こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

248話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 旅行⑤
何か深刻な試練(?)が迫ることを予感したマリは、不安げな目つきをしていた。
「何日も待たせたんだ、覚悟はできているだろう?」
「え、何が?」
マリはごくりと唾を飲み込んだ。
ラエルはそれ以上説明しなかったが、何か考えている様子は明らかだった。
『え、どうしよう?』
もちろん、彼と一緒にいることが嫌なわけではなかった。
いや、むしろ彼との時間は好きだった。
彼と過ごすことを嫌う人なんているはずがない。
ただ、あまりに情熱的すぎるのが問題だった。
普段でも夜を共に過ごすと疲労困憊で手一つ動かすのも難しくなるのに、今日は本当に覚悟が必要だと感じていた。
彼女の予感通り、自宅に戻ったラエルは、夜通し彼女を愛し、彼女が音を上げるまで攻め立てた。
「……ちょっとやりすぎじゃないですか?恨みますよ。」
マリは呆然とベッドに横たわり、彼を見上げていた。
今が何時なのか、何度愛を交わしたのか分からなかった。
ラエルは唇を舐め、彼女の唇に再び口づけをしながら言った。
「もう終わりなのか?まだ嫌いになるには早すぎるだろう。」
マリはかすかに震えながら抗議した。
「もう無理です。本当にもうできません。」
「言ったはずだ。今回は本気で覚悟しろと。」
「じ、沈黙!」
「悪くない言葉だな。俺もお前にだけは沈黙したい。」
ラエルはまるで手懐けられた猛獣のように彼女をじっと見つめた。
マリは彼の情熱的な目と向き合いながら、唾を飲み込んだ。
この夜は深く静かに過ぎていくように思えた。
彼は愛情を込めて彼女の頬を撫で、再び唇を重ねた。
そして二人は夜通し愛を交わし続けた。
朝日が差し込む頃、マリは柔らかな日差しを浴びながら、ぼんやりと目を開けた。
「あ……」
どれだけ激しく愛を交わしたのか、目を開けると全身がじんじんと痛んだ。
まるで水をたっぷり含んだスポンジのように、体が重くのしかかる感覚だった。
「起きたか?」
その時、隣からラエルの声が聞こえた。
彼はすでに起きてソファに座り、紅茶を飲んでいた。
「……疲れていませんか?」
「なぜ疲れるんだ?」
ラエルは不思議そうに問い返した。
その姿は、彼女が想像していた以上にすっきりとしていた。
いや、それどころか、愛を交わす前よりもさらに元気そうに見えるほどだった。
「お茶でも飲むか?」
ラエルは立ち上がり、彼女に尋ねた。
自分で淹れてくれそうな様子だが、マリは慌てて彼を止めた。
「大丈夫です。自分でやりますから、気を使わないでください……。」
「いいんだ。俺が君にしてあげたいだけさ。」
ラエルは彼女に近づき、まだぼんやりとした目元に軽く唇を触れさせた。
「俺の楽しみだ。ただ、ゆっくりしていてくれ。」
彼は彼女を再びベッドに横たえ、毛布をかけ直した。
その優しい仕草にマリはほっと息をついた。
昨夜、彼の甘さに翻弄されたことに少しだけ苛立ちを覚えながらも、その一言で心が緩んでしまった。
「どんなに良くしてくれても、それでも腹が立ちます。」
マリは毛布の中から視線を外し、ぼそりと呟いた。
それを聞いたラエルはクスッと笑い、彼女の耳元で囁いた。
「そんなに可愛い顔をしていたら、また怒らせるようなことをしたくなるだろう。」
マリは慌てて毛布を引き寄せ、顔を隠した。
「今日は絶対にダメです!」
ラエルはベッドの隣に座り、穏やかに笑みを浮かべた。
「ん?何て言った?よく聞こえないな?」
「ラエル!」
このままでは再び振り回されるのが目に見えていた。
不安な気持ちから、マリは強く彼を押しのけた。
ラエルは惜しむように彼女の額に軽く唇を寄せてから立ち上がった。
「じゃあ、お茶を入れてくる。少し休んでいて。」
