こんにちは、ちゃむです。
「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

41話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 憧れの人②
立ち去ろうとしたキルエンが、ふと気になって尋ねた。
「ところで、外城の方へはなぜ行かれるんですか?」
「ああ、ユリ姉さんを迎えに行こうと思って。」
「ユリ姉さんって……あの時の……。」
「そうです。」
キルエンはまたも違和感を覚えた。
あの素朴な雰囲気の少女が、姉と呼ばれるとは。
どう考えても、この皇女は変わっている。
「なぜ直接迎えに行くのですか?それも皇帝の部官まで同行させて。」
皇帝の部官がそんなに暇なはずがないのに。
そう言いたかったが、言葉には出さなかった。
なぜなら、その忙しいはずの皇帝の部官は、今まさに馬車の座席に座り、放心状態になっていたからだ。
その様子だけ見れば、世界で一番暇そうに見えた。
「助けてあげたいんです。」
「どうしてそこまで、その子を助けたいんですか?」
キルエンは、思わずその理由を考え込んだ。
『ロスイルドの傲慢さと、不愉快な出来事があったからだ。』
そうだ、これは誇りの問題だった。
ロスイルドが見捨てた子を、皇女が救おうとしているのだ。
キルエンの立場では、これは意地の張り合いにすぎなかった。
そう確信していたのに、イザベルの返事は意外なものだった。
「助けたいと思う気持ちに、理由が必要なんですか?」
「……。」
「私もよくわかりません。でも、なぜか放っておけないんです。」
「答えなければならないと思います。」
「どんな返事のことを言っているんですか?」
イザベルは軽く後ろを振り返った。
「むしろ、皇帝の部官であるビアトン卿が私の先生になってくださり、私を守ってくださるじゃないですか。そして、他の人たちは一生乗ることすらできない四輪馬車に何も気にせず乗り、毎日おいしい食事を楽しんでいますし。」
イザベルは座っていた場所から軽やかに飛び跳ねた。
彼女の髪とリボンが勢いよく舞った。
こうして飛び跳ねても、心臓が痛くないことが新鮮で不思議だった。
「こんなに走ることもできるなんて。」
ふうっ!
胸と頬を膨らませ、深く息を吸い込んだあと——
「はああああ!」
顔が赤くなるほど、ゆっくりと息を吐いた。
「こんなに楽に息ができるんですね。私は本当に幸せです。」
以前は経験したことのなかった、まばゆい瞬間を毎日迎えている。
彼女にとって、すべての日々が贈り物だった。
「私はこうして毎日、贈り物の中で生きています。このすべてが本当にありがたくて、何かお返しをしなければならない気がします。」
そう語ったイザベルの頬が、少し赤くなった。
「……そこまでが生まれながらの特権なんですね。」
「そう、そういうこと。」
キルエンは、イザベルが別の側面を持っていると確信した。
「友達が欲しいんです。」
友達が必要だというイザベルの言葉は、キルエンの胸を打った。
「それに、友達になりたいんです。」
「どうしてですか?」
「実は私も、以前とても怖くて孤独だったんです。」
そう言ったイザベルは、あっと思った。
時々こうして、肉体が理性の統制を振り払うことがあった。
普通、感情的になるとこうした現象が起こるが、それが今日のようなタイミングで起こるのは珍しいことだった。
「以前というのは?」
「えっと、それは……。」
イザベルはそっとビアトンを見上げた。
ビアトンも少し驚いたようだった。
イザベルがいつそんなに怖くて辛い時間を過ごしたというのか。
イザベルの言葉は、前世の記憶でもなければ説明が難しい表現だ。
「それは……うーん。」
イザベルは素早く頭を振った。
前世の記憶があるとは言えないのだから。
「私にナルビダルの刻印があると知ったときです。」
ビアトンが割り込んだ。
「それはつまり、生まれたときの話ですか?」
「はい、そうです。」
イザベルはぎこちなく笑った。
気まずい瞬間には笑うのが一番だと知っていたからだ。
「陛下があの無意味な話をしたときのことですね?」
『無意味なことが生まれたものだな。』
ロンは明確にそう言った。
イザベルは手綱を握りしめた。
『ええい、わからない。これを言葉で説明するのは無理だ!』
「そうです。私は捨てられるのが怖かったんです。私は役立たずな子供として生まれたくはありませんでした。」
「……。」
「……。」
キルエンとビアトンは皆、沈黙した。
イザベルは疑いや過去世について語らないために必死だったが、その必死な表情や態度が彼らの目には違う形で映った。
『その時から皇女様は必死だったのか。』
『生まれながらにして全てを記憶しているというのは本当だったのか。だからこそ、あそこまで必死だったのか。』
彼らの沈黙が少し怖くなったイザベルは、急いで言葉を続けた。
「誰かが助けてくれたらいいのに、誰かが私の手を握ってくれたらいいのにって、毎日毎日祈っていました。本当にとても怖くて寂しかったです。でも、幸いなことに、私に手を差し伸べてくれる人がたくさんいました。」
イザベルはビアトンの方を見ながら明るく微笑んだ。
考えてみると感謝すべきことだった。
