こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
今回は341話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
341話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 再会②
ミラードはセイブリアンの補佐官として働き始めて、ほぼ10年になろうとしていた。
彼の上官は非常に厳格な人物で、自身にも、そして部下にも同様に厳しかった。
そのおかげで、ミラードは公務と私生活をきちんと区別し、規律正しい毎日を送るようになった。
セイブリアンは王国の宝であり、貴人であった。
しかし、かつてあれほど厳格だったセイブリアンが変わりつつあった。
「いつになったら出発する予定なのでしょうか?」
セイブリアンに報告を終えると、ミルードは執務室で静かに問いかける。
椅子に目を向けたが、そこには何もなかった。
侍従が慌てた様子でこう告げた。
「今朝、急遽出発されました。」
「どこに向かわれるとはおっしゃらなかったのですか?」
「おっしゃいませんでした。申し訳ありません。」
侍従の言葉に、ミラードは大きくため息をついた。
侍従が責任を負う立場ではなかった。
王の意向を尋ねたり、行動を制限したりする権利など彼にはなかったからだ。
それに、セイブリアンの行動についてはミラードも理解している部分があった。
2年前からセイブリアンは変化し始めていた。
そのきっかけは王妃の失踪だった。
ギデオンが王妃を連れ去り姿を消して以来、誰も二人を見つけることができなかった。
アビゲイルが魔女だと主張し、彼女を排除しようと訴えた大妃は、結局塔に幽閉された。
セイブリアンが沈黙を守り続けるこの状況下で、荒れ果てた土地を耕そうとする者は誰一人として現れなかった。
死して土に還るまで、そこに触れる者はいないだろう。
同時に、多くの問題が押し寄せていた。
ネルゲンが周囲の三国を統一し、帝国として君臨したのは見事な成果だった。
すべての大臣と民衆が喜びに湧く中、セイブリアンだけは血の涙を流していた。
王妃の行方がわからないまま、彼の心には深い虚無が広がっていた。
「王妃が行方不明になった時には、こんなにも大事になるとは思わなかった。」
大陸の統一が果たされ、異民族間の交流が始まるべきこの時に、セイブリアンは政務を放棄し、ただひたすらアビゲイルを探し続けていた。
まるで病にかかった人のように街をさまよう彼は、狂気に駆られているのではないかと思われるほどだった。
諦めるようにと説得する声もあったが、彼はそれを耳に入れることなく探し続けた。
「どうせアビゲイルは魔女だったのだから、彼女がいなくなったのはむしろ良かったのではないか」と考える者もいたが、セイブリアンの表情を見れば、誰もそんな言葉を口にすることはできなかった。
彼の心情は、彼女を探す他の誰よりも切実であることが一目でわかったからだ。
「わかりました。それではブランシュ公女のもとへ向かうことにしましょう。」
しかし幸いなことに、ブランシュが存在していたのは事実だった。
ミラードがいくら進言しても耳を貸さなかったセイブリアンも、ブランシュが彼の娘であると知るや否や、彼女の言葉を受け入れた。
また、ブランシュは優れた王の素質を備えていた。
若く経験も少ない彼女だったが、公女として国王代理の職務を忠実に果たしていた。
ブランシュがいなければ、国が崩壊していたとしてもおかしくないほどだ。
「公女も相当お辛いはずだ。」
アビゲイルの失踪により、ブランシュもまた大きな苦しみに耐えていた。
婚約者であるベリテがいなければ、公女も耐えきれなかっただろう。
ミラードは優しい心を持ってブランシュの執務室へ向かっていた。
しかしその途中で、宮殿の外が騒がしくなった。
窓の外を見ると、セイブリアンが帰還していた。
ローブをまとった誰かと共に。
驚いたミラードは階段を駆け下りた。
セイブリアンの顔に生気が戻ったのを見て、ミラードは胸が熱くなる感動を覚えた。
