悪役なのに愛されすぎています

悪役なのに愛されすぎています【111話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役なのに愛されすぎています】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

111話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 大きな転換点②

クロードが部屋へ戻っていったのは、ちょうど郵便馬車が到着した頃だった。

広い部屋にひとり残されたメロディは、ソファに身を投げ出した。

『今日はなんて変な日なの。』

彼女は自分を訪ねてきた二人の男のことを思い返した。

イサヤとクロード。

二人は同じ日に、彼女の時間を求めてきた。

それぞれの理由を抱えて。

メロディは彼らの願いをすべて断ることはできても、軽く受け流すことはできなかった。

少なくとも彼らの願いが「ただの出会い」以上のものだと気づいてしまったからには。

『でも……』

メロディはふかふかのクッションに頭を預け、小さく呻いた。

「こんなことを悩んでいる場合じゃないのに!」

今はロレッタにとって、とても大切な時期なのだから。

彼女を助ける男性主人公が、公爵家の庇護のもとに置かれるのか、それともそうではないのかが決まる時期なのだから。

『……それでも、どうしても。』

頭の中からその考えが離れず、どうすればいいのか分からなかった。

『息苦しい。』

彼女が一人で悶々としていると、またノックの音が響いた。

どうやらメロディ宛ての郵便物が届いたらしい。

彼女はもう少し一人でいたい気持ちから、扉越しに声をかけた。

「すみません、郵便物は扉の前に置いてください。」

しかし彼女の願いとは裏腹に、ドアノブは勝手に回され、やがて扉が開いた。

「嫌だね?」

聞こえてきた馴染みのある声に、メロディは絶望しながらも立ち上がった。

「ロニ!」

「その不細工な顔は一体なに?」

「許可もなく入ってくるからですよ。こうしないって言ってたくせに。」

「知るかよ。忙しくて死にそうなんだ。」

彼はずかずかと歩み寄り、メロディの隣にどっかりと腰を下ろした。

「忙しいんですか?」

「ああ。」

彼は背もたれに体をすっかり預け、目を閉じた。

「父上も兄上も外に出られないから、いくつかの場には俺が代わりに顔を出してるんだ。」

「なるほど。」

「本当に面倒で死にそうだ。」

そう言いながらも、どこか得意げな響きを帯びていた。

「俺がすることはそれだけじゃない。最近は写実的な絵を描いてくれる画家も探してるんだ。」

「写実的な絵はどうしてです?」

「当然だろう。」

「ああ。」

メロディは、ロニが大切にしている性格を思い出した。

いわゆる「妹バカ」というやつだ。

「ロゼッタの可愛さをそのまま表現してくれる画家を探している、ということですね?」

「ああ、検査官のお前もそう思うだろう?」

「私は写実的に描きたくありません。美化が必要なんです。他の人たちのように。」

彼はしばらく目を細めてメロディをじっと見つめた。

「はあ、ここからもっと可愛くなるんだろうな……。」

「美しいならいいことです。肖像画を描く値段は高いですから。」

「そんなに細かく口を出したいなら、誰に肖像画を描かせるかはお前が選べ!」

彼はまるでうまくいったと言わんばかりに姿勢を崩さなかった。

何か頼みたいことがあるようだ。

「肖像画家が何人か作品を持って来るんだけど、一緒に見てみない?」

「邸宅で、ですか?」

「そう。一人ずつ順番に作品を披露するんだ。」

「面白そうですね。」

メロディが軽く髪をかき上げると、ロニは体を乗り出し、ぱっと明るい笑みを浮かべた。

「だろ?楽しいに決まってる!」

実のところ、ロニがメロディの部屋を訪れたのには目的があった。

