こんにちは、ちゃむです。
「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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5話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ⑤
メロディは夜明けに目を覚ました。
昨夜の雨音が窓外で騒がしかったが、今では完全に止んで静寂が訪れていた。
メロディは眠い目をこすり、しばらくまばたきした後、久しぶりに『公爵令嬢』の第1章の内容を思い出した。
奴隷商人が自分の娘がどこにいるのかと必死に探し出そうとしたが、公爵はそれを許さなかった。
その後、奴隷商人は連れ去られ、極刑を免れなかった。
同時に、今日の朝、ロレッタは非常に豪華な部屋の一角で眠りから覚め、まだぼんやりとしていた。
そして侍女たちが彼女のかわいい頬に触れながら幸せそうにしている場面が思い浮かぶ。
その後、ついに公爵が現れる。
彼は、自分の娘に勝手に触れる侍女たちに怒り、ロレッタの腹から「ぐるる」と音がすると、2倍の怒りを見せる。
その一件で、自然とロレッタは父親を少し怖い人物だと考えるようになる。
まぁ……結局のところ、彼らはお互いに愛し愛される親子になるのだが。
メロディはベッドから降り、布団を整える。
そして壁にかけていたワンピースを手に取り、着た。
昨日の雨に濡れたせいで少し湿っている。
『家に戻って服を着替えないと。』
今なら誰もいないだろうし、医師も自分の行動を止めたりはしないだろうと彼女は思った。
厨房に出ると、朝一番にパンを買ってきた医師がいた。
メロディはその姿がまるで「お母さん」のように見えると思った。
それも童話に出てくる素敵な母親のようなイメージだ。
「起きたのかい、メロディ。」
「おはようございます、先生。」
「顔色が良くなって安心したよ。」
メロディは少し照れながら彼女を手伝い、食器をテーブルに並べた。
「考えたんだけどね。」
医師はメロディの前にパンを置き、慎重に話を切り出した。
「この家で一緒に暮らしてみないかい?」
「……え?」
「知ってるだろうけど、私の息子は騎士になるって出て行ったんだ。部屋がひとつ空いているし、君がここにいれば私が面倒を見るのもずっと楽になるだろう。」
彼女の顔には息子への心配が一瞬浮かんだ。
家を出た息子が必要以上に悪い道に進まないか、という気持ちが伺えた。
たとえ連絡がないと言っても、その事実はいつも心を苦しめているようだった。
「イサヤは……。」
まだ何の音沙汰もないのですか?
メロディはそう尋ねようとして、途中で言葉を止めた。
彼女の表情を見れば、答えが分かる気がしたからだ。
「悪いイサヤね。こんなに良いお母さんに一度も連絡しないなんて。」
メロディはイサヤのことを思い浮かべながら、いたずらっぽく微笑み、少し眉をしかめた。
「私の息子のことは心配いらないよ、メロディ。今は君が保護されることだけを考えていればいい。」
「私は家に帰っても平気です。」
「それは難しいね。」
少女の母親は奴隷商人で、当然ながら、良からぬ人々と関わることも多かった。
彼らは子供たちにも厳しく接しており、メロディが一人になったらどんな酷い目に遭うか分からなかったのだ。
「君にはまだ保護が必要だよ。ここにいる方がきっと安全だ。」
そう言いながら、彼女は重要な条件を一つ付け加えた。
「もちろん、君が嫌でなければの話だけど。」
「嫌では……ないです。」
メロディは、小さく割ったパンのかけらを置き、彼女に向かってお辞儀をした。
「ご心配いただいて、そのように言っていただけるなんて、本当にありがとうございます。」
「いや、そういうことではない。私はとても真面目な医者だからね。」
医者は少し照れたのか、妙にそっけない態度で視線を逸らした。
「少し考えても大丈夫でしょうか?」
「うん、こういうことは急に決められるものではないからね。」
「そして、食事が終わったら家に戻らないといけない気がします。服も着替えなきゃいけないし、また……。」
