残された余命を楽しんでいただけなのに

残された余命を楽しんでいただけなのに【77話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...

 




 

77話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 公開討論会②

天空島の主、北部大公ロベナはVIP席に足を組んで座っていた。

『あの男、なかなかやるな。』

ナルモロ・コーポレーションの代表、ナルモロ。

彼はイサベルを持ち上げる一方で、自らを泥の中へと沈めていた。

『陣営を分け、対立を演出する――それこそが扇動の第一戦略だ。』

ロベナの目に映るナルモロは計略家であり扇動家だった。

おそらくイサベルのために、あえてあのような役割を買って出たのだろうと判断した。

『貧しい者と高位の者、二つの階層に分けて雰囲気を煽り立てた。』

ラーメンは危険だと信じていた多くの者たちが、徐々に考えを変え始めていた。

『料理協会の料理人たちが、自分たちの領分を侵されたくなくて虚偽の噂を流したのではないか――そんな印象が強まっていくだろう。』

先ほどのイサベルの論理的な話は、その証拠となるだろう。

ロベナはふっと笑った。

『本当に素晴らしい人たちを仲間にしたんだな。』

イサベルの周りに良い人々が集まる理由もよく分かっていた。

ロベナの心の中でも、イサベルにとって良い人になりたいという気持ちが芽生えていたからだ。

イサベルにはそういう力があった。

「仲裁案を一つ提案したいのですが、いかがでしょうか?」

ロベナの声は小さかったが、討論者たちと3万余名の観衆にははっきりと伝わった。

普通の魔法使いなら到底できないほど繊細で精密な魔力コントロールだった。

その瞬間、場内は静まり返った。

「イサベルにとって、自分の命よりも大切なものがあります。私には一人の友がいます。その友のためなら、十四年の寿命のうち五年を投げ出すことも厭わないほどの友です。皆さんもご存知の通り、私はその出来事の当事者ですから、その真偽については誰よりもよく知っているでしょう。」

十四年のうち五年を差し出せる友。

それほどならば、まさしく真の友と呼ぶにふさわしい。

場の雰囲気は、その言葉に同意していた。

「イサベル。もしお前の言うラーメンとMSGが本当に安全だというのなら、その友にもラーメンを食べさせられるだろう?」

ちなみに、その友の名はキム・ボルッコリ。

今は大公ロベナの膝の上にちょこんと座っていた。

初めて会ったときこそ警戒していたが、今ではロベナに心を開いている様子だった。

[いくらでも食べてあげる。]

キム・ボルッコルは自分の優れた肉体的能力を自負していた。

VIP席は競技場の中でも一番高い場所にあったが、キム・ボルッコルは勢いよく走り出し、空へと飛び上がった。

[俺は飛ぶ!空へ!]

空飛ぶリスのように両腕を大きく広げた。

まるで空高く舞い上がるかのようだったが、響いたのはリスの鳴き声ではなく蜂蜜壺(ボルッコル)の鳴き声だった。

いくらジャンプに自信があっても、空を飛ぶのは無理だった。

キム・ボルッコルは観客席に向かって落ちていった。

ロベナはその様子にひどくうんざりした。

「まったくマイウェイだな。」

ここから飛び出して討論場まで飛んでいけるとでも思っているのか、その途方もない自信はいったいどこから来るのだろう。

ロベナはパチン!と指を鳴らした。

キムボルッコリはもう墜落しなかった。

むしろ奇妙な推進力を得て、空へと舞い上がったのだ。

キムボルッコリは、それが自分の力だと思い込んでいた。

――[見た?]

――[コルミ航空、キムボルッコリ便。]

キムボルッコリは討論場に着地した。

欲望を抑えきれなかった彼は、そのままイサベルに駆け寄り、胸に飛び込むように身体を擦り寄せた。

司会者がVIP席の方を見やった。

「おっしゃっていた“友”とは……?」

「そうです。その蜂蜜(ボルッコル)の鳴き声。イサベルが自分の命をかけて救った子です。」

キム・ボルッコルは満足げだった。

[キム・ボルッコルは小食。]

[ラーメン、百杯食べられる。]

マレセンスは場の雰囲気を伺った。

『雰囲気が完全にあちら側に傾いた。このままでは惨敗だ。』

子供たちだと甘く見たせいで窮地に陥っていた。

今や彼らには選択肢がほとんど残されていなかった。

北部大公が仲裁に出てきた以上、マレセンス側もこれ以上の反論を展開するのは難しかった。

『食べ過ぎて吐くか……せめて下痢でも起こしてくれれば……』

期待せずにはいられなかった。

 



 

ついに、キムボルッコリがラーメンを食べることになった。

[ズズッ。]

イサベルにとって最も大切な友が、ラーメンを食べたのだ。

[もう一杯!]