ただの雑談ではなく、画家を選ぶ過程にメロディを巻き込みたかったのだ。

全ての絵を見終わった後、誰に任せるか悩むことになるだろう。

その間、二人は一緒に感想を交わし、時間を過ごすことになる。

散歩をしたり、お茶を飲んだりしながら。

そして、運が良ければ画家が決まるその日まで、メロディの時間を独占できるかもしれない――。

「それでなんだが。」

彼は少し期待を込めた表情で慎重に話し始めた。

「画家たちが顔の後ろに……」

だが彼が「後ろの穴」という言葉を口にした瞬間、メロディの顔が一瞬青ざめたように見えた。

「え?」

彼は見間違いかと思い、同じ言葉を繰り返してみた。

「後ろの穴」

すると今度は彼女がはっと驚いたように両肩を震わせた。

もちろん、こんな興味深い現象を見過ごすはずもなく、ロニはもう一度口にした。

「後ろの穴?」

今度はメロディの眉間に皺が寄った。

なぜか不本意な印象を与えるようで、少し可笑しかった。

「!」

「やめてください!」

からかわれていると気づいたメロディは、手にしていたクッションで彼をぽかぽか叩いた。

「いや、違うって!」

ロニは肩にクッションを受けながらも、笑い声はどんどん大きくなるばかりだった。

「お前の顔が可笑しいんだよ! “十一日”って言うたびに、まるで地獄に引きずり込まれるみたいな顔して!」

彼は腹を抱えて大笑いし始め、メロディはふくれっ面をしたままクッションを抱きしめた。

「ひどいです。」

「ひどいのはお前の顔だよ。本当に笑った。あの顔をそのまま描いてくれる画家がいたら、俺は大金を払ってでも買うね。」

「ふん。」

「で、結局なんの用なんだ?」

彼は姿勢を正し、まだ笑みを残したまま問いかけた。

「……」

「顔の裏に世界が崩れ落ちるような穴がある理由は何なんだ?」

「そうじゃありません。ただ、顔の裏に画家が来るって言ったでしょう?」

メロディが話題を逸らそうとするように見えたので、ロニは片手を大きく振った。

「そんなのは俺がうまく探し出してやるから、言ってみなよ。」

「でも……」

「まさか、俺の妹を描ける画家がいないんじゃないかって心配してるのか?」

「そういうわけじゃありません。」

「ならいいさ。」

彼はメロディが抱えていたクッションを無理やり取り上げ、もう一度問いただした。

「言ってみろよ。何のことなんだ?」

「……」

「兄さんが忙しくてデートしてくれないんでしょ?」

「えっ……?!」

「違うか、反対側だったか。うん、そういうことか。」

メロディは声も出せず、ただ口を半開きにしたまま彼を見つめるしかなかった。

「――ああ、そうだな。」

ロニはまた何かを思い出したかのように、ふっと笑みを漏らした。

「もしかしたら、イサヤの剣の祝福の席にお前が呼ばれたこともあったかもしれないな。」

「そ、それ……どうして知ってるんですか?!」

「俺がこの屋敷の連中について知らないことなんて、あると思うか?」

ロニは飄々とした態度のまま、指先でメロディの額を軽く突いた。

「だからここで二人の間で悩んでたんだろ?」

「ち、違います!」

「違うわけないだろ。俺が“顔色を読んでやる”って言っただけで、心配事が顔に全部書いてあるじゃないか。両方に会えばいいんじゃない?」

ロニの突拍子もない結論に、メロディは一瞬言葉を失ってしまった。

「い、いや、それは……。午前はイサヤと神殿で会って、午後は兄上に会えって? ……あんた、人をそんな目で見るのはやめなさいよ!」

「な、なにっ?!」

思わず両手で自分の目元を押さえるメロディ。

別にいやらしい視線を送ったつもりなんて全くなかった。

ただ、どうしてそんなことを言われるのか理解できなかったのだ。

「誰がどう見ても浮気者みたいな視線を送ってたって話だよ。」

そう言って彼はクッションをぎゅっと胸に抱きしめ、不満そうに顔をしかめる。

(まったく……疲れて倒れそうな時に、なんて理不尽なことを……)

