残された余命を楽しんでいただけなのに

残された余命を楽しんでいただけなのに【10話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...

 




 

10話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 新しい先生②

『なぜ私が魔法を学ぶのだろう?』

理由はよく分からないが、カリンが私に魔法を教えると言っていた。

「すごい魔法の継承」だなんて、何のことだ。

『原作でイザベルが魔法を習っただろうか?』

剣術帝国の皇女が魔法を学ぶなんて。

おかしな話ではあるが、全く馴染みがないわけでもない。

『まあ、どうでもいいけど。』

ここ数日で、私はすっかり悟ってしまった。

最終的な悪役であるカリンの心を手に入れることは、もともと不可能だと判断したのだ。

感情のないサイコパス、ソシオパスというのが彼女の基本設定なのだから。

『少なくとも油断させるくらいはさせないと。』

幸い、私は非常に幼い子どもだ。

自分で見ても、少しばかり恥ずかしいほどに可愛かった。

私はカリンが入ってくるとすぐに、急いで走り回りながらドアを閉めた。

「皇女様?」

私は声をとても小さく低くした。

周囲を見回しながら、「シッ!」と指を唇に当てた。

「……。」

「ゼリーです。さっき作ったものですよ。復讐の味です。」

私は天真爛漫に笑った。

自分でも少し意識して浮かべたこの笑みは、私の最強の武器だった。

「先生にプレゼントを隠しておいてください。」

信頼を得るためには、まず贈り物をするのが大事だと言った。

これを始めに、カリンに色々と質問してみた。

「おいくつですか?」

今年でカリンの年齢は22歳になった。

「名前はどうしてカリンなの?」

「いつから魔法を学んだの?」

「どんな食べ物が好き?」

私はカリンに次々と質問を投げかけた。

もちろん、これはカリンに関する情報を集めるための質問だった。

カリンは人の良さそうな笑みを浮かべながら、私の質問に全て答えてくれた。

彼女の話し方は朗らかで、仕草にはいつも気品が漂っていた。

『本当に、外見だけじゃわからない。』

こんなお姉さんが最終ボスだなんて、誰が思うだろうか。

小説を読んでおいて本当に良かった。

ある日、カリンが私に尋ねてきた。

「ところで、皇女様はナラビダルの落印についてご存知なんですか?」

ついにその瞬間が来たと思った。

いつか、カリンが「ナラビダルの呪珠」を使って女主人公を死の危機に追いやることは知っていた。

詳しくは描写されていなかったが、カリンは「ナラビダル」に関して多くの研究を行っていたと言われている。

その過程で、多くの人々を実験材料として扱ったという内容もあった。

もしかしたら、私に接近してきたのも「ナラビダル」について研究するためかもしれない。

私は少し緊張しながら答えた。

「はい、知っています。」

「どのようなものですか?」

「大人になると死ぬんです。」

「死が何を意味するのか理解していますか?」

「大切な人たちと別れることです。」

「そのようなことを考えると怖かったり悲しかったりしませんか?」

「うん。」

私はうなずいた。

どうせただで得た命だ。

私にとっては贈り物だった。

「イザベルはね、この贈り物を生きていくんだよ。」

「……」

「だから感謝して、幸せになろうね。」

カリンの赤い瞳が私をじっと見つめた。

瞳だけ見ると優しい人に見える。

私も知らず知らずのうちに気持ちが和らいでいった。

「カリン先生と出会えたことも贈り物だよ。だからイザベルは悲しくない。」

それは事実だった。

20年後のカリンは、今よりもはるかに恐ろしい存在になっているだろう。

今出会えたのは幸運だった。

「でも、私がいなくなったら、みんな悲しむかな?悲しいのは嫌だけど、悲しませたくない。」

「……」

「イザベルは悪い子なの?」

「……」

「うん?」

しかし、何かがおかしかった。

「どうしてこうなるの?」

小説の設定上、ありえないことが起こり始めていた。

カリンの薄紅色の瞳に涙がポロポロと浮かんでいた。

「一体どんな人生を歩んでこられたのですか?」

「先生、泣いてるの?」

涙で満ちた薄紅色の瞳。

幼い子どもを愛おしむような優しい視線。

震える赤い唇。

だがイザベルは緊張の糸を手放さなかった。

『小説を読んでなかったら大変なことになってたわ。』

カリンは弁論術と演技の達人でもあった。

だからこそ、今流している涙は演技に違いないと確信していた。

イザベルは動揺する心をしっかりと抑え、毅然とした声で言った。

「泣かないで。はい。」

カリンはイザベルをぎゅっと抱きしめた。

慎重に、優しく。

「死について考えすぎないでください。」

それは自分を欺き、自分を傷つける行為だから。

その言葉を口にはしなかった。

しかし、イザベルの気持ちは誰よりも理解できると思った。

『私が幼かった頃、そうだったから。』

カリンは非常に不幸な境遇で育った。

彼女の両親は彼女を孤児院に捨てた。

彼女は幼い頃から明るく生きられず、内向的な性格だった。

