こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

207話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- たった一つの方法
『どうすればいいの?』
マリは拳を握り締めた。
無茶苦茶な状況に放り込まれたように感じたが、諦めるわけにはいかなかった。
『何があっても諦めるわけにはいかない。王国民の命も、王国の運命も。方法を考え出さなくちゃ!』
彼女は地図を見つめる。
それはクロアン王国の全域が描かれた地図だった。
王国の西側は20万もの敵軍でぎっしりと埋め尽くされていた。
それは恐ろしく巨大な軍勢で、まともに対抗できる相手ではなかった。
『5万、いや、10万の兵力があれば、なんとか勝負を挑むことができたかもしれないのに。』
マリは深いため息をついた。
『20万というのは敵国のすべての戦力を集めた軍勢に違いない。もはや独立したクローアン王国では対抗する手段はない。』
そう考えた瞬間、マリの頭に一つの閃きが稲妻のように走った。
『待って?』
マリは息を飲み込んだ。
『そうだ!王国民を救う計画がある!』
彼女は自分が今思い付いた計画を頭の中で整理した。
この方法ならば王国民を救うだけでなく、戦争そのものを終わらせることができるかもしれない。
それはクローアン王国の勝利を意味し、敵国に対して勝利を収めることができるだろう。
『もちろん、大きな運が必要だけれど、不可能ではない。』
しかし、ふと彼女の表情が重くなった。
たった今考えた方法の重大な欠点が頭に浮かんだのだ。
『私は大きな危険を冒さなければならない。もしかしたら・・・命を落とす可能性も高い。いや、これはほとんど賭けに等しい話だ。うまくいかなければ私は死ぬことになる。』
この計画は彼女がストーン伯爵の元へ向かうことから始まる。
もし何か一つでも間違えれば、悲惨な結末を迎える可能性があった。
その考えに恐れを感じたが、彼女はすぐに思い直した。
『それでもやらなきゃいけない。どれほど危険でも、成功すれば王国はもちろん、ラエル陛下にも大きな恩恵をもたらせるはず。』
この方法が成功すれば、西帝国の野望も終わり、ラエルもまた危機から脱出することができる。
『・・・ラエル陛下。』
マリは自分が愛する彼を思い浮かべた
。今、彼は何をしているのだろう。
自分のせいでどれほど苦しんでいるのだろうか。
『本当にごめんなさい。そして、愛しています。』
マリは目を閉じた。
彼の顔をもう一度見たかった。
『私があまりにも愚かに見えるでしょうけど・・・どうか、一度だけ力を貸してください、陛下。』
そう心の中で願いを込め、彼女は決意を固める。
そして、キエルハンとバルハンを呼び出した。
「お呼びでしょうか、陛下?」
「お二人に重要なお話があって、お呼びしました。」
真剣な声色に、彼女を取り囲む不安げな表情が広がる。
キエルハンがまず彼女の意図を察した。
「陛下?まさか・・・ストーン伯爵のところへ?」
マリは重苦しい様子でうなずきながら、慎重に言葉を口にした。
「ええ、そうです。静粛にお聞きください。」
「ダメです!」
キエルハンは声を荒らげた。
「ストーン伯爵の元へ行けば、どのような目に遭うか分かっているのではないですか?絶対に許すことはできません!」
バルハン伯爵も怒りを抑えきれない様子で言葉を発した。
彼女がストロン伯爵の要求に応えるつもりであることを察し、激しく反対しているのが明白だった。
マリは彼らの言葉を黙って聞いていたが、その反対は当然のことだった。
「お二人は私を信じますか?」
その質問にキエルハンとバルハンは驚いて口を閉じた。
「・・・信じます。」
「ならば、私の話を聞いてください。私は全てを諦めてストーン伯爵の元へ行くわけではありません。この戦争を終わらせるために行くのです。」
戦争を終わらせる。
その言葉に、二人は目を大きく見開いた。
「その言葉は?」
「はい、この戦争を勝利で終わらせる方法があるのです。」
