こんにちは、ちゃむです。
「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

85話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 夏祭り⑨
ウェンデルは、彼らのもとへ届いた手紙と花を渡して立ち去った。
クロードはまだ少し青ざめた顔で立ち上がり、受け取った手紙を開いた。
そこには、感謝の気持ちが綴られていた。
「機会があれば直接訪ねてご挨拶したいけれど、まだ子どもの体調が回復していないため、手紙で代わりとさせていただきます。」
「何て書いてありましたか?」
メロディが尋ねると、彼は返事の代わりに手紙を渡した。
彼女は素早く内容を確認し、安心とともに深いため息をついた。
「オーガストはまだ回復していないみたいですね。」
「まあ、そうでしょうね。」
クロードは、依然として冷たかった子どもの体を思い返した。
あれほどの雨の中にいたのだから、ひどい風邪を引いているかもしれない。
「えっと、それで……坊ちゃん、オーガストはなぜあそこにいたのでしょうか?誰かがいじめたりしたのでしょうか?」
メロディの問いに、クロードは鋭く目を細め、彼女を見つめた。
「……見なかったのですか?」
「何を?」
少年は意識を失いかけながらも、メロディの靴を大事に抱えていた。
おそらく彼らと別れた後、家で失くしたことに気づき、それを探し続けていたのだろう。
もし岩や水草に引っかかっていたら、見つけられたかもしれないという希望を持って。
「うん。」
クロードは少年の事情をすべて説明しようとしたが、結局やめることにした。
それを語るのはオーガストの役目であり、それを伝えるのも彼自身でなければならないのだから。
「いずれ分かりますよ、シンデレラ。」
「一体何だったのですか?」
「少なくとも、いじめではなかったので安心してください。」
「それなら……よかったです。」
彼女は小さくため息をつきながら、もう一度手紙をなぞるように指でなでた。
もしかすると、サムエル公の痕跡が残っているかもしれないと期待しながら。
しかし、手紙を書いたのは子供の保護者であり、ただ感謝の気持ちを伝えるだけで、他には何の情報もなかった。
「うーん。」
「どうしてまたそんなにがっかりした表情をするんですか?」
「それは……結局のところ、サムエル公に会えなかったじゃないですか。」
もちろん、オーガストとこうして縁がつながっただけでも幸運だとは思う。
でも、どうしても物足りなさを感じてしまうのは仕方のないことだった。
「大丈夫ですよ。」
彼はまるで慰めるように答えた。
「出会えたじゃないですか。」
「……え?」
メロディの問いに、クロードは肩をすくめるだけだった。
「いつですか? どういうことですか?!」
「昨日、川でです。」
「そこにサミュエル公がいたんですか? 本当ですか?」
「私はメロディ嬢が彼を見つけて連れてきたのかと思っていましたが、知らなかったようですね。」
「まったく……。」
彼は村の人々を何人か引き連れてきたが、細かく観察する余裕はなかった。
「坊ちゃんはどうやって知ったんですか?やはり何か気配を感じたのですか?それとも、優雅な身のこなしで……。」
クロードはかつて皇子だった人物なので、身のこなしに染み付いた「礼儀」が小さな動作にも現れるのは当然だった。
メロディにはそのような人物に会った記憶はなかったが。
「優雅さだなんて、そんなことはありませんでした。」
「そうですか?」
「どんなに礼儀に忠実な人でも、大切な子供が危険な状況にいるときにそんな雰囲気を出せるはずがありませんよ。」
昨日、クロードが川から出たとき、彼は子供を助けようと手を差し伸べた人々の顔を一人ひとり確認していた。
皆、焦った表情をしていたが、その中で特に目立つ顔があった。
男は不安と恐怖が入り混じった表情で、クロードの前に歩み寄ろうとしたときも、足が震えていた。
「それは誰が見ても、子供の父親の表情でしたね。」
「……ああ。」
メロディーは、そのとき初めて自分がどれほど愚かな質問をしたのかを悟った。
優雅な立ち振る舞いだなんて。
