こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
今回は334話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
334話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 魔女狩り②
アビゲイルは唇をかみしめて目を閉じる。
ブランシュが優しく微笑む顔が、まるで歓迎するように過ぎ去った。
「私の子よ。私の娘よ。ブランシュ、君にはもっと良い世界を与えたかったのに。」
アビゲイルは目を閉じるように力なく倒れる。
同時に兵士が剣を振り下ろそうとした。
彼女の胸を狙ったその剣先が振り下ろされる寸前___、兵士から新たな叫び声が上がり、アビゲイルは恐る恐る目を開ける。
灰色の光を放つ巨大な何かが兵士たちを押さえつけていたのだ。
「狼だ!みんな後退しろ!」
森の奥から狼たちが群れをなして飛び出してきた。
10匹を超える大群が兵士たちを次々と倒し始め、動揺した捜索隊の叫び声が聞こえた。
その瞬間、狼の一匹がアビゲイルの前に飛び出してきた。
誰かが狼の背中に騎士のように乗っていた。
その後ろ姿はまるで戦士のようだ。
狼の黒い毛並みは闇夜のごとく揺れていた。
ブランシュだった。
彼女の存在は、暗闇の中で光る灯台のように人々の注意を引きつける。
公主(ブランシュ)は歯を食いしばりながら叫んだ。
「私の母から全員離れなさい!」
その叫びにより、皆の視線がブランシュに向けられる。
狼の存在だけでも恐怖に陥っていた捜索隊は、さらに大きな混乱に飲み込まれていた。
「公主様?」
「公主様が一体どうして・・・」
「女王が連れ去ったのではなかったのか?」
動揺が広がる中、アビゲイルに向けられていた殺意が少しずつ和らいでいくのをブランシュは感じた。
ブランシュは素早く飛び降り、アビゲイルのもとに駆け寄る。
そして、月明かりの中で輝くアビゲイルの姿が見えた。
彼女の顔を見た瞬間、アビゲイルは驚きのあまり立ち尽くしてしまった。
全身には黒い血管が浮かび上がり、皮膚が透けるようになっていた。
その姿を見るだけで、彼女がどれほど苦しんでいるかがわかった。
アビゲイルは震える手を下ろす。
ブランシュに最後まで良き人間としての姿を見せたかったが、結局その事実を伝えるしかなかった。
自分が魔女であることを。
愛する娘が目の前にいるのに、それでも彼女は近づくことができなかった。
アビゲイルは判決を待つ囚人のように、ひたすら黙り込んでいた。
罪人のように白髪が揺れ、息絶え絶えの状態で。
静寂の中、心の痛みが押し寄せて耳を刺すような音が響いた。
永遠のように続くこの沈黙の中、ブランシュの足音が聞こえてきた。
彼女は立ち去るようだった。
拒絶するのは当然だと思う。
アビゲイルは自分が魔女であることを知っていたから。
悲しんでいないと言えば嘘になるが、それでもブランシュがその決断を下すのは正しいことだと思えた。
無関係であることに安堵する気持ちがより強かった。
むしろ自分とは関係がない方が良いと考えた。
魔女の関係者は当然の報いを受けるだろうから。
そう考えながら目を固く閉じた瞬間、アビゲイルの身体に何かが触れた。
それは温かい感触。
「お母さん、ブランシュが来ました。」
アビゲイルは驚いて顔を上げる。
ブランシュが全力でアビゲイルを抱きしめようとしていた。
ブランシュの手は震えていた。
その震えは裏切りや恐怖ではない。
見るも無残な姿になったアビゲイルを目の当たりにしたブランシュが感じていたのは、ただ悲しみと怒りだけだった。
アビゲイルは慎重にブランシュの体を見渡した。
「ブランシュ・・・無事だったのね?」
皮膚が透けるようになっても、彼女の心配はただ一人、ブランシュに向けられていた。
自身の苦痛はブランシュを見るその瞬間に消え去っていく。
「私は何も傷ついていません。お母さん、お母さん・・・」
ブランシュが泣きながらアビゲイルを抱きしめる。
捜索隊はその様子を呆然と見つめているだけだった。
狼たちは捜索隊を噛むことなく、ただその体で制圧しているだけで、これ以上の戦闘は起きなかった。
ギデオンは歯を食いしばりながら捜索隊を睨んだ。
(今、この女を殺さないといけないのに、みんな何をしているんだ? こんなことが許されるはずがない。この機会を逃しては・・・!)
