こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

243話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- エピローグ⑥
また時が流れた。
秋が深まり、落ち葉が地面を覆い、白い雪が世の中を包み込んだ後、新たな春の息吹が漂い始めた。
明るく喜ばしい春の訪れとともに、ついに皆が待ちわびた日がやってきた。
それは、ラエルとマリの結婚式の日であった。
「ついにお二人が国婚を挙げるのですね。」
「そうだ、本当にどれだけ待たされたことか。」
帝国の人々は笑顔で輝いていた。
彼らはマリが帝国の皇后になる日を心待ちにしていた。
対して、クローアン王国の人々の反応は異なっていた。
「ついに今日が来たのか。」
「本当にそうだね。永遠に来なければよかったのに。」
「同盟のためとはいえ、わざわざ帝国の皇帝と国婚を結ぶ必要があるのか?」
もちろん、王国の民がマリの結婚を祝福しないわけではなかった。
娘を嫁に出す親の心情だろうか。
彼らは妙に感傷的な気分になり、何人かは酒に酔い、こう叫んだ。
「皇帝を怒らせてみろ!その時はどうなるか知らないぞ!」
「その通りだ!皇帝を軽んじれば、同盟は崩壊するだろう!」
いずれにせよ、帝国民も王国民も両国の幸せを願う気持ちは一つであった。
結婚式は両国民全員の祝福を受けながら厳かに行われた。
結婚式は王国の東部、国境近くに位置する交易都市キャシエンで行われることになった。
実際、国婚をどこで行うかについて多くの議論があった。
帝国で行えばクローアン王国の反発を招き、王国で行えば帝国の反発を招くため、容易に決められる問題ではなかった。
最終的に選ばれたのは国境地帯に位置する交易都市キャシエンだった。
キャシエンはマリが両国の調和と繁栄を目指して発展させている交易都市であり、どちらの国からも反発を買うことがなかった。
また、両国の首都の中間地点に位置しているため、参列者たちが来るのにも便利だった。
「皇帝陛下のために乾杯を!」
「国王陛下のために乾杯を!」
婚礼の前夜祭を控え、キャシエンは祝祭の雰囲気に包まれていた。
帝国と王国から集まった人々は酒を飲みながらお祝いを楽しんでいた。
「何を考えているのですか?」
そんな人々を眺めながら物思いにふけるマリを見て、公爵が尋ねた。
「いいえ、王国の民と帝国の民がまだ少しぎこちないように見えるだけです。」
「仕方のないことですね。両国の間の氷が溶けるには、まだ時間が必要でしょう。」
マリは微笑みながら答えた。
帝国民と王国民の関係は、これから彼女とラエルに委ねられる課題だ。
彼らがどう接し、歩み寄るかで、多くのことが変わるに違いない。
「まずはそんな考えは後回しにしてください。この結婚式の主人公はあなたなのですから。結婚式の前夜にまで国政のことを考えるのは控えていただきたいものです。」
マリは相手の言葉に小さく微笑みを返した。
「ええ、そうします。」
「それでは、すぐに宴会の準備を整えさせていただきます。」
結婚式の前夜祭に向けた宴会が華やかに準備されていた。
マリは侍女たちに美しく着飾られ、会場へと足を運んだ。
「クローアンのモリナ国王陛下がいらっしゃいました!」
人々の視線が一斉に彼女に向けられた。
その視線は彼女の端正で美しい姿に驚嘆を隠せない様子だった。
「陛下は日ごとにますます美しくなられるようだ。」
「その通りです。」
愛に包まれているからだろうか?
