大公家に転がり込んできた聖女様

大公家に転がり込んできた聖女様【126話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【大公家に転がり込んできた聖女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

126話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 崩壊④

しばらくして――。

ラビエンヌは急ぎ大臣たちを会議室へと招集した。

神殿の崩壊の知らせが次々と入ってきたからだ。

三番目に会議室へ到着したカイルが青ざめた顔で尋ねた。

「これは事実なのですか?もう二十ヶ所もの神殿が廃止された……だと……」

「聖女さまの前で何を騒いでいるんですか。とりあえず席にお座りください。」

先に来ていたルーカスがカイルを落ち着かせるように言い、深いため息をついた。

やがて顔色の悪くなったクリスファーが、最後に会議室へと入ってきた。

彼の反応もカイルと大差なかった。

「全員そろいましたので、始めましょう。」

中央に座り、両手を祈るように組んでいたラビエンヌが、ゆっくりと口を開いた。

「皆さんもお聞き及びでしょうが、昨日の夕方から新殿が廃止されたという噂が広まり始めました。」

衝撃を受けながらも、落ち着いた声が紅い唇から流れ出る。

「あり得ない話です。どうして我々に何の相談もなく、勝手にそんな決定を下すのですか?」

「はい。到底納得できません。これは宮廷が私たちを軽んじたに違いありません。」

ラビエンヌが強い口調で言ったが、誰一人否定する者はいなかった。

すでに二十を超える神殿が崩壊した以上、宮廷との友好関係は事実上壊れたも同然だった。

「まったく、ひどい仕打ちを受けました。私たちをどれほど甘く見たら、こんな真似をするんでしょう。」

「聖女様、いくら急なこととはいえ、このまま黙っているわけには参りません。」

「そうです。崩壊した神殿を再建すればいいのです。宮廷に正式に抗議を申し立て、対策を講じましょう。」

大臣たちは口々に今回の不当さを議論した。

これは神殿の名誉にも直結する重大な問題だ。

「ご安心ください。絶対にこのままでは済みません。必ずすべての神殿を取り戻してみせます。」

ラビエンヌが怒りをにじませた表情で再び強く言い放った。

神殿の力は、彼らを支える他の神殿から得られている。

だからこそ、一つたりとも失うわけにはいかなかった。

「廃止された場所はどこでしたか?」

「全て小さな領地ですが、問題は境界地帯を多く含んでいること、そしてテレシアの神殿があることです。」

「……境界地帯……」

事態が厄介になったと感じたラビエンヌは、眉間を押さえながら髪をかき上げた。

「これは大変ですね。伝染病がまだ収まっていないのに、聖火を送ったのが無駄になるかもしれません。」

「はい。近隣の神殿がすべて廃止されてしまっては、境界地帯の伝染病を防ぐ術がなくなります。」

「……王室は、我々を弱らせるつもりなのでしょう。ある理由を示さねばならないのに、今はまだ啓示の主を見つけられていない以上、どうしようもないのです。」

遠回しに言ってはいたが、カイルが自分を責めていると気づいたラビエンヌは、悔しさに奥歯を噛みしめた。

ラビエンヌは状況を自分に有利にひっくり返す方法はないかと考え、やがて妙案を思いついて柔らかく唇を開いた。

「ありますよ、方法が。」

「おお!本当ですか?」

大臣たちは一斉に喜び、ラビエンヌの次の言葉を待った。

「伝染病の存在を認め、逆にそれを利用するのです。」

「えっ?しかし下手をすれば、聖女様が結界を維持する力がないと知られてしまう危険もあります。」

ラビエンヌは、そんな懸念を口にする相手をあからさまに無視した。

カイルに向かって、ラビエンヌはむしろさらに真剣な笑みを浮かべて言った。

「原因が我々にないと先に公表してしまえばいいのです。例えば、王室が境界地帯の神殿を廃止したせいで、神殿の保護を受けられなくなり、その結果、境界地帯で伝染病が発生した――そう言えばどうでしょう?」

