こんにちは、ちゃむです。
「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

10話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 二人目の攻略対象②
『何が起こったのか?』
私は目を大きく見開き、体を回して立ち上がった。
しかし、自分の剣の柄に手をかけたカイルが素早く私の前に出てきた。
片腕を伸ばして私を背後に押しやりながら言った。
彼のたくましい肩が視界を遮り、そこから彼のクールなムスクの香りが漂ってきた。
「何事だ!」
皇帝が立ち上がり、兵士たちに命じると、兵士たちは慌ただしく駆け出していった。
「なんてことでしょう……。」
皇后は手で口元を覆い、驚愕の表情を浮かべた。
前方には勢いよく立ち上る煙と埃が見えていた。
「か、雷が?」
「東の方角に落雷がありました!」
円形の宴会場は半分が地面に埋まっており、半分は開放された形状で、初代皇帝像を基点としてその雰囲気が分かれていた。
そして先ほど私が入ってきた際に高々と掲げられていた初代皇帝像は、今やばらばらに砕け散り床に散乱していた。
「突然、空から雷が落ちました!そしてこのような有様です!」
危険が去ったと考えたのか、剣の柄からゆっくりと手を離すカイルが見えた。
しかし、目の前の光景はまさに惨状そのものだった。
まるで爆弾が直撃したように、周囲は粉々になった残骸で埋め尽くされていた。
「負傷者はいないのか?」
皇帝が重々しい声で尋ねた。
騎士たちは散乱した初代皇帝像の周辺を調査し、人々を確認したが、幸いなことに負傷者はいないようだった。
どれほど強い雷が落ちたのか、クモの巣のような亀裂がまだ赤い光を帯びていた。
「どうしてこんなにひどいことが……。」
皇妃は眉をしかめ、額に手を当てた。
「皇妃、無事ですか?」
「大丈夫です。ふう。」
何かが頭をよぎった私は、しばらく固まった。
「……ヘセド、あなたですよね?」
しばらくして目の前に青い対話ウィンドウが浮かび上がった。
[芸術の神モンドがあなたのキスを不快に思っています。]
[知識の神ヘセドが、本物ではなく雷を放っただけだと否定しています。]
「はぁ……もしかして。」
このすべての出来事の原因は神々だったようだ。
[知識の神ヘセドが不満げです。]
不満って何だ!
私は小さく息をつき、手で額を押さえた。
[知識の神ヘセドが疑心暗鬼になりました。]
[芸術の神モンドがヘセドを見て舌打ちしています。]
「不吉な前兆だ。」
「初代皇帝像が粉々になるなんて、皇太子が皇位に就いたら帝国が分裂することを意味するのでは?」
背後から低い声で貴族たちの会話が聞こえてきた。
私は周囲を見渡した。
誰もが予想外の状況に驚き、凍りついた表情をしていた。
そして、冷たい視線を持ったまま立っている皇太子の背中も見えた。
粉々になった像を見ながら、彼は今何を考えているのだろうか。
何か曖昧な感情が胸をチクリと刺した。
もしかして彼を好いていたアリエルの気持ちが影響したのだろうか。
それとも単に彼の姿に惹かれただけなのか、よくわからなかった。
そのとき、皇妃の声が再び聞こえた。
「まるで聖女がご行幸くださり、祝福まで与えてくださったように、なぜ神が怒ったのか理解できません。」
彼女は扇を広げ、慎ましやかに頭を垂れながら言った。
ざわつく貴族たちの声がさらに大きくなり、カイルは冷たい眼差しを湛えたまま静かに立ち尽くしていた。
うーん。
思えば、この二人の関係はあまり良好ではないように見える。
まあ、父親の後継者とどれほど良い関係でいられるだろうか。
「勝手なお願いですが、神殿に戻られた際には聖女様に帝国のため祈っていただけるよう、どうぞお願い申し上げる。」
皇帝の声が響いた。
いつの間にか、この一連の雷事件が神の怒りという既成事実として受け入れられつつあった。
しかし、私はこの状況をそのまま放置するわけにはいかなかった。
もし私の祝福を受けたことで問題が起こり、それが彼(カイル)の中で罪悪感として残ったらどうなる?