彼女は自身が思いついた方法を説明する。
その話を聞いた二人の表情が次第に変わり、驚きに染まっていった。
「そ、それは・・・」
二人はその方法が十分に勝算があることに気づいた。
この方法であれば、ストーン伯爵を抑えるだけでなく、戦争そのものを勝利で終わらせることも可能だ。
計り知れないリスクを伴うが、まさに局面を打破する一手。
しかし、それはあまりにも危険すぎた。
いや、これは賭けと言うほかなかった。
「それでもダメです。陛下にはあまりにも危険すぎます。」
二人は口を揃えて反対の意思を示した。
「これ以外に方法はありません。」
「陛下は我らクローアンの王です。王がそのような危険を冒すことなど許されません。」
バルハンが強い口調で言い放った。
「王だからこそ、さらに国民のために動くべきなのです、伯爵。」
バルハンは困惑した心で声を荒げた。
「ほとんど賭けに等しい方法ではありませんか? 死ぬ可能性が非常に高いのです!いや、確実に死ぬでしょう!一体なぜそんなことをするのですか!?」
キエルも言った。
「陛下。いや、マリ様。あなたの大切な臣下としてお願いです。もう一度だけお考えいただけませんか?」
その声には彼女への切実な懇願が込められていた。
しかし、マリは険しい表情で答えた。
「キエル様、バルハン様、私は死にに行くのではありません。」
「マリ様・・・」
「むしろ、生きるために行くのです。」
マリはゆっくりと言葉を紡いだ。
「どうせこのままではクローアン王国が滅びるのは決まった運命です。私の命も同じ結末でしょう。それならば、むしろ皆のために賭けてみる方が良いのです。」
すべての人のために。
クローアン王国の民と、自分が愛するラエルのために。
これが今この瞬間、彼らのために彼女ができる唯一の方法だった。
マリは真剣な目で二人を見つめた。
「私は生きるために死のうとしているんです。どうかその私を助けてください。お二人の助けがなければ、この作戦は成功しません。」
結局、キエルは大きく息を吐いた。
彼女を危険に送りたくはなかったが、止める方法がなかった。
「それなら一つだけ約束してください。」
マリは顎を引き締めて答えた。
「どんなことがあっても必ず成功させてください。そして笑顔でまた私を見てください。」
キエルは彼女の真っ直ぐな視線を見つめ返した。
「もしあなたに危険が及んだなら、私はどんな手段を使ってでもストーン伯爵を殺した後、あなたを追って死にます。だから絶対に無理はしないでください。」
マリは彼の瞳をじっと見つめた。
普段は毅然とした彼の青い瞳だが、その中には彼女への心配がはっきりと表れていた。
それは胸を締め付けるような痛みとともに、マリの心を揺さぶった。
「・・・はい、約束します。」
彼女は拳を握り締めた。
「必ず。」
キエルとバルハンを説得した彼女は、作戦の概要を説明した。
「この作戦の核心は、私が死ぬことです。」
二人は重く拳を握りしめた。
マリはその言葉が重要であることを再び強調するように話した。
「この作戦が成功するためには、私が必ず命を落とさなければなりません。」
それは理解しがたい話だった。
彼女が死んで作戦が成功するというのか?
しかしマリは、それが比喩的な表現ではなく、文字通り自分の死を意味することを話していた。
「私の死後(死後)が重要なんです。バルハン伯爵は、私の死が広まった後に動揺する王国をまとめ、西帝国軍に対抗してください。」
バルハンは沈痛な顔で拳を握りしめた。
「命令に従います。」
今回はマリがキエルハンを見つめた。
「閣下には、私の死に対する西帝国の視線が向けられている間、別途計画した作戦を進めていただきたいのです。」
キエルハンも同様に暗い顔で拳を固く握った。
「承知しました。」
マリは言葉を続けた。
「私の死後、お二人の役割がこの作戦の成功を左右します。つまり、お二人がしっかりと務めを果たしてくだされば、私たちは西帝国に勝利することができます。」
二人は決然とした表情で拳を握りしめた。
マリは一瞬目を閉じた。
自分に訪れる運命が恐ろしいのだろうか?
