した。
熱心に議論していた神々は昼寝でもしているのか、しばらく静かだった。
そして、遅い午後、宮殿へ向かうために侍女たちの助けを受けて身支度をしている途中、不意に外で騒がしい声が上がった。
「何事?」
「見習い修道女の一人が、聖女様にお伝えしたいことがあると申し上げております。」
「私に伝えたいことがあるのか?」
気になった私は侍女に言った。
「連れてきて。何の話か聞いてみよう。」
少しして侍女たちの後を追って、見慣れない修道女が一人入ってきた。
淡い空色の半透明な制服をまとい、暗い空色の短髪を整えた姿。
以前、新神殿の書庫で会ったことのある見習い修道女だった。
侍女たちの間に立つ私を見て、その修道女は私の前で跪き、頭を下げた。
「以前お目にかかった見習い修道女のようですね。私に何か伝えたいことがあるのですか?」
私の問いに、その少女はそっと顔を上げ、私を見つめた。
16歳くらいだろうか、この場にいる誰よりも若く見える少女だった。
「聖女様のそばに仕えたいと思っています。」
その言葉に、私はしばらくの間彼女の黒い瞳を見つめた。
「その時は感謝の言葉も申し上げられませんでした。私がこのような恩恵を……!」
「感謝の言葉は受け取っておくわ。」
私は彼女の言葉を遮り、簡潔にそう言った。
「でも私は侍女たちだけで十分だわ。」
元々、聖女には身の回りの世話をする侍女以外にも数人の修道女が付き従うものだった。
しかし、レイハスが私に修道女を配属しないのには何か理由があるようだった。
私は本物の聖女ではなく、修道女たちが私が聖女ではないと気づく危険があったためだ。
それで、能力を持って司祭として働く修道女とは違い、能力がなく給料をもらって働く侍女を私の元に配属したのだ。
「でっ、でも!」
「そしてその時あなたを助けた理由は、あの男が私が必要としている本棚の前を塞いでいただけだからだ。」
私は冷静な声でその子に言った。
「来てくれてありがとう。」と言葉を添えることはしなかった。
冷淡で慎重な声で見習い修道女にこう告げた。
「では、もう行きなさい。私は忙しいから。」
しかし、デイジーはまだ諦めていない目で私を見つめていた。
その瞳には涙が浮かんでいた。
「それでも私は聖女様をお仕えしたいです。」
私は小さく息を吐き、しばらく侍女たちを部屋から下がらせることにした。
「いるじゃない。」
結局、二人だけになってから、私はその子に言葉をかけた。
「私の近くで長い間仕えてくれた子が一人いた。」
床にひざまずくデイジーの目が私を見上げていた。
彼女がアニーとは質的に異なる子であることは分かっていたが、修道女として仕えるという問題はまた別の話だった。
「そして少し前に、その子が亡くなった。刃物に刺されたんだ。」
その言葉にデイジーの目が大きく見開かれた。
「その子はどうして死んだと思う?」
私はデイジーに歩み寄り、彼女の肩に手を置いた。
慰めることは私の性に合わないが、それでも時にはやらなければならないときがある。
「……。」
「私の前でひどい間違いを犯したからよ。」
私の言葉にデイジーの瞳が激しく揺れた。
その瞳には恐怖が深く根付いていることが十分に伝わってきた。
「熟練した侍女でさえ死んだのだ、見習い修道女のお前の命がどれほどの価値があると思う?」
デイジーの目がぱちぱちと動揺した。
ここまで来ればもう分かるはずだろう、と私は腰を下ろした。
そしてデイジーが逃げ場を失い、破滅の結末を迎えるのを予想しながら彼女を見守った。
しかし、固く握った拳をほどき、床を見つめていたデイジーが突然ぴたりと顔を上げ、私を見据えた。
「それでも私は聖女様のそばでお仕えしたいです!」
その言葉に、私は呆然とした。
死ぬかもしれないという言葉が理解できなかったのか?
「ここまで育ち、自分の身を守るだけでもどれほど大変だったか…。運良く見習い修道女になれたので、自分が力を持っていると思っていました。でも、違いました。」
「……。」
「彼が私を嘲笑しても、そのまま耐えるしかない私の立場が惨めで、死ぬしかないと思いました。何も変わらない私が嫌だったんです。」
私はふと過去の生活を思い出した。
しかしそれは、彼女と同じものではなかった。
「私は一度も、本当に一度も他の貴族から謝られたことがありませんでした。たとえ彼らが先に私を叩いたとしても、私が謝らなければなりませんでした。でも、領主様から謝られたその日……。私はもう自分が悪いわけではないと気づいたんです。」
彼女の固く握られた拳が震えた。
「その時の私にとって、聖女様の姿は私にとって一筋の光であり、いつか私がなりたかった理想だったんです。」
デイジーの堅固な意志が宿る瞳が私を見上げていた。
「いずれにせよシスターになるなら、一生神に仕え奉仕しながら生きなければなりません。誰かのために仕え奉仕するなら、その相手がぜひ聖女様であってほしいのです。」
「……」
「聖女様をお世話していて、聖女様のお気に召さずに命を失うのは怖いですけど……。」
デイジーの瞳が意志で輝いていた。
「……死なないように努力してみます。」
彼女の姿が……。
どうにか生き残ろうとしていた過去の自分の純粋さと似ていたからだろうか。
胸の奥に妙な感情が湧き上がった。
「私は君が思っているような人間ではない。」
本物の聖女ではなく偽物の聖女でしかない。
この神殿を去る人間であると私は言った。
私の冷たい言葉にもデイジーは変わらない意志で口を開いた。
「聖女様がどんな方であろうと関係ありません。」
彼女は再び私の前に膝をついた。
「だから私を受け入れてください!」
いまにも床に崩れ落ちそうなほど深く頭を垂れる彼女を見て、私は小さくため息をついた。
シスターか。
侍女よりも教育を受け、能力も持っている名家の子女たちのことだ。
「君の家門はどこ?」
私はデイジーに尋ねた。
デイジーは黄金の瞳でこちらを見つめて答えた。
「セイントコースト子爵家の者です。両親は亡くなり、遠い親戚に引き取られて、辺境で育てられました。」
しばらく考えた後、私は口を開いた。
「私の身の回りの世話をすることになれば、お前の命はもちろん、お前の家門の名誉さえ危うくなるかもしれない。それでもこの願いは変わらないのか?」
「関係ありません。」
デイジーは何も迷うことなく即答した。
その姿は、養子先で厳しい教育を受けた子のようだった。
少し間を置いてから、私は言葉を続けた。
「後になって後悔しても無駄だぞ。」
彼女が感謝していると言う以上、それ以上説得する理由はなかった。
「ありがとうございます、聖女様!」
デイジーは頭を下げ、嬉しそうに叫んだ。










