こんにちは、ちゃむです。
「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

98話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 最後のデートの日②
メロディはしばらく膝に肘をついて考えたあと、そっと顎に手を当てた。
「はい、そうですね。断る手紙は母が書いてくださると言ってましたから。これで完全に終わった……ことになるでしょうね。」
するとロニの両目の端が、かなり険しい表情で吊り上がった。
「……ロニ、なぜ怒ってるんですか?」
「誰が怒ってるって?」
「でも目つきが鋭くなってます。」
「俺の目は元々こういう形なんだよ!それより、お前の目の方を心配したらどうなんだ?」
彼の指摘に、メロディは思わず両頬を手で押さえた。
「わたしの……目が、どうかしたんですか?」
「バカだな、お前。」
そう言って、彼はメロディの額に指先で軽く触れた。
「一体どうして、そんなにお前を苦しめた奴を心配してるんだ?」
すると、彼女の目が大きく揺れた。
どうして分かったのかと驚いたようで、ロニは思わず吹き出して笑った。
「お前ね……。俺が何年も一緒にいたの忘れたの?」
「ロニが、私の気持ちをそんなふうに細かく考えてくれるなんて思わなかったんです。」
ロニはいつもメロディを好きに引き回していたので、彼女もそれに慣れていた。
ロニ自身もその点は自覚していたため、特に否定することもできなかった。
「……俺も、お前をお前なりに気にかけてるんだ。」
「ええ、“私なりに”ですよね?」
メロディが控えめに返事をすると、彼は彼女の額に手を伸ばして再び指を当てた。
彼がその指を弾き飛ばそうとしたのか、メロディはぎゅっと目をつぶる。
もちろんロニは、そんな彼女の顔を見つめながらくすくす笑うだけだった。
彼が何もしないと気づいたメロディは、遅れて彼を恨めしそうに見上げた。
「それで、いったい何なの?」
「……うん。」
彼が再び本題に入ると、メロディは少し躊躇しながら答えた。
「ちょっと、すっきりしないんです。」
「何が?」
「スチュアート・ミドルトン氏のことです。」
「すっきりしないって、何がある? あいつは嫌なやつだよ。」
「……それは、私も以前はそう思っていましたが……前に別れるとき、私に何か言いたそうでしたよね。」
メロディは、彼がたどたどしく口にしていた言葉を思い出した。
『あのさ、えっと……』
『そ、その時さ、俺……お前に……』
彼はどれほど緊張していたのか、手をじっとしていられなかった。
けれど結局、執事の呼び声に驚いて黙り込んでしまったのだった。
「だから、私はまた彼に会えたら、あのときの話の続きを最後まで聞こうって思ってました。」
「なんで?」
ロニの問いかけに、メロディは肩をすくめて笑った。
「私の勘が間違ってなければ、きっと彼は私に謝りたかったんだと思うんです。」
「それは私も分かってる。私が言いたいのは、なんであんな奴の謝罪を受けなきゃいけないのかってこと。そんな奴一人入ってきたからって、君の前では何の問題にもならないって思ってる。メロディ・ヒギンズ。」
彼女の立場を知らせるためだろうか。
ロニは「ヒギンズ」という言葉に力を込めて答えた。
「そんなことまでは考えてませんでした。これはただ、すごく単純な問題なんです。」
メロディは彼に向き直って体を傾けて座った。
それにロニも我慢できず、彼女の方を向いて座った。
「誰かがあなたに心から謝りたいって思ってたら、どうすればいいと思いますか?」
メロディが投げかけた質問に、ロニは片手を挙げて答えた。
「はい、どうぞ。」
「先生、あの野郎は友達じゃありません。」
「……」
「冗談を少し言ったからって、そんなに深刻に取られたら、僕が傷つくとは思わないの?」
「……ごめんなさい。」
「うん、謝罪は受け取るよ。」
彼は襟元を整えると、深く息を吐いた。
メロディはおそらく、その男と同じように、ただこういう単純なやり取りをしたかったのだろう。
