こんにちは、ちゃむです。
「オオカミ屋敷の愛され花嫁」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

44話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- お披露目パーティー②
私が呆れた表情でイヴェリンを見つめると、イヴェリンはふんっと鼻を鳴らした。
するとアンシアが申し訳なさそうな声でそっと言った。
「えっと……ごめんなさい。本当はみんなこんな子たちじゃないんだけど……イヴェリンがちょっと性格が悪くて……」
「ちょっと!全部聞こえてるんだから!」
イヴェリンが鋭く叫んだ。
しかしアンシアは気にせず話を続けた。
「うちのグループ、ちょっと性格悪いの。お嬢様、理解してください。」
「まったく、アンシア。新しい一族と仲良くなって何か得られると思ってるの?目を覚ましなよ、バカ。アルセン様を治療したら、すぐに自分の領地に戻るだけなんだから。」
一気にまくし立てたイヴェリンが、他の子どもたちを見回して言った。
「そうなの?新一族ってそうなんだ。だから翼があるやつらは……。」
他の子どもたちも同調するかのように首をかしげた。
アンシアだけが呆れたような顔で彼らを見ていた。
「君たち本当に変だよ。元々変な子たちだとは思ってたけど……、無礼って何なの?」
「ちょっと! アンシア。うろちょろしてもあなたに得はないんだから。」
イヴェリンの言葉は、十歳の子どもが言うとは思えないほど強気で生意気だった。
「こっちに行きましょう。もういいから、あの子たちとは遊ばないで。イヴェリン、君のドレスの裾にクッキーの粉がたっぷりついてるよ。バカだね。」
ぷいっと怒ったアンシアが私の手を引いて宴会場の観客席へ向かった。
心の中ではアルセンのところに戻りたかったけど……私はアンシアが引っ張るままに素直についていった。
観客席に着いたアンシアは、自分の胸をどきどきさせながら言った。
「みんなバカだからですよ。他の子たちはまだ幼くてよく分からないだけで……、イベリンはただ意地悪なだけですから……。」
「ううん、慰めてくれなくていいです。本当に大丈夫です。」
「大丈夫なんですか? そんなこと言われたのに……?」
「はい、本当に。」
“大丈夫”という言葉は本当だった。
私は今でこそ見た目は十歳だったが、精神年齢は十二歳だった。
十歳くらいの子どもに言われた言葉に傷つかない程度にはなっていた。
もちろん少しは残念だったが……。
アンシアが私の膝のすぐ前、鼻の前に自分の顔を寄せた。
「本当?本当に大丈夫なんですか?お嬢様って本当にしっかりした方なんですね……」
アンシアは呆然とした。
私はアンシアの言葉に、ただ目をぱちくりさせた。
「うん、実は……お嬢様と仲良くなりたかったんです……。他の一族と会ったことがないから……」
アンシアはそれがすごい秘密でもあるかのように、ひどくおどおどしていた。
「……それと、あのオオカミ一族の子たち見て……ちょっとバカっぽい……」
きゃっきゃとはしゃいでいる他の子どもたちを見て、アンシアの目つきは冷ややかだった。
『私と友だちになりたいって?』
私は一瞬、目をぱちぱちと瞬かせた。
エクハルトに来てから、ちゃんとした友だちは初めてできた。
私が治療した原住民たち、そしてアルセン、料理人のアキムまで。
しかし、ほとんどが私の方から「友だちになりたい」と言って近づいて友だちになった人たちだったので、
私に「友だちになりたい」と先に言ってくれた子は、アンシアが初めてだった。
私はアンシアの言葉をじっと聞きながら、蝶の髪飾りを握りしめた。
それに、友だちは初めてだったので、
アンシアがこんなことを言ってくれるのが嬉しくないはずがなかったと言わなかったら嘘になるだろう。
アンシアの話を聞いていると、胸の一部がきゅっとなった。
「うん、私もアンシアと友達になりたいです。」
