こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は67話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
特技が一つもない冴えない侍女マリ。
いつもいじめられるばかりだった彼女に、ある日信じられないことが起きた。
「君のために最後にお祈りをしてあげよう、君の願いは何だい?」
死んでいった囚人を看病していたマリに訪れた奇跡。
「万能な人になりたいです」
その日からとても神秘的な夢を見始めることに。
完璧な侍女!最高の彫刻家!天才音楽家!
夢を通して夢の中の人物の能力を得て、何でも完璧な侍女マリの物語がいま始まる!
マリ:本作の主人公。クローヤン王国の元王女。身分を隠して侍女として働いている。本名は、モリナ・ド・ブランデン・ラ・クローヤン。
ラエル:皇太子。血の皇太子と呼ばれ恐れられている。
キエル:皇室親衛隊団長。キエルハーン・ド・セイトン。
オルン:公爵で宰相。ラエルとは昔からの親友。
ヨハネフ三世:西帝国の皇帝。
オスカー:第十皇子殿下。
アリエル:皇太子妃候補。シュレーアン家。
レイチェル:皇太子妃候補。イーストバーン家。
67話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 狩猟
キエルに言った言葉とは違って、マリはそれなりに今回の狩りを心配していた。
ただし彼女自身のことではなく、狩りに直接参加する人たちのことを。
「もしかして狩り中に怪我をする人はいないよね?皇太子が怪我をしたり、アルモンド子爵が怪我をしたり」
今回の狩りは、遊戯のための狩りではない。
実戦を兼ねた狩りだから、当然負傷者も出るだろう。
マリは自分に近い人物が怪我をするのではないかと心配した。
「私が皇太子を心配するなんてね」
彼女はふとそんな気がして失笑する。
生きている間に、まさか彼のことを心配する日が来るとは思わなかった。
完全にネズミが猫のことを考えているようなものだ。
「それでも怪我をするのは見たくない」
マリは寝る前に短い祈りをした。
「主よ、今度の狩りで私の周りの誰も怪我をすることなく無事に終わるようにしてください」
心配して寝たせいだろうか。
狩りに出発する前夜、マリはまた夢を見た。
しかし、夢の中の内容が尋常ではない。
(あれは?)
夢の主人公は厳つい顔の男。
片手に弓を持っていたが、燃え上がる瞳には苦痛と苦悩、怒りが入り混じっていた。
そして、その男の前に立っている少年。
「父さん、僕は大丈夫です」
そんな少年を見て、夢の中の男は切なく叫んだ。
「ジェミ!」
ジェミと呼ばれた男の息子の頭上にはリンゴが乗っていた。
その隣には卑劣な印象を持つ貴族の男が微笑んでいる。
「どうした?天下の君なら息子の頭上にあるリンゴを何の問題もなく射ることができるだろ?面白いじゃないか」
夢の中の男は、貴族の言葉に歯軋りした。
怒りと苦痛で彼の手が震えている。
(なんてこと)
マリは夢の中の状況を見て手を震わせた。
今、夢の中の男は息子の頭上に乗せられたリンゴを弓で撃ち抜くよう命じられているのだ。
「お前たちを絶対に許さない」
男は歯を食いしばって弓を引く。
そして繰り広げられる神技に等しい腕前!
男の手を離れた矢は正確に息子の頭上に乗せられたリンゴを突き刺し、場内は安堵の歓声で覆われた。
マリは真剣な表情で夢から覚めた。
「これは何の夢?射手になる夢なの?」
夢の意味は明確。
自分に射手の能力を与える夢だ。
しかし、なぜよりによって狩猟場に行く直前にこんな能力が?
「私は狩りに参加する予定じゃないのに・・・」
彼女は侍女だから、当然狩りに参加しない。
それにもかかわらず、射手の夢?
一体どういう意味なのだろうか?