特に得になることや損になることは関係なく、人間関係における礼儀を守るために。
「納得したわけじゃないけど、仕方ないか。」
覚悟を決めた彼は、メロディに手を差し出した。
「行こう。」
「どこに行くんですか?」
「謝りに。」
彼の言葉に、メロディは手を握ることはなく、ただ手袋を直すようにしてついていった。
「誰に謝りに行くんですか?」
「お前だよ、バカ。謝るのは俺だ。」
「ロニにですか?」
「そうだ。」
彼は再び手を差し出した。早く握れというように。
「えっと、すみません。誰に謝りに行くんですか?」
メロディはどうしようもないという顔で彼の手を握りながら質問した。
「誰って誰だよ、スチュアート・ミドルトンさ。」
パーティー会場でスチュアートが先にメロディの名誉を傷つけるようなことを言ったので、その件については絶対に謝らないが、2度目のことは別だった。
「僕も彼に謝ろうと思ってるんだ。特に得も損もないことだけど。」
「でも。」
メロディは食い下がって尋ねた。
「……どうやってですか?」
「どうやってって、当然彼を探すさ。」
「彼を探して街中をくまなく探し回るわけにはいかないじゃないですか。」
「そこまでしなくてもいい。とても簡単な方法があるんだ。」
「簡単な方法ですか?」
メロディが襟をいじると、彼は軽く顎を上げた。
「彼は市内でかなり長い時間を過ごさなきゃならない。家の人々の目に触れないように注意しながらね。」
「それなら……目立たない場所に行ったのかもしれませんね?」
「何かを隠したいなら、似たようなもので囲まれた中に隠すのが最も効果的な方法だ。」
「つまり、逆に人が多い場所に行った可能性もあるってことですか?」
「そう。お互いに顔も覚えられないほど混み合っている場所なら、なおさらいい。」
メロディがうなずきながら襟を整えると、彼の説明は続いた。
「それに、神父が長い間一人でいても、目立たない場所じゃなきゃならない。」
「それもそうですね。」
「長い間とどまる必要があるのだから、少しの誘惑があればもっといいかもね。あの激しい性格で静かな場所にじっとしてるわけないでしょ?」
ロニーは堂々と指を二本ピッと上げた。
「だから彼は──」
くぐもった声で推理の結果を語ろうとしたその時。
「社交クラブか図書館にいるでしょう。その中で私が先に探しに行く場所を選ぶとしたら、社交クラブ側を選びます。ミドルトン家の水準で属していそうな場所に。」
背後から近づいたクロードがロニーの台詞をそのまま奪っていった。
「……!」
驚いたロニーが席から立ち上がってクロードをじっと見つめた。
その視線にわずかな嫉妬が混じるまでには、あまり時間がかからなかった。
そしてクロードは片方の肩をすくめた。
「ごめん、ロニ。なんだか楽しそうに見えたから。それと、こんにちは、メロディさん。」
「……!」
クロードは自然に挨拶をしたが、メロディは数秒間、彼の顔をじっと見つめていた。
彼は微笑みながら襟を少し直した。
そんなに驚くことかというように。メロディは少し顔をしかめた。
『ロニ……』
あの夜以来、クロードに会うのがとても恥ずかしかったからだ。
その時はあまりにも動揺して何も気づけなかったけれど、後から静かに思い返してみると――
『とんでもなく恥ずかしいことだったじゃない!』
耳を掃除してあげることは百歩譲って理解できるとしても、膝の上に乗るなんて、どう考えても変だった。
その事実を改めて自覚すると、メロディはクロードに対して少し居心地の悪さを感じた。
だが同じ家に住んでいる以上、彼と顔を合わせないわけにはいかなかった。
幸い、食事やお茶の時間には心の準備ができていたおかげで自然に振る舞うことができた。
しかしこのように突然出くわしてしまうと、どうしようもなくメロディの心に潜んでいた小さな混乱が不意に顔を出してしまった。
「こんにちは……。」
メロディがしばらくしてから口を開いたとき、彼女の前にロニーが立ちはだかった。
「兄さん、どうしてわかったんですか?僕たちがミドルトンを探してるって。」