小さな呟きはメロディの耳に届くことはなかった。

「ロニを、そんなふうに見たわけじゃありません。本当に……ちょっと驚いただけです。」

「どうして?俺が君のことをあまりにも正確に知ってるから?」

メロディは少し迷った末に、ゆっくりとうなずいた。

「そんなに難しいことじゃないさ。目を引く男たちの中で、君を好まない者なんていると思うか?」

「そ……それは、多いんじゃないですか?」

「だとしたら、よほど目が節穴か、よほどひねくれた奴だろうな。しかも俺は――」

ロニは抱えていたクッションを、ふっと笑みを浮かべながらメロディに戻した。

「俺は君の“友達”だろ?」

一瞬、彼の言葉にメロディは口をつぐんだ。

しかしやがて何かを決意したように、真剣な面持ちで顔を上げた。

「困ったことくらいなら、すぐに片づけてやれる。」

「……ロニ。」

「まあ正直言うと、イサヤみたいな奴と俺の出来のいい兄貴を比べられるのは、ちょっと癪に障るんだけどな。」

「イサヤがどうだって?」

「どうって……ただ力が強いだけの子ですよ。」

「それでもイサヤは素直じゃないですか。」

「つまり、うちの兄上は素直じゃないって言いたいわけか。」

「クロード様は……。」

確かに時折、気まぐれに優しい態度を見せることもある。

けれど普段はどうだろう。

幼い頃からずっと――メロディが興味を持った人と会うのを邪魔したり、記録官試験では何も言わずに現れて新聞記者を押し込み、彼女を驚かせたり。

それだけじゃない。真夜中に強引に抱きしめられたり、少し前には手首に口づけを落とされたこともあった。

メロディは、ヒギンス家の名に恥じぬよう真摯に向き合おうとしたが、それでも彼について真剣に考えることはできないのだと、はっきり悟っていた……。

『……どうか、ゆっくりと……お願いですから、そんなふうに考えないでください。』

澄ました顔でそう懇願されれば、誰だって断るのは難しい。

「兄さんのことは、どう思ってる?」

彼女の答えを待っていたロニが、再び問いかけた。メロディはすぐに顔をしかめる。

「……ちょっと、厳しすぎます。クロード様なんて、本当に堅苦しくて……全然、気楽に話せないんです。」

それは褒め言葉では決してなかったが、どうしてかメロディの頬は赤らんでいく。

彼女は思わずクッションに顔を埋めてしまった。

その仕草がよほど可笑しかったのか、ロニはまたクスクスと笑い声をあげるのだった。

 



 

その頃、公爵家では小さな出来事が起ころうとしていた――。

新しく入った下男が運んでいた大きな籠を、庭園の片隅にうっかり立てかけてしまったのが事の始まりだった。

積まれていた果実がすべて床に転がり落ちてしまったのだ。

真っ赤な林檎も、瑞々しい果物も、庭園のあちこちへとごろごろと散っていく。

かつてこの邸宅に子どもたちがたくさんいた頃なら、それはそれで楽しい出来事になっただろう。

「宝探しだ!」と笑いながら夢中で果実を拾い集めたに違いない。

だが今、この屋敷には子どもの姿はほとんどない。

そのかわり、年若い令嬢ロゼッタは、近頃どこか心に風が吹き込んだように落ち着きなく、まるで幼い娘に戻ったかのように果実を拾いたがった。

「長いこと……我慢すると約束したのに……。」

彼女は小さく呟きながら、独りで頬を染める。

結局、ヒギンス夫妻をはじめ、工房の使用人たち全員が総出で果実を一つずつ拾い集めることになった。

メロディも籠を抱え、夫妻の後をついていった。

「最近のリンゴって、見た目はバラみたいに艶やかに実るのね。まるで宝石みたいに転がって……ほんと、羨ましいこと。」

ヒギンス夫人は床に落ちたリンゴを拾い上げると、ひどく傷のついたものは庭の端へと放り投げた。

虫でも鳥でも、いずれは誰かの餌になるだろうと言わんばかりに。

「これはもう割れてしまって……アリたちのごちそうですね。」

父の言葉に視線を向けると、小さなアリたちが果肉をせっせと運び出しているのが見えた。

「高いお金を払って買ったというのに、虫ばかり喜ばせているようだわ。」

ヒギンス夫人は薪の隙間で見つけたリンゴを、メロディの持つ籠へと入れ、ようやくひと息ついた。

「……どうしてこうも完璧なものが一つもないのかしら。」

「せめて一つくらい、気に入るものがあればいいのに。」

「きっと残っているはずです。もし無ければ、私が新しい林檎を買ってきてもいいですし。」

そう言いながら、メロディはバスケットを抱えたまま、にこりと微笑んだ。

両親がわざわざ美味しい林檎を探してくるのは、全部自分のためだと分かっていたからだ。

「私は少しくらい傷のある林檎でも構いませんよ。結局は砂糖で煮て、パイにするんでしょう?」

秋になると、家族みんなで集まって作った林檎パイを囲んで食べる――それは新しくできたヒギンス家の恒例行事で、メロディはその時間を心から楽しみにしていた。

少々傷があったところで、パイにすれば美味しさが損なわれるわけではない。

「私は嫌だね。どうしてわざわざ傷物を食べなきゃならない?綺麗な林檎だって食べきれないほどあるのに!」

そう反論したい気持ちが喉元まで込み上げたが、メロディは飲み込んだ。

それがクウェンの性分だと分かっていたから。

小さな手帳に書きとめる姿を見てしまうと、どうしても微笑ましく思わずにはいられなかった。

「今日もまた名言がひとつ増えましたね。」

彼は『妻のありがたいお言葉・第147巻』と書かれた手帳を閉じると、満足げに頷いた。

「当然だろう、私は間違ったことは言わないからな。」

「ええ、存じています。だからこそ、私はあなたを尊敬しているんです。」

メロディは二人のやりとりを見守りながら、なぜか自分が両親のささやかな楽しみを邪魔しているのではないかと不安になった。

「えっと……私はあちらの方にリンゴがあるかどうか、見てきます!」

そう言って彼女は、果物を探している召使いたちのあいだを縫うようにして、そっとその場を離れていった。

 



 

 

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