こんにちは、ちゃむです。
「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

79話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 夏祭り③
最後の日の朝もためらいなく訪れた。
メロディは昨夜、「もう動けない……。」と泣き言を言いながら丸くなっていたが、朝になると体が再び軽くなっていた。
水風呂の蒸しタオルと「奇跡のゴムマッサージ棒」のおかげだ。
ベッドの上でゆっくり朝食をとり、侍女たちの助けを借りて新しいドレスに着替えた。
ちょうどその時、クロードがやってきた。
普段より少し早い時間だった。
「ちょっとブリクス商会の方に行ってきますが、その間、屋敷で待っていてくれますか?」
「仕事で行くなら、一緒に行きましょうか?」
「ちょっと挨拶だけして戻るつもりなので大丈夫ですよ。もう少し休んでください。疲れているでしょう?」
彼の気遣いがありがたくて、メロディはひとまず頷いた。
しかし、彼が出て行った後、急に退屈になった。
屋敷で休むといっても、外出用の服を着たまま横になるわけにもいかない。
それに、なんとなく不安な気持ちもあった。
こんな時に、男性主人公が父親と祭りを楽しもうと出かけてくるのではないか、と。
結局、彼女は立ち上がった。
ウェンデル・ベントンに外出する意思を伝えると、彼はすぐに馬車を用意してくれた。
「ありがとう。」
「当然のことをしただけです。祭りの最終日は一番楽しい日です。どうか素晴らしい一日になりますように。」
彼は穏やかな微笑みでメロディを見送る。
彼女は馬車に乗り、ウェンデル・ベントンが言った言葉を思い返した。
最後の日、その切実な言葉には自然と哀愁が込められていた。
『ほんの些細なことでもいいから、何かを見つけられたらいいな。』
馬車が止まる。
御者は今日も彼女を南側の馬車待機所で降ろした。
高いアーチ型の南側の橋の上に立つと、静かな通りが一目で見渡せた。
まだ物を広げるいくつかの貧しい商人や、通りを掃除しながらゆっくり準備する人々だけが見える。
「ずいぶん早く出てきたね。」
メロディは少し身震いした。
それでも、屋敷でぼんやりしているよりは気持ちがずっと楽だ。
『今日はあの少年も見えないし。』
大きめの帽子を深く被った小さな少年のことだ。
祭りの初日にその子を見かけて以来、メロディは毎日その少年とこの場所で顔を合わせていた。
少年は毎回、息をのむようにしながら橋を渡ろうとしていた。
何か叶えたい願いがあるのか、いつも真剣な眼差しで挑戦していた。
『もしかして昨日は成功したのかも。』
メロディはなぜか彼を気にかけていた。
名前も知らない少年だが、毎日顔を合わせるうちにわずかに親しみを感じるようになっていた。
ちょうどその時、涼しい風が吹いてきた。
メロディにとって心地よい予感に対するささやかな答えのように、頬を撫でる爽やかな風が。
しかし、その間に良くない言葉が飛び交った。
「嘘つき!」
鋭い非難の声にメロディの視線が自然とそちらへ向かった。
南側の橋の下、川の周辺で村の子供たちが何人か集まっているのが見えた。
メロディはすぐに顔をしかめた。
あの子たちが何をしているのか、一目で理解した様子だった。
自然と彼女の歩みが少し速くなった。
橋の下へ降りると、子供たちの様子がよりはっきりと見えた。
彼らは幼い子供を囲んで、罵倒しながらからかっていた。
「うちの母さんも言ってたよ、お前、本当は捨てられた子なんだろ?」
「違うわけないじゃん。じゃあ、うちの両親が嘘をついたってこと?」
「村に悪いことが起こるのは、全部お前のせいだ。」
「あいつは呪われてるんだって。だから、親も捨てて行ったんだよ。」
「呪われてるって!?悪魔の子供なの!?」
子供たちの騒ぐ声の中に、かすかに小さな声が混ざった。
「……違うよ。」
力のない反論だった。
「俺の願いが叶わないのも、お前のせいだ!お前がいつも左の橋にしがみついてるから、呪いを受けたんだよ!」
少し前に橋の上で成功を喜んでいた子供が、今も願いが叶わないことに腹を立てたようだった。
少年は興奮し、拳を振り上げた。
それを見たメロディは慌てて子供たちのそばへ走った。
「もうやめなさい!」
鋭い声で叫ぶと、周囲の子供たちは驚いて振り返った。
メロディは子供たちが恐れを抱くよう、目に鋭さを込め、できる限り冷たい表情を浮かべた。
幸いにも、彼女の厳しい表情が通じたようだ。
子供たちは少しずつ後ずさりを始め、やがてお互いに顔を見合わせて逃げ出した。
彼らが去った後には、小柄な少年がひとり、力なく座っていた。
橋の影が落ちているせいで、彼の姿ははっきりと見えなかった。
どうしよう?
メロディは複雑な気持ちになる。
幼い頃の自分を思い出し、少年に駆け寄りたくなったが、どう接すればいいのかわからなかった。
彼もまた、自分のこの姿を見られることを惨めに感じているかもしれない。
かつてのメロディがそうであったように。
しばらく考えた末、メロディは少年にもう少し近づいてみることにした。
もしかすると、彼はどこか怪我をしているかもしれない、そう思ったからだ。
「ねえ。」
少年が驚いて顎を上げた。
目が合うと、メロディは彼の中に吸い込まれるような感覚を覚えた。
毎日ぼんやりとしたシルエットのようにしか見えなかった少年の姿が、少しずつ鮮明になっていくようだった。
朝から子供たちにいじめられたのか、彼の腕や足には無数の引っかき傷があり、着ている服には草の汁がついていた。
そして……片方だけ残った靴。
その哀れな姿に、メロディの心は締めつけられたが、単なる憐れみだけではなかった。
彼の髪の色が、あまりにも鮮やかすぎることに驚いたからだ。
淡い紅色。
メロディは自分でも気づかぬうちに、少年の髪に手を伸ばした。
まるで夏の日の薔薇のように、美しく……。
「……あ、うっ。」
メロディが彼の髪に触れようとした瞬間、少年は驚いて後ずさり、慌てて落ちた帽子を拾い上げた。
メロディは驚いて少年を見つめた。
彼は、数日前に橋の上で何度か目にした少年だ。
なぜすぐに気づかなかったのだろう?