なぜかロニーの声には微妙な敵意と緊張感が入り混じっていた。
「偶然だよ。」
一方クロードは微笑みさえ浮かべながら、軽やかな声で答えた。
「父の代わりにこの家のことを見ていると、ここで起きることはすべて耳に入ってくるんだ。」
「……」
「とにかく、面倒な噂に巻き込んでしまって悪かった。ごめんね、ロニ。本気で謝ってる。」
彼が襟元を整えながら謝る姿に、ロニは言葉を失ったようだった。
メロディはそんなロニがどこか遠くへ行ってしまったように感じて、咄嗟にクロードの注意を引くことにした。
「こんにちは、クロードさま。」
「メロディさん。」
クロードはロニの脇を通り過ぎ、階段をさらに下りて彼女に手を差し伸べた。
メロディはためらいながらも、空いていた手を彼に預けた。
こうして両手をそれぞれ兄弟に預けるという、奇妙な構図になってしまった。
二人に手を引かれるような形になったのは少しおかしく感じたが……とにかく、両脇から腕を支えられて階段から立ち上がるにはちょうどよかった。
「……ありがとう。」
「どういたしまして。それに、もしメロディさんが彼ときちんと謝罪し合おうと考えているなら、私も賛成です。中途半端な関係でいる必要はありませんからね。」
彼が優しく目を細めながらそう話すと、メロディは小さく頷いた。
「はい、私も……そう思います。」
「でも少し心配ですね。」
クロードはしばらくして肘掛けの端に手を置いた。
「紳士たちのクラブは、メロディさんが出入りするのにふさわしい場所とは言えません。いろいろとね。」
その言葉が終わると、ロニーがすぐさま立ち上がって答えた。
軽く背筋を伸ばしたまま。
「僕が行ってきます、兄さん。」
ロニーの両目には自然と力が宿っていた。
少し前のように、クロードが無理に割って入ることを望まないという意味を込めて。
「うん。」
クロードは弟の顔をじっと見つめながら、そっと襟元を整えた。
「それなら僕も安心できる。僕の弟は立派な紳士だからね。」
普段のロニなら、今のクロードの言葉を立派な褒め言葉として受け取っただろう。
だが、今のロニにはなぜか彼の言葉すべてが気に入らなかった。
こんな遅い時間にメロディを引っ張り出した兄が、“立派な紳士”と評価してくるなんて。
感動的というよりは皮肉に聞こえた。
「ええ、まあ、そうですね。」
だが、メロディの前で彼への感情をあらわにするわけにもいかず、ロニはできるだけ軽い口調で答えた。
「ロニ・ボールドウィン。」
するとクロードは重々しく彼を呼んだ。
いや、実のところ、ロニは彼が自分の心をなだめようとしているようにも感じた。
あの真剣なまなざしはまるで――弟への心配もたくさん含まれていたからだ。
「………」
ロニーは彼をこれ以上見ていられず、顔をそらしてしまった。
『兄さんがいっそ悪い人だったら……よかったのに。』
メロディを侮辱したスチュワート・ミドルトンのように。
そうであれば、彼を思い切り憎んだり、恨んだりすることもできたはずだ。
だがロニーは、クロードを慕い、好きでいることしかできなかった……もちろん今はその事実を認めたくなかったが。
ロニーはしばらく口を噤んだまま、ふと体を動かし、メロディの腕を引いた。
「行こう。」
彼の短い言葉にも込められた強い気配を察したメロディは、その場に立ち尽くしたまま、二人の後ろ姿をただ見つめるしかなかった。
「行こうってば!」
ロニがもう一度メロディを引き寄せたとき、クロードは彼女に向かってそっと襟元を整えてやった。
「じゃあ、ロニと気をつけて行ってきてね、メロディ嬢。」
「う、うん。」
「大丈夫だから。行って。」
クロードは何がどう大丈夫なのか、はっきりとは言わなかったが、メロディはとりあえずうなずいた。
「わかりました。」
彼女がクロードの手を放すと、ロニはすぐに歩き始めた。
それに続いて数歩進んだメロディは、ふと後ろを振り返った。
そして、こちらを心配そうに見守っていたクロードがぎこちない笑顔を浮かべながら手を振ってくれたのを見て――