昨日と同じ状況で、品位を保つことなどできるはずがなかったのに。
「それに、彼は大聖堂の主にそっくりでした。もしかすると坊ちゃんについて聞かれるのは……問題ありませんよね?」
メロディが心配そうに尋ねると、彼は軽く顎をしゃくった。
「確かに、皇族の血は濃いと言われますね。」
オーガストも先代の女王にそっくりな美貌を持っていたのだから。
「血が濃いのは皇族だけではありませんよ。私も目元は父に似ていると言われますし。」
彼は腕を組みながら、昨日サミュエル公が自分を見つめていた表情を思い返した。
わずかな瞬間だったが、クロードを見つめた彼の目には単なる『感謝』とは違う感情が宿っていた。
「今頃、サミュエル公も私の正体をしっかりと理解したでしょう。」
彼の身分は、ブリクスの上層部に確認すればすぐに判明することだ。
クロードはクリステン家の訪問を秘密にはしていなかったのだから。
「もちろん、いいことですよ。むしろ隠さないでいてくれたのだから。」
何かを求める相手に貸しを作るのは、なかなか便利なことだ。
今後のサムエル公との関係の中で、クロードはかなり簡単に優位な立場を取ることができるだろう。
「もうすぐ、向こうから先に連絡が来るはずですよ。」
サムエル公が信用できる安全な方法を通じて。
公爵家としては、その方式に従い、返事をすればそれでいい。
もちろん、サムエル公には昨日の出来事を知らなかったふりをする選択肢も残っている。
しかし、クロードは彼がそうしないだろうと考えていた。
皇帝と親しいボルドウィン公爵家が、どこまで把握しているかが不安にもなるだろうから。
それよりも、オーガストはメロディの靴を持っているのではないか?
あの子は、苦労して探した靴をどうするつもりなのか。
主人に返したいという気持ちもあるが、
サミュエル公が愛する息子の切なる願いを無視することもできないだろう。
「つまり、旅の目的は達成されたというわけですね。思っていた方法とはずいぶん違いましたが。」
メロディはゆっくりと顎に手を当てた。
「はい、とりあえず公爵様に……あっ。」
メロディは「オーガストを見つけたと報告すれば喜ばれるだろう」と言おうとして、
ふと忘れていた事実に気づいた。
彼女は両親の許可も得ず、勝手に屋敷を飛び出してクロードの旅に同行したのだ。
もちろん、彼の「ボルドウィンとヒギンスは常に一緒にあるべきだ」という勝手な理屈に引きずられてしまった結果ではある。
しかし、自らの手で荷物をまとめ、馬車に乗り込んだのも事実である以上、今さら辞退するわけにはいかないのだった。
「……混乱しますね。」
「ええ、混乱しますよね?」
「とんでもないことです!坊ちゃんは怖くないのですか? どうしてそんなに平然としていられるんですか?!」
「まあ、もちろん私もヒギンス夫妻はかなり怖いと思っていますよ。」
彼はしばらく自分の顎を触りながら、やがて微笑んだ。
「到着は一週間後か、それ以上先のことですから、その時に考えましょう。とりあえずは帰り道でどんな靴を買うか考えることですね。きっと楽しいですよ。」
「……。」
「種類と素材と色別ということですね。」
「最低限、色違いで買うのはやめてください。」
メロディはそう言いたかったが、あまりにも呆れすぎて言葉が出なかった。
……いや、違った。
息が詰まってメロディの口が動かなかったわけではない。
それは未来のメロディが送った合図だった。
そこからちょうど四日後、クリステンソンを出発し到着したブリクスの支店。
そこでメロディは運命のようなメリージェーンシューズに出会った。
まさにロゼッタのため、ロゼッタによってデザインされたといっても過言ではないほど可愛らしかった。
その中からたった一色を選ぶなど、人間にできることではなかった。
色ごとに異なる可愛さを放つロゼッタを目にする機会を失うなど、あってはならない!
クロードとメロディは目を合わせ、同時に一つの心で叫んだ。
「ここからあそこまで、全色ください!」
ブリクス商会では、彼らの見事なまでの散財に……購入に感謝して、「賢明な人々の目にしか見えない靴」をサービスとして入れてくれた。
クロードとメロディは満足しながら、帰り道でのショッピングにさらに熱を上げ始めた。