彼らの言葉どおり、マリは日に日に美しさを増していった。
特に今日の白いドレスは彼女の純粋さを際立たせ、まるで天使のような印象を与えた。
多くの人々の視線を浴びながら、マリは宴会場の最も高い席へと案内された。
その席では、すでにラエルが待っていた。
「来たね。」
低く落ち着いた声を聞いた瞬間、マリの胸が高鳴った。
もう慣れたはずなのに、彼を見るたびに心臓が早鐘を打つ。
「今日は本当に美しい。」
ラエルはそっと彼女の肩を引き寄せて抱きしめた。
マリは恥ずかしそうに顔を背けた。
「みんなが見てますよ。」
「見られても、どうってことないさ?」
ラエルは彼女の耳元にそっとキスをしながら、さらにこう言った。
「僕が君を愛しているんだ。どれだけ見られても構わない。」
マリの顔が赤くなった。
人々が彼らをチラチラと見ているのを感じながら、彼女は戸惑い気味に周囲を見渡した。
しかし、そんな中でも人々は彼らの様子を微笑ましげに見つめていた。
そのとき、ラエルが席から立ち上がった。
「ラン?」
疑問の表情を浮かべる彼女に、ラエルは手を差し出した。
「主役なのに座っているだけではもったいないだろう。踊りの一曲でもどうだ?」
マリは緊張した表情を浮かべた。
何をやっても器用にこなせる彼女だったが、少し苦手なものもあった。
それがダンスだ。
一人で踊るのは完璧にできるが、誰かとペアで踊ると妙にぎこちなくなってしまうのだ。
「また失敗するかもしれません……。」
ラエルはニヤリと口元を上げて笑った。
そして彼女の腰をしっかりと抱き寄せて立ち上がらせた。
彼は彼女を包み込むように耳元でささやいた。
「どれだけ失敗しても大丈夫だ。どんな君でも、愛おしいから。」
彼女の耳元に甘く響く彼の低い声は、まるで魔法のようだった。
マリの顔は真っ赤に染まった。ラエルは笑顔で言った。
「それなら、一曲踊ってみようか。」
「……はい。」
ステージに上がり、踊り始めた二人を見て、会場中が歓声を上げた。
マリは顔を赤らめながらも、ダンスを始めた。
ラエルも彼女を愛おしそうに見つめながら踊った。
二人の幸せそうな姿に、人々は微笑みを浮かべた。
「本当に素晴らしいですね。」
「はは、そうですね。」
「本当にお二人はお似合いです。」
こうして結婚式前夜の夜は深まっていった。
それは、二人の未来が幸福と愛に満ちたものになることを予感させる、祝福の夜だった。
その夜、マリは夢を見た。
それは普通の夢ではなかった。
力を与える幾何学模様が浮かぶような、不思議な夢だった。
まるでステンドグラスのように、いくつもの幾何学模様が鮮やかに流れていった。
「ヴィオラ、君は私が持つ最高の宝物だ。」
最初に流れた夢は、ある少女の夢だった。
まるでガラスのように美しい、最高の少女ヴィオラの姿が映し出された。
「君が彫刻する姿は、どうしてこれほどまでに荘厳に見えるのだろう。」
二つ目は彫刻家の夢だった。
そして三つ目は音楽家の夢だった。
マリは今見た夢が何度も繰り返されていることに気づいた。
『どうしてこんな夢を?』
彼女は小さく息をついた。
その後、数多くの映像が流れた後、最後に夢も終わりを迎えた。
全てが終わったと思った瞬間、想像もしていなかった場面が夢の中に現れた。
『これは?』
マリの目が大きく見開かれた。
「君の本当の名前、真名は何だい?」
「もし君に本当にそのような能力が宿ったなら、君はその能力で何をしようと考えている?」
『……!』
彼女が能力を得たきっかけ。
それは罪人と出会った時の出来事が夢に現れたものだった。
しかし、夢の中の罪人の様子はどこか変だった。
当時、罪人の顔には死の影が濃く漂っていたが、今では純白の輝きが満ちているように見えた。
「意味のある人生を送りたいんです。」
「何が意味のある人生だと言える?」
罪人との間で交わされた会話。
そのとき、マリはこう答えていた。
「もし可能なら、他の人たちに幸せを与えられる人生を送りたいんです。それが私の願いです。」