「いくつか整理しなきゃいけないことがあるだろうね。でも家の前に立派な服を着た人が見えたら、近づかずにここにすぐ戻ってきなさい。分かった?」
温かな心遣いに、メロディは軽く頷き、食事を終わらせた。
・
・
・
少女は雨が止んで晴れ渡った空の下を歩きながら、家へ戻る途中、母親のことを考えていた。
おそらく母親は元の話の通り、厳しい判決を受けるだろう。
それでも母親はメロディにとって唯一の家族だ。
そんな状況が訪れることを予測していても、何もできなかったことが少し心に刺さった。
もちろん、母親はメロディの声に耳を傾けることはなかったのだから、どうしようもなかったが。
小さくため息をついたメロディは、これからどうするべきか悩み始めた。
医者の提案はとても良いものだ。
村で尊敬されている彼女を追随することは、明らかに大きな利得になる。
奴隷商人の母親に従うよりもはるかに良い。
だが、彼女の心の片隅にはどこか奇妙な感情が流れていた。
未練……と呼ぶべきだろうか。
可愛らしかったロレッタに、どうしてこんなにも心を奪われてしまうのか。
あの子をもっと見守りたいという考えが浮かぶとは。
それは、あの子の未来を知っているからではないだろうか。
家族との関係に悩むこと。男主人公との出会いで傷つくこと。
悪い連中により身体を壊されたり、毒を盛られたりすること……。
大切な相手には良いことが起こる分、悪いこともたくさん起こると考えると、心配で仕方がなかった。
どうしてここまで好きになってしまったのだろうか。
そのような疑問に続いて、自然に思い浮かぶ瞬間があった。
『赤ちゃんのことは心配しないで。お姉さんが全部やってあげるから!』
そっと頭を撫でて優しく抱きしめてくれたあの子。
メロディは本当にいい子だった。
母親もしてくれなかったことを、その小さな子がしてくれた。
それも心の底からの純粋な気持ちでしてくれたことが、とても甘く感じられた。
その楽しかった瞬間を思い出すと、自然に笑みがこぼれた。
これから先、つらいことがあったとしても、きっとこうした出来事を思い出すだろう。
まるで隠しておいたキャンディをこっそり取り出して味わうように。
メロディはそう考えると、ロレッタに対する感謝の気持ちが新たに湧いてきた。
永遠に溶けない甘いキャンディの贈り物をもらったのだから。
「私ももう少しうまくやれたら良かったのに。」
最後に目に入ったのは、割れた器の破片で切れた小さな傷だった。
ほんの些細な傷であっても、それがかけがえのない記憶として心に刻まれた。
もっと良いことをたくさんしてあげられたらよかったのに。
家の近くに到着した。
メロディは一旦足を止め、周囲を見回した。
医者が言っていたような、良い服を着た人がいないかを確認した。
幸いにも、周囲には誰もいなかった。
静かな雰囲気の家は、変わらずそのままの状態で佇んでいた。
メロディは自分の胸が大きく鼓動するのを感じながら家に向かって歩いた。
堅く閉じられた木の扉の前で、一瞬足を止めることもあった。
おそらく、家がすっかり空っぽになっている現実を目にする瞬間、自分が深く傷つくことを知っていたからだろう。
少女は目をぎゅっと閉じ、扉を押して開けた。
馴染みのある家の匂いが鼻をくすぐり、彼女はゆっくりと目を開けた。
いつもと変わらない景色が目の前に広がっていた。
おそらく、母親は特にどこかへ行くこともなく、ここに留まっていたのだろう。
食卓には彼らが食べかけた夕食が残っていた。
幸いなことに、割れた器は誰かが片付けてくれたのか、そのまま放置されていなかった。
『……』
そして、沈黙。
『本当に行っちゃったんだ。』
そう思うと、メロディの目から思わず涙がこぼれた。
昨日ロレッタを置いて医者の家に駆け込んだ自分のせいだ。
緑色の服の袖で涙を拭ったが、溢れる涙を止めることはできなかった。
両腕を目の上に乗せて声を上げて泣いてしまった。
結局、メロディはその場に座り込んでしまった。
別れることはわかっていたが、こんな別れ方はしたくなかった。
せめて挨拶だけでもできたらよかった。
それが無理なら、彼女の未来に迫る危険が何であるか教えてあげたかった!