[もう一杯!]

キムボルッコリはなんと五杯ものラーメンを平らげてしまった。

今回の討論会はイサベルの圧勝だった。

しかし、その夜、イサベルとナロモロがまったく予想していなかった出来事が起きた。

その夜。

イサベルの腕の中でしっかり抱かれていたキム・ボルッコルが、ブンブンと音を立てた。

その音が普段とは少し違って聞こえ、眠っていたイサベルは目をぱちりと開けた。

「ボルッコル?」

キム・ボルッコルの体が赤く変色していた。

まるで蜂を真っ赤な水にどっぷり浸けて、引き上げたようだった。

「な、なにがあったの?」

[異常なし。]

[イサベルは寝ろ。]

「別に大したことないんじゃない?」

ブンブン――。

その音が、なぜか苦しげに聞こえた。

よく見ると、キムボルッコリの表情が少し苦しそうだった。

「どうしたの、なぜそうなってるの?」

[何でもない。]

キムボルッコリは何度も「大丈夫だ」「キムボルッコリは強い」と言って、自分の状態を否定した。

だが、それもついに限界に達した。

「もしかして、お腹痛いの?」

[違う。]

「お腹こわしたの?」

[違う。]

「でもお腹こわしたでしょ。」

昼間ラーメンをあんなに食べたから。

もしかするとボルッコルにとっては、あまりにも辛い食べ物だったのかもしれない、という考えがイサベルの頭をよぎった。

「キム・ボルッコル!辛いの我慢して食べたの?」

[キム・ボルッコルに痛覚はない!]

そうは言ったものの、キム・ボルッコルもこれ以上は耐えられず、ベッドの上をゴロゴロ転がりまわった。

ブンブン――。

普段とは違い、切迫しながらもどこか愛らしいブンブンという音が響いた。

その最中でも、彼は礼儀を忘れなかった。

[キムボルッコリ]

[弱虫じゃない。]

そんな言葉、どこで覚えてきたの?と聞く余裕すらないほど、状況は切迫していた。

イサベルは慌てて扉の方へ走った。

神官を呼んでくるか、治療のポーションのようなものを探さなければと思ったのだ。

だが、その瞬間キムボルッコリが素早く動き、扉の前に立ちはだかった。

[だめ。]

[行かないで。]

「キムボルッコル、今は無理する時じゃないよ。お腹もすごく悪くなってるし、体も真っ赤じゃない。どうしてそんなに無理して食べたの!」

[行けない。]

[絶対に行けない。]

キムボルッコルががっちりと立ちはだかって扉を塞いでいたので、イサベルは無理に押しのけることができなかった。

「いい加減にして。私、本当に怒るよ。辛いものをちょっと食べられないことだってあるんだし、それは恥ずかしいことじゃないんだよ。」

イサベルは優しく言い聞かせたが、キムボルッコルはイサベルの言葉を聞く気がまったくないようだった。

キムボルッコルは短い腕を横にぐっと広げて険しい表情を浮かべた。

「キムボルッコリ!」

イサベルが大声を上げたちょうどその時、コンコンとノックの音が聞こえてきた。

「姫様、ビアトンです。入ってもよろしいでしょうか?」

イサベルはまるで救いの光を見つけたかのように感じ、慌てて答えた。

「どうぞお入りください!」

部屋に入ってきたビアトンは、慎重に扉を閉めた。

「ふむ、お腹がかなり張っているようですね。」

キムボルッコリはお腹をさすりながら、ビアトンをじっと見つめた。

一方で、今この場に現れた人物がビアトンであることに、どうしても違和感を覚える者もいた。

「ビアトン先生。ベルッコリがひどく具合が悪そうなんです。治療用のポーションのようなものを手に入れることはできませんか?」

「救うことはできますが、救わないでしょう。」

「どうしてですか? ボルッコルと仲良くないからですか?」

イサベルは思わず問いただした。

世界で一番大切な友達であるキムボルッコルが苦しんでいると思うと、取り乱して今の彼女は平常心ではいられなかった。

7歳の本能が理性を飲み込んでしまった状態。

イサベルは早口で続けた。

「ボルッコルがちょっと乱暴で、ビアトンと親しくないのはよく分かっています。でも、私の友達なんです。私の友達はビアトン先生の友達でもあるんです。なのに、どうしてポーションを救わないなんて言うんですか?」

