こんにちは、ちゃむです。
「乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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163話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 誰も傷つけない結末を目指して⑦
遅れて現れたメリーは、ダリアを引き寄せて抱きしめ、深い息をついて言った。
「ごめんなさい。アーゲルを守れませんでした……。」
彼女が状況を整理し、地下監獄を一時的に留守にしていた間、ほんの一瞬の隙に侵入者がアーゲルを殺害した。
これは、ルウェインが会議室に入った後に起きた出来事だ。
「まあ、起きたことは仕方ありません。いずれにせよ、彼の利用価値はすでに尽きていましたから。」
メルドンは彼女を慰めた。
メリーはすぐに再び後方支援のために去っていった。
状況は依然として忙しく、目が回るような状態だ。
ダリアは去る彼女の背中を長い間見送った。
もしメリーが危険に陥ることを事前に知っていたならば、アセラスの霊魂を救うことができたかもしれないという考えが何度も浮かんできた。
すでに過ぎたことはどうしようもない。
まず彼女を欺いたのはアセラスだ。
そう考えてみても、多少の苛立ちは残った。
「お嬢様、お気をつけください。」
メルドンは彼女の肩をさらに引き寄せる。
ダリアは怒りを抑え、精神を落ち着けた。
そうだ、彼女を守るために尽力するこの人物の前で、感謝や喜び以外を感じている場合ではない。
状況は非常に悪化していた。
メルドンはダリアの肩を片手で抱えながら素手で戦った。
剣や槍も彼の力には太刀打ちできず、すべて粉々になった。
彼の体がわずかに揺れるだけで、周囲の空気が震え、敵兵が次々と吹き飛ばされていった。
しかし、それでも状況が不利である理由があった。
ダリアの視線がどこかに急に止まったのだ。
「メ、メルドンさん!あそこ!」
彼女は指差しで何かを示した。
メルドンは急いでダリアを抱え込み、その背を覆った。
パン! パン!
メルドンの背中に数発の銃弾が飛び込んできた。
身体強化のおかげで体内に貫通することはなかったが、それでも痛みが消えるわけではなかった。
彼は歯を食いしばった。
「おお、ちくしょう。これ、結構痛いな。」
すべての信徒が肉弾戦ばかりを繰り広げているわけではない。
むしろ、潜んでいる狙撃手や予測不能な場所から飛んでくる矢のほうが致命的だった。
彼らは執拗にダリアだけを狙った。
そうすればメルドンが彼女を守るために攻撃を代わりに受けるしかないことを知っていたからだ。
ダリアは驚いてメルドンの腕をさらに強く掴んだ。
気力が戻ると、メルドンの顔の緊張がわずかに緩んだ。
彼は周囲のテーブルを掴み、飛んできた銃弾の方向に投げつけた。
何かが砕ける音がした。
しかし、狙撃手が死んだ様子はなかった。
彼らがもし身体強化を使用していなかったら、メルドンは数百人を相手にしても独りで対処できたかもしれない。
だが、彼らは超越者の唯一の弱点を握っていた。
相手にするのが厄介な敵だった。
「………」
ダリアはメルドンの身体よりも心が先に消耗していくように感じた。
もう誰も彼らを助けられないと分かっているから、なおさらだ。
ヒーカンとブルーポート公爵はまだ神聖帝国のゲリラ軍を相手にしており、アドリシャとルウェインはマナ塔に共にいてアセラスに対して足枷のように縛り付けられているようだった。
さらには、セドリックが作った魔力の防御壁も徐々に消耗していた。
メルドンが彼女を振り返った。
「セドリック様が早く来てくれないと困りますね。魔法具はもう使い切ってしまったのですか?」
「ええ、残っているのは……」
ダリアは残された一つの魔法具を取り出して見せた。
メルドンはそれを確認し、安堵のため息をついた。
「幻覚の魔法ですね。持続時間も数秒間で、一つの対象だけにしか効果がありません。大して役には立たないでしょう。」
ダリアは険しい表情で護符を握りしめた。
そのとき、彼女は剣の刃や銃弾が二人に向かって飛んでくる中、他とは異なる動きをする一人の人物を目にした。ダリアの目が見開かれた。
『あの人がなぜここにいるの?』
その瞬間、メルドンは彼女の背後に飛んでくる一つの武器を振り払おうとした。
だが、彼の両腕の防御壁はすでに使い果たされており、彼が唯一できたことは両腕を広げてダリアを守ることだった。
「……くそっ。」
しかし、どうしようもなかった。
メルドンは罵声を上げ、ダリアのもとに急いだ。
剣を持つのは、ダリアと同じ灰色の髪を持つ若者だった。
その剣がメルドンの腕を貫通する。
瞬間的に、メルドンは体内に入り込む強烈な衝撃を感じた。
魔力と衝突して精神を揺るがす逆流する力。
ダリアが一時的に伝えた精妙な気があったため、この程度は耐えられた。
しかし、その力そのものよりも、僅かな不整合が問題だった。
その間に灰色の髪の男がダリアの首を掴み、剣を彼女の首に当てた。
剣にはメルドンの血がまだ滴り落ちていた。
血の匂いが鼻をついた。
一瞬の沈黙が訪れた。
灰色の髪の若者が嘲るような笑みを浮かべ、口を開いた。
「ねえ、俺も気分が悪いんだよ。取引しようぜ。この女はちょっとだけ俺たちに貸してくれ、お前は命拾いするってのはどうだ?」
「ははっ、犬が人間の言葉を話すとはな。」
メルドンは嘲笑的に笑う。
全くひるむ気配はない。
青年は冷静に言葉を続けた。
「で、どうしますか?女は私の手の中にいるんですよ。」
「……。」
「私たちだって正気を取り戻した教皇だけを連れて、無事に帰りたいだけです。どうかお願いです、助けてください。」
ダリアは毅然とした態度で答えた。
「それなら、あなたたちは私を殺すことができませんね。私がアセラスを救う唯一の鍵だと分かっていますから。」
青年は鋭い声で怒鳴り返した。
「口を閉じろ。あなた一人のせいで私がどれだけ苦労したかを思えば、今すぐにでも殺したい気分だ。」
「……。」
「私が言ったのは、ここでの偽善者ではなく裏切り者を始末するってことだったのに……。」
ダリアは彼の剣に付いた血をちらりと見た。
裏切り者というのなら、それも構わない。
ダリアは、メリーが一時的に席を外した間に監獄で命を落としたアーゲルのことを思い出していた。
「……アーゲルを殺したのですか?」
「はい。忌まわしい裏切り者の命を奪いました。これでそのことでお嘆きになるおつもりですか、お嬢様?」
「……。」
『結局、利用され続けて死んだのね。』
ダリアは涙を見せなかった。
彼女は以前に他の人々の中に隠れていた一人の人間を思い出した。
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