乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する

乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する【160話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する」を紹介させていただきます。 ネタバ...

 




 

160話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 誰も傷つけない結末を目指して④

皇帝は表情を崩さず、楽団に最初のダンス曲を演奏するよう指示を出した。

アセラスはダリアの手を取り、舞踏会場のホール中央へ進んだ。

自然と人々の注目が彼らに集まる。

踊りが始まる前、アセラスは銀髪の召使いが持ってきた小さな木製のペンダントを手に取り、ダリアに差し出した。

ダリアは驚いてそれを受け取り、視線をペンダントに落とした。

それはシンプルなデザインの十字架だった。

彼女は受け取る代わりに、そのペンダントを警戒するような目で見つめた。

アセラスは穏やかに微笑んだ。

「ダリア様、これはあなたのために準備した聖国からの贈り物です。」

「これは・・・?」

「私が直接祝福を施しました。聖国で教皇の祝福を受けたこのペンダントは、どんな罪でも赦してくれる免罪符となるのです。」

「・・・。」

赦し。

それはなぜかダリアを戸惑わせた。

アセラスは自分の何を赦そうとしているのか?

自らの罪ですら完全には清められないというのに。

「受け取ってください。どんな魔法も神聖な力も宿していません。もし証明が必要なら、何なりとどうぞ。」

「いいえ、いただきます。」

彼女はそれを首にかけずに手で受け取り、その後ポケットにしまいこんだ。

アセラスは彼女の一連の行動を黙って見守った後、再び手を差し出す。

ダリアは静かにその手を取り、彼の反対側の肩に手を添えた。

曲が始まる。

二人の距離は近づき、周囲の人々からも遠ざかっていった。

その時、アセラスの瞳がダリアを見つめ、冷たい光が戻った。

彼はダリアに無理に接触することはなく、ただ彼女を静かに下の方へ見つめていた。

「久しぶりだな、ダリア・ペステローズ。」

「・・・」

ダリアは何も答えなかった。

どう呼べばいいのか、何と言えばいいのか、どんな言葉をかければいいのかも分からなかった。

悩んだ末に、彼女は小さく答えた。

「うん、久しぶりだね。」

アセラスの口元が少しだけ緩んだ。

ダリアは目を伏せて言った。

「ここには何をしに来たの?」

「・・・。」

「答えて。」

「もっと怖がっていると思ったんだけど。」

「勇気を出さなきゃね。ここには私とあなたしかいないんだから。」

そう言いながら、彼の肩に触れていた手が微かに震えていることに気づいた。

アセラスは、わざと無関心を装っているのか、それとも気を使わないようにしているのか分からなかったが、ダリアの顔だけを見つめていた。

ダリアの心臓は破裂しそうなくらい激しく鼓動していた。

彼女は言葉を失い、アセラスも一言も話さなかった。

しばらくの間、ただ静かなステップだけが響いていた。

そして、しばらくしてアセラスが彼女の名前を呼んだ。

「ダリア・ペステローズ。」

「・・・」

「私と聖国へ行こう。」

ダリアは驚いて彼を見上げる。

当然、冗談だと思っていたが、突然アセラスの視線が真剣になっていた。