すぐにラエルがお茶を持って戻り、二人はベッドの横にあるソファに腰を下ろしながらモーニングティーを楽しんだ。
『いい感じ。』
マリはお茶を飲みながら穏やかな気持ちで考えた。
温かな香りが部屋全体に広がり、窓の外には明るい海が広がっていた。
『こうやってゆったりした時間を過ごすなんて、今までどれくらいあっただろう。』
もちろん、彼と一緒だからこそ価値のある時間だった。
マリはそっと彼の肩に頭を寄せた。
「ラエル、愛してる。」
ラエルの顔に穏やかな微笑みが浮かんだ。
彼は彼女の髪を優しく撫でながら答えた。
「俺もだよ、愛してる。」
ただ一緒にいるだけで、二人の胸には温かな喜びが満ちていた。
一緒に過ごすこの時間はまるで夢のようだった。
『この瞬間が永遠に続けばいいのに。』
そんな風に永遠に時間が止まってしまえばいいと思っていたとき、部屋の外からノックの音が聞こえた。
「失礼します。休息中に申し訳ありません。」
アルモンドの声だった。
どんな事情があったにせよ、彼が二人の休息を妨げるのは尋常ではなかったので、二人は疑わしい表情を浮かべた。
「何かあったの?」
「どうぞ、お入りください。」
すぐに扉が開き、アルモンドが入ってきたが、マリは妙に不安な気持ちになった。
アルモンドの表情が普段とは違って険しかったからだ。
「急ぎの情報が入りました。」
「何事だ?」
「教皇庁から使節団が到着しました。」
「教皇庁から使節団?事前に何の連絡もなかったのか?」
「はい、陛下。緊急に協議すべき案件があるとのことです。」
ラエルは深くため息をついた。
使節団を派遣する際に、相手国に事前に連絡するのが通常であったが、緊急に協議する必要がある場合には例外的にそれが行われないこともあった。
「使節団が陛下と直接会見を求めていると……」
ラエルは苛立った様子で髪をかき上げた。
「ダメだ。今は重要な用件がある。」
今の彼にとって、世の中のどんな事柄よりも重要な「用件」を片付けることが最優先だった。
彼にとって、彼女と時間を過ごすこと以上に大切なことはなかった。
「ですが、オルン大臣から……」
アルモンドは言葉を詰まらせながらも慎重に話を続けた。
「……」
ラエルはしばらく沈黙し、返答を避けた。
彼の表情からは不機嫌さと苛立ちがにじみ出ていた。
しかし結局、マリが慎重な口調で話し始めた。
「ラン、私は大丈夫だから、心配しないで。他でもない教皇庁からの使節団なのだから、陛下として対応すべきだわ。」
「……大丈夫じゃない。」
「え?」
「大丈夫じゃないって言ったんだ。」
ラエルはかすれた声で話した。
もちろん、彼自身が行くべき状況であることは理解していた。
しかし、どうしてやっと会えた彼女なのに、また離れなければならないのか?
腹が立つと同時に、何よりも悲しい気持ちがこみ上げてきた。
『呆れた教皇庁のやつらめ。一体何の用件だか知らないが、従順に協力してやるとは思うなよ。』
ラエルがそう考えている時だった。
マリがそっと彼の肩に手を置き、優しく触れた。
「仕方のないことなんだから、あまり落ち込まないで。また会えばいいじゃない。」
「またいつ?」
ラエルは気落ちした声で尋ねた。
一度離れてしまえば、再び会うのが難しいのが普通だった。
次に会えるのがいつになるのか、不安でたまらなかった。
「えっと……二か月後?」
マリは考え込んだ末に答えた。
睡眠を削って仕事をすれば、その頃には時間が取れる気もした。
しかし、ラエルは不満げに首を振った。
「ダメだ。二か月は長すぎる。一か月後にしてくれ。」
「ええ、でも……?」
「こんなふうに無駄に別れるたびに、もっと待たされるなんて、俺がストレスで死ぬだろう。俺がクローアン王国に行くから、そうしよう。」
ラエルは再び言った。
「ちょうどその時期は君の誕生日だ。一緒に誕生日を過ごせばいいだろう。最高の誕生日にしてあげるから、待っていてくれ。」
