こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

383話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 記憶の色⑨
「ランタナは結局失敗したようですね。」
今日も塔の中には重苦しい雰囲気が漂っていた。
天気のせいではなかった。
ケインは椅子に深く寄りかかりながら歯を磨いていた。
すでに一度怒りを爆発させたようで、残りの椅子のうち一つは破片だらけだった。
その椅子が破壊されたのは父親のせいだ。
残りの椅子が壊されないようにするためには誰かが立っていなければならない。
「呪詛をかけることにも失敗し、魔法薬も使わなかったようですね。人間だという事実が痛いですね。」
王はどっしりとして見えたが、心配そうに見える部分もあった。
ケインは薄く笑いながら顎を撫でた。
「私たちに関する話はしないでしょうね?最悪、自殺する魔法でもかけるかもしれませんが。」
物語を話しながらも表情にはわずかな変化も見られなかった。
ケインは指先を軽く噛んだ。
彼と彼の父親はランタナの死を心から願っていた。
しかし計画が失敗した今、彼女の口を封じるしか方法はない。
言葉を交わさなくても、お互いが何を考えているのかは明白だった。
そのとき、執務室の扉が開いた。
「報告します、ランタナが到着しました。」
その言葉を聞いて、ケインと王の目が大きく見開かれた。
つい先ほどまでランタナの死を願っていたのに、生存しているとは。
悪くはない。
どの道、秘密が漏れなければ問題ない。
王は顎を軽く撫で、部下に何かを指示するようなそぶりを見せた。
しばらくして、ランタナが姿を現した。
ネレゲンを出発する直前と変わらず、痩せてやつれた姿だった。
いや、むしろ以前よりもさらに消耗しているように見えた。
その姿はまるで…。
王は一息ついてランタナを一瞥した。
「どうやら無事に逃げ延びたようだな。」
一見して普段どおりに振る舞うランタナだったが、王の声には冷たさが漂っていた。
むしろ厳しい非難が込められていた。
「ブランシュに服従の誓いを立てることに失敗したと聞いた。」
「……はい。」
「それなのにこうして平然と戻ってくるとは。恩を仇で返すとはこのことだな。」
ほんの少し前まではランタナが真実を暴露するのではないかと恐れていた王たちだが、今では彼女が生還したこと自体を厄介に思っているようだった。
透明の薬に偽装して発火性の毒薬を使い彼女を抹殺していれば、予定どおりネレゲンとの関係も円滑に進んでいただろう。
ランタナは杯を持ちながら、王たちを静かに見つめ返した。
新たに整えられた髪の隙間から見える彼女の冷徹な瞳と癒えた傷跡が、場に重い沈黙をもたらしていた。
「いずれにせよ、私はブランシュ皇帝に服従の意思を示すつもりです。約束を守ってください。この傷を癒してください。」
ランタナが被っていたフードを脱ぐと、炎症を伴う赤い傷跡が露わになった。
クローネンベルクの王は、その姿を一瞬見て視線をそらした。
「約束?任務を果たせなかったくせに、よくそんなことが言えるな。」
「でも……」
「父上、彼女が気の毒じゃないですか。せめて正直に伝えるべきです。」
ケインが優しい笑みを浮かべながら父親に進言した。
その声はどこか不気味なほど落ち着いていた。
「その傷を治す方法はない。」
「……何?」
ランタナの顔が一瞬で青ざめた。
ケインは微笑を浮かべたまま、楽しむように笑っていた。
まるで相手を挑発しているかのような表情だった。
「そんな傷を治せる魔法使いは、我々の国には存在しない。でも、功績は認めてやろう。ほら、ランタナに報酬を渡してやれ。」
その言葉に反応して、執事が懐から小さな巾着袋を取り出し、放り投げた。
巾着が地面に落ちる音が鋭く響いた。
すべてが嘘だった。
傷を治すと言った言葉も、新しい身分と莫大な金銭を与えるという約束も。
その嘘をすべて前にして、ランタナは静かに立っていた。
ケインはランタナが泣き崩れると考えていた。
しかし、ランタナは涙を見せなかった。
ただその瞳には怒りだけが燃え上がっていた。
「……そうか。やはりランタナは騙されていたんだな。」
その言葉を聞いて、王とケインは何か得体の知れない不安感に囚われた。
まるで他人がその身体を支配しているような声色。
何かが間違っていたことを悟った瞬間、紫色の魔力がランタナを包み込んだ。
小さな子どもの姿が次第に消えていき、彼らの前には黒い靴を履いた女性の姿が現れた。
同じ紫の瞳を持ち、怒りに満ちた視線をたたえた女性だった。
「お前、一体誰だ……? 魔法使いなのか?」
