家族ごっこはもうやめます

家族ごっこはもうやめます【177話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【家族ごっこはもうやめます】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介とな...

 




 

177話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • カミーラ

ナビアのささやかな誕生日を祝うパーティーが終わった。

黒い邸宅は目が眩むほど明るく変わっていた。

ラルクは久しぶりに自分の寝室に一人で入った途端、妙な感慨に包まれた。

「こんなに片付いた家を見るのは、一体どれくらいぶりだろう。」

まったく慣れない感覚だった。

彼は部屋を見渡した後、ベッドではなく、いつも横たわっていた長いソファの方へと向かった。

ソファテーブルにはきれいな額に収められた写真が並べられていた。

ナビアの幼いころから思春期、少女時代、成人した姿が写った大切な写真たちだった。

それだけではなかった。

ラルクの手が一瞬止まり、ナビアの写真たちと一緒に混ざって置かれていた別の女性の肖像画を持ち上げた。

カミーラだった。

ナビアのように長く豊かに流れる銀髪と薄い光で輝く青い瞳が、とても印象的な美人が肖像画の中で少し不機嫌そうな表情をしていた。

ラルクは思わず笑ってしまった。

「ナビアのむっとした顔は誰に似たのかと思ってたけど。」

カミーラのむっとした表情と同じだと判断したのだ。

彼は小さな額縁を手に取り、ソファに横たえた。

視線はしばらくの間、カミーラのむっとした表情に釘付けになったままだった。

「ねぇ、家の奥が見える? 君はこの邸宅がこんなに明るくなるなんて思ってもみなかったでしょ。」

いや、未来が見えたとしても、この邸宅がここまで明るくなるとは予想もできなかっただろう。

ラルクは額縁を手に取ってテーブルに置き、左手の小指でそれを軽くなぞった。

かすんだ視界の中で、これまでにないほど柔らかく深い愛情が溢れた。

「君が僕にプロポーズした瞬間が、まるで昨日のことのように鮮明に思い出せるよ。」

それよりもっと前、彼女が何のためらいもなく盗みに入り、エセルレッドへ侵入してきたあの瞬間さえ、脳裏にはっきりと刻まれていた。

ラルクはその日を思い出し、小さく笑う。

あの時の彼は、まさか自分がその女性を愛するようになるとは夢にも思っていなかった。

ただの怠け者で口が悪くて生意気な女だとしか思っていなかったのだから。

ラルクは指輪をそっとなぞった。

映像を通して彼女にプロポーズした日の、深い安堵が蘇ってきた。

彼女は自分が見捨てて去ったわけではなかった。

ナビアを産んだ瞬間まで、ずっと彼を愛していたのだ。

『私がまだあなたを愛しているのと同じように。』

そうしてお互い違う時間の中で永遠を誓い合った。

ラルクは指輪にキスした。

「カミーラ。」

二度と戻らぬ愛の名前。

ラルクは静かに微笑み、久しぶりの静寂に包まれて目を閉じた。

もう悔いも終わり、復讐も終わった。

だからだろうか?

なぜか今なら普通の人のように眠れる気がした。

彼は夢を見ることが怖かった。

カミーラがいなくなったあの日、絶望していたあの時がよみがえってくるかもしれないから。

『もうカミーラが僕を捨てたわけじゃないって分かってる。』

だから今は、別の夢を見てみたいと思った。

夢の中でも、彼女が自分に笑いかけてくれるのを見たいと思った。

『そろそろ夢の中に現れてくれてもいいんじゃない?あんなに優しい君なんだからさ。』

ラルクは心の中でつぶやきながら、そっと目元の涙をぬぐった。

「………」

目を閉じることはうまくいった。

だが、ラルクが目を開けたとき、寝室の風景が変わっていた。

邸宅が再び暗く覆われていたのだ。

『そんなはずはないだろう?』

彼は邸宅に再び維持復元の魔法をかけていなかった。

だから、邸宅が暗くなる理由がないはずだ。

そこで気づいた。

自分がいま夢の中で目を開けていることを。

『明晰夢か?』

ラルクはとっさに目元をこすった。

急にズキッとする頭痛が脳をズクズクと突き刺すように感じられた。

全身の感覚も水中に沈んだ人のように鈍く重たかった。

眠りから覚めるときの感覚ではなかった。

これはすぐに消えるだろうという予感のようなものだった。

彼はぼんやりと濡れた目でソファの上でなんとか体勢を整え目を覚ました。

『夢に入る前にわかることはわかっておかないと。』

今がいつのことか、この夢で何が現れるのか。

ラルクは自分の状態を確認し、あることに気づいた。

『麻酔薬を飲んだのか。』

薬を飲んだとき特有のぼんやりした感覚があった。

テーブルの上を見ると、ナビアとカミーラの写真が入っていたはずの額の代わりに、薬瓶が置かれていた。

彼の幻熱(ビジョン)は、彼が成人してから本格的に始まった。

今の彼の年齢は少なくとも二十歳くらいだと推測できた。

今回は冬を召喚した。

大きな毛皮を羽織り、長髪の美青年の代わりに、前髪が目にかかるほどの人物だった。

長く後ろ髪をしっかり短く整えた青年が見えた。

はっきりとした髭があるわけではなかったが、確かに無骨な雰囲気はなかった。

『それにしてもイケメンだけどな。』

この頃だけの少しぎこちなく鋭い魅力があった。

まあ、青春の美しさとはそういうものか。

『青春なんて。』

自分が青春だった時代があっただろうか?