「それはたぶん、ボルッコルと私が同じ考えだからでしょう。」

――キムボルッコルが扉を塞いだ理由。

単に自分が辛いものを食べられないと知られるのを恐れたわけではなかった。

「まだ大勢の人々の耳目がキムボルッコリに集まっています。そんな中で、私が急にポーションを持って姫様のお部屋に入ったら、不自然に見えませんか?」

「……」

「ただの腹痛を大腸がんに見せかけるようなものでしょう?」

イサベルはキムボルッコリの方をちらりと見た。

キムボルッコリは、イサベルと親しくしているビアトンに完全に心を許してはいなかったが、それでも彼の言葉が正しいと感じ、うなずいてみせた。

「だから、ちょっとした腹痛くらいなら克服できますよ。なぜなら、ボルッコリの鳴き声は“蜂蜜の音”ですからね。とても力強いんです。そうでしょう、キムボルッコリさん?」

[もちろん。]

[同意。]

[キムボルッコルは強く……ブンブン。]

キムボルッコルはもう言葉を発することができず、ブンブンと音を立てながら体をひねった。

「本当に不思議なことです。辛いものを食べて体が赤くなるとは、まさにキムボルッコルの鳴き声ですね。これは生理的な現象ではなく、むしろ魔法的な現象と見た方がいいでしょう。」

「魔法的な現象ですか?」

「ええ。キムボルッコルがただの蜂の鳴き声ではないことは知っていましたが、むしろ魔法的な生命体のように感じられます。辛いものもまた一つの“気運”であり、その気運を魔力の一種として認識し、体が変化したのだと思われます。」

「先生、少し気分が良さそうに見えますけど……気分転換になったんですか?」

「その香ばしい……いや、とにかく新し――この現象を見て、とても不思議で神秘的だと感じています。」

嘘だ!今、皮肉を言ったでしょう?

そう言いたかったが、キムボルッコリが再び苦しそうにブンブンと音を立てたので、言葉を飲み込んだ。

キムボルッコリはイサベルのところに来て、彼女の手を鼻先でトントンとつついた。

「どうしたの?」

[イサベルの手は約束の手。]

「え?」

イサベルの手をもう一度トントンとつついた。

そこでようやく、キムボルッコリが何を求めているのか悟ることができた。

「わかったよ。なでてあげるね。」

[満足。]

もぞもぞ。

イサベルがキムボルッコルのお腹をなでてやった。

ビアトンはその隣に立ち、眼鏡を直しながら言った。

「ほう、とても興味深い現象ですね。足先から少しずつ赤黒くなってきています。」

今、キムボルッコルは赤色に近づいていた。

しかしイサベルがキムボルッコルのお腹をなで始めると、足先から少しずつ赤黒い色へと変化していった。

「まるで濁った気運が立ちのぼるようです。」

足。

膝。

腰。

胸。

首。

キムボルッコリの体がぶるぶると震えた。

そして突然、窓の方へ駆け出した。

まるで苦しみに耐えきれず、窓の外へ飛び降りようとしているかのように見えた。

「キムボルッコリ!大丈夫なの?」

イサベルは思わず唇を噛んだ。

ラーメンに関する噂や中傷などどうでもよかった。

今はベルッコリを救うことが最優先だった。

「ビアトン卿。姫として命じます。すぐにポーションを持ってきてください。」

「姫様のご命令とあらば、承ります。」

そうは言ったものの、ビアトンの動きは決して速くはなかった。

「急いでください。」

「かしこまりました。」

ビアトンが体を回し、ドアノブを握った。

体を回したビアトンの表情はかなり余裕に満ちていた。

数秒も経たないうちに、ブン―という音がした。

「ん?」

イサベルが周囲を見回した。

ブン―ブン―

その音が聞こえてくるのはキムボルッコルの方だった。

パタパタ!パタパタ!

キムボルッコルは窓の取っ手の方へとパタパタ駆けていった。

まるで窓を開けたがっているようだった。

しかし気持ちが焦りすぎて、窓をちゃんと開けることはできなかった。

ビアトンが穏やかに笑った。

「皇女様の前で音を出すのが恥ずかしいのでしょう。」

何度も同じことを繰り返したキムボルッコルの体は元の状態に戻っていた。

キムボルッコルはついに工夫して窓を開け、毛布の中に隠れた。

[換気は成功。]

キムボルッコルはとても大きな恥ずかしさを感じていた。

 



 

 

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