こんにちは、ちゃむです。
「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

86話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 母親
メロディは、どうしてクロードがショッピング中毒になったのか分かった気がする。
ショッピングは良いものだった。
お母様に呼ばれて背筋が凍るような未来を予感していても、目の前にキラキラした素敵な商品が現れれば、心の平和が戻ってくる。
もちろん無茶な消費をするのは依然として大変だったが、クロードは次のような言葉でメロディの気持ちを楽にさせてくれた。
「メロディ嬢は私のせいでここまで来たのですから、費用の面は当然すべて私が責任を持つべきでしょう。」
クロードは、正当とは言いがたい主張でメロディをなだめ、負わせた責任と補償を「高貴なショッピング」で確実に果たしたいと思っていたようだ。
メロディの視線が留まり、ほんの少しでも気に入ればすぐに「買おう」と言って買い物をした。
そして、彼らが首都に到着した頃にはメロディの身長の二倍はあろうかという長い注文書が完成していた。
こんなに素敵なものをたくさん手に入れたのだから、メロディは「これだけあれば、お母さんにどれだけ叱られても大丈夫かも」と思ってしまう。
……もちろん、それは全て大きな勘違いだったけれど。
「……どうしてそんな風に思ったんだろう。」
メロディは公爵家の屋敷の玄関で立ち尽くしていた。
曇った空に包まれた暗い夜。
使用人の姿は一人も見えない玄関先で、彼女は嗚咽した。
ようやく現実味が湧いてきたのだ。
あれほど堂々として見えたショッピングも、今となっては何の意味もないように思えた。
たとえそれがどんなに楽しかったとしても、近づいてくる暗い未来の前ではやってあげられることはなかった。
さらにメロディはまたもや現実に引き戻された。母に叱られている間、あのショッピングリストが心の支えになるとも思えなかった。
「そんなに怖がらないでください。」
馬車の音が遠ざかった後、クロードが慰めるように近づいてきた。
「でも坊ちゃんだって、今着くってあらかじめ連絡を入れなかったじゃないですか。それはきっと、叱られるのが怖かったからですよね?」
メロディの言葉が的を射ていたのか、クロードは曖昧な笑みを浮かべただけだった。
「僕もヒギンス夫人は怖いですから。」
「一晩中叱られるかもですね?そんな気がしません?」
「そうだね。もしかしたら明日の夜までずっと叱られるかも。」
そうだとしても、彼らがいつまでも玄関前に立っているわけにはいかなかった。
ちょうど今ごろ、馬車が庭園に到着したという知らせが邸内に伝えられているはず。
誰かが彼らを迎えるために慌ててこちらへ向かってくるようだった。
「とりあえず中に入ろうか。」
クロードはドアノブを握りながらそう言った。
しかしそのドアが開けられるものか疑問に思い、彼は数秒間そのまま固まっていた。
「ぼ、坊ちゃん?」
メロディが呼びかけると、彼は深く息を吐きながら彼女に片腕を差し出した。
「中に入れば怖いことが待っているのは間違いないけれど、メロディ嬢。よかったら、僕に“応援のハグ”をくれませんか?」
その切実なお願いに、メロディは冷めた目で彼を見つめた。
こんな状況でもそんな冗談を言う余裕があるのかと思いながら。
「この世に“応援のハグ”なんて存在しません。仮にあるとしても、坊ちゃんにはしてあげません。」
彼は「どうしてもっと境遇が悪くなったんだろう」とつぶやきながら、仕方なくドアノブを回した。
その大きな扉が開く微かな音が聞こえると、メロディはなぜか目をぎゅっと閉じた。
あの向こうには、母の恐ろしい顔が待っている気がしたからだ。
「……」
しかし開かれた扉の向こうからは、特に何の気配も感じられなかった。
彼女はそっと目を開き、クロードの後について行った。
扉の隙間から見える邸宅の中は、暗かった。
もちろんある程度の間隔で灯された灯りはあったが、月もない夜を明るく照らすには不十分だった。
