あなたの主治医はもう辞めます！【９６話】ネタバレ

ジケルの腕をしっかりと組んでいるセリアナの姿を確認した私は、ため息をのみ込んだ。

セリアナがエルアンのそばについていた理由を聞いた後、嫉妬を鮮明に表現した私自身が恥ずかしかったためだ。

もちろんエルアンは、そのすべてが悦惚としていると言って、公爵領に戻る間ずっとニコニコしていたけど。

「本当に皇太子さまは大丈夫？」

ジェイド皇太子の安否はエルアンに内緒で尋ねなければならなかった。

エルアンは私と一緒に乗ることができなかった。

なぜなら彼は重傷を負っていたからだ。

ディエルも顔色を伺い囁きながら答えた。

「まったく何ともない。でもそれがまた君のおかげだと、四方八方みんな騒いでいるんだよ」

もし私が反乱軍だったら、リチェ・エステルはいらいらしていただろう。

「君が前もって突き出していなかったら、いくら皇太子さまの運動神経が優れていても、その場から落ちて死んでいただろうと」

「それは事実だけど、すごく負担になるわ」

「君は他のことを負担に思うべきだと思うけど」

ディエルは他の馬車でも自分を見つめ続けるエルアンの目をわざと見ぬふりをして言った。

「公爵様があなたをもっと熱烈に眺めていらっしゃる」

「うん・・・」

私は隠す必要を感じずに答えた。

「私のことが好きだからだよ」

「それは知ってた」

「女としてね」

その瞬間、ディエルが息を吸い込んだ。

「・・・身分格差はどうでもいいと？もしかして・・・」

「当然、私は隠された女として生きることはないわ。その問題は勝手に解決されるそうだから」

ディエルの顔に驚愕の色がついた。

私はゆっくりうなずいてくさびを打ち込んだ。

「恋人になろうと言われたので同意したわ」

「・・・なんてことだ」

ディルが額に手をつける。

「・・・私、この馬車から降りるときに生き残れるかな？もう公式的な恋人になったので、私があなたと一緒にいる姿を見ることができないと思いますが」

「大丈夫だと思う」

私は慎重に答えた。

「最近は皇太子様のことがもっと嫌いなようですから。なくしたい男の最優先順位は君ではないはず」

「ところで実の親探しは諦めたの？」

「そうじゃないよ」

私は窓の外を眺めながらカンシアのことを考える。

彼女の訪問を待っていたが、変数は多かった。

未来が変わってしまい、彼女が水晶玉を持てなくなることもあり、改車班のように生きて、またどこかに約束なしに閉じ込められていることもできた。

もちろん、大神女様はカンシアが真実を話してくれると言ったが、その時期をむやみに可能にすることはできない。

それで私は一応確実に大事な人から取りまとめることにしたのだ。

ある貴族家に養女として入ったからといって、家族を探せないわけではないから。

「しかし、今すぐできることは何もないわ。両親を見つけたら、その時また考えてみるよ」

「まあ・・・実の両親が貴族かも知れないからね」

ディエルは後頭部を掻きながら付け加えた。

「もしかしてどこの養女に入るか考えてあるの？今、思い出す人は・・・う一ん・・・フェレルマン子爵？」

「違うよ」

私はフェレルマン子爵家の大理石の道を思い出し、断固として答えた。

私がフェレルマンの名字を持つのはなんだか本当に娘の席を奪っているようだった。

いくら形式上だとしても、もし私が家族を持ったら、誰かの空席に代わりに入る感じは嫌だ。

「そこは本当に違う。フェレルマン子爵は代父で十分だよ」

「・・・なんだ」

ディエルはおずおずとつぶやいた。

「どうせある家の養女に入るには、フェレルマン子爵の許可が必要だよ。代父なんだから」

「形式的なだけだから、構わないだろう」

「とにかく前もって決めないで。少なくとも公爵城に着いてからゆっくり・・・」

「急ぐことがあるからって公爵城に到着することも前にそういうのを決めるよ」

私はニャリと笑いながら答えたが、ディエルは妙に決然とした表情だ。

「ディエル、あなたは実子の検査に気をつけてね」

自分のことにだけ気を使うようにという意味で、私は軽く叱った。

「責任を取る結果が出たら、しっかり責任を取ってね」

「友逹のことだってば！」

「そうそう。みんな友逹のことだと言っていたよ。それで結果はいつ出るの？」

ディエルは息を切らしながらいらいらした。

「髪の毛の検査をすべてチェックして、それで一週間？」