「本当?じゃあ、うちの邸宅で開くティーパーティーにも来てくれますか?きれいなお花を添えて招待状を送るね。来月ぐらいにする予定なの。招待するのはリンシーお姉様と……あと何人かだけにしようと思ってるの。うん、もちろんイヴェリンは除いてね。」
アンシアは続けて話した。
「ティーパーティー?うん、いいですね。行きます。」
「本当に?」
アンシアは信じられないというように何度も確認するように聞いた。
私は蝶の髪飾りをぎゅっと握った。
「ケンドリック様の許可をもらわないといけないけど……、行けるなら……。」
「いいですよ!来られるなら絶対に来てくださいね〜?」
アンシアが明るく笑って私の手をぎゅっと握り、ぶんぶんと振った。
私は突然のスキンシップに少し驚いたが、表には出さずに手を握り返した。
「それと、言葉は楽にしてください、お嬢様。お嬢様はもうエクハルトの一員になられた方ですから!」
アンシアが目をキラキラさせながら言った。
エクハルトの一員になる。
首長家門の一員になるということは、すなわち首長の次に最も高い地位に昇るということでもあるように思えた。
『だから私が敬語を使い続けるのも、エクハルトの名誉を損なうことになるかも……』
最初は慣れなくて敬語を使っていたけれど、
アンシアの話を聞いて、それではいけないと思い、唇を噛んだ。
「うん、そうするね。」
「やった!じゃあ一緒に散歩に行かない? あの子たちがこっちをずっと見てる気がするし……」
「散歩?」
「はい、エクハルト邸の庭園を見て回りたいんです。すごくきれいなんですって!」
アンシアは両腕をぱっと広げて言った。
少女がはしゃいでぴょんぴょん跳ねながら歩くたびに、膝まで届くドレスがひらひらと揺れた。
「うん、案内してあげる。でもアンシア、君の友達は?」
私はまだこちらを睨みつけているイベリンと、他の狼族の子どもたちをちらりと見やった。
このままだとアンシアがあの子たちに嫌われてしまうかもしれないのに。
しかしアンシアは気にしない様子で肩をすくめた。
「大丈夫ですよ。イベリンは他のことに気を取られていて気づかなかったみたいです……。ほっときましょう。」
イベリンはあの子たちのグループのリーダー格のようだった。
私はじっとアンシアを見つめた。
『アンシア……、すごい子だな。』
イヴェリンがあれほど言っていたら、雰囲気にのまれてしまうかもしれないのに。
アンシアは一歩も引かなかった。
私はアンシアを連れて邸宅の庭へと向かった。
私とアルセンが一日に何百回も通る場所だった。
庭にはアルセンの瞳の色にそっくりな青いヒヤシンスが鮮やかに咲いていた。
「わぁ……、きれい!」
アンシアはヒヤシンスを見てすぐに駆け寄ってしゃがみこんだ。
私はアンシアを立ち上がらせようとしたが、アンシアは大丈夫だと言って私の隣の席にどっかり座った。
「大丈夫、大丈夫。お花の香りがとってもいいですよ。リンシ様も嗅いでみます?」
アンシアはその後も庭園のあちこちを見回しながら、感嘆の声を上げ続けた。
使用人たちには、ここにたびたび遊びに来られたらもう何も望まない、というようなことも言っていた。
そんなふうに、しばらく宴会場を忘れて散策していたときだった。
――グワァアアアアアッ!!!!!
茂みの中から黒い狼が一匹、突然飛び出してきて、私の前に立ちはだかった。
「きゃっ!!」
その狼は、まるで私を食べてしまおうとでもするかのように大きく開いた顎が見えた。
鋭い犬歯が目に入る。
私は突然の出来事に驚き、息を呑んだ。
同時に、夕焼け色の煙のような霧がもうもうと立ち込め、私の周囲を包み込んだ。
狼たちを見た瞬間、目の前が真っ白になり、何も考えられなくなった。
ただ「この場を離れなければ」という思いだけだった。
「イヴェリン!!!!!」
アンシアが喉が裂けるように叫んでいたが、その声もきちんと耳には届かなかった。
私はよろけながら迫ってくる狼たちを避けて、後ずさりした。
そして――
ポンッ―!!
