できるメイド様

できるメイド様【215話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「できるメイド様」を紹介させていただきます。

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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【できるメイド様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「できるメイド様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となっておりま...

 




 

215話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 決死⑤

「……!」

突然立ち止まった少年は顔を上げ、驚いたように声を出した。

「それは……どういうこと?兄さん……いや、陛下を治療するって?」

マリは揺るぎない声で答えた。

「はい、私はヨハネフ3世陛下を治療することができます。」

少年大公ステファンは、信じられないという表情を浮かべた。

それは、誰もが手をこまねいていた病だった。

だが、それを治療できると?

その瞬間、ステファンの頭にはモリナ女王に関する噂がよぎった。

無数の奇跡を成し遂げた聖女!

東帝国で得た名前「ヒルデルン」として知られるその人物は、計り知れない能力を持つと言われており、信じがたい技術の持ち主だという。

かつて重病を患っていたクレオアンの大貴族ハワード侯爵が彼女に治療を受けたことは、遠い異国の有名な話だった。

(奇跡の聖女と言われるモリナ女王なら?もしかして兄上の病も治せるのではないだろうか?)

自分でも知らずに唾を飲み込んだステファンは、驚きに目を見開き、幼さの残る表情を浮かべた。

「どうして君の言葉を信じることができる?君は私たちの敵であるクローアンの王なのに?」

「私は西帝国を敵対しようとしたことはありません。戦争を始めたのは西帝国です。私たちの王国民を先に害したのは、あなたたち西帝国なのです。」

マリの冷静な言葉に、少年大公は言葉を失った。

「それは……兄上はクローアン王国を攻撃する考えなど持っていなかった。クローアン王国を攻撃したのは、ストーン伯爵、彼の独断だ。」

少年は視線を床に落としながら言葉を続けた。

「もし兄上が健在だったなら、ストーン伯爵は勝手な行動をとることなどできなかっただろう。」

マリはその言葉に同意した。

ヨハネフ3世が唯一ストーン伯爵を抑えることのできる人物だった。

彼が倒れたからこそ、ストーン伯爵が動き出したのだ。

乱暴な行動を取ることもなかっただろう。

「兄上が予想以上に急速に健康を害してしまったため……」

少年大公は拳を握りしめ、震えていた。

ストーン伯爵の野望を止められなかったことに怒りを覚えているようだった。

マリはじっとその様子を見つめ、口を開いた。

「ステファン大公、私は元々ヨハネフ3世陛下を治療するためにここに来たのです。いえ、私がここまで足を運んだ理由は陛下を治療するためです。」

「どうして?」

信じられないという声で、マリに問いかけた。

「この戦争を確実に終わらせられるのは、ヨハネフ3世陛下しかいないからです。」

「……!」

「私はただ善意でヨハネフ3世陛下を治療しようとしているわけではありません。陛下を生かし、直接停戦の宣言を受け取り、この戦争を終結させるためなのです。」

ステファン大公の目に驚きが浮かんだ。

考えもしなかった展開に戸惑っているようだった。

誰も思いつかなかった話だ。

「陛下を助けて、直接停戦宣言を受け取るというのか?」

マリはしっかりと頷いた。

ヨハネフ3世を治療すること。

それが彼女の考えた計画の最後の目標だった。

ただ首都を占領したからといって戦争が終わるわけではない。

戦争を確実に終わらせるためには、ヨハネフ3世を助け、停戦宣言を受け取らなければならなかった。

「私はクローアン王国のためにヨハネフ3世陛下を治療しようとしているのです。ですから、どうか私を信じてください。」

「……。」

ステファン大公は悩ましい表情を浮かべていた。

城門を開けた後に言葉を翻したらどうなる?

それは敵が首都を超えるまでの猶予を与えるだけの結果となるだろう。

少年大公はモリナの顔を見つめた。

慈悲深い印象の外見。

彼女は信頼できる人物に見えたが、それでも容易には信じられなかった。

『どうすればいい?』

政治経験の乏しい少年大公はヨハネフ3世陛下を治療するべきかどうか、決めかねていた。

ヨハネフ3世なら、この瞬間にどのような決断をしただろうか、と少年大公は考えた。

その時、ヨハネフ3世の声が響いた。

「気に入った女性ができた。」

「それは誰ですか、兄上?」

「マリ・フォン・ヒルデレンだ。クローアンのモリナ女王だ。」

ステファン大公は言葉を飲み込んだ。

その少女はヨハネフ3世が愛した女性だ。

兄上なら、彼女を許すのだろうか?

「いいだろう。ただし条件がある。」

「条件とは何ですか?」

「城に入るのはお前とキエルハンの随行者だけだ。それ以外は認められない。」

「……!」

隣に立っていたキエルハンは、言葉を失った表情を浮かべていた。

二人だけで城に入った場合、何が起きるか分かるのか?と少年大公は続けた。

「帝国の名誉を賭けて、君たちの安全を守る。治療が終わるまで、誰一人として君たちに指一本触れさせない。そしてもし君が本当に兄上を治療し終えたなら、無意味な血が流れることなく城門を開け渡そう。これは帝国の第一皇位継承者である私、ステファンの名において約束する。」

キエルハンは困惑した表情でマリを見つめた。

「殿下、それはあまりにも危険です。」

正直、彼はその提案に従いたくはなかった。

軍がそのような危険を冒さなくても、彼らの戦力で城を攻略できるからだ。

しかし、マリは毅然とこう言った。

「大丈夫です。シルト騎士団が城外に待機している限り、彼らが手を出すことはできません。」

マリは少年大公を見つめた。

「ステファン大公、あなたの提案に従います。今すぐヨハネフ3世陛下のもとへ案内してください。」

こうしてマリとキエルハンは、ヨハネフ3世のもとへ案内された。

「陛下は皇宮の奥の部屋におられます。」

かつてヨハネの親友であったロイスが告げた。

「陛下の容態はどうですか?」

マリの質問に、ロイスが答えた。

「芳しくありません。戦争の最中から急速に悪化し、現在は意識が全くありません。」

彼は慎重に質問を続けた。

「私はあなたの力をよく知っています。しかし、本当に陛下を治療することが可能だと思われますか?」

マリは一瞬黙り込み、そして言った。

「治療できるよう、全力を尽くします。」

毅然として話したものの、マリ自身も確信はなかった。

彼女が直面している病がもし重篤なものであれば、誰であれそれを治療できると自信を持つことはできない。

それほど困難な病だったのだ。

しかし、マリは全力を尽くそうと心に決めた。すべての人のために。

「ここです。」

扉を開けると、暗い空気が押し寄せてきた。

部屋の奥には衰弱した容貌の男性が横たわっていた。

マリは冷静を装い、彼の容態を見て予想以上に悪いことを理解した。

『ヨハネフ3世がこんな姿で横たわっているなんて。』

ヨハネフ3世は、かつて彼女にとって最大の敵であった。

しかし、目の前の彼の死に近い姿を目にすると、敵意や憎悪よりも同情と複雑な感情が湧き上がった。

「クローアン王国のモリナ医師です。陛下の主治医であるガルトと申します。」

西帝国の医師ガルトが彼女に敬意を表した。

彼女がヨハネフを治療するために来たという話を聞いた彼は困惑した表情を浮かべた。

「医師として、クローアン王国で名高い技術をお持ちだと聞いております。しかし、残念ながら陛下の病状は治療不可能です。」

その時、ガルト医師は慎重な声で言った。

「不用意な治療は陛下の症状をさらに悪化させる可能性があります。」

マリは彼の言葉の意味を察した。

つまり、下手に手を出すべきではないということだ。

 



 

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