残された余命を楽しんでいただけなのに

残された余命を楽しんでいただけなのに【70話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...

 




 

70話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 新しいスター

ロベナ大公と約束した5日が過ぎた。

リンタ地方の被害復旧もほとんど終わりに近づいていた。

倒れていた建物は元の姿を取り戻し、荒れ果てていた土地も今では見違えるように都市の姿を整えていた。

「ものすごく立派だ。」

避難施設に身を寄せていた被災民たちも一人、二人と戻り始めた。

彼らはきれいに復旧された住まいを見て涙を流したり、ボランティアたちに頭を下げたりもした。

私は幕舎の陰に身を隠しながら、人々が喜ぶ姿を静かに見守っていた。

『思ったよりずっと気分がいいな。』

この気持ちで奉仕するのか。

前世で私を助けてくれた人たちも、こんな気持ちで私を助けてくれたのかな?

あの人たちの心を学べて、本当に良かったと思う。

こっそりしていて少しむっつりしていたら、作業班長ヘクトルさんが私に近づいて言った。

「姫様、外に出なくてもよろしいですか?」

「私が出たら騒がしくなってしまいますよ。」

自分の口から言うのはちょっと気が引けるけれど、私はこの災害現場で……なんというか、うまい表現はよく分からないけれど、とにかくアイドルのような存在だった。

それはたぶん、私が若い姫であり魔法使いでもあったからだと思う。

人々の目には、とても不思議で偉大に映ったに違いない。

「それでも多くの人々が、姫様にお会いできることを心待ちにしています。出て行って、せめて一度でも手を振ってくだされば、大いに喜ぶでしょう。」

「遠くから見守っているだけでも、十分に胸が熱くなります。」

私が姿を現せば、すべてのスポットライトが私に集まってしまうのは目に見えていた。

ここには数多くのボランティアたちがいて、彼ら一人ひとりが主役であるべきだった。

私はすでに多くの人々の口に上り下りする存在となっており、このくらいで十分だと思っていた。

……そう考えていたのに、世の中は私の思い通りには流れていかなかった。

 



 

