こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

105話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 疑惑
数日後、テレシア邸宅の使用人たちは重要な客人を迎える準備で慌ただしく動き回っていた。
執事のデルバートも緊張した顔つきで夕食のメニューを確認し、抜けがないか念入りにチェックしている。
食堂の装飾もすべて整い、客人との約束の時間まで残り10分ほどとなった。
そのとき、正門と繋がったベルが鳴り響いた。
客人が到着したのだ。
ドアを通過し少し進めば到着するという連絡があった。
デルバートは客を迎えに行く前に、書斎で業務をしているドフィンにその知らせを伝えた。
「今到着されたそうです。食堂にお招きします。」
「分かった。」
ドフィンはその言葉に応じて、ゆっくりと首を整えながら席を立ち上がった。
ぴったり合ったシャツは、彼の引き締まった体を一層際立たせていた。
20代だとしても信じられるほど手入れの行き届いた体は、年齢を推測できないほどだ。
彼はハンガーに掛けてあったジャケットを取って羽織り、最後にネクタイを整えた後、背筋を伸ばして歩き出した。
「一体どんな策略なのか。」
廊下を歩きながら、ドフィンの目には疑念が浮かんでいた。
間もなく到着するという客人に対する警戒心で目が鋭く光っていた。
今日テレシアを訪れる予定の客人は、まさにブラウンス公爵だった。
数日前、彼は突然文書を通じて面会を要請してきた。
普段、ドフィンとブラウンス公爵の関係は、良くも悪くもないビジネス上の関係そのものであった。
ドフィンが軍事的に帝国の安全を担っているならば、ブラウンスは内部で神殿との調和を図る役割を果たしていた。
個人的にはドフィンはブラウンス公爵を嫌っていたが、二人とも帝国を代表する四大家門の一員であるため、争いを避けるように努めていた。
こうして日常的に交わることもない状態で過ごしていたが、ブラウンスが突然この家に訪れるというのは、どう考えても異様だろう。
「警戒しておくべきだな。」
ブラウンスは決して利益もなく動く人間ではないので、その意図に疑いの目を向けざるを得なかった。
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ドフィンが窓辺に立って待っている間に、ブラウンス公爵も邸宅の前に到着した。
「お越しいただきご苦労様です。私はこの家の執事、デルバートと申します。」
デルバートの案内を受けて馬車から降りた公爵は、邸宅の庭をじっと見回した。
「ついにここまで来たか。」
ブラウンスはテレシア邸を訪れるにあたり、非常に慎重な気持ちでいた。
彼がここに来た理由はただ一つ、エステルのためだ。
ラビエンヌが追加で送ってきた手紙に、エステルについての話が含まれていたのだ。
冷徹なドフィンが子供を養子にしたと聞いただけで奇妙に感じていたが、その子供を神殿にまで連れて行ったと知り、さらに驚いた。
しかも、その子供が預言者と同じような容貌を持っているということで、一層不安が募った。
ラビエンヌはエステルの能力に深い興味を抱いていた。
それでも、自分の目で直接エステルを確認したいと思った。
「キャサリンに似ている。」
そして、何よりも大きな理由は、ラビエンヌが聖女ではない以上、キャサリンに娘がいる可能性があり、その子が聖女である確率が高いと考えられたことだった。
ブラウンスは、以前のパーティーで何度か出会ったエステルのことをはっきり覚えていた。
初めて見たときは印象が薄かったが、見るたびにキャサリンに似ていると感じ、無意識に目を奪われていた。
当時はただ似ているだけだと思っていたが、事がこうなるとエステルが非常に疑わしく思えた。
「そうでないことを願うが、もし本当にあの子が私の娘で、しかも聖女だとしたら……。」
この考えのせいで、最近は眠れない夜を過ごしていた。
絡まった糸を解く方法が全く見えなかったからだ。
「閣下?観光は食事の後にゆっくりされて、まず中に入られてはいかがでしょうか。」
デルバートが柔らかな口調で思考にふけっているブラウンズを呼び止めた。
「ああ……初めて来たので少し気が散ってしまいました。中へ入りましょう。」
ブラウンズは軽く咳払いをしてデルバートの後について邸宅の中に入っていった。
リビングルームで待っていたドフィンが無表情で彼を迎えた。
「ようこそ。」
「お元気でしたか?」
二人の間に握手が交わされた。
堅実なドフィンの手と、公爵の柔らかい手が対照的だった。
「元気でない理由がないね。顔色も良いようだ。」
形式的な挨拶を済ませると、ドフィンは公爵を食堂へ案内する。
長いテーブルの端に向かい合って座ると、執事が準備を整えた。
共通して準備された料理が次々とテーブルに並べられた。
「気を使って用意したので、お口に合えばいいのですが。」
「ええ、とても美味しそうです。」
二人は静かな雰囲気の中で食事を始めた。そして合間に政務に関する話題を交わした。
ブラウンズはまだ特別な話題を切り出そうとはしなかった。
ドフィンはワインが注がれたグラスを軽く持ち上げて、まずは祝意を伝えた。
「そういえば挨拶が遅れましたね。聖女を迎えられたことをお祝いします。」
「ありがとうございます。家門の栄光です。」
ブラウンズは気分が良いのか、微笑みながら堂々とグラスを持ち上げた。
「あなたの家門では、昔から聖女を迎える人が多いですね。不思議なことです。」
「女神様の恵みによるものです。私たちの誇りです。娘が聖女だなんて、私もまだ信じられません。」
エスターから聞いて、ラヴィエンヌが本当の聖女ではないことを知っているドフィンは、ブラウンズの真意が気になっていた。
「我々の家門では聖女が出たことがないので興味深いですね。あなたは娘をどう思っていますか?」
「そうですね。正直言って、幼い頃から人並み外れていました。能力も優れていて、性格も非常に温和なので、誰もが聖女になる器だと称賛していましたよ。」
これだけの話では、ブラウンズの本心をまったく伺うことはできなかった。
ドフィンはひとまず話を流し、ブラウンズがここに来た目的を探ることにした。
「ところで、こんな遠い場所まで何の風が吹いて来られたのですか?私とお茶でもしたくて来たわけではないでしょうに。」
和らいでいた雰囲気が一瞬で冷たくなり、ブラウンズは微かに動揺した。
彼は苦笑いを浮かべながら答えを探った。
「私どもがあまりにも緊張していたせいかもしれません。ちょうど個人的な用事があって近くを通り過ぎなければならなかったのです。」
表向きの理由としては悪くはなかったが、それが本当の理由ではないことをドフィンは十分に理解していた。
「ふむ、そうなのか。」
曖昧に答えながらも、ドフィンは相手の答えを深追いするつもりはなかった。
彼があえて突っ込む理由を見出せなかったからだ。





