余命僅かな皇帝の主治医になりました

余命僅かな皇帝の主治医になりました【45話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「余命僅かな皇帝の主治医になりました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【余命僅かな皇帝の主治医になりました】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「余命僅かな皇帝の主治医になりました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載...

 




 

45話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 命日②

セリーナがちょうど書斎に入ろうとしたその時、レオナルドと鉢合わせた。

「おお、セリーナ嬢。」

レオナルドは普段よりも柔らかい表情でセリーナに近づいてきた。

「こんにちは、レオナルド卿。」

「陛下にお会いにいらしたのですか?」

「はい、少し許可をいただきたいことがありまして。」

セリーナが素直に対応すると、レオナルドが一瞬口を閉ざした。

それを不審に思った彼女が尋ねた。

「レオナルド卿、私におっしゃりたいことでもあるのですか?」

「……ただ、今セリーナ嬢を書庫に迎え入れてもよいものか悩んでおりました。」

レオナルドはぎこちなく笑いながら、気遣いをそのまま伝えた。

まさにどうすればよいか悩ましい様子だった。

セリーナはレオナルドの顔色をそっとうかがいながら、気づかれないように見上げた。

「陛下がご機嫌斜めなのですね?」

レオナルドは力なく髪をかきあげることで答えを代わりにした。

言わずともわかることだった。

まさにその日だったから。

特にこの時期、アジェイドは憂鬱のどん底に沈もうとする人のように、険しく刺々しい雰囲気を漂わせていた。

「実は、メデイア様の命日なのです。」

たぶんセリーナが知らない情報だろうと、慎重に教えてくれているようだった。

セリーナが黙って耳を傾けているので、レオナルドはさらに続けた。

「この時期、陛下は少し繊細になられます。通常はお声をかけないほうがよいのですが……。」

「そうなんですか?」

レオナルドが躊躇していると、セリーナが大丈夫だと促し、話してもよいと励ました。

レオナルドは後頭部をかきながら語り出した。

「セリーナ嬢には最近辛いことがあったようなので、もしや話をすることで少しでも助けになるかと思いまして。」

「そうだったんですね。」

アジェイドの側近である彼が認めてくれたことで、セリーナはなぜか気恥ずかしくなった。

『私が皇帝とそんなに親しくなったってこと?』

上司の友人が言うことだから、冗談ではないだろう。

まさか好かれたい一心で始めたアジェイド更生プロジェクトではなかったが、気分がよかったのは確かだった。

セリーナがなんとなく口を引き結ぼうとすると、レオナルドがさりげなく言った。

「気まずく感じるようでしたら、次の機会をお待ちいただくのがよいでしょう。今は少し……陛下の状態があまりよろしくありません。」

レオナルドとしては、彼女を中に入れることが毒になるか薬になるか判断がつかなかった。

もしかするとアジェイドの神経を逆なでするのではと心配している様子だった。

セリーナはレオナルドの助言にしばらく考え込んだ。

外出の許可を得て来たが、急ぎの用ではなかった。

だが、後で来るとしてアゼイドの気分が良くなるだろうか?