ギデオンは短剣を抜き取った。
そして、全員が茫然と二人を見ている間に、近くにいた狼に近づき、その首の後ろを狙って突き刺す。
痛みに狼がうなり声を上げ、体をくねらせた。
狼の下敷きになっていた兵士が悲鳴を上げると、ギデオンは叫んだ。
「公女も魔女だ! 公女が狼を操っている!私たちを殺しに来たんだ!」
瞬く間に血の匂いが充満し、全員の視線が一斉に集中する。
血の匂いに狼たちは牙を剥き、突進していく。
兵士たちもまた叫び声を上げながら剣を振り回した。
「だめ!みんな、やめて!」
ブランシュの叫び声が響いたが、狼たちは本能に抗うことができなかった。
互いに噛みつき、突き刺し合う様子は、暗闇の中で響く無名の哀れな声となり、まるで悪夢のような夜だ。
このままでは全員が命を落とす危険があった。
アビゲイルは苦痛を押し殺しながら、残された力を振り絞り、最後の魔力を解き放った。
黒い霧が瞬時に辺りを包み込み、人間と狼たちは互いを殺し合うかのように戦っていたが、その毒に飲み込まれ意識を失った。
それ以上の叫び声も、狼の唸り声もなくなった。
周囲が静寂に包まれると、アビゲイルはその場に倒れ込んだ。
「お母さん、お母さん・・・!」
ブランシュが慌ててアビゲイルを起こそうとする。
そのとき、血の匂いが漂う静寂の中で、サクサクとした足音が聞こえてきた。
ギデオンだった。
彼は密かに後方に隠れていたおかげで、辛うじて魔力を避けることができた。
彼はにやりと笑いながらアビゲイルに近づいてきた。
彼の短剣には、まだ乾ききっていない狼の血がこびりついている。
ブランシュを乱暴に引き離し、ギデオンはアビゲイルの首筋を掴み持ち上げた。
「ありがたいことに、君と公女が魔女だってことは皆が知っている。このまま死んでも、誰も文句を言わないだろうな。」
「殺して・・・やる・・・」
「殺す?」
彼は嘲るような笑みを浮かべる。
ギデオンの瞳は冷酷な輝きを放ち、その表情は極限の冷酷さを感じさせた。
「君が私を殺せるわけがない。今、息をしているだけでも精一杯だろうに。愚かな王座に座った者よ。」
彼の声には長年積もった憎悪が込められていた。
ギデオンは短剣をアビゲイルの首元に押し付けながら言った。
「よくも私を邪魔したな。今度はお前の娘が命を落とす番だ。その次はお前だ・・・!」
彼は狂ったように笑い声を上げたが、次の瞬間、その笑い声は悲鳴に変わる。
アビゲイルは彼の肩越しに、鋭い剣先が輝くのを見た。
ギデオンの背後にはセイブリアンが立っていた。
彼の息遣いには怒りがこもり、青い瞳はまるで炎のように燃え上がっていた。
「勝手に私の妻と娘に触れるな。」
アビゲイルは死の間際の幻覚かと思った。
しかし、それは幻覚とは思えないほどセイブリアンの体から溢れ出す力強さが鮮明だった。
どれほどの力を振り絞ってここまで来たのか、彼の息は荒く、まるで全力疾走してきたかのように震えていた。
荒い息遣いが響き渡り、彼の顔にはいつもの冷静さが失われ、汗に濡れていた。