他人には見えないところで彼女の瞼がわずかに震えていた。
しかし、それも一瞬のことで、彼女はすべてを覚悟して口を開いた。
「それでは、私はお二人を信じてストーン伯爵に死を迎えるため向かいます。」
・
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作戦を決意したマリは、少数の王室騎士団を率いてウィセン城へと向かった。
『早く行かなければ。』
ウィセン城は西側国境に位置する城だ。
ストーン伯爵が提案した時間に遅れないためには、ひたすら馬を走らせるしかなかった。
そうして道中、彼女は黙々と進んだ。
トク、トク。
空から雨が降り始める。
「陛下、雨が。」
王室騎士が心配そうな表情を浮かべた。
今、マリは言葉を呑み込んでおり、無言で雨に打たれるしかなかった。
「私は大丈夫です。心配しないでください。」
マリはそう言い、ただ静かに馬の手綱を握りしめた。
その姿を見た王室騎士は胸が詰まるような思いを抱いた。
この若い少女は今、すべての人々のために行動して敵陣へと向かっていた。
その実行をしている自分がこれほど緊張し震えているのだから、本人はどれほど怖がっているだろうか?
それでも彼女は冷静な顔を装い、決して自分の恐怖を表に出さなかった。
「・・・陛下。」
「私は大丈夫です。時間がないので、もっと急がなければなりません。」
「・・・承知しました。」
王室騎士はため息をつきながら返事をした。
降りしきる雨が彼らを湿らせた。
マリは雨に打たれながら空を見上げた。
『ラエル、会いたい。』
彼女はラエルを思い浮かべ、寂しそうな表情を浮かべた。
もし彼が側にいてくれたなら、こんなにも雨の中で心が折れることはなかっただろう。
ただその広い腕で抱きしめてくれただけでよかったのに。
『会いたい、本当に。本当に・・・。』
すべてを投げ捨てて、彼のもとへ逃げたいと思った。
ただその腕の中で涙を流し、声をあげて泣きたかった。
しかし、それはできない。
彼ではなく、彼のためだからこそ——。
マリは唇をしっかりと噛み締め、心を落ち着かせた。
『落ち着いて、マリ。心を強く持たないと。この作戦にすべてがかかっているんだから。』
彼女の命だけではなかった。
彼女が守りたいと思う王国民の運命と、愛するラエルの運命もかかっていたのだ。
『絶対に成功させなきゃ。彼のためにも、必ず。』
マリは彼がいる方向を見つめた。今、彼は何をしているのだろう?
『ラエル、どうか私に力を貸して。お願い・・・。』
そう決意を固めた彼女は馬を走らせた。
侵略された王国の西部地域を抜け、進み続けた末に目的地にたどり着いた。
『ウィセン城。』
マリは引き締まった表情でウィセン城を見つめた。
ウィセン城は荒廃した要塞であり、敵国の旗が風に翻っていた。
灰色の雲に覆われ、雨が降りしきる中、その光景はまるで最後の舞台のように感じられた。
彼女の到着に気づいたのか、城門が軋む音を立てて開いた。
そして、天使のように美しい外見を持つストーン伯爵が微笑みながら現れた。
「おや、すっかり濡れてしまいましたね。」
ストーン伯爵はマリの姿を見て目を大きく見開いた。
雨の中、馬を走らせてきた彼女は、まるで濡れ鼠のような状態だった。
「大切なお体です。早く中に入って休まなければなりません。」
ストーン伯爵は彼女に歩み寄り、手に持ったハンカチで彼女の濡れた顔を拭こうとする。
しかし、マリはその手を叩いて拒絶した。
「お気遣いは無用です。王国民たちは無事なのでしょうか?」
鋭い声で問いかけると、ストーン伯爵は薄く笑った。
「もちろん、時間通りに到着していただき、すべて問題ありません。」
マリは彼の声を聞くと背筋に冷たい感覚が走った。
彼は本心から惜しむような様子だった。
「私がこうして来た以上、王国民を傷つけないという約束を守っていただきたいわ。」
「ええ、それはご心配なく。」
ストーン伯爵はじっと彼女を見つめた。
「やはり。」
マリは彼の瞳の奥に潜む狂気に気づき、思わず唾を飲み込んだ。
彼はゆっくりと手を伸ばし、彼女の頬に近づけた。
まるで獲物の肌をなぞるような動きに、マリの体が震えたその瞬間、彼が口を開いた。
「今や私の関心事は、あなた自身なのですから」