マリは微笑んだ。
昨年の誕生日、彼が忙しくて自分一人で過ごしたことを思い出していた。
『きっと今回も一緒に過ごすのは無理だろうけど……。』
彼女の誕生日はあと40日後だった。
その頃までに彼が任務を終え、クローアン王国に来るのは、ほぼ不可能に近い話だった。
寝る間も惜しんで書類に埋もれる彼の姿が目に浮かぶ。
泣きたくなる気持ちもあったが、それでも自分と一緒に過ごしたいという彼の気持ちが嬉しくて、マリは微笑みながら答えた。
「はい、楽しみにしています。」
こうしてラエルは先に船に乗り、帝国の首都へ戻った。
一人残されたマリは、彼が去った後の邸宅を見つめた。
『寂しいな。』
つい先ほどまで温かい幸福感で満たされていた場所とは思えないほど、邸宅はがらんとして見えた。
『いつまでこんなふうに離れて過ごさなきゃいけないんだろう。』
ほんの少しの間会えただけなのに、すぐにまた会いたくなった。
このまま離れることなく、永遠に彼のそばにいたいと思った。
『はぁ。早く戻らなきゃダメだな。一人でここにいても仕方ないし。』
マリは準備が整い次第、翌日には王国へ戻ることを決め、ベッドに横たわった。
彼がいないベッドで一人横になると、寂しさが胸に広がり、彼女はそっと目を閉じた。
数日後、マリはケムン城に到着した。
「お帰りなさいませ、陛下。」
バルハンが港で彼女を迎えに来ていた。
「バルハン、何事もなかったでしょうか?」
「はい? 特別なことは何もございませんでした。」
その時、バルハンが何かを思い出したように言った。
「そういえば、キエルハーン侯爵が少し遅れて訪問すると書状を送ってきました。」
マリは懐かしい名前に嬉しそうな表情を浮かべた。
キエルハーン。彼女の大切な友人であり、騎士の誓いを立てた相手だ。
彼は自身の領地とクローアン王国を行き来しながら過ごしていた。
帝国の大使としての任務と、彼女の騎士としての責務を並行して遂行しているのだ。
マリは、彼がもう王国に来なくても良いのではないかと思うこともあったが、彼の答えはいつも変わらなかった。
「陛下に忠誠を尽くすことが、私の生きる意味です。」
その時、バルハンが戸惑いながら言った。
「来なくてもいいと言われても必ず来ようとするんですね。陛下のそばには我が王室騎士団だけでも十分なのに。」
マリは微笑んだ。
以前からバルハンはキエルハーンに対して対抗意識を抱いていた。
実はラエルもキエルハーンが彼女の騎士としての職務を遂行するのをあまり快く思っていなかった。
嫉妬心が原因だった。
「いつ頃到着する予定ですか?」
「使者が到着してからかなり時間が経っていますので、おそらく数日後には到着するかと思います。」
マリは期待に胸を膨らませ、キエルハーンの到着を待った。
主君と騎士の関係を超えた彼は、彼女にとって大切な友人だった。
久しぶりに彼に会えると思うと嬉しさが込み上げてきた。
しかし、数日が過ぎてもキエルハーンが到着する気配はなかった。
『道中で何かあったのだろうか?もしかして反乱軍が問題を起こしたのではないだろうか?』
大半の王国民は彼女に従っていたが、少数ながら反乱を企てる者もいたため、彼女の心には不安が広がった。
しかし、世の中には多くの人々がいる。
一部の人々は東帝国に親しみを抱く彼女の政策に不満を抱いていた。
反乱軍は、そんな者たちが集まって結成された秘密結社であった。
まだ大きな動きは見せていなかったが、いつ問題が起こるかわからない不安要素であり、彼女は常に彼らの動向を注視していた。
その時、執務室の扉が勢いよく開かれ、バルハンが険しい表情で彼女に駆け寄ってきた。
「陛下、大変です!」
「何ですか?」
「キエルハーン侯爵がカモン城に向かう途中、行方不明になったとの報告が入りました!」
マリの胸はどきりと音を立てた。
今何と?彼が行方不明?