「セイブリアン殿下!おそばにおられる方は、もしや・・・?」
「そうだ。アビゲイルを見つけた。」
セイブリアンはやっと命を取り戻した人のような様子だった。
ミラードは主君が回復した喜びと、王妃が戻ったという事実に感謝しながら言葉を発した。
「王妃様。本当におめでとうございます。無事でいてくださって、本当に幸運です。」
「・・・。」
だが、不思議なことにアビゲイルは沈黙していた。
ローブをしっかりと掴んだまま、ただ下を向いている。
ミラードをはじめとする使用人たちは、何か言いたげにセイブリアンを見つめた。
その視線に気づいたセイブリアンは、少し掠れた声で答えた。
「呪いにかかって姿が少し変わったんだ。しかし、アビゲイルであることは私が保証します。」
セイブリアンはアビゲイルの肩をしっかりと抱きしめる。
そして慎重に彼女の耳元で何かをささやいた。
彼女は一瞬戸惑った表情を浮かべたが、やがて小さく息を吐いた。
震える手がゆっくりとローブを掴み、その布を引き下ろした。
彼女の顔が現れると、全員が驚愕の表情を浮かべた。
そこには、今まで見たことのない女性が立っていた。
アビゲイルの美しさはどこにも見つけられなかった。
髪の色、瞳の色、顔立ち、体型――すべてが変わっていた。
この国の人間ですらないように見えた。
ミラードは驚いてセイブリアンを見る。
彼は相変わらず幸せそうな表情でアビゲイルを見つめていた。
「準備を整えて、祝宴を用意せよ。」
王宮の広間には人々が集まっていた。
ミラードもその場にいて、衝撃を受けたまま口を開けたまま立ち尽くしていた。
(ついに陛下はおかしくなってしまったのか。)
思わずそう考えてしまった。
陛下は、あの影に取り憑かれたかのように、今度は見知らぬ女性を「王妃」だと主張していた。
一体何に取り憑かれたのだろうか?
「・・・皆さん、お元気でしたか?」
アビゲイルがぎこちなく挨拶をする。
しかし、その声に返ってくる視線はただ冷淡なものばかりだった。
彼女は自分が誰にも気づかれないだろうと予想していたが、実際にその冷たい態度を目の当たりにすると、思った以上に心が痛んだ。
2年ぶりに故郷に戻ってきたが、依然として外部の人間のように感じられてならなかった。
ちょうどその時、2階の階段から軽やかな足音が聞こえてきた。
大きなガラス窓を通して差し込む陽光が、細身の女性のシルエットを照らしていた。
その姿に、アビゲイルは思わず目を奪われた。
その瞬間、彼女は我を忘れて崩れ落ちた。
2年ぶりだった。
しかし、たとえ20年、あるいは200年が経とうとも、彼女を見分けられないはずがなかった。
自分の娘を見間違えることなどあり得ない。
そこには、いつの間にか幼さを脱ぎ捨てたブランシュが立っていた。
「ずいぶん大きくなったね。元気そうだ。本当に会いたかった、私の子供。」
ブランシュがこの2年の間にどれほど成長したのか、その変化を目の当たりにしたセイブリアンの胸中は、驚きと感動で溢れ返った。
「ブランシュ。お母さんが帰ってきたよ。」
セイブリアンは優しく、しかし緊張した声でそう告げる。
ブランシュは黙ったまま、アビゲイルをじっと見つめ続けた。
やがて、無言のまま一段、また一段と階段を降り始めた。
その足取りは次第に速くなり、ついには階段を駆け下りてアビゲイルの胸に飛び込んだ。
ブランシュはアビゲイルをぎゅっと抱きしめた。
喜びと感情があふれ出した。
「お母さん!お母さん・・・!会いたかったです。本当に、すごく会いたかった・・・。」
ブランシュは心の奥底から絞り出すように泣いた。
この瞬間だけは、彼女は公国の大公代理ではなく、ただの幼い娘にすぎなかった。
「ごめんね、お母さんがごめんね。あまりにも遅くなってしまって、ごめんなさい・・・。」
アビゲイルは夢中でブランシュの額にキスをし、娘をしっかりと抱きしめた。
母と娘が再会を果たす光景を目の当たりにして、周囲の使用人たちは凍りついたような表情を浮かべていた。
(ブランシュ公女様?いや、どう見てもあの女性は別人だ・・・)