「え、これ何?」

いつからこうなってしまったのだろうか。

リンダ地域を横切る中央大通り。

ここは馬車がなんと6台も同時に通れるほど広い道路だった。

その道の両側にはたくさんの人々が立ち並んでいた。

道の向こうには巨大な「凱旋門」があり、私はそこを通って進まなければならなかった。

『私にどうやって通れっていうのよ!』

これはラヘルラ国王が用意してくださった一種の行事だった。

私が主役の場。

もし私が皇女であることが明らかになっていなかったならまだしも、すでに公になった状況で、私を歓迎するために企画された行事だった。

ヘクトルさんが気まずそうに後頭部をかきながら言った。

「そ……そろそろお出になられますか?」

「はぁ、気まずいわね。」

私は幕舎の外に身を乗り出して、外の状況をそっとうかがった。

ビルロティア帝国を象徴する黒い旗。

二本の剣が描かれたその旗を掲げた人々が、私を呼んでいた。

「それでも行かねばなりません。開城門の下で、国王陛下がお待ちです。」

ラヘルラ姉さんが直接出てきてそう言った。

礼儀上、自分より高い立場の人が待っているのに、これ以上引き延ばすことはできなかった。

「行、行きます。」

ブンブン――。

幸いだったのは、私の心の安定剤であるラーちゃんが肩の上に留まっていたことだ。

「少し小さくなった気がする?」

最近そう感じていた。

ラーちゃんの大きさは、状況に応じて少し変化するようだった。

また小さくなってしまうような気もする。

もちろん気分は悪くないけれど、なんとも妙な感覚だった。

そのとき、幕の中にビアトン先生が入ってきた。

「姫様、エスコートいたします。」

白い手袋をはめたビアトン卿が片膝をつき、私に手を差し伸べた。

私がその手を取ると、ビアトン卿は立ち上がった。

『すごいわね……ビアトン卿って本当に大きい。』

ビアトン卿はとても背が高かった。

私は腕をかなり高く上げなければならなかった。

けれど、腕が痛むことはなかった。

それはビロティアンの特別な肉体を持っているからでもあったが、同時にビアトン卿が魔力を使って私の腕を支えてくれたからでもあった。

ビアトン卿のおかげで、私は進むときに緊張することもなく声をかけられた。

「こんなにも多くの国民が姫様に愛を送っていますよ。」

「そ、そうですね。本当にありがたいことです。」

とても恥ずかしく、気恥ずかしかった。

カメラの前に姿を見せることと、直接人々の前に姿を現すことは大きな違いがあった。

多くの人々が私に拍手を送っていた。

恥ずかしかったけれど、同時に私はこの状況が嫌ではなかった。

「私を好きでいてくれる人たちでいっぱいだ。」

人々は私を見て明るく笑っていた。

私に向かって黒い旗を振っていた。

私はたいしたことはしていないのに、人々は私に大きな愛と関心を注いでくれていた。

『気分がいい。』

やっぱり観衆に揺らぐことはなかった。

少し余裕を持ちながら、ゆったりと歩みを進めた。

遠くに凱旋門が見えてきた。

その下には、白い祭服を身にまとったラヘルラお姉様の姿があった。

右手には儀式用の剣を持っていて、まっすぐに私を見つめていた。

『ああ、私、お姉様のこと好きなんだな。』

ラヘルラお姉様の両脇には二人の騎士が立ち、巨大な黒い旗を掲げて私を待っていた。

やがて私はラヘルラお姉様の前にたどり着いた。

私が到着すると同時に、二人の騎士がぴたりと同じ動作で黒旗を振り下ろした。

フッ——

堂々たる黒旗が荘厳に揺れ動いた。

黒い旗が止まると、約束でも果たしたかのように拍手の音も止んだ。

私は皇女として国王に礼を尽くした。

「国王陛下にご挨拶申し上げます。私がしたことは大したことではありませんのに、このように歓迎してくださり身の置き所がありません。本当に感謝申し上げます。」

「大したことではないとおっしゃるのですか?」

ラヘルラ姉さんは私に向かって重々しく言った。
人々の前で私を高めようとする意図が見え隠れしていた。

「リンタ地方のために身を惜しまず奉仕してくださったことも、実にありがたいことです。しかし、私があなたにこのように深く礼を尽くすのは、別の理由があるのです。」

その時、私はわずかな違和感を覚えた。

ラヘルラ姉さんの声が拡声器と伝達装置を通して、王国全体に響き渡っていたのだ。

『ん?』

改めて思うと、これは一種の演説だった。

単に私を称賛して歓迎するための行事ではないように感じられた。

『どういうこと?』

ラヘルラお姉様が続けて言った。

「殿下は、副宰相ビアトン卿とともに北門の外に出没した巨人を討伐し、大きな功績を立て、王国の安寧に多大な貢献をされました。」

これは記録には残されていない内容だった。

世間に広く知られていない話。

実際、王国としても大々的に発表したい内容ではなかったのだろう。

王国の力が及ばず、わずか7歳の皇女に助けられたと解釈されかねないからだ。

――7歳の幼い皇女でさえ助けを与えることができた、と。

少しでも粗末(?)な状況だったのに、王国が手を差し伸べなかったという汚名を着せられてしまうところだった。

それでも臆することなく、ラヘルラ姉さんは続けて言葉を紡いだ。

「彼女はその命を懸けて、王国のために身を挺する犠牲精神を示しました。彼女の体は小さいけれど、その心の大きさは決して小さくはありませんでした。彼女は幼いながらも、誰よりも立派な大人でした。小さな体を抱えながらも、私に駆け寄り、北門へ送ってほしいと切実に願ったのです。」