「その次に魔力検査と試薬検査が残ってる。私に竜の爪試薬を貸してくれる？」

私は真剣な表情を浮かべながら言った。

「友達がいいって何だよ。赤ちゃんの服もいっぱい買ってあげるよ。結婚式もちゃんと挙げるよね？」

ディエルは息苦しさに胸を打ち、結局は何かに拗ねたのか夕食を食べるまで私と目も合わせなかった。

公爵城に着くや否や、私は本格的にエルアンの治療を始めた。

手足をほとんど動かせないほど怪我をした彼は、1週間ずっと部屋に横になっていなければならない状態だ。

私は彼の主治医として彼の回復に最善を尽くす義務があった。

そのため、乱闘場となった建国祭と多くの負傷者が出た観覧塔事件は、当然優先順位で押されるしかなかった。

ただ、私のブースをきちんと撤去できず、あまりにも多くの人が怪我をしたため、フェレルマン子爵が残っている。

とりあえず、私のブースに残った濃縮試薬と急いでフェレルマンの商団から調逹した薬草で医療奉仕をするという理由だ。

『目の前で人が死んでいって、人手が足りないのが目に見えるのに、オ能のある者としてどうしてじっとしているのか』

フェレルマン子爵は腕を組んで冷淡に言った。

『面倒でいらいらするが、私があまりにも人類愛があふれる人だから仕方ない。使命感ある天オの宿命だ』

『まあ、私もそんな人だと理解はします』

人類愛と使命感でセルイヤーズ公爵城に自ら入ってきた私には、当然理解できる行動だ。

『公爵様は私に任せて気楽に奉仕してから来てください。私ももう主治医なんですから』

それでエルアンは私が専担して世話をするようになったのだ。

思索になって走ってきたイザベル奥様は「生命には支障がない」という言葉に落ち着いた様子を見せた。

私を救おうとしてこんなに怪我をしたという話をする時は不思議とドキッとしたが、彼女は「リチェでなかったら飛び込める体力さえなかった」と言って、軽く見過ごした。

実はエルアンの父だった元セルイヤーズ公爵も、「このような規模の浮上は、たびたび経験した」と話した。

「私が完璧に回復させます」

「それは信じているわ」

私はイザベル夫人にエルアンと交際するようになったという話を先に持ち出すことができなかった。

率直に言って、「平民のくせに公爵夫人の座を狙うのか」と冷ややかに変わるのではないかと怖かったからだ。

すでに決定を下した以上、そのような反対に屈するつもりはなかったが、イザベル夫人の態度が変わることを直接体感すれば、とても悲しいようだった。

エルアンは完治した後に直接お話しすると言っている。

私もやはり一応彼の回復が一番先だと思ったので、ずっとくっついて色々な治療をすることに集中した。

「大変不便でしょう？薬もたくさん飲まなければならないし・・・」

「断言するが、私の生涯で一番幸せな日々だ」

エルアンはベッドに横になって自分の体にいろいろな軟膏を塗る私をじっと見ている。

「あなたと一日中こんなに私の部屋にいてね。夢見てきた日々だ。時間が経つのがもったいない」

きっと全身が痛いはずなのに、彼の表情だけは歓喜に輝いていた。

「今日が過ぎ去っても昨日が懐かしいその感じ分かる？」

「分かりません」

「治ったら、もうこんなに一日中は一緒にいられないじゃないか。私も公爵としての仕事をしなければならないし、あなたも仕事があるから。せいぜい20時間くらいしかついていないだろう」

「20時間がせいぜいですって？」

「一緒にやりたいことがどれだけ多いか」

エルアンは全世界の顔をして私をじっと見た。

「知らなかったけど、私は恋人にはちょっと執着するタイプみたい。一見うちの母が父にちょっと執着したと聞いたが」

それを今まで知らなかったということがもっと驚いた。

私が彼の体のあちこちを見ている間、彼は私の髪に触れてため息をつく。

彼の哀れな目つきを見ただけで何を意味するのかはっきり分かる私はきっばりと首を横に振った

「過剰なスキンシップはできません。興奮すると、血液の流れに問題が生じますから」

私は唇を一度向き合って急いで離した後、本格的に治療する間、身体的接触を最小化しているところだった。

実際、あまりにも血流が速くなると、回復速度が遅くなるから。

「ところで、ディエルが言っているのですが、安全に留意できなかったフリート侯爵に謹慎令が下されたそうです。皇太子様も全然怪我をしなかったので、大きな問題にはならなかったようですが」

単なる安全事故として処理され、反乱軍とは絡まないものだった。