「まだ誰も…… 出てこなかったようですね?」
「ええ、そんな感じですね。」
二人はこっそりと邸宅の中に入る。
まるで他人の家にこっそり忍び込むように。
そのあと、一緒に大きな玄関の扉を閉めた。
バタンと閉まり、しばらくの間静寂が続くと、二人は深く息を二度ついた。
無事に中へ入れただけで少し安心したのだ。
「お戻りになられましたか。」
だが、すぐ後ろから聞こえたピシッとした挨拶に、彼らは背筋がぞくりとした。
振り返らなくても、その声の主が誰なのかすぐに分かった。
間違いなく、ヒギンス夫人だった。
しかも、とても怒っているヒギンス夫人。
クロードとメロディは、あたかも示し合わせたかのように同時に彼女の方を向いた。
「ヒギンス夫人。」
「……お母様。」
夫人は、ほぼ床まで垂れた蝋燭を手に持ち、二人をじっと見つめていた。
その冷たい視線に、彼らは思わず背筋を伸ばして深くお辞儀をした。
ついに、裁きの時が来た。
メロディがどれほどの罰を受けることになるのかとても想像もできなかった。
いつの間にかコート掛けに手をかけたその手が、少し震えていた。
「時間ね。」
ついに夫人の最初の一言が聞こえた。
今が何時だと思って入ってきたのか、という意味の言葉。
それも怒りもせず、そこから叱り始めるのか。
メロディは何か言われる前に、まずは素早く謝らなければと考えた。
「……遅くなってしまいましたから、中に入ってください、坊ちゃま。」
だが、母の思いがけない言葉に、メロディは自分でも知らずに首をぱっと上げた。
聞き間違いかと思ったからだ。
すぐに夫人もメロディを見て首をかしげた。
目が合った瞬間、罪多き娘は驚いてまた体をすくめた。
「あなたも早くそうしなさい、メロディ。」
「……えっ?」
メロディは、自分でも知らずにそう尋ねた。
背中をバシッと叩かれながら「この正気を失ったお嬢さんめ! どこだかもわからない場所についていくなんて!」と嘆かれるのだろうと思っていたのに、ただ中に入って寝てしまうなんて。
「では。」
ヒギンス夫人はクロードに深くお辞儀をすると、そのまま自室へと戻っていった。
彼女の反応が予想外だったのは、クロードも同じだったようだ。
二人はしばらくの間、玄関の前で呆然としていた。
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次の朝、メロディは明け方に目を覚ました。
『考えてみれば、お母様があんなふうに反応されたのは当然だよね。』
ヒギンス夫人にとって、メロディの食事と睡眠は非常に重要なことだった。
だから遅い時間に叱るよりもまずは落ち着かせなければならないと考えたのだろう。
『今日は私を呼んで、ひどく叱るつもりだわ。』
そう考えるとまた怖くなったが、メロディはしっかりと心を引き締めた。
叱られることをやってしまったのだから仕方がないと。
彼女はきちんとした服に着替えて、部屋の中で静かに母の呼び出しを待っていた。
すると間もなくヒギンス夫人の侍女がやってきた。
「お嬢様。」
来るべき人が来たのだな、とメロディは背筋を伸ばして彼女を迎えた。
「はい。」
「ヒギンス夫人は——」
もうすぐ「お嬢様をお呼びです」という話が聞こえてくるはず。
緊張したメロディは両手をしっかりと握り締めた。
「今朝早く外出されました。お嬢様には先に食事を済ませてほしいとのことです。」
「え……?」
予想とはまったく違う話に、メロディは頭が真っ白になる。
「えっ、外出って……どこへですか?」
「目的地は特におっしゃっていません。ただ、必要なものがあるようです。お食事はどこでなさいますか?」
「できれば、母を待ってから一緒に……」
「それは絶対にダメだとおっしゃっていました。決められた食事時間を守れなくなるからと。」
メロディは少し迷ったが、最終的には自室で一人で食事をすると答えた。
もちろん心の中では、ロゼッタに早く会いたかった。
けれど、母に叱られることなく楽しく過ごすには、今は我慢すべきだと思ったのだ。