一緒に遊ぶのが楽しくて、その時間に浸っていたかったのに。
混乱したメロディ。
呆然とするメロディ。
母の言葉は一つも耳に入らなかった。
痛む心に泣き声がさらに高まった。
空っぽの頭ではまだ現実を受け入れられず、「こんなときロレッタがいたら慰めてくれたのに」と考えていた。
「どうしたの、メロディ……どうして泣いているの?」
きっとこう言いながら、はっきりと慰めてくれる言葉をかけてくれるだろう。
「誰がメロディを泣かせたの!ロレッタお姉ちゃんが行って懲らしめるわ!」
そう、そんな言葉を言ってくれるはずだった。
そうでなけれロレッタではない。
「……?」
メロディは一瞬泣きやんで、しばらく音を聞いた。
ロレッタがそこに立っていた。心配そうに、どうしていいか分からない表情を浮かべて。
「……?」
幻覚だろうか。
会いたい気持ちがあまりにも強すぎて目に見えているのだろうか。
そうだ、それが正しい!
ここは小説の中の世界だから、そんな現象が起こることもあるかもしれない。
メロディは、目の前に見える子どもに触れたいと思った。
しかし、同時に触れることを恐れた。
もしそれが幻想だと確信してしまったら、この優しい慰めが消えてしまうのではないかと。
「メロディ、びっくりした?」
子どもの質問にメロディはうなずいた。
涙はまだ多く残っていた。
それでも、あと少しだけ。
ほんの少しだけ、このままで……。
「メロディは赤ちゃんだから泣いてもいいよ。ロレッタお姉ちゃんが全部面倒見てあげるから!」
そう言ったロレッタは両腕を大きく広げて、メロディをぎゅっと抱きしめる。
腕の中に収まる小さな体はとても温かかった。
……温かい?! 温かいだなんて、本当に?!
メロディは震える手でロレッタの背中にそっと手のひらを当ててみた。
「……ロレッタ?」
「うん、ロレッタお姉ちゃんが来たよ。」
ロレッタが本当にここにいる。
嘘じゃない!
本当に!
驚きすぎているせいだろうか。
泣き止むことなんて絶対にできそうもなかったメロディの涙が、ぴたりと止まった。
そして代わりに――
「ヒック。」
しゃっくりが出た。
こういうときは水を探して飲まなければならないけれど、メロディは今この場から動きたくなかった。
「ヒック。」
「メロディ、大丈夫……?」
ロレッタが彼女の周りをうろうろしながら心配そうに見つめた。
メロディは熱心にコップを握りしめ、しゃっくりに耐えていた。
続くしゃっくりに胸のあたりが少し苦しくなったものの――
「ヒック。」
そしてまたしゃっくりが出た瞬間、メロディの目の前に家族のように作られた水壺が一つ、そっと差し出された。
その水壺はとても豪華な作りだった。
豪華な壺を見ていると、それが「壺」ではなく「壺陛下」と呼ばれるべきもののように思えた。
メロディはまたしゃっくりしながら壺陛下をじっと見つめた。
すると、その豪華な壺が少し彼女に近づいた。
「飲め。」
低く威厳のある声で命じられた。
もちろん壺陛下が話しているわけではなく、壺が人間の言葉を話すことはない。
メロディはゆっくり顔を上げ、その言葉を発した人物を確認した。
「……!」
驚きのあまり、メロディは尻もちをついた。
おそらく『公爵令嬢』を読んだことのある読者なら誰もが驚くに違いない。
目の前の相手は、この地の公爵であり、ロレッタの父親だったのだ!
『ちょっと! 近くで見ると本当に表紙とそっくりじゃないか……!』
そう、公爵はあの堂々たる表紙に描かれていたロレッタと彼の息子たちを抱いている姿そのものだった。
その表紙を見て、多くの読者はこの物語に興味を抱いたのだ!