その目に秘められた理解し難い情熱に、彼女はますます混乱した。

「・・・何を言っているの?」

「君が初代皇帝の魂を浄化できることを知っている。君が必要だ。聖国に来てくれ。君にすべてを与えるから。」

「本気で言っているの?」

ダリアの声は最後には怒りに近い響きを帯びていた。

まるで信じられないと言わんばかりに。

まるで何も譲歩するつもりがないような態度で、誰もが当然受け入れるだろうという理屈を並べて提案しているようだった。

しかし実際には、戦争を引き起こして、この国の初代皇帝の追従者たちをすべて殺すことを考えているようだった。

アセラスの瞳が冷たく光を失った。

「私の言うことを聞いた方がいい。」

「なぜ私が?」

「さもなければ、君の愛する人々が皆殺されることになるからだ。」

ダリアは歩みを止めた。

いや、止めざるを得なかった。

しかしアセラスは彼女の身体を強引に引き寄せ、無理やり舞曲に従わせた。

ダリアは彼の指示に従う形で引きずられながら、冷たい視線を向けた。

「提案としての体をなしていないわ。」

「当然だ。これは提案ではなく脅迫だからな。」

「・・・。」

「初代皇帝の力は神聖な力と衝突している。そして今、この地には最も信仰深い信徒たちが数十万人もいる。君たちはどこまで耐えられるだろう?」

アセラスが言った。

今まで彼女をじっと見ていた彼は、今や前へ進む道だけを見ていた。

しかし口だけが動いていた。

「全員を殺してやる。まとめてな。君の大切な人々をすべて焼き尽くす。その終わりを見たいか?」

彼は目を細める。

どこか切実に響く声が彼の口から漏れ出た。

「君が来れば、君さえ来れば、それで全部終わらせてやる。望むなら君の愛する兄ぐらいは訪問を許可してやろう。」

ダリアは一言も発しなかった。

揺るがない視線で彼を見上げているようだった。

外見ではそう見えたが、結局そうすることはできなかった。

彼は彼女と視線を合わせる。

近くで見ると、彼の青い瞳はさらに輝きを増して美しく見えた。

ダリアの唇が動いた。

「いいわ、行きましょう。」

アセラスの呼吸が一瞬止まった。

ダリアはアセラスの反応に意を介さず、続けて言った。

「あなたの言う通り、聖国へ行くわ。」

「・・・。」

「これで満足?」

たった一言だったが、瞬間的に心に平穏が訪れた。

しかしそれも一瞬のことだった。

『また何か裏があるのか?』

不安と疑念が湧き上がった。

突然ダリアがこんな風に素直になるはずがない。

なぜなら彼女は彼を重要視していないからだ。

アセラスは身体を傾け、彼女にそっと近づいた。

「何を企んでいる?」

「・・・試してみて。」

ダリアは再び目を伏せた。

「どうせ私はあなたの言葉に少しも関心がない。信じてもいない。」

「・・・。」

「でも、あなたもこの話を聞く必要があるわ。あなたにとって重要な話だから。」

彼女の声は穏やかでありながらも、拒絶できない力を持っていた。

アセラスは口を閉ざした。

「私、本当は・・・」

その時、アセラスは一人の侍従が急いで皇帝に駆け寄るのを見た。

彼は何かを隠そうとしているようだったが、ワイシャツの袖や襟に血痕が付いていた。

その血は侍従自身のものではなかった。

アセラスは虚空を見上げた。

『進むべき道は一つしかない。』

信徒たちがアルゲルを殺したようだ。

かつてのブルーポート宮殿の爆破を免れたのだろうか?

それとも、彼女が実際に爆破を行ったのか?

