悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す

悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す【62話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。 ネタバレ...

 




 

62話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 奇跡

「会う貴族ごとに、“あなたに助けてもらった”って、感謝の言葉ばかりよ。」

「誰があなたを“庶子”だなんて笑えるものですか?叔父様が許すはずないわ。あなたの“祝福”の力を、みんな思い知ることになるんだから!」

狩猟大会のあと――プリムローズ公爵家には、ひっきりなしに贈り物が届けられた。

『プリムローズ令嬢のおかげで、大きな恩を受けました』

そんな一文を添えた、礼状や贈答品の山。

『助けてくださり、ありがとうございました。感謝の証として、ぜひ我が家へお越しください。どうか遠慮なく足をお運びくださいませ』――といった招待状まで、尽きることなく舞い込んでくる。

リリカは、最近は社交の集まりで忙しくしていたものの、それでもなお、手紙を寄越す家が後を絶たないほどだった。

「おお、プリムローズ公爵閣下。お嬢様を立派に育てられたからでしょうか、最近とても幸せそうに見えますね」

「私も娘を持つなら、リリカ・プリムローズ令嬢のような方がいいですね。あ、聖女様とお呼びするほうが正しいでしょうか?」

プリムローズ公爵に会った人々は、公爵本人の話よりも、リリカの話題をより頻繁に持ち出した。

プリムローズ公爵は、娘が自分より優先されることに腹を立てるような人物ではなかった。

娘を褒められ、娘を誇れることを、心から喜んでいた。

「ふふ。リリカがここまで立派に育ったのを、私の功績だと言うことはできませんね」

「お嬢様がなぜあれほど謙虚なのか、わかりました。こんなお父上をお持ちだからなのですね!」

そして、その場に居合わせた人々もまた、やはりリリカを“聖女”と呼ぶことに何の違和感も覚えていなかった。

リリカにとって、その人物は誰よりも好ましく思える数少ない相手のひとりだった。

プリムローズ公爵家の叔父――少々荒っぽい気性の持ち主で、しばらく王都から遠ざけられていた人物。

「おや、これはこれは。プリムローズ令嬢の叔父上ではありませんか。」

「どうぞこちらへ。席はあちらにご用意してあります。」

騎士たちは、強き者に敬意を抱くものだが、今回の狩猟大会で叔父は活躍できず、少々肩身の狭い思いをしていた。

――大会当日まで深酒を重ね、ひどい二日酔いでまともに歩くことすら難しかったのだ。

普段なら冷やかし混じりの言葉を浴びせられるところだが、リリカの活躍のおかげで、彼はむしろ感謝と称賛を受けていた。

「……私はお前を信じていたぞ。やはり、私の妹の娘だ。」

「“祝福の力”を、見事に証明してくれたな。」

叔父の声には、誇らしげな響きが込められていた。

「……私が、ですか?」

「リリカ。やはり君は特別だと思っていたよ。不器用なだけで、君は本当に優しい子だからね」

いつの間にか、数々の騒動を起こしていたリリカの立場は、大きく様変わりしていた。

自分の娘だ、自分の妹だと言って、かばい続けてきたプリムローズ公爵とジキセンの態度も、以前とは同じではなかった。

だが、それが決定的に変わったのは、狩猟大会の後のことだった。

リリカは、プリムローズ家門の誇りとなっていた。

「いつかは、みんながわかってくれると信じて耐えてきました……そうしたら、結局こんな日が来たのですね」

「リリカ」

「私は、お二人を恨んだことはありません。至らなかったのは私自身です。ただ……他の人はどうであれお二人が……私を避けていらっしゃるのかと思う時は……ほんの少しだけ、胸が痛みました……」

リリカの言葉に、プリムローズ公爵とジキセン卿の胸が強く締めつけられた。

「……我々が悪かった。もう二度と迷わぬ。今後は、これまで以上に――絶対的に、お前の味方であろう。」

そう誓う声は真摯で、揺るぎなく。

リリカはただ静かに微笑んだ。

かつて〈社交界の宝石〉と呼ばれた頃よりも、その笑みはどこまでも優しく、成熟していた。

「先日、プリムローズ令嬢をお見かけしましたが……なんと美しく、そして気高くなられたことでしょう」

「そのご年齢で、あれほど聡明で謙虚になれるとは。……我が子にも見習わせたいものですわ。」

神官の手を取り歩むリリカは、狩猟大会のあとも、要職の場で“癒やしの力”を振るうようになり――それを目にする人々の視線は、日に日にあたたかなものへと変わっていった。