「それはどういうことですか?キエルハーン侯爵が行方不明だなんて?」
「カモン城近郊の山岳地帯で姿を消し、その後の消息が途絶えたとのことです。現在、直ちに捜索隊を……。」
それを聞いたマリは、慌てて席を立ち、さらに詳しい情報を求めるように急いだ。
「私もノティエン山へ行きます。すぐに出発するので、できるだけ早く準備をしてください。」
マリは唇をきつく結んだ。
キエルハーンは彼女にとって最も大切な友人だった。
座って待つことなんてできない。
どうにかして彼を見つけ出さなければならなかった。
彼女は急いでキエルハーンが行方不明になった場所に向かった。
『一体彼に何が起こったの?敵の襲撃にでも遭ったのかしら?』
マリは不安を抱えながら考えを巡らせた。
ノティエン山は王国の首都であるカモン城のすぐ北に位置する山で、険しい山脈が広がる難所だった。
敵である猛獣が頻繁に出没する場所でもある。
しかし彼女は首を振った。
東帝国やクローアン王国を統べる最強の騎士と呼ばれるキエルハーンが、そんなことで倒されるはずがない。
『それなら一体どうして?』
胸を焦がすような不安を抱えながら、マリはキエルハーンが最後に姿を現した村に到着した。
自分の手がかりを探すべく、彼女は周囲を見回し始めた。
「国王陛下のお言葉をいただきます!」
「ここで騎士の連絡が途絶えたのですか?」
「はい、陛下。その通りです。」
彼女の訪問に、村人たちは驚いて頭を下げた。
彼らは敬意と畏敬の眼差しでマリを見つめた。
王国の民にとって女王は特別で崇高な存在であり、普段その姿を直接見ることなど稀なことだった。
「騎士に一体何が起きたというのですか?」
マリはいつもより鋭い口調で尋ねた。
キエルハーンが危険に陥った可能性を考えると、胸の内が焦りでいっぱいだった。
「それが……」
村の長老がキエルハーンが行方不明になった状況を説明し始めた。
「……村の子供が一人山に入って行方不明になり、騎士様がその子を探しに行った後、連絡が途絶えたのですか?」
マリは困惑しながら問い返した。
「はい、陛下。その後何日も経ちましたが、何の音沙汰もありません。その後の連絡がなく、急いで王城に連絡を取ったのです。」
大きな事故があったわけではないと知り、マリはひとまず安堵のため息をついた。
『それでも危険な状況に変わりはないわね。』
山の中にはどんな猛獣が潜んでいるかわからない。
もちろん、キエルハーンが簡単に猛獣に倒れることは考えにくいが、それでも山奥深くで猛獣の群れに遭遇すれば、いかに彼でも危険を避けられないかもしれなかった。
「まだ何の連絡もないのが気になります。万が一良くない事態が発生している可能性もあるので、すぐに捜索を始めてください。」
「はい、陛下!」
マリは同行している王室騎士たちと共に、キエルハーンの足跡を辿り始めた。
「かなり深い場所まで来たようですね。」
周囲を見渡していたバルハンが、渋い表情を浮かべて言った。
木々が生い茂り、周囲は徐々に暗さを増していく。
さらには、遠くから狼の遠吠えが聞こえ、不気味な雰囲気が場を支配し始めた。
「もしかして猛獣の襲撃を受けたのでしょうか?それとも、反乱者たちの仕業なのか?」
バルハンの疑問に、マリは唇をかみしめた。
山中には猛獣だけでなく、どこにでも山を拠点に活動する反乱者たちもいた。
もちろん、キエルハーンが猛獣や反乱者に倒されるとは考えにくいが、それでも可能性を否定することはできなかった。
「もう少し急いで進まなければなりませんね。」
「はい、陛下!」
マリと王室騎士たちは素早く足を進めた。
それからどれほど移動しただろうか?
彼らは山の奥深く、鬱蒼とした道で不吉な痕跡を発見した。
「血!」
マリの心臓はぎゅっと締め付けられるようだった。
そこには血が滴り落ちており、地面にこびりついていた。
壊れた剣や折れた槍が散乱している様子を見て、それが確実に人のものだと悟った。
「陛下、まさかこれは……」
バルハンも恐る恐る地面にこびりついた血を見つめていた。
その場の様子を見る限り、キエルハーンと何らかの激しい衝突があったのは間違いなかった。
「キエルハーン侯爵の血ではありません。」
マリは冷静な表情で説明した。
「地面に散らばっている武器はどれも錆びついていて、手入れが行き届いていない武器です。反乱者が侯爵を襲撃し、侯爵が彼らを撃退したことが明白です。」
マリはそう話しながら、不安な胸を必死に落ち着けようとした。
「それでも、反乱者と戦った中で何らかの怪我を負った可能性があります。急いで彼を探しましょう。」
一行はさらに足早に歩みを進めた。
もしキエルハーンが負傷していると考えると、緊張感が高まった。
そうしてしばらく足跡や痕跡を追いかけた結果、ついにキエルハーンを見つけることができた。