納得のいかない思いだった。

『とにかく髪の長さを見ると二十歳そこそこくらいかな。』

つまり今、邸宅に彼女がいる可能性があるということだった。

『カミーラ!』

ラルクは懐かしい彼に会うために固まっていた身体を起こした。

パシッ!

同時に幻熱(ビジョン)が消えたようだった。

「くっ……!」

ラルクは表情を歪めながら慌てて薬を飲んだ。

『じくじくと疼く幻熱のようだ。』

彼は苛立たしげにソファの上にドサッと倒れ込んだ。

まるで気分が溶けて全身が緩んだようだった。

痛みも、思考もすべてが無感覚になっていった。

彼はその感覚がかなり好きだった。

時間の流れも感じず、生きているとも感じないこの仮死状態は、彼が享受できる最大の贅沢だった。

だが、それは本当の幸せではなかった。

本当の幸せとは、それを思い浮かべるだけで微笑んでしまうものだから。

『うちの娘みたいなもんだ。』

そう考えた瞬間、ぼんやりした感覚がラルクの意識を完全にひっくり返した。

ここが夢の中だという自覚が消えたのだ。

「……」

ラルクの唇に一瞬浮かんでいた微笑が消えた。

『……さっきなんで笑ったんだ?』

一度も経験したことのない、涙が出そうな幸福感を感じた気がしたのに。

彼は眉間にしわを寄せた。

『幸せだって?ふざけるな。』

自分は幸せになれない人間だった。

『人間じゃなくて怪物だな。』

ラルクは自嘲気味に笑った。

『どうやら幻熱のせいで頭がおかしくなったらしいな。』

それは驚くことではなかった。

ラルクは自分がずっと前からどこかしら壊れていると感じていたからだ。

いや、確実に壊れていた。

最初から自分をまともだと思ったことはなかった。

『アザトスの権能で生まれた人間ごときがまともなわけがない。』

変身契約は神が強制的に言葉によって与えるものだ。

まるで投げつけるかのように神が権能を奪い、人間の体に植え付けて成立するものだった。

エセレッドではあまりにも無造作で非人道的、そして邪悪な方式でラルクという存在を作り出した。

それは完全なる空虚。

彼が神と同等に強い理由がまさにそれだった。

どんな神も彼のように強くなることはできなかった。

ニクスの化身であるナビアだけが見て知ることができることだった。

ラルクはとても特別だった。

あまりにも突出していて特異だった。

だからエセルレッドの欲望を満たすために利用された。

彼はこの上なく優秀な人間兵器であり、卓越した猟犬だった。

冷酷な飼い主に何度も引き戻された飼い犬。

そんな自分が檻のような邸宅に閉じ込められ、回帰を永遠に繰り返すのは、もしかしたら天罰なのかもしれないと思った。

『だけどそのどれも俺が望んだことじゃなかったんだけどな。』

ラルクはその事実に対して特に感情も湧かず、ただ無表情でいるだけだった。

『今の俺の年齢は二十歳だった。』

もし今回の人生も何もなければ、二十歳で死ぬことになるだろう。

彼の人生は八歳で始まり、何もなければ二十歳で終わる。

あの時、容赦なく幻熱によって心臓がすべてえぐり取られてしまったからだった。

『退屈だな。』

この邸宅に閉じ込められたまま、いつまで生きなければならないのか?

いつか永遠の安息が訪れるだろうか?

そんな日が来るのだろうか?