まるで、彼女の歩く先にほんのりと光が灯っていくかのように――

そうしているうちに、イヴァフネ教の信徒たちが広場に集まり、団体で祈りを捧げる「黎明祭」の日がやって来た。

いくつもの記念日がある神殿の中でも、とりわけ大切にされる大きな行事である。

そしてその行事の目玉は、言うまでもなく、神官たちが人々を癒やすことだった。

「どうか……どうか、うちの子が歩けるようにしてください……」

相手は、馬車にひかれて足を傷めた平民だった。

黎明祭がひときわ有名なのは、信徒でない人々までも見物に来るほど、神官たちが本領を発揮する場だからだ。

この日ばかりは、神官たちも謝礼を受け取らず、人々を癒やした。

そして今や、黎明祭の中心に立つのは、当然のようにリリカだった。

リリカの前に横たわっていたのは――神官たちの力では癒やしきれず、治療を断念された平民の男だった。

それほどまでに深く、重い傷。

ひと目見ただけで息をのむほど、無残に裂けた脚。

“手遅れ”という言葉が相応しいほど、痛ましい状態だった。

見守る人々は思わず呻き声を漏らすが……最前に立つリリカは、ただ静かに両手を胸の前で組んだだけだった。

「――神の慈悲が、この者に届きますよう――」

シュウウウ……

やがて、白い光がリリカの身体を包み込み――その輝きは、彼女の前に横たわる男へと移っていった。

広場を埋めた群衆から、一斉に息を呑む音が洩れる。

誰の目にも、はっきりと見えたのだ。

――ひと筋の、強く澄んだ光の帯が。

「……わあ……」

感嘆の声が、静かな波紋となって広がっていった。

患者の脚に、少しずつ肉が戻り、紫がかった色も徐々に元に戻り始めた。

人々は、目の前で起きた奇跡に言葉を失った。

あえて、これほどまでに傷の深いこの人物を治療対象に選んだのには理由があった。

リリカを新たなイバフネ教の象徴として打ち出すためには、劇的な姿が必要だったのだ。

たとえば、目の前の患者のように、視覚的に「すぐ良くなった」と分かる人物が。

「ああ……ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

「このご恩は、死んでも忘れません!」

患者を連れてきた家族たちは、何度も頭を下げて感謝の言葉を述べた。

激しい痛みを訴えていた患者自身も、信じられないというように自分の脚を撫で、深くうなずいた。

「私は、たいした人間ではありません。イバフネ神へと向けられたその信仰こそが、信徒を救うのです」

リリカは柔らかく微笑んだ。

一輪の花のように可憐で、美しい少女が見せる謙虚な態度に、嫌悪感を抱く者などいるはずもなかった。

信徒はもちろん、見物に訪れた者たちでさえ、リリカの姿にすっかり心を奪われ、蕩けるような表情を浮かべていた。

「私の力が、神の御心を広く伝える一助となるのであれば、それ以上の栄誉はありません。私はただ、神の道具として使われることを望んでいるだけです」

神殿の後援を受け、リリカの名声は日に日に高まっていった。

奇跡と称される、その治癒の力。

他の神官では癒やすことのできなかった深刻な傷さえも、瞬く間に――それも大勢の人々の前で――治してみせるのだった。

狩猟大会でリリカの「奇跡」を目にしていなかった貴族たちまでもが、次第に彼女に心を奪われていった。

夜明けの祭儀で姿を現して以降、イバフネ教の重要な行事があるたびに、リリカは最前列に立ち、象徴的な存在として人々の目を引いた。

美しく着飾りながらも、同時に神聖な雰囲気を強く放つその姿に、治癒を受けていない平民たちでさえ聖女様を称賛した。

「プリムロース様、万歳!」

「やはり神は、私たちを見捨ててはいなかったんだ!」

「これで、死ぬ人も、苦しむ人も減るだろう!」

「もしかしたら、隣の家のヤビトさんの病気も治してもらえるんじゃないか?医者でも治せない病気らしいし……」

しかし、それでもなお、リリカに直接会える機会は、身分の高い者たちに限られていた。

イバフネ教の神官も、また例外ではない。

「おやおや、この人を見なさい。かつては神官様にお目通りが叶ったというのに、今では何もかも失ってしまったようだね」

「……確かに」

「哀れなことだ。彼のために祈っておやり。積み重ねた罪が多すぎて、神が罰を下されたのだろう」

彼らは、生きていくうえで実質的に何ひとつ変わっていないことを理解していながらも、胸の奥に渦巻く怨嗟を必死に押し殺していた。

神官にすら会うことなく死んでいく――それは、罪深き者に与えられる末路。

神に選ばれなかった証だった。

イバフネ教が説くところの、「信仰心が足りなかった」結果なのである。

 



 

 

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