考えながらもう一度よく見てみると、帽子の端からは淡い青色に染まった髪が少しだけ覗いていた。
黒い何かを塗りつけて、目立たないようにしていたようだ。
少年は顔をぐっと伏せた。
ぎこちない仕草だった。
しかし、次の瞬間、他の子供たちが消えた方向へと勢いよく駆け出した。
「ちょ、ちょっと待って!」
メロディは慌てて呼びかけたが、少年は決して足を止めようとはしなかった。
片方の靴を失くしているせいで走るのは難しいはずなのに。
『どうしよう?』
少年の背中を追いかけるのは簡単だったが、果たしてそれが正しい行動なのか、メロディは一瞬ためらった。
しかし、通り過ぎる人々が彼らを不審に思って見つめるかもしれなかった。
兵士たちの関心を引くようなことは避けたかった。
それは、もしかすると本来の男主人公である少年のためでもあった。
その時、メロディの目に映ったのは、川の上流へと流れていく少年の靴だった。
「あ、靴!」
メロディがそれを指さしながら叫ぶと、少年は驚いて振り返った。
メロディは少し前に見た少年の靴がひどくすり減っていたことを思い出した。
貴族の家の子供たちは、靴を何足も買い揃え、履きつぶすことがないが、一般の子供たちはそうではない。
同じ一足の靴を何シーズンも履き続けるのが普通だ。
だから、子供たちにとってたった一足の靴はとても貴重なものだった。
メロディは誰よりも、その気持ちをよく理解していた。
『待ってて、わかった?』
目だけで少年にそう伝えた後、メロディは靴がぷかぷかと浮かんでいる川へと走り込んだ。
丈の長いブーツや長いコートが多少邪魔ではあったが、水深がそれほど深くなかったため、進むのには大きな問題はなかった。
「そ、そこ!」
そのとき、走り去った少年が突然川へと駆け寄り、叫んだ。
何か危険を知らせるような声に、メロディは驚いて振り返った。
「え?」
その瞬間、運悪く水中にあった大きな岩とメロディの足がぶつかってしまった。
おそらく少年はそれを知らせたかったのだろう。
川底に大きな岩がある場所だと……。
少し遅かったが。
「わっ!」
岩のざらついた表面に足が擦れて痛みが走ったが、それよりも崩れたバランスを立て直すことのほうが大変だった。
「お、あ……ご、ごめん……!」
少年は驚いて川に駆け寄ろうとしたが、メロディはすぐに手を伸ばし、彼を止めた。
少年はどうすることもできず、もどかしそうに両足をじたばたと動かすだけだった。
メロディは再び靴の位置を確認した。
すでに遠くへ流されてしまったかと思ったが、幸いなことに、水面に突き出た岩に引っかかっていた。
水流に揺られ、今にもまた流されそうだった。
メロディは水を吸って重くなったドレスを膝まで持ち上げ、その方向へ進んだ。
「うっ……!」
メロディは水の中を進む間も、川底にある鋭い岩の突起に時々足の裏を刺されていた。
『もう少しだけ……』
メロディはあと五歩ほど進めば届きそうな靴に向かって手を伸ばした。
しかし、彼女がもう一歩踏み出した瞬間、かろうじて岩に引っかかっていた靴が、ゆっくりと水流に流され始めた。
「ダメ!」
メロディは慌てて靴に向かって腕を伸ばした。
そして指先にかすかに触れたのは、小さな子どもの靴。
メロディはそれを逃すまいと、ぎゅっと握りしめた。
「……つかまえた!」
やや水深が深い場所だったため、完全に沈むところだったが、そんなことは気にも留めなかった。
メロディは勝利の証のように靴を高く掲げ、自然と浮かんだ満足げな微笑みとともに川の方へと振り返った。
少年を安心させるためにも。
「……あれ?」
しかし、メロディの視界に映ったのは、少年の姿ではなかった。
男の白いシャツ。
それも体に張り付くほど濡れて、透けて見えていた。
「……?!」
驚いて視線を上げると、ひどく焦った表情を浮かべたクロードがいた。
「メロディ嬢!」
彼は「お嬢様」と呼ぶことさえ忘れたようだった。
もしかすると、ただ混乱していたのかもしれない。
彼女の肩にジャケットをかけようとする手つきが、いかにも慌ただしかった。
「坊ちゃん?」
自然と彼をそう呼ぶメロディの声は、いつも通りだった。
「一体……」
彼が深く息をつくと、メロディは目の前に置かれた革の靴をすっと押し戻した。
誇らしげな表情を浮かべながら。
(せめて褒めてくれたらいいのに。)
だが、彼にとってメロディの功績は、それほど大したことではないようだった。
「橋を渡っていたらあなたを見つけて、俺が……!」
彼は叫ぶのをやめ、一瞬だけこめかみを押さえた。
おそらく、このままここにいるわけにはいかないと判断したのだろう。
彼は手を差し出した。
「つかまって。」
メロディが指先をかろうじてつかむと、彼は手首全体をつかみ、強く引き寄せた。
水しぶきを立てながらメロディを引っ張る彼の顔は、どこか怒っているようにも見えた。