そんな彼女にとって、その美しい容姿はむしろ毒となった。

「そ、それは、ごめん。」

「だから、私と付き合えないってこと?」

孤児院にはカリンと3歳年上の少年が一人いた。

名前はマイケルで、彼はカリンに告白したが、カリンはその告白を受け入れなかった。

いじめはその時から始まった。

「俺を拒絶するのか?」

14歳のマイケルは他の友達よりも体格が大きく、力も強かった。

孤児院には彼に逆らえる子どもはいなかった。

孤児院の先生たちも彼女の味方ではなかった。

「いじめを受けるのにはすべて理由があるんだ。君が自分をきちんと律すれば大丈夫になるよ。さあ、手を握って謝って、怒りを鎮めなさい。」

先生たちは孤児院で問題が起きるのを嫌がった。

そのため、カリンは孤独といじめに黙って耐えなければならなかった。

ある時点で、彼女はいじめに対して感情を失った。

そんなある日。

偶然にもカリンの魔法の才能に気づいたある魔法使いが、彼女を弟子に迎えると言った時。

少しだけ希望が見えた瞬間。

その時彼女は、まだ自分が全然「大丈夫じゃない」ことに気づいた。

「とても辛い。」

彼女は毛布の中に隠れ、毛布をしっかり抱きしめて声を上げて泣いた。

「大丈夫だ」と自分に言い聞かせてきたのは、ただあまりにも辛くて自分を騙していたに過ぎなかった。

彼女を引き取ったのは、ミロテル魔法連邦の著名な魔法使い、ビルヘルムだった。

「私の名前はビルヘルムだ。今日から父と呼びなさい。」

彼女は途方もない希望に包まれた。

もしかしたら今度こそ幸せになれるかもしれないと、そう思った。

しかし、そこでも悪夢は終わらなかった。

「魔法修行のためには師弟関係が必要だ。親密で深い交流がまず優先されるべきだ。」

世間で天使と知られるビルヘルムは、二面性を持った狂った人物だった。

カリンが覚えているビルヘルムは、ただ冷酷で支配的な存在だった。

むしろ孤児院での生活のほうがましだった。

彼女はすべてを諦めた。

「大丈夫。何も問題ない。」

魔法を教えてくれたら魔法を学び、ほかのことを命じられればそのまま従った。

彼女は自分が生きるためのただの人形だと思った。

ある瞬間、彼女は復讐を決意した。

燃えるような怒りはなかった。

ただ淡々と、復讐を目標に生きてみることにした。

「力をつけなければ。」

以前よりさらに熱心に魔法の修練に励んだ。

彼女が20歳になった時、彼女は最年少で1級魔法使いの栄誉を手にした。

そして22歳になった時、剣術帝国ビロティアンの皇室が魔法教師を募集しているという噂を耳にした。

「ビルヘルムの元を離れて力をつけよう。」

彼女が最近関心を持っているのは「ナルビダル」と関連することだった。

ナルビダルは死の神である。

神の力を手にすることができれば、ビルヘルムに復讐することができるだろう。

「ナルビダルの印を持つ子どもならば、自分の研究にも役立つだろう。」

そう考えた。

それで皇女に会いに来たのだが、皇女は子どもらしく好奇心が旺盛だった。

「年はいくつなの?」

「名前はなぜカリンなの?」

「いつから魔法を覚えたの?」

皇女は彼女にいろいろと質問してみた。

その時、彼女は気づいた。

「私に興味を持ってくれた人は初めてだ。」

初めて「私」について聞いてくれる人が現れた。

「ゼリーよ。大切にしてね。これは宝物なの。復讐の味よ。」

皇女は自分の宝物を惜しみなく差し出した。

誰にも聞こえないように小さな声で話し、警戒する姿がまるで子猫のようだった。

ふと、その時の無邪気な姿が愛おしく感じられた。

そんなある日、皇女が言った。

「イザベルはね、贈り物を生きているのよ。」

カリンは大きな衝撃を受けた。

21歳で死ぬことを知りながら、この子は贈り物を生きていると言った。

「カリン先生に会えたことも贈り物なのよ。」

その贈り物の中に、自分も含まれていた。

カリンは初めて聞く言葉だった。

「自分が誰かへの贈り物になったことがあるだろうか?」

一度もなかった。

皇女に出会ってからの全てが、カリンにとって初めての経験だった。

「……」

だから伝えたかった。

そんなに淡々としてはいけない、と。

「人間であるなら、生きたいと思うのは当然のことだ。」

そして、その子がまた尋ねた。

「イザベルは悪い子なの?」

「皇女様は優しい子です。」

皇女の姿に、幼いカリンが重なった。

死を静かに受け入れ、命を諦めたその姿は、カリン自身の鏡像でもあった。

涙がぽろぽろと溢れた。

三歳の子供が背負うには、その荷はあまりにも重くて耐え難いように見えた。

「私が抱きしめてあげます。」

「先生?」

「その重くて怖い荷物を一緒に持ちます。」

イザベルの体がびくりと動いた。

「本当に?」と言いながら、短い腕でカリンをぎゅっと抱きしめた。

慌てた表情を見せまいと、黄金の髪の皇女がしっかりと抱きしめ返していた。

(しっかりして。冷静になれ。巻き込まれちゃダメだ。サイコパスになんか。)

その暖かい姿に騙されてはいけないと決心した。

「ふぅ、本当に感動に飲み込まれそうだった。」

 



 

 

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