彼が「大家族のお父さん」だったことまで改めて思い出した。
メロディはしばらく公爵の美しい顔を見つめながら、二つのことを悟った。
一つは、驚きのあまりしゃっくりが止まったこと、もう一つは、すぐにひざまずいて頭を下げるべきだということだった。
彼女は急いで体を縮めた。
ほとんど地面に身体をつけるような形で。
「も、も、申し訳ありません!」
声を震わせて謝罪したが、メロディは頭の上から冷たい視線を感じた。
それもそのはずだ。
彼は物事を明確にし、正さなければならない人であり、奴隷商人に容赦なく向き合う人であることは間違いないからだ。
「それで。」
公爵はゆっくりと口を開いた。
「何についての謝罪なのだ?」
「え、えっと、わたしの母は奴隷商売をしており生きていました。そして、それは……」
「違法だ。」
きっぱりとした言葉に、メロディはかすかな声で「その通りです」と答えた。
「その罪には、当然の罰があるだろう。」
やはりそうか。
メロディはどうにかしてもとの暮らしとは違い、公爵がこの村にいる理由を理解した。
奴隷商売を助けていたメロディに罰を与えるために来たのだ。
助かった。
メロディは内心ほっとした。
もし彼女がここまで足を運ばなかったら、恩を感じた医師に多大な迷惑をかけるところだった。
しかし、「当然の罰」とは一体何だろう。
少なくとも死刑でないことを祈った。
メロディがしばし考え込んでいる間に、公爵はこう続けた。
「では、お前の母親の刑罰が決まったら、使いを送って知らせるようにしよう。」
「……え?」
公爵の話にメロディは驚き、ついカップを持ち上げて見上げた。
「母親の刑罰」についてだけ語られるのが不思議に思えたのだ。
「私も母と同じ罰を受けるのでは?」
彼女の切実な問いかけに、公爵は少し微笑みを浮かべた。
「お前が母親に奴隷商売をするよう提案したのか?」
「い、いえ。私が生意気にも無理矢理、母が奴隷商売を始めたのを止められなくて……。」
公爵はそれ以上説明を続けなかったが、メロディは彼が言いたいことを理解することができた。
メロディ自身がこの件に積極的に関わったわけではないため、罰を受けることはないということだった。
「か……感謝……します。」
彼女は再び床に深く頭を下げた。
母に対する思いで胸が詰まるようだった。
彼女は少し申し訳なく感じたが、それでも死刑を免れたことだけで非常に嬉しかった。
「では、ここで……どうしたら?」
死ぬことはないと考えたからだろうか。
メロディの中にわずかな勇気が湧き上がり、思い切って公爵に質問してみた。
おかしくないか?
普通なら娘を連れてすぐに行動を起こすと思われた公爵が、ここにとどまっているのだから。
「奴隷商人の娘がまだ若いからといって、放っておけるわけにはいかない。これからは自分で生きていかなければならないのだから。」
「それなら、大丈夫……だと思います。」
「大丈夫だと?君は公爵を怒らせた罪人だぞ?」
「私は力も強いし、料理もできます。少しの読み書きもできるし、村の人たちとも仲良くやっていけると思います。」
彼女の説明にロレッタが嬉しそうに近づいてきて、褒めてくれた。
「メロディ、賢い!ロレッタに新聞を読んでくれた!」
しかし、公爵は小さな子供をこんな風に一人で放置することに、非常に気まずさを感じているようだった。
すべての子供には保護が必要だからだ。
それでもメロディは、罰を免れたことだけで公爵に大いに感謝していた。
だからこそ、メロディは公爵を安心させる言葉を言おうと決めた。
「そして、村の医者先生のところでお仕事を教えてもらうのはどうかとお話しいただきました。」
「そうか。」
公爵はようやく納得したかのように頷いた。
村の医者たちは、通常、住民からの尊敬を受けている。
だからこそ、子供を任せるには非常に信頼できる相手だと感じた。
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