誰もが声を失い、状況を飲み込めないまま呆然としていた。
そのとき、ブランシュに続いて降りてきたベリテがアビゲイルを見つけ、足を止めた。
アビゲイルとベリテの目が合った。
ベリテは以前より少し背が伸びていた。
その顔を見たアビゲイルは言葉にできない懐かしさと感情に襲われた。
同じくベリテも感極まり、涙を浮かべながらアビゲイルに駆け寄った。
階段を降りていた途中、ベリテは不意に立ち止まり、周囲を見渡した。
王妃を囲む人々の顔には驚きも感動もなく、まるで見知らぬ来訪者を眺めるかのような視線が投げられていた。
ベリテは苛立ちを抑えるように口を固く結び、低い声で口を開いた。
「この女性が義母だと? 義母と似ているところが一つも見当たらない。」
その言葉に、ロビーにいた全員が同意するような視線を投げかける。
ベリテは冷たい目つきで彼女を見据え、言葉を続けた。
「あなたが本当にアビゲイル王妃様であるというのなら、証明してみせてください。」
「証明・・・する方法はありませんが。」
「王妃だけが知る話でも何でも構いません。」
アビゲイルはベリテの声に、何かしら切実な思いが込められていることを感じ取った。
そしてその瞬間、彼女はある程度この状況を理解する。
ここで自分の潔白を証明しなければ、疑念だけが残るということを。
今、人々は証拠を求めていた。
どんな話をすればよいのか。
アビゲイルは周囲を見渡しながら、いくつかの見覚えのある顔を見つけた。
「あそこにいるのはノマです。」
ノマはわずかに緊張した面持ちで佇んでいた。
アビゲイルは古い記憶をたどりながら言葉を続けた。
「彼女は私の侍女で、長い間私を支えてくれました。魔女裁判の際にも、私の無実を証言してくれたのです。」
証言台に立つ姿を堂々と思い描いた彼女の姿は、今でも鮮明に残っていた。
アビゲイルは次に、隣にいた人物に視線を向けた。
そこにはクララがいた。
「クララはランジェリーのデザインに興味があって、デザイナーになりたいと願っていたのを、私は手助けしました。デザインの方法を教えてあげるつもりだったのに・・・。」
気がつけば2年が過ぎてしまっていた。
伝えたいことはたくさんあったのに。
クララは驚いた目で彼女を見つめていた。
人々がざわつく中、一人の女性が前に出てきた。
今のアビゲイルとは対照的に、非常に美しい女性だった。
「本当にあなたが王妃様なのですか?」
その女性はカリンだった。
彼女は猫のような目つきでアビゲイルをじっと見ていた。
アビゲイルが呆然としていると、カリンはじりじりと近づいてきて、荒々しく王妃の手首を掴み引っ張る。
すると、カリンはアビゲイルの手のひらを確認した。
そこには火傷の痕が深く刻まれていた。
カリンは驚愕したような表情を浮かべた。
唇が震え、次第に涙がこぼれ始めた。
「王妃様・・・王妃様・・・どうして今になっていらっしゃったのですか・・・。」
「カリン、私のことがわかるの?」
「この手をどうやって忘れられるというのですか。この傷をどうやって忘れるというのですか。一度たりとも忘れたことなんてありません・・・」
カリンはその手に口づけをしながら涙をポロポロとこぼした。
その様子を見てクララとノマもそばに近寄ってきた。
二人とも涙と懐かしさに満ちた目で微笑んでいた。
「どうぞお入りください、王妃様。」
「本当にお会いしたかったです、王妃様。」
やっと呼吸ができるようになった気がした。
ようやく帰るべき家に戻れたような感覚だった。
私の人々・・・本当に会いたかった私の大切な人々。
何人もの人々に囲まれながら穏やかに微笑む中、アビゲイルはふと周囲に視線を向けた。
そこには多くの視線が注がれていた。
半信半疑の視線、疑念のこもった視線、そして同情の色を帯びた視線。
前世でよく見かけた眼差しだった。
自分を軽んじ、侮蔑するか、嘲笑うような視線。
アビゲイルは思わずハッとして杯を取り落とした。
人々の視線に映る自分の姿が怖かった。
杯を手に取っても、依然として注がれる視線が耐えがたかった。
その空間はあまりにも明るく、残酷で、夏の日差しのようだった。