その瞬間、大神官たちは息を呑んだ。

まだわずかに良心が残っていたのか、すぐには答えられなかった。

だがルーカスが先に心を固め、ラビエンヌに同調した。

「とても良い考えだと思います。そうすれば、神殿は責任を逃れ、伝染病の原因をすべて王室のせいにできます。」

「そうでしょう?」

ラビエンヌは目を細めて美しく微笑んだ。

その笑みは状況にそぐわず、むしろ不気味さを漂わせていた。

「そんな状況で、私たちが助けてあげると名乗り出れば――」

「そうです。我々でなければ、誰が伝染病を治療できますか?力のない医者たちでは病を抑えることは不可能です。」

完全な治癒力を持つ神官と聖女だけができること。

だからこそ、責任だけを逃れることさえできれば、伝染病はむしろ神殿が再び大きな権力を握る好機となり得た。

「いっそ伝染病がもっと広がるように仕向けてもよいかもしれません。」

「ええ。そうすれば人々は我らの神殿をより一層敬うでしょう。」

クリスファーとルーカスは同時にラビエンヌの考えに賛同し、積極的に支持を表した。

「……私はよく分かりません。」

しかしカイルが反対意見を述べると、大臣たちの間でも意見が割れ始めた。

「いくらなんでも結界が原因で生じた病なのに……これはあまりに非道ではありませんか?」

ラビエンヌは、何度も自分に反対意見を述べるカイルの気勢を削ぐため、穏やかな声で言った。

「カイル神官様、私のやり方が気に入りませんか?」

「……」

「私はカイル神官様が好きですよ。でも、私のやり方が気に入らないなら、どうしようもありませんね。」

「聖女様、それは違――」

「はい。私は聖女です。だから皆さん、どんなことがあっても最後まで私を助けなければなりません。分かってますよね?私たちはもう同じ船に乗っているのです。」

ラビエンヌの赤い瞳が、血の色よりもさらに濃く燃えるように輝いた。

その妖艶な眼差しを見て、カイルは背筋に寒気を覚えた。

「……申し訳ありません。従います。」

それを聞いたラビエンヌはようやくカイルから視線を外し、椅子に体を預けた。

「では、私がルーカス神官様と共に皇帝に会ってきます。もし最後まで神殿を廃止するという立場なら……その時は本当に戦争でも何でも、他の方法を考えましょう。」

彼らにとって伝染病で多くの人々が死ぬことや、帝国が危機に陥ることなど、関心の外にあった。

ただひたすら皇帝と交渉を済ませ、廃止された神殿の権力を取り戻すことしか頭になかった。

「そ……それはそうなのですが。」

ジョフリー大臣がラビエンヌの様子を窺いながら、恐る恐る口を開いた。

「啓示の主は、まだ痕跡すら見つかっていないのですか?」

啓示の主と遠回しに言いつつも、真の聖女を指すその言葉に、ラビエンヌの声色が鋭くなった。

「はい、まだです。」

「聖女様もご存じの通り、我々には今、その力が切実に必要なのです。」

ジョフリーが再び力を込めて言った。

ラビエンヌは、自分にはどうすることもできない「啓示の主」が繰り返し姿を現すのに、深いため息をついた。

彼女の気分が悪くなったことを察したルーカスが、凍りついた空気を和らげようとぎこちなく笑った。

「はは、聖女様も努力されています。公的に探し出すのは容易ではありませんから、時間がかかるのも仕方ないですよ。」

「焦りからでしょう。正直なところ、啓示の主人さえ見つければ解決する話ですからね。皇帝陛下が私たちを締め上げることもないでしょうし……」

ラビエンヌは、しきりに文句を言うジョフリーの言葉を遮り、作り笑いを浮かべた。

「一緒に話すべきことはもう済んだと思います。皆さんも片付ける仕事が山積みでしょうし、戻って作業をしてください。特にくすぶっている神官たちをどこで役立たせるかも、考えてみてくださいね。」