小さな鳥の姿に変身して、狼を避けてひらりと飛び立った。
しかし、久しぶりの変身だったため、飛行が不安定だった。
ずっとふらふらと揺れていた。私は気をしっかり持ち、すばやく飛んで逃げた。
『逃げなきゃ、逃げなきゃ。』
狼が変身する姿を見るのは、この屋敷に来て以来、ほとんど初めてのことだ。
エクハルト邸の従者たちは皆、私を配慮して変身を避けていたからだ。
だからこそこの状況がなおさら信じられず、恐ろしかった。
飛んでいる最中にも、目から涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
後ろから誰かが叫ぶ声が聞こえたが、耳には入らなかった。
私は窓を通って邸宅の中に飛び込んだ。
しかし――
『ひ、人が多すぎる。』
宴会のせいか、邸宅内の使用人たちは皆忙しそうに動き回っていた。
ほとんどの部屋の扉が開いていたり閉まっていたりし、身を隠せる場所は見当たらなかった。
私は混乱する狼たちを避けて地下室へと下りていった。
問題は――
『あなた、本当にたくましい。』
暗い場所に来ると、前世のトラウマが一斉にぶわっと蘇ってくるようだった。
そのとき。
開いた扉の隙間から、かすかな光が漏れているのが見えた。
『あそこだ!』
私は勢いよく飛んだ。
そして開いた扉の隙間からすっと入り、箱の後ろに身を隠した。
そして「ひっ、ひっ」と息を詰めて、カーテンの端をくわえて「びええん」と泣き声を上げた。
問題は、しくしく泣くのに夢中で、扉が閉まるのに気づかなかったことだ。
アンシアは目の前の光景が信じられなかった。
「イベルリン──!!!!」
同じ一族同士であれば、獣化した状態でも誰が誰なのかをすぐに見分けられる。
だからアンシアは、目の前の狼がイベルリンの獣化した姿だとすぐに気づいた。
問題は、リンシーだった。
パニックに陥ったのか、「ひっ」と息を飲みながら後ずさりしたリンシーが、
バンッ!
変身する音と共に、どこかへ一気に飛び去ったのだった。
アンシアはリンシーを追いかけようとしたが、すばしこく飛ぶ小鳥を追うのは容易ではなかった。
結局アンシアは呆然とした表情でイベリンに尋ねた。
「どうしてそんなことをしたの?」
アンシアにはイベリンの行動が理解できなかった。
狼族が新しい一族を敵視していることは知っていたが、それでもリンシー・ラニエロは、狼族の族長ケンドリック・エクハルトが、直接エクハルトの一員になると紹介した子だった。
つまり、リンシー・ラニエロは将来エクハルトの主人になる存在だということ。
さらに、この宴会はリンシーとアルセンを祝福するために開かれた宴だった。
それなのにこんなことをしでかすなんて?
アンシアには理解できなかった。
そのとき。
バンッ!
イベリンがアンシアの前で堂々と獣化を解いた。
黒い狼は跡形もなく消え、優雅な印象の少女が姿を現した。
「ふん、あたふたと逃げ回る姿を見なさいよ。最高だわ。」
「どうしてそんなことをしたの、イベリン!」
アンシアがイルリンに詰め寄った。
困惑で固まった少女の目には、もう涙が浮かんでいた。
「はあ、あんた本当に何も分かってないのね。うちのお父様が言ってたの。ケンドリック様が『仕方なく』新一族をお嫁さんとして迎え入れたって。」
イヴェリンは得意げに話し続けた。
「宴会だって、どうしようもなく招待されたのが明らかだわ。ケンドリック様はあの子たちを嫌ってたのよ。ほんとに嫌いだったら、あの子たちを宴会場にほったらかして行ったと思う?」
イヴェリンの言葉に、アンシアは一瞬口ごもった。
確かに、リンシーとアルセン、二人だけを残して急に姿を消したケンドリックの行動は、理解しがたいものだった。
しかしながら——
「あなた……本当に何も知らないのね?」
アンシアが皮肉っぽく笑った。
アンシアの祖父は、九人の大院老のうちの一人であるトリスタンだった。
アンシアはトリスタンから、ケンドリックとエクハルトの使用人たちが「ひな鳥のお嬢様」をどれほど敬愛しているか聞いたことがあった。
アンシアはこれ以上話す気がないように首を横に振る。
「もういいわ。おじいさまとケンドリック様に全部言うから。あなたがリンシー様に無礼を働いたどころか、リンシ0様を脅かしたって!」
「はっ、アンシア。それで私が追い出されるとでも思ってるの?」
イベリンはアンシアを嘲笑った。
イベリンには確信があった。
この件が知られても、自分が罰せられることはないという確信が。
イベリンはまだ十歳だった。
しかもイベリンの家門、イライジャ家は根深い名門貴族だった。
さらに――
「“新一族の娘?噂ではケンドリック様があの子をすごく嫌ってるって聞いたわ。会議のときにあの子の名前が出るだけで顔が歪むって……”」
イベリンは父が言っていた言葉を思い出して、ふっと笑った。
この件が露見しても、自分が罰を受けることはないと思っていた。
だからイベリンは、怒りに震えるアンシアを嘲笑ったあと、その場を立ち去った。
その出来事がどんな後の嵐を呼び起こすことになるかも知らずに。