『もし彼女が爆破したのなら・・・』

アセラスは再びダリアを見下ろした。

ダリアもまた同じものを見ていたのか、途中で言葉を止め、少しぼんやりと窓の外を眺めていた。

彼女の唇が微かに動き、かすれた声が漏れた。

「私、その人を知っている。」

「・・・」

「以前、地下牢に関する仕事でブリーフィングを受けたことがあって・・・」

『やっぱり、あの侍従だったのか。』

アセラスはそう考えた。

ダリアもまた地下牢を誰が管理しているのかを知っているようだ。

そこにあったかつてのブルーポート宮殿の痕跡を思い出したのか、彼女の表情はゆっくりと冷たい青さを帯びていった。

その様子は、アセラスにとって少しだけ滑稽に思えた。

彼女を少し揺さぶるのも悪くないと彼は感じた。

アセラスは身を傾け、ダリアに耳打ちした。

「言っただろう、ダリア・ペステローズ。すでに我々の信徒たちが動き出しているんだ。」

「・・・」

「君が惑えば惑うほど、もっと多くの人々が死ぬことになる。」

ダリアは身を震わせ、驚いたように視線を上げた。

彼女の震える声が静かに漏れた。

「あなたは・・・」

「・・・」

「公爵様に何をしたの?」

アセラスは答えなかった。ただ、彼女が答えを口にするのを待ちながら。

ダリアの視線がゆっくりと下へと落ちていった。

そしてしばらくして。

「アセラス。」

ダリアがかすれた声で言った。

アセラスは彼女を見下ろした。

彼は何かが間違っていると感じた。

彼女の顔は、彼が予想していた恐怖や困惑ではなく、ただ無表情だった。

彼女の唇がゆっくりと開いた。

数回息を吸い込んだ後、彼女はこう言った。

「私・・・今日君に会う前に決めてた。君を許すって。そうすれば、私が君を救うことができるかもしれないって。」

「・・・」

「でもやっぱり無理。」

ダリアは彼の肩に置いていた手をどけ、その体を軽く押した。

力を込めたわけではなかったが、いや、たとえ力を入れてもびくともしないはずなのに、アセラスは無抵抗に後ずさった。

音楽が止まる。

全員が驚いて二人を見つめていた。

ダリアは視線をそらさず、自分の薬指に嵌められていた指輪を外し、それを握りしめた。

皇帝の力を抑制していたそれを。

彼女はそのままアセラスに近づき、握りしめた手を彼に差し出した。

そして別の手で彼の腕を掴み、促すようにした。

アセラスがずっと待ち望んでいた瞬間だった。

しかし、何かがおかしかった。

理性が警告を発していた。

この手を取ったら、全てが取り返しのつかないことになる、という予感。

ダリアが涙を流していたからだ。

彼女は本当に悔しそうで、苦しそうで、唇をかみ締めたまま彼を見つめながら涙を流していた。

そして彼女はもう片方の手でハンカチを取り出し、こぼれる涙をぬぐいながら、彼女は歯を食いしばった。

「どうして?どうして今になって?本当に、これが私にとって・・・最後の・・・最後のチャンスだったのに・・・。」

彼女の言葉を理解することができなかった。

しかし、彼はひたすら目の前の救いを求めて手を伸ばした。

ついに彼女の手が彼の手の中に収まった。

その瞬間、彼は時間が止まったかのような感覚を覚えた。

何も感じなかった。

何も、何もかも。

以前は軽く触れるだけでも彼の頭をクリアにしていた力が、今ではこうして手を握りしめていても、何一つ感じることができなかった。

ダリアは顎を上げ、アセラスを見上げた。

彼女は震える声でゆっくりと話し始めた。

「あなたに話すべき大事なことがあると言ったでしょう、アセラス。」

「・・・。」

「私の力は、私が憎む人には決して通じないの。」

アセラスはその場に立ち尽くし、ダリアの顔だけをじっと見つめた。

「どういう意味だ?」

彼は何かを言われたが、それが何なのか、確信を持てるものは何一つなかった。

「アセラス、あなたに最後のチャンスをあげる。」

「・・・。」

「すべてを諦めて赦しを請いなさい。そうすれば、私の心が変わるかもしれないわ。」

いつの間にか涙を止めていたダリアは、冷静に言った。

彼女はハンカチで涙を拭い、彼が握る手をそっと引き剥がす。

そして、手にしていた指輪を外し、一歩二歩と後ずさりした。

彼女はドレスの裾をつかみ、涙の痕が残る顔を落ち着かせ、毅然として優雅な微笑みを浮かべた。

そして、一曲を見事に踊りきったかのような優美な礼をもってアセラスに挨拶をした。

「どうか教皇様が、この時間を楽しまれたことを願っています。」

アセラスが答える前に、彼女は身をひるがえす。

メルドンはダリアにささやいたが、彼女は何も答えなかった。

「お嬢様、大丈夫ですか?」

ダリアは顎を軽く引いた。

その目の光を見て、メルドンは安堵の息をつく。

「よかったです。それにしても、他のことは大丈夫でしょうか?アセラスについては・・・。」

「・・・どうせ選択肢がなかったんです。」

ダリアはまた泣き出しそうな気持ちになった。

「ブルーポート大公爵は・・・?」

「現在、調査中です。侍従が地下牢で死んだ警備兵を発見して事態が大きくなってしまいました。ブルーポート前公爵の所在はまだ不明です。他の者たちもあちこちで拘束されているため、状況把握が遅れているようです。」

「・・・」

「確かなことはありません。それなら私たちには分からないはずです。ただ、セドリック様が残してくださった魔法がある限り・・・」

「そっか。」

ダリアは少し安心した。

しかし、ずっと気分が晴れない感覚をどうすることもできなかった。

彼女がよろめきかけると、メルドンが支えてくれた。

最後の計画は失敗した。

彼女は結局、アセラスを救うことができなかった。

残ったのは、ルウェインが持ち去った日記帳だけだ。

彼はその日記帳を使ってアセラスを浄化する魔法を完成させるつもりだと言った。

だが、他の信徒たちが動き出していれば、時間が足りなかった。

ルウェインは状況が切迫して戻らなければならないと判断し、本来の計画通り、彼を永久に封印することを決めた。

「セドリック様を救うためにはどうすればいいの・・・。」

それを分かっていながらも、ダリアは目を閉じ、メルドンを見上げる。

彼が微かに動いた後、一息ついた。

「さっきのフレドリックの巨大な熊がどんな気持ちだったか分かりましたよ、お嬢さん。あなたがそんな表情をしていたら、私もどうすればいいか分かりません。」

メルドンは彼女の背中を軽く叩いた。

ダリアはうつむいた。

 



 

 

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