時には怖くなることもあり、形式的な会話や合意に包まれた交流を強制されることもあったが、それでもイザベルにとってビアトンは本当に良い人だった。
「だからユリ姉さんを責めることはできません。その気持ちがよくわかるから。」
「……。」
「だから、突き詰めて考えると、特別な理由はないような気がします。ただ、誰かが一人でも助けてくれる人がいればいいなと思ったんです。」
キルエンはしばらく沈黙を続けた。
「だから友達になってあげようと思ったの。私も友達が必要だから、私たちはきっと良い友達になれるはずよ。」
「……。」
「私はそもそも友達がいないんです。」
幼い子供がここまで自分をさらけ出すのに、心の内を隠すのは礼儀に反すると思った。
「私は正直、自尊心の問題かと思いました。」
「私ですか?誰と?」
「レイナとの関係が何か不穏なことになったと聞きました。だからロスイルドと表には見えない知的な争いをしているのかと。」
「そんなことで時間を無駄にするほど、私には許された時間が多くないんです。私に与えられたこの貴重なものに感謝し、それに報いるだけで、私の時間はすべて流れ去ってしまうでしょう。」
キルエンはまた言葉を失った。
『やっぱり、私はとんでもない誤解をしていたようだ。』
イザベルはパッと笑った。
「あ、そうだ、お姉さん。せっかく外郭に行く道なら、私も一緒に行ってもいいですか?」
「……え?」
「馬車がダメなら、乗りません!私、馬車には乗らなくても大丈夫です!」
「じゃあ、どうやって外郭まで行くつもりなのですか?」
「お姉さんの乗馬の腕前は、大陸でも指折りだと聞きましたよ。」
「……。」
イザベルの心臓が高鳴った。
実は、馬車よりもこちらの方がずっと好みだった。
「お姉さんの後ろに乗って行ったらダメですか?」
再び体がムズムズと動き始めた。
六歳の肉体は本能に非常に忠実だ。
足をドンドン踏み鳴らした。
考えずにいるときは気づかなかったが、この体は馬に乗ることを切実に望んでいた。
「え?え?」
イサベルの声には絶望感がにじんでいた。
キルエンは足をドンドン踏み鳴らし、うるうるした目で自分を見つめるイサベルを拒むことができなかった。
「……はぁ。分かりました。」
ビアトンがまた割って入った。
「騎馬の技術なら、私もどこへ行っても劣りません。私がもっと安定してお連れすることができます、皇女様。」
イサベルは手綱を引いた。
「先生は次に乗せてください。」
「なぜ?どうして?」
イザベルはビアトンが好きだったが、今この瞬間だけはキルエンのファンだった。
憧れていたキャラクターが目の前にいるこの祝福の時間を、ただ流してしまうことはできなかった。
「先生はいつも私のそばにいてくださいますよね?」
「……うん。」
「これからもそうですよね?」
「もちろんです。キルエン、いや、キルエン卿。今日からは特別に気を配るようにするさ。私は皇女様のそばに咲く美しい樹木のような存在だからな。」
「……なんでそれで恩着せがましくなるんですか?」
「感謝するんだな。」
ビアトンは馬に乗った。
キルエンもイザベルを抱え上げて馬の鞍に座らせた。
そして、軽やかに飛び上がると、イザベルの後ろに座った。
体が小さいイサベルは、キルエンにぎゅっとしがみついた。
イサベルは心から感嘆した。
「うわぁぁ!高いよおおお!」
「……。」
「しっかり抱きしめてください、落ちたら怪我しちゃいます!」
「……教えてくれるんですか?」
「はい。」
あまりにも当たり前の事実をなぜ教えてくれるのか分からなかったが、とりあえず片腕でイサベルをしっかり抱きしめた。
現実の願いが叶ったイサベルは、世界で一番幸せそうに笑った。
イサベルの姿はまるで幸福に浸かったスポンジのようだった。
ぎゅっと押せば、幸せがぷくっと溢れ出るような感じがした。
キルエンにはその感覚が理解できなかった。
「皇女様はなぜこんなにも私を好いてくださるのでしょうか?」
「かっこいいからですよ。」
病室で彼女ができることは、勉強と本を読むことだけだった。
そんな中で、強い人への漠然とした憧れを抱くようになった。
キルエンを崇拝していたのも、その影響が大きかった。
「私は皇女様が思っていらっしゃるほど強くはありません。」
「お姉さんは悪い権力に屈しないじゃないですか。」
「……ただ暴力的で衝動的な人間です。」
「私はお姉さんがとても強い大人だと思います。」
皇宮剣隊の法規上、部下が上官を殴ることなどありえないことだった。
「罰を受けるべきことをしたなら、罰を受けるのが当然ですよね。」
上官を暴行し、脅迫したことなど関係ないイサベルは、ただ現実の推し活を楽しんでいた。
「私、今すごく幸せなんですけど、どう思います?」
キルエンは考えた。
『皇女殿下のように何のためらいもなく、すべてを差し出す人は初めて見た。』
そんな盲目的な好感を示すのは危険だ。
その好感を利用しようとする者が、世の中には数え切れないほどいるのだから。
イサベルの好感の示し方は、大人のやり方とは大きく異なり、それがとても不慣れに感じられた。
だが、この初めての感覚は、決して悪いものではなかった。
「しっかりつかまってください。落ちないように。」
キルエンの口元に微笑みが浮かんでいた。