経験上、アゼイドは命日が近づくにつれて敏感になっていった。

むしろ今日確認をとるほうが良いかもしれない。

加えて患者が憂うつなのに放っておくのは、まさに無責任だ。

皇帝の友人が直接推薦してくれたとはいえ、職務を疎かにはできない。

「ご心配ありがとうございます、レオナルド卿。」

「では、また改めて来られるのですね?」

レオナルドはそれを予想していたかのように目元を緩めた。

皇帝の機嫌が悪い時に下手に接すると、命が惜しいというようなものだった。

いくら身内のようなセリーナでも、恐れるのは当然だった。

レオナルドは静かに彼女に礼を差し出しながら手を伸ばしたときだった。

「いいえ。」

簡潔な返事に、レオナルドが不思議そうに彼女を見つめた。

「ここまで来て、ただ帰るわけにはいきません。殿下の精神的健康も、私の業務の一環ですから。」

「セリーナ嬢。」

「私のことはご心配なく、このまま行っても大丈夫です、レオナルド卿。私は自分の仕事をするだけですから。」

セリーナが微笑むと、レオナルドが目を閉じた。

しばらくして、彼はやや安心したような表情で言った。

「それでは、よろしくお願いします。」

そうしてレオナルドは控えめに一礼し、軽い足取りでその場を離れた。

セリーナはレオナルドが去っていく姿を一瞬見送ってから拳を握りしめた。

そして深呼吸を一度してからノックした。

「陛下、セリーナです。」

「……」

中からは何の返事もなかったが、「入るな」という命令もなかった。

セリーナはそれを「入ってもいい」という意味だと受け取り、扉を押した。

アゼイドは開かれた窓の向こうをじっと見つめていた。

何かを見つめているというよりは、ただ視線をどこかに向けているだけのようだった。

まるで何も見えず、ただぼんやりと視線を固定しているような感じだ。

その普段とは違う茫然自失の姿に、セリーナも少し驚いた。

『とても傷ついた顔ね。』

アジェイドの顔は、雨に打たれた子犬、いや、豪雨にびしょ濡れになった雛鳥のようでもあった。

「天気の見回り中だったのですか?」

セリーナが何気なく近づいて尋ねると、少し遅れてアジェイドがセリーナを見つめた。

「何かあったのか?」

「何か用事がなければ来てはいけませんか?イジュリングも許可してくれたのに。」

セリーナが軽く手を振ると、アジェイドが思わず笑った。

イジュリングがあるというのは、いつでも皇帝と個別に会えるという意味。

それを直接与えたのはアジェイドだから、彼女の言葉には意味があった。

「お前はいつも用件があるときだけ私を訪ねてくる。」

「それで、寂しかったんですか?」

「まあな。寂しかったかもしれん。」

アゼイドは普段とは違い、セリーナに突っかかるような態度は見せなかった。

ただ、「まあ、そうかもな」と言うように、ふてくされたような態度をとる様子はまるで見られなかった。

セリーナが静かにそばに立っていると、しばらくして彼は意味もなくつぶやいた。

「……寂しかったのかもしれないな。」

「寂しくないように、たくさん会いに来ないとですね。途中で面倒くさくなって断らないでくださいね?」

「はは。」

アゼイドは気の利いた冗談にくすっと笑った。

取り立てて意味のある言葉ではなかったが、耳に心地よい声を聞かせてくれた。

アゼイドは窓からセリーナに視線を移した。

今日もきちんと下でまとめた髪は整っていた。

前回もそうだったが、セリーナの寝室で無造作に垂れていた紫色の髪の毛を見て、アジェイドは茫然とした。

「どうしていつも髪を結んでいるんだ?」

「下ろしていると仕事中に邪魔なんです。ほどいた方がいいですか?」

今日はなぜか、セリーナはアジェイドの言うことなら何でも受け入れるように聞こえた。

何か頼みごとをするために、こんなにおどおどしているのだろうか。

アジェイドもまた、彼女の頼みなら何でも聞いてあげられそうな気がした。

理由は分からないが。

「特に理由があるわけじゃないけど、いつも結んでいるから。」

「こうして結んでしまっているからですよ。実は髪が不便なことが多くて。髪型をいろいろ変えてみたいのに、私が毎回断ってたんです。」

セリーナは、尋ねてもいないことを軽く笑って流した。

アゼイドはそんな彼女に曖昧に微笑んだ。

さっきまで焦点なく窓の外を見ていたのとは違う意味で、焦点の定まらない視線。

どこを見つめればいいのかわからない。

妙にドキン、と心臓が高鳴るのは、母の命日が近づいているからなのか、彼女が目の前にいるからなのか分からなかった。

アゼイドは手を伸ばし、彼女の長い髪をそっと触りながら言った。

「どうして、自分の好きなように結ばないんだ。別の結び方も似合いそうなのに。」

セリーナは、彼に掴まれた髪の毛をそっと撫でながら応じた。

「そうですか?陛下がそうおっしゃるなら、今度は別のスタイルで結ってみてもいいかもしれませんね。」

「きっとよく似合うよ。私は見る目があるからね。」

いつの間にか、アジェイドの目に以前よりも生気が宿っていた。

鋭く見開いた目よりも、今のそのまなざしの方がずっと見ていて気持ちよかった。

「いいですよ。陛下の目を信じてみます。」

「それで、用件は?」

アジェイドの核心を突いた質問に、セリーナは苦笑した。

さすがに皇帝の洞察力は侮れなかった。

『私、そんなに用事がある時だけあなたを訪ねてたかしら。』

セリーナは遅れて反省し、次はただ会いに行こうと決心しながら口を開いた。

「外出しようと思います。」

「どこへ?」

「ゴードン商団に行ってこようかと。」

「おお、前に預けたという医療道具を取りに行くんだな?」

「はい。それと、ついでに薬局にも少し寄ろうかと。」

「その路地裏にある店?」

「はい、そうです。」

「気をつけて。あまり遅くなりそうなら事前に連絡して。」

「そうします。そして、陛下。」

セリーナの呼びかけにアゼイドは瞬きをした。

彼女はにこやかに笑って手を差し出した。

「お散歩、行きませんか?」

「はは。本当にしつこいね。」

アジェイドは止められないというように笑いながら、彼女の手をしっかり握った。

温かくて小さなその手は、アジェイドの手の中にすっぽりと収まった。

「歩いていれば気分もよくなると思いますよ。」

「そうだろうか。」

アジェイドは何も言わず、彼女の後ろについて静かに歩いた。

かつては彼女の処遇に反対したこともあったのを思い出しながら。

 



 

 

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