結局、ルーカスを除いた三人の神官は、それ以上言葉を発せず、そのまま会議室を出るしかなかった。

クリスファーを先に送り出したカイルは、ジョフリーを呼び寄せ、控えめな声で尋ねた。

「どう思われますか?」

「どう考えてもこれは間違っています。最初から誤った選択でした。偽物を立てるなんて……」

「我々の神殿がこれまで積み上げてきた歴史が、一瞬で崩れてしまうのではと恐ろしいのです。」

「それもそうですが、私はむしろ、このままでは結界が破れるのではと心配です。」

結界のことを口にした二人の表情は暗かった。

結界が破れるというのは、すなわち帝国の滅亡と同義だった。

「まさか……。それなら我々でもう一度祈祷を試みてはどうでしょう?今の時期に神力を使うのは確かに負担ですが……無理をしてでも、本物を見つけ出すべきではありませんか。」

「……そうですね。」

カイルとジョフリーは互いにうなずき合い、それぞれにできる祈りを捧げようと共に祈祷室へ向かった。

 



 

ノアが皇宮へ戻ってからしばらく経った。

部屋で休んでいたノアは、窓を叩く音に驚いて飛び起き、窓辺へ駆け寄った。

部下たちと連絡を取るときに使う伝書鳩が戻ってきていたのだが、今回は神殿のマチャ追跡を任せていたチェンからの手紙が結び付けられていた。

ノアは慌てて鳩の足から手紙を外し、急いで目を通した。

「聖火を運んでいたマチャが途中で三つの部隊に分かれたらしく……追っていったのは辺境守備隊だった。ところで、何だこれ?兵?」

手紙の最後の部分を読んだノアの眉間にしわが寄った。

それは、道端に遺棄された死体を目撃したという報告が記されていたからだった。

詳細は調査しなければ分からなかったが、正体不明の病が広がっているらしいという知らせに、ノアはそのまま外へ飛び出した。

「陛下はいらっしゃいますか?」

「はい、少々お待ちください。」

皇帝の執務室を訪れたノアは、幸運にも他の用事がなく、すぐに皇帝に会うことができた。

扉を閉めて中へ入ってきたノアを見つめる皇帝の顔には、深い疲労が刻まれていた。

「この時間に何事か?」

「顔色があまり良くありませんが……何かあったのですか?」

「ふう、急を要する知らせが届いた。」

皇帝は読み終えた紙を差し出した。ノアは近寄ってそれを受け取った。

「エリウス伯爵……南の国境地帯を治めている領主で間違いありませんか?」

「そうか。そのあたりで伝染病が広がったということか。すでにかなり蔓延してから発見されたのだな。」

手紙を読み終えたノアの表情はさらに険しくなった。

チェンが正確に伝えてきた内容と一致していたからだ。

「一体どういうことだ?これまで一度もなかった伝染病だというのに……よりによってこの時期に……。嘆かわしい。」

皇帝は伝染病が発生した原因が何かの因果によるものだとは、到底考えられなかった。

「ようやく神殿との関係を立て直そうとしていたのに、こんなことが起きてしまえば、すべて水の泡だ。余計なことをしてしまった。」

「父上……まさか神殿に助けを求めるおつもりでは?」

「やむを得まい。放っておけば帝国民すべてが病にかかってしまう。黙って見過ごすわけにはいかんのだ。」

目を固く閉じたまま、深いため息をつく皇帝。

ノアは皇帝の顔を見て、心を決めて口を開いた。

「必ずしも神殿だけが答えではありません。他の方法もあるはずです。」

「他の方法とは?」

皇帝がゆっくりと目を開けた。深い疲労に沈んでいた瞳に、かすかな期待の光が宿る。

「聖火です。聖火を使えば、神殿の助けを借りなくても伝染病を治療できます。」

神殿から聖火を国境地帯に送ろうとしていたのは、この聖火が伝染病の治療薬として使えるからだという話。