原作において、カイル・アレクシスはアリエルの死において決定的な役割を果たしている。
私は彼との関係を悪化させず、デッドエンドを避ける必要があった。
私は注がれる視線を感じながら、静かに口を開いた。
「皇太子殿下。」
彼は眉をひそめたまま、ゆっくりと振り返った。
「神が満足されたという意味を伝えられました。」
「……満足?」
カイルはそれがどういう意味なのかと驚いた表情で振り返った。
険悪な空気が漂っていた場の雰囲気に、私の言葉はまるで水を撒いたかのように波紋を広げていった。
皇妃は私の言葉が一体どんな出任せなのかと問いただすように口を開いた。
「聖女様がおっしゃる言葉の意味が分かりかねます。」
皇帝もまた、視線を投げながら一言。
「聖女。それはどういう意味か。」
火に油を注ぐような表情が、苛立ちを隠さず顔に出ていた。
当然のことながら、この宴がこのような騒ぎになってしまった原因に、私の発言が絡んでいる。
彼らが言葉を失っている心境も理解できた。
しかし私は動揺することなく口を開いた。
「殿下はシエルの月のもと、シエルの祝福を受けて生まれたお方です。破壊とはすなわち創造であり、破壊はあらゆる偉大なものの根源であり、その母です。この世界の人々はみな生まれた月によって守護を受ける神が異なりますが、カイルの場合は破壊の神シエルでした。ですから祝詞にもシエルに関する内容が含まれているのです。つまり、雷が落ちて青銅像が破壊されたことは、シエルの満足であるという暗黙の理由づけができるというわけです。すべてを破壊する全知全能の力!それが破壊の神シエルの力であり、祝福なのです。」
「なんて、それはあり得ない……。」
皇后の驚いた声が聞こえたが、皇帝は感嘆したように問いかけた。
「シエルの祝福だと!聖女が見る限りではそれがそうだということか?」
私は皇帝の言葉に頷いた。
幸いなことに、群衆は簡単に納得してくれた。
「果たして……!」
「我々が神力を目の当たりにしたということか。」
「ただ、殿下はシエルの月のもとでお生まれになったわけではありません。負傷者も一人もおりませんでした。」
すぐさま人々が振り返り、貴族たちがカイルに祝福の言葉を伝えていた。
そしてその瞬間、カイルの瞳に妙な光が一瞬よぎったようにも見えた。
「シエルが殿下の誕生を祝して喜ばれたようですね、陛下。」
「おめでとうございます、陛下。」
しばらく静まり返っていた宴会の雰囲気が再び活気を取り戻した。
表情がどうにも気に入らなかった皇后が席を立とうとする仕草が見えた。
雰囲気は和らぎ、音楽が再び演奏され、皇帝のそばには数人の貴族が近寄って会話を交わしていた。
再び賑やかになった雰囲気の中、カイルは冷たい表情で皇后を見つめてから、こちらに視線を移した。
「それでは宴をお楽しみください。」
彼が何かを言い出す前に、私は視線を少し下げ、先回りして口を開いた。
ヘセドが引き起こした混乱も収まった今、偽りの聖女としてここから退場する時間だ。
私は彼にもう一度頭を下げた後、静かに身を引いた。
彼がゆっくりと振り返り、その視線が私の背中に突き刺さるのを感じた。
「はぁ……。」
神々には二度と雷のようなことをしないよう、一言ずつ釘を刺さねばならない。
それと同時に、皇后や皇太子との関係も調査する必要があると考えた。
複雑な思考に足が速まる中、突然聞こえてきたカイルの声が私の動きを止めた。
「聖女。」
低く響く声が耳に届き、立ち止まった私は一瞬迷った。
『聞こえなかったふりをしてそのまま立ち去るべきか……。』
しかし、彼の声がさらに近づいてきたことで、私の選択肢は徐々に狭まっていった。
その瞬間、耳元にまで近づいた彼の冷たく穏やかな声が聞こえた。
「宴会はこれから始まるのに。」
原作におけるカイルは、アリエルには特に関心を持っていなかった。
仮に感情があったとしても、それは無関心に近いものだった。
しかし、今日の彼は退場しようとする私を引き止めていた。
「……。」
ぎこちない表情で振り返った私に、彼の赤い瞳から鋭い視線が突き刺さった。
そして、彼の口から予想もしていなかった低く冷たい声が漏れた。
「このまま俺を置いて行くつもりか?」
なんだよ。こいつ、またどうした?
私が読んだ原作でのカイル皇太子は、まるで壁のような性格だった。
偽の聖女であるエリアルには冷淡なのはもちろん、本物の聖女であるカミラにすら彼に心を開くのも相当な時間がかかった。
彼が単純に鈍感というわけではない。
カイルはソードマスターの境地に到達した有能な後継者として評価され、リーダーシップと判断力も優れている人物だ。
ただ、剣と政治にのみ興味を注いでいたため、女性には関心がないといえるだろう。
カミーラが彼の興味を引いた初めての女性だったと評されていたことを考えると、その通りだ。
なのに、なぜそんな彼が私にこれほどまでに関心を示しているというのか。
「聖女。」
彼の声が聞こえると同時に、私はハッと我に返った。
赤い瞳が答えを求めるように私をじっと見つめている。
私はその意図を理解しようと試み、結局ぎこちない表情で振り返ることしかできなかった。
「私に何か必要なことがありますか?」
彼にだけ届くような小さな声で尋ねた。
私の言葉に、彼は眉をひそめた。
鼻先には微かな香りが漂い、耳元に彼の低い声が響いた。
「今日は何だか少し変だな。」
彼の言葉に、私は一瞬怯んだが、慌てることなく答えた。
「何が変だというのでしょうか?」
私の返答に、彼の眉間のしわが深まった。
「神の意を伝えたのか、それとも雷撃を祝福と解釈したということなのか?」
彼は私が偽の聖女であることを知っている。
実際、レイハスと共に、私を偽の聖女として引き止めた張本人だった。
そのとき、彼の冷たい声が聞こえた。
「妨害を終えたのだから、今日はもうやるべきことは終わったのか?」
それは互いに因果関係があるのではないかと思わせるような言葉だった。
「人々を欺くほど、雰囲気が変わったようだな。」
彼の声に、私は淡々と答えた。
「これまであまりにも無茶な生き方をしてきたので、今こそ変わるべきだと思いました。」
私は以前、レイハスに使った開き直りの言い訳を再び用いた。