そう、それが彼女の答えだった。
夢の中で罪人は、静かに彼女を見つめているだけだった。
マリが不思議そうな顔をした瞬間、罪人は暖かい声で口を開いた。
「そう、それで今まで君は自分の願いを叶えたのかい?」
マリは悩んだ。
それは簡単に答えられるような問いではなかった。
「私は……」
彼女が答えを言い終える前に、夢の世界がぼんやりと薄れ始めた。
マリは茫然と目を開けた。
一息ついてようやく、夢が終わったのだと気づいた。
『これは突然なんの夢なの?』
彼女は何度か目を瞬かせた。
しかし、考え込むことは長く続かなかった。
今日は忙しく、疲れが溜まる一日になりそうだった。
結婚式の日。
夢を悩んでいる時間はなかった。
花嫁の支度を整え、顔見知りの人々や、王国の貴族、帝国の貴族たちから再び祝福の言葉を受けた。
そんなふうに忙しい時間が過ぎ、結婚式が始まった。
「わあああ!」
「国王陛下万歳!」
「皇帝陛下万歳!」
通常、結婚式は聖堂の中や礼拝堂で行われるのが一般的だったが、彼らは広場で結婚式を行うことにした。
多くの民が結婚式を見守れるようにという配慮だった。
「マリ。」
ラエルは幸せに満ちた表情で彼女を見つめた。
「ラン。」
彼を見つめ返すと、マリの顔にも幸せが溢れていた。
いよいよ二人は本当に一つになる。
この瞬間が夢であればどうしようという不安が胸を震わせた。
「まず神様にお二人の祝福をお祈りします。」
祝福は大聖堂の大司教が直接執り行った。
尊い新郎新婦の結婚式であるため、祝辞は長く、さらに長かった。
そして長い祝辞を終えた大司教が宣言した。
「これにてお二人が主の愛の中で一つになったことを宣言します。」
わああ!
その宣言とともに、広場はまるで揺れ動くような歓声で満ちた。
これからオーケストラ団が祝福の演奏をする番だった。
しかし、観客たちはオーケストラの席を見て、不思議そうな表情を浮かべた。
不思議なことに、ピアノが二台置かれていたのだ。
通常の演出ではないため、皆が戸惑いを見せる中、マリが壇上から観衆に向かって話し始めた。
「この場にお越しいただいた皆様に感謝申し上げます。この結婚は私たち二人の結びつきだけでなく、二つの国が一つになる国婚であると考えております。」
誰もが彼女の言葉に耳を傾けた。
「ですので、二つの国が一つとなったことを記念し、また未来の調和を祈る意味で演奏を行いたいと思います。皇帝陛下と私が共に奏でるアンサンブルです。」
人々は驚きの表情を浮かべた。
彼女と皇帝が自らのために演奏をするというのか?
もちろん、これはマリのアイディアだ。
二人の結婚式が少しでも両国の調和を象徴する機会となるようにとの願いから考えられたものだった。
マリとラエルはそれぞれピアノの前に座り、澄み切った音色が広場に響き渡った。
その美しく明るい音色は、聞く者の胸に深く響き渡り、まるで祝福の願いを届けるかのような感覚を与えた。
人々は目を閉じ、その音楽に耳を傾け感動していた。
『マリ』
『ラン』
ピアノを演奏しながら互いを見つめ合う二人は、静かに微笑み合った。
『幸せだ』
マリは心の中で呟いた。
どうしてだろう?
あまりにも幸せで涙が溢れそうだった。
ふと、昨夜夢に見た夢の中での対話が思い出された。
『そうか、それで今まで君は自分の願いを叶えられたのかい?』
正直、まだよく分からない。
でも、一つだけ確かなのは、今この瞬間が幸せだということ。
そしてこれからも、努力を続けながら生きていくだろうということだ。
たとえ少し足りない部分があっても、あの日、あの罪人に語ったように、意味のある人生を送るために努力しながら一日一日を過ごしていくつもりだ。
人々の間で、彼と彼女が奏でるピアノのアンサンブルの音色が美しく響き渡った。
その音楽に耳を傾けた人々の顔には微笑みが浮かび、皆を祝福するかのように澄み切った空が明るい光で輝いた。
<完結>