「ノアよ、その聖火が神殿から出たものだということを忘れたのか?」

荒唐無稽だと、皇帝は激しく肩を震わせた。

「違います。神殿の力を借りずとも、聖火を大量に確保できる方法があるのです。」

「本当か?それは一体何だ?」

午後に開かれる会議で神官たちと顔を合わせるのを前に、皇帝は思わず身を乗り出した。

もしノアの言うことが事実なら、神殿にすがらなくても今回の件を打開できるかもしれない。

「私、聖花を咲かせることができる人を知っています。」

ノアはエステルと会話を交わしたとき、何もしていないのにひとりでに咲いた聖花のことを思い出した。

エステルであれば、苦労することなく聖花を咲かせられるだろう。

「聖花を咲かせることができる人間だと?聖女でもないのに、それが可能だと……?」

驚きながら言葉を続けていた皇帝は、その瞬間ノアの瞳が大きく変わったのを見て、ふっと微笑んだ。

「お前が好きだと言っていた、あの子か?」

「どうしてご存じなんですか?いえ、それより……母上が……それを話したのですか?絶対に口外するなと頼んだはずだが。」

皇帝に話したことは一度もなかったのに、すぐに察したことにノアは驚き、顔を赤らめた。

幼い頃の面影が残るノアを見て、険しかった皇帝の表情もようやく和らいだ。

「そうか。その子がそなたの治療を助けたうえに、聖火まで作り出したというのか。本当に大したものだな。」

「はい。本当に素晴らしい友人です。」

エステルのことを語るノアの口元には、いつものように誇らしげな微笑みが浮かんでいた。

その姿を愛おしそうに見つめながらも、皇帝の胸の内にはわずかな疑念といくつもの推測が芽生え始めていた。

『聖火を作り出せるだと?聖女でもない者が、そんなことを本当に可能にするというのか?』

もし聖花を誰でも簡単に作れるのなら、これほどまでに聖花が貴重になるはずがなかった。

聖花とは、本来聖女だけが生み出し、育てることができる花だ。

誰かがノアの病を癒したと聞いたときも、皇帝は奇妙だと感じたが――その子どもが聖花まで咲かせると聞いては、疑念はさらに大きく膨らんだ。

ふと、皇帝の脳裏に中央神殿に仕えていた密偵から届いた噂がよぎった。

『現聖女の力が並以下で、務めを果たせていないらしい。』

すでに神殿の内部でも噂になるほど、今回の聖女の力は特別ではないと伝わっていた。

素早く思考を巡らせた皇帝は、一年前ノアが自分を訪ねてきたときの言葉まで思い出した。

――そのときノアは、「次の聖女が誰なのか知っている」と言っていたのだ。

もしかすると、今神殿にいる聖女は偽物で、本物は別にいるのではないかという疑念が、皇帝の脳裏をかすめた。

一瞬ぎくりとするほど驚いたが、そんな思いは隠し、まずは慈愛に満ちた父親の顔を装って口を開いた。

「これほど大事なことを任せてよいものか……。容易に頼めることではないと思う。だから今回は、その子に一度会わせてくれないか。」

ノアの話だけを聞くのではなく、自ら会って見極める必要があると感じたのだ。

「はい。話してみます。」

皇帝がそこまで気づいているとは思いもせず、ノアはエステルに人を遣わすため執務室を出た。

「この件で、復讐が思ったよりも早く果たせるかもしれない……。」

独りごちるノアの表情には、固い決意が浮かんでいた。

伝染病で人々が苦しんでいるという知らせを聞き、皇帝の心もまた大きく揺れ動いた。

しかし、この機を逃さなければ、帝国の民を救うと同時に、神殿の実態をすべての者にさらけ出すことができるだろう。

長引けば、聖女のいない神殿は敗北を免れない――それは避けられぬ戦いであった。

 



 

 

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