その声は王国全体に響き渡っていた。

人々は息をひそめて、その声に耳を傾けた。

無数の視線が一斉に私に注がれた。

「えっ、これって一体どういうこと?」

何か得体の知れないことが起ころうとしていた。

群衆の中。

厚いローブで体と顔を覆った一組の男女がいた。

二人はラヘルラとイサベルをじっと見守っていた。

よく観察すれば、その二人はここに集まった兵士たちよりもはるかに強い存在感を放っていたが、誰一人としてその存在感に気づくことはできなかった。

まるで周波数があまりにも高すぎて音が聞こえないように。

彼らの存在感は、普通の人々にとっては理解を超えるほど壮大で偉大だった。

女の名はロベナ。

北部大公である彼女が口を開いた。

「陛下、こういうのはお嫌いなのでは?公開の場は卑しく、卑劣なものだと仰っていたではありませんか?」

「……」

ロベナがロンに会ったのは10年ぶりだった。

10年ぶりに会ったロンは、あまりにも変わっていた。

「剣士たちはただ剣術にだけ打ち込めばいいんでしょう?」

「……」

「強さで証明できればそれでいいんでしょう?」

「……」

「見せ物なんて、弱い者たちのやることだって言ってましたよね?」

「……」

ロンは顔を少ししかめてから、口を開いた。

「ビアトンの嫌味っぽさを誰に学んだのかと思っていたが……今なら少しわかる気がする。」

ロベナの目が細められた。

彼女にとってこの状況は、不快ではあったが同時にとても面白かった。

剣術以外は何も知らない天才剣士ロンが、このようなショーを自ら演出していた。

この催しは、ロンがラヘルラを直接動かして演出したものだった。

『たった一人の娘のために?』

もちろん、ある程度は見せ場になる要素もあった。

“可愛らしさ”を軽んじていた彼女でさえ、イサベルの愛らしさには思わず笑みを浮かべてしまったのだから。

「ところで陛下。」

「どうした?」

「お忙しくないんですか?」

「……」

「なぜここでずっと突っ立っているんですか?」

ロベナが知るロンは、無鉄砲かつ忙しない男だった。

この世で“忙しい”と言えば二番目には入るような人物だった。

皇帝がここで数日間も滞在しているのは、どこかおかしかった。

「大公の策略を阻めるのは私しかいないからだ。」

「私が本当に皇女の5年を奪ったとでも思われたら困るから、ここにいるってことですか?」

「そうだ。」

「でも、私が現れる前までずっと皇女のそばを守っていたのは、むしろあなただったようですけど?」

「……」

ロンは言葉を失った。

皮肉たっぷりに切り返すロベナだった。

「それに、ちょっと似合わない潔癖症みたいなところもありましたよね? 清潔な場所で寝て、清潔なものを食べて、戦場でもそうしていたから、ビアトンにしょっちゅう小言を言われてましたよ。」

「小言を言われていただと?」

笑みを浮かべたまま言い返すロベナに、ロンはぐうの音も出なかった。

ロベナは気ままな様子で続けて言った。

「ところで、その潔癖症は治ったの?」

「いや、まだだ。」

「絶対に嫌だって言って、橋の下で物乞いたちと一緒に暮らしていたって聞いたけど?」

「……」

ロベナはくすっと笑った。

「まさか、皇后様以外には血も涙もないと思っていた人が、こんなふうに変わるなんてね。ほんのり裏切られた気分よ。どう?自分の娘を愛する気持ちは?」

ロンの体がわずかに震えた。

彼は具体的にイサベルを“愛している”と考えたことはなかった。

これまでロンにとって、自分の娘とはビロティアン皇位を継ぐ後継者でしかなかったからだ。

ローブに隠れた彼の顔が、ほんのり赤く染まった。

「俺はそんな芝居がかった感情遊びはしない。」

「本当ですか?」

「まるで水に子どもを投げ込んだ親のように、食事はきちんと取ったのか、今日の体調は大丈夫なのか、誰かにいじめられていないか、どこか痛いところはないか、年齢に比べて無理に大人ぶっていないか、ただ幸せなふりをしているのではないか――この子が本当に幸せなのか、あるいは何かが欠けていないか、欠けているなら自分が何をしてやれるのか。ほんの少し、ほんの少しだけ、細やかに気を配るだけだ。」

知恵の竜ラビナイジャ、そしてロベナ大公である彼女は矢のように言葉を放った。

「完全に愛してるじゃないですか。」

「全然。」

「やっぱり愛してるんですね。」

「……」

会話の間、ロンの視線は一度もイサベルから離れることがなかった。

ニュース記事に、イサベルに関する報せが届いた。

[皇女、オリンピアードを越えてアルペアへ。]

[ビロティアン皇女、その力量を示す。]

多くのニュースは魔法連邦や魔塔に関する内容を載せていたが、イサベルに有利な記事を含めざるを得なかった。

巧妙に作られた嘘で世論を操るには、あまりにも多くの目と耳が真実を見聞きしていたからだ。

リンダ地方の人々をはじめ、アルペア王国の国民たち、そして数多くのボランティアたちが、イサベルに対する称賛を惜しまなかった。

「聖王、皇女を直接称える。」

尊敬の異名。

「聖王」と称えられるラヘルラまでもが、開城門でイサベルを迎え、その功績を直接称えたのだった。

貴族派のルサリンですら、イサベルに関しては好意的な記事を書かざるを得なかった。

今やイサベルに対する大衆の支持はあまりにも高まり、軽はずみに攻撃することはできず、ビアトンの警告がひどく恐ろしく感じられた。

ルサリンは党派からも大きく叱責を受けた。

「待つしかない。」

ビアトンの行動は、もはや一線を越えたものだった。

今はただ通り過ぎるだけだが、彼女はマスコミの注目を浴びる存在として、簡単には忘れ去られないだろうと思った。

『この人気もすぐに消えてしまう。』

毎日のように新しいスターが誕生し、そして大半は音もなく消えていく。

皇女もその一人に過ぎない。

『大衆の関心が離れたとき、多くのものを一気に暴いて非難する。大胆にも「自由な言論」だなんて言って、匿名の三流記者どもがよくもまあこんな風に群がるものだ。』

 



 

 

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