ラルクはいつものように乾いた声でつぶやいた。

「死にたい。」

変わらぬ唯一の願い。

死ねないせいで狂いそうな感情は、ずっと昔に消えてしまった。

憂鬱で悲しい感情さえも感じなくなった。

すべては終わった。

すべて擦り切れて死んだ。

今ではそんな卑小で浅はかな感情を抱くにはあまりにも長く生きすぎた。

『最初からそんな感情を抱いたことがあったか?』

人間でもなく、怪物のような自分が感じる「悲しみ」なんて感情はあまりにも純粋すぎる。

そのとき、遠くからかすかな物音が聞こえた。

微かに響く音に視線が扉の方へ向いた。

誰かが3階に入ってきた。

『階段か?』

いや。

侵入者は窓をよじ登ってきた。

この不気味な邸宅に潜り込むほど大胆な奴がいるとは。

ラルクは死んだようにじっとしていた時間から意識を取り戻し、少し苛立ちを感じた。

『今まで一度も忍び込んだ奴なんていなかったのに、今回は外で何が起きているんだ?』

いつもなら、紛れ込んだ者がいればためらいなく消してしまえばよかった。

それで済んだ。

だが今日に限っては、そんな気にはなれなかった。

すぐに殺すのではなく、顔だけでも一度確認してからにしようという気がした。

どうせここに入ってきた人間が誰なのか、その顔を見てから死んでも遅くはないのだから。

確認さえすればすぐにでも消すつもりだった。

面倒ごとに手を煩わせたくなかったからだ。

彼は侵入者に向かってためらいもなく歩き出した。

淡い緑の光もまだ射さない、ひんやりとした初春の夜明け。

青黒いその光は暗い回廊にほのかに差し込み、陰気で静かな雰囲気が薄く漂っていた。

ラルクは闇の中に溶け込んだ影のように、静かに歩を進めた。

全身からは殺気がひっそりと広がっていた。

『どうせなら、手に入れて遊べるくらい強ければよかったのに。』

この退屈でひたすら単調な人生に少しでも刺激があればいいと思っていた。

そのときラルクの視界に扉が開いている部屋が見えた。

そこからごそごそと音が聞こえてきた。

「なんだ、こんな屋敷に盗るものがこんなにないの? いくらしょぼい公爵家とはいえ、これはちょっとひどいじゃない。」

侵入者の声を聞くと女だった。

そして少しひねくれているように聞こえた。

ラルクはドア枠に寄りかかり、少し鋭い視線でじっとその女の後ろ姿を見つめた。

表情は微動だにしない。

相手が誰であろうと、自分の手で命を絶つだけのことだった。

『魔法使いか。』

女から魔力の匂いが感じられた。

春のような柔らかい風の香りだった。

普通の冷たくて冷酷な冬の香りとは違い、妙に人間的な香りがした。

女は全身黒いローブをまとっていた。

フードを深くかぶっていて姿は見えなかった。

だが、かなりやつれていることはわかる。

生命力も異様なほどにかすかに感じられた。

彼女はあちこちを探っていたが、完全に気を抜いたようなため息とともに後ろを振り返った。

「お腹すいたし、台所でも探してみようかな?」

そして暗闇の中で、はっきりと光る赤い瞳と目が合った。

「……うわっ!」

女は幽霊でも見たかのように叫び、後ずさった。どこか抜けている泥棒だった。

ラルクは冷たい視線で女を見ながら、静かに間合いを詰めた。

女が後ろに倒れながらフードが外れた。

銀髪だった。

他の色と間違えることのできない、あまりにもきれいな銀色の髪が夜明けの白い光に照らされていた。

乱れた長い髪の間からのぞく小さな顔は髪の毛ほど白かった。

青白い壁の前でこちらを見上げており、ふっくらとした唇は少し開いていた。

彼女はかなり美しかった。

もしこの泥棒を見つけたのがラルクではなく他の使用人だったなら、間違いなく一目惚れしていただろう。

しかしラルクは美しい外見に感動することはなかった。

これまで生きてきて世界中の名だたる美人を目にしても、欲しいと思ったことは一度もなかった。

いや、むしろ愛欲そのものにまったく興味がなかった。

彼にとって結婚や家庭という概念は不幸の種でしかなかったのだ。

『この女、誰だかわかる気がする。たしかブラディナ家の長女だったか?』

それ以外には、自分と接点のない女性で、詳しく知っていることはなかった。

『まあ、そうするしかないな。』

この女性はいつも20代前半で亡くなる。

つまり、そういう運命ということだ。

『何もなければ、きっとすぐ死ぬだろうな。』

ラルクは、自分が手を下さなくても死ぬ命なので、わざわざ手を出したくなかった。

普段ならそんなことなど気にも留めずに、ただ死なせていただろう。

でも、さっき一瞬感じたあの幸福感の余韻だろうか?

それを否定するように消えろと言おうとした、そのときだった。

女は静かな表情で彼を見つめると、乾いた唾を飲み込んでたずねた。

「あなたは幽霊ですか?」

「………」

ラルクは一瞬、言葉を失った。

一体自分のどこを見て幽霊だというのか、まったく分からなかった。

「何を言ってるんだ?」

彼が苛立たしげに言うと、女はさらに驚いた表情をした。

本当に呆然として見えた。

「そ、そんな……人間……?」

ラルクはこの女と向き合っている自分が、もっと呆れて感じられた。

「さっさとどけ。」

「わ、わかった!」

ぐうぅぅ!

女のお腹から大きな音がした。

ラルクは冷たく振り返ろうとしたが、あまりに間の抜けた音に気が削がれて、冷ややかな表情で彼女を見返した。

女はぼんやりと頭をかきながら言った。

「ええと、こんなことを言うのはとても図々しくて恥ずかしいんですけど……ごはん、少し分けてもらえませんか?」

「………」

本当に不思議な女だった。

 



 

 

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