ケインと国王は彼女を見て驚きながら尋ねた。
リリーが優雅に後ろ髪をまとめ直した。
「ああ。あなたたちはこの姿に見慣れていないでしょうね。」
一息ついてから、彼女は再び変化の魔法を施した。
今度は、彼らが知っている顔が現れた。
そこには、ケインの姪であり、王の娘であるアビゲイルが立っていた。
「お前、アビゲイル……?」
「ランタナに化けて私たちを欺いていたのか!」
彼らは驚愕と怒りの声を上げ、動揺を隠せなかった。
自分たちがどういう立場に置かれているのかもわからぬまま。
アビゲイルの姿をしたリリーは冷然とした目で彼らを見つめていた。
その視線には、沸騰するような怒りが宿っていた。
「どうして……あの幼い子どもを……。それも自分の子どもに似た子を殺そうとしたの?」
ランタナはネレゲンに背徳感を抱きつつ、視線を投げかけ、物言いたげだった。
暗殺の代価として戻ってくる報酬がすべて嘘だということを、ランタナは知らなかった。
リリーにはそれが理解できなかった。
彼女は飢えと苦しみの中で生きるすべての子供たちにブランシュを見ていた。
しかし、彼らはアビゲイルとそっくりな子供を見ても、容赦なくその子を殺そうとしたのだ。
すでに一度アビゲイルを殺し、それでも飽き足らず、今度はランタナまでも殺そうとした。
怒りで全身が震え、黒と紫の魔力が雷鳴のように溢れ出した。
その時、王とケインは何かが間違っていることに気づき、慌てて表情を改め、慎重に近づいた。
「ああ、アビゲイル。許しておくれ。我々は君のために……!」
「私のために?」
「そうだ!ブランシューが死ねばイベラが王になるのだから。君の親族が王位につけるようにするために……ぐっ!」
黒い魔力が王の首を締めつけた。
彼女は泣きたかった。
アビゲイルのために、ランタナのために泣きたかった。
「警備兵!すぐにこの女を……!」
ケインが叫び声を上げると、恐ろしい勢いで警備兵が駆けつけてきた。
しかし、それはクローネンベルクの兵ではなかった。
ネレゲンの王室紋章が刻まれた鎧をまとった兵士たち。
リリーの護衛兵だった。
その事実にケインは顔面蒼白となり、徐々に状況の重さに押しつぶされそうになっていった。
「お前たちは反逆者であり、殺人者だ。二度と容赦はしない。」
黒い魔力が広間を満たし、二人の視界を遮った。
暗闇の中でアビゲイルの声が響いた。
まるで地獄から這い上がったかのような声が塔中に響き渡った。
「お前たちは一生、呪いと地獄の炎に苦しむがいい。罰を受けることになるだろう。」
嘆きと呪詛の間で、すべての日々と夜を過ごすことになり、鏡を見るたびにあなたが最も恐れている顔と向き合うことになる。
呪いの言葉が終わると同時に、二人は生き埋めにされたような寒気を感じた。
そして炎に焼かれるような激しい熱気が全身を貫いた。
周囲には人々の嘆きと罵声が響き渡り、内臓をえぐられるような不快感が体中を支配した。
それはすべてアビゲイルと、そしてランタナに降りかかったものだった。
彼らは悲鳴を上げた。
その恐ろしい叫び声を聞きながらも、彼女は呪いを止めようとはしなかった。
「この呪いを解く方法は……」
鍵?鍵があるというのか?
ケインと王は恐怖で震えながら、彼らの家族を見上げた。
自分たちが死に至る前に目にしたその顔を。
彼らを見つめながら、彼女は刃を収めるように話した。
「ランタナが幸せになり、あなたたちを許すことだ。それが解決の鍵だ。もしランタナが少しでも不幸になれば、あなたたちの呪いは再び発動する。」
彼らは突然の言葉に困惑した。
ランタナの幸せ?許し?
その呪いがある限り、彼らはランタナに危害を加えることはできなかった。
いや、それが問題ではなかった。
ランタナが少しでも不幸になると再発する呪いとは。
生涯幸せでいなければならない人物など存在しないではないか。
結局、この呪いには救いがないということだった。
王は茫然とした顔で口を開いた。
「ああ、アビゲイル。一体何を言っているんだ……?」
「言葉通りよ。あなたたちが善良な人間になることで、この呪いが解ける可能性も考えたけど……。」
彼らに対して、これ以上の慈悲は惜しまれた。
彼らには何度も機会が与えられた。
そして本当に善良な人間となり、自らの過ちを反省し、罪を償おうとするならば、赦しを受けることができる。
それが本当に善良な人間であればの話だ。
そのため、彼女は迷うことなく倒れ込んだ二人に背を向けた。
最後の最後まで同情の念はなかった。
「ランタナに謝罪し、その子が幸せに暮らせることを祈りなさい。」
「アビゲイル……!」
苦痛の中で彼らは自分の娘を呼んだ。
しかし、すでに扉は閉ざされていた。