「狩場で一体何が起きる予定なの?」
マリは固い表情で考える。
マリの心配を後にして狩りが始まった。
「わあ!」
大きな太鼓の音とともに騎士団が歓声を上げ、鉄仮面をかぶった皇太子が剣を高く持ち上げながら叫ぶ。
「狩りを始める。捕まえた猛獣の数で報酬を支給するから、皆ベストを尽くすように!」
「はい!帝国と殿下に栄光を!」
皇太子を先頭に、武装した騎士たちが森に突進した。
すぐに追い込み屋がイノシシを誘引して、先頭で馬を運転していた皇太子が矢を放ち一気に貫通させる。
「わあ!皇太子殿下万歳!」
その姿を見た騎士たちが歓声を上げ、本格的な狩りが始まった。
一方、侍女たちは後方の安全な場所に残って、狩りを終えて帰ってくる騎士たちを迎える準備をしている。
「今回、最も多くの猛獣を捕まえる騎士様は誰でしょうか?」
「近衛騎士団の団長、アルモンド子爵様じゃないでしょうか」
「南部のホルン卿も実力が凄いと言われてるけど」
「いいえ、当然皇太子殿下でしょう」
侍女たちが騒ぐ。
今回の狩りは近衛騎士団だけではなく、色々な騎士団の合同作戦であり錚々たる騎士が多かった。
侍女たちは、果たして誰が最高の功績を立てるのか騒いでいるのだ。
誰かがマリに尋ねる。
「ヒルデルンは誰が一番獲物を獲ると思いますか?当然、皇太子殿下ですよね?」
「・・・誰も怪我をしないように」
「え?」
物思いに耽っていて思わず答えたマリは、本人が失言したことに気づいた。
「あ、いいえ・・・。私は他の所に行って仕事をしてきますね」
侍女たちが訝しげな表情をするが、マリは心配で雑談を交わす気分ではなかった。
彼女は誰もいない場所でため息をつく。
「私の心配が杞憂だったら。よりによって狩猟場に出る前に、あんな夢を見るなんて・・・」
その時、彼女は意外な人に会う。
「フォン・ヒルデルン?」
黒髪の高慢な美女、アリエル公女だった。
「アリエル公女殿下にお目にかかります」
マリは、彼女がまた絡んでくるのではないかと心配になる。
ところがアリエルは意外な反応を見せた。
「ええ、こんにちは」
何の文句もなく、自分の挨拶を受け入れたのだ。
それもマリに礼まで揃えて!
意外な反応だったので、彼女は戸惑った表情を浮かべた。
(そういえば、最近はとても静かに過ごしていたわ)
以前は一日に一度は騒ぎを聞くことができたが、最近は特に話を聞いたことがない。
(どんな心境の変化があったのかしら?)
マリはアリエルの顔色を伺う。
相変わらず高慢な印象ではあったが、いつも目元に溜まっていたマリを見下す光が消えている。
(どうしたんだろう?)
その時、アリエルが口を開く。
「それでは失礼します」
「あ、はい。失礼します、公女殿下」
マリは遠ざかる彼女を首を傾げながら見つめた。
そして別の仕事をしていると、マリはもう一人の人物に出会う。
レイチェルだ。
「お疲れ様でした、フォン・ヒルデルン」
「あ、はい」
マリは顔を引き締めて挨拶する。
(どういう意味だろう?)
過去の盗難はレイチェルが関わっていると考えているので不審に思った。
(もしかして今回の狩場で起きることがレイチェル令嬢と関連があるとか?)
そう思ったが、レイチェルはいつものように日常的な話を持ち出すだけ。
「天気がとても肌寒いですね。風邪に気をつけてください」
「・・・はい、ありがとうございます」
「それでは、またお会いしましょう。お疲れ様です」
レイチェルはうつむいて宿舎に入った。
マリも自分の用事を済ませることに。
しかし、頭の中があまりにも複雑だったからだろうか?
マリは立ち去る時に自分を密かに見つめていたレイチェルの視線に気づくことができなかった。
ゾッとするほどの冷たい目つきを。
アリエルが大人しいですね。
ラエルとキエルの警告が効いているようです。
レイチェルは、